見城こうじのアケアカ千夜一夜

  • 記事タイトル
    見城こうじのアケアカ千夜一夜
  • 公開日
    2025年01月24日
  • 記事番号
    12409
  • ライター
    見城 こうじ

第34夜『ワイピング』(1982年・ニチブツ)

吸い込むより巻き取っちゃえ!! 戦略的お掃除ゲーム!

『ワイピング』は掃除機のクーミルを操作して、ほこりの中に道を作っていき、セッケンやマットを使って敵のバイキンを退治するゲームです。

同年に発売された『ディグダグ』の影響を強く受けており、同製品を“翻案”したようなゲームという印象です。

当時の出荷数がかなり少なかったため、個人的にあまりプレイする機会がなく、今回、久々に遊んでみて「こんなゲームだったのか!」といろいろな発見がありました。

弱らせた敵を通り抜けることができない!

プレイヤーはボタンでセッケンを発射します。これで敵を弱らせた(スタンさせた)上で、直接吸い込んで退治します。

それ以外にも、フィールドに配置されたマットでまとめてやっつけることもできます。プレイヤーがマットの上を通過するとクルクルッと巻き取られ、経路上の敵を一網打尽にします。

マットについては、言うまでもなく『ディグダグ』の岩を想起しますが、そのビジュアルと動きから『クラッシュローラー』の反撃ゾーンもちょっと彷彿とさせます。

このアイデアがなかなかおもしろくて、巻き取られたマットはまた戻ってくるので、敵を巻き込めるチャンスが多く、その他にも長いマットは射程が長いとか複数回利用できるなど、ひとひねりあって楽しませてくれます。

ただ、そこでプレイヤーとしては、セッケンで弱らせて足止めをしておき、マットで一網打尽! という攻略をしたいのですが、このゲームは『ディグダグ』と違って、スタン中の敵の上を通過できません。触れるとそのまま吸い込んで倒してしまいます。

なので、前後からくる敵を一か所に集めていくことができない。挟み撃ちにあったら、どちらかを倒さざるを得ないのです(迂回路を作れば別ですが)。

『ディグダグ』と『ワイピング』のゲーム性のもっとも大きな違いはここだと思います。この違いは相当デカい。かなり遊びが変わります。

また、敵の初期配置やアルゴリズム的にも、プレイヤーの進路上に待ち受けていることが多く、かつプレイヤーとの接触判定が大きいということもあり、とくにマットを活用して高得点を取ろうと思うと、なかなか難しいゲームになるかもしれません。

海外バージョンこそが完成版『ワイピング』なのではないか

今回、アーケードアーカイブス版をプレイして驚いたのが、国内版と海外版の違いです。こんなにもあちこちいじられているとは。

遊び比べてよくわかったのですが、純粋に海外版が『ワイピング』の完成形という感じがします。『ラリーX』から『ニューラリーX』くらいのバージョンアップを思わせます。

(移植版ですので、オリジナル版との間にわずかな相違はあるかもしれませんが)

まず、ビジュアルに関して、画面の色味が明るくなりました。

そして、元々は『リブルラブル』のボーナスステージの宝箱のようにステージ開始時にだけ表示されていたボーナスターゲットが常に見えている状態になり、さらにコンプリートしやすいよう4つから3つに減らされました。

その上で、3つ全部集めると王冠が出現し、それを取ると画面中の敵がスタン状態になるというフィーチャーが加わっています。『レディバグ』や『Mr.Do!』のセンターターゲット的なギミックです。

さらに、繊細な調整だなと思ったのが、国内版ではマットが長い一本道の扱いになっていて、途中で降りたり、逆に乗っかることもできなかったのですが、これができるようになっています。

その上で、マットのどちらかの端を踏み抜くだけで、武器として起動するようになりました(マットに対して直交する形で踏み抜くことで起動できる)。

元のルールだと起動する前に敵に挟まれやすく、使いこなすのが難しかったので、その点についてはずいぶん遊びやすく改変されています。

他にも、敵は最後の1匹になると最寄りのマットを探して、その下に潜り込んで逃げてしまうのですが、国内版ではあっという間に消えてしまうので何が起こったかわかりにくかったのと、しかもマットの下に潜って不可視状態になった敵に触れてもプレイヤーのミスになるという少々理不尽な仕様(?)でした。

これが海外版では敵が最後まで見えるようになって、一定時間点滅して消え去るようになりました。表現としてはややパッチ充てのような感じになっているのですが、修正意図はとてもよくわかります。

今回、『ワイピング』という希少なゲームの、それも国内版と海外版の違いをも満喫することができて、とても満足しています。2つのバージョンを遊ぶことで、このゲームの開発履歴が書かれた手記の一部を読んでいるような気持ちになります。

では、また次回。

©HAMSTER Corporation
Arcade Archives Series Produced by HAMSTER Corporation

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