見城こうじのアケアカ千夜一夜
第35夜『忍者くん 魔城の冒険』(1984年・UPL)

魔城を舞台に繰り広げられる忍者アクション
『忍者くん 魔城の冒険』は主人公の忍者くんを操り、階層型のフィールドで手裏剣、ショートorロングジャンプ、下段への落下などのアクションを駆使して魔物を退治するゲームです。一見とてもシンプルですが、その仕組みは独特であり大変奥の深い遊びです。
一番の特徴は、敵がこちらの動きを見て自在にリアクションを変えてくる点にあります。このため、プレイをパターン化できず、毎回ゲームが変わります。ここがおもしろい! 当時はパターン化できるタイプのゲームのほうがずっと多かったんです。
体術を駆使して魔物を撃破せよ!
忍者くんはジャンプと下段への降下を1つのボタンで行います。ジャンプの際はレバー左右いずれかの入力を伴う斜めジャンプになり、下への移動はレバーニュートラルで行う真下への垂直落下になります。
プレイヤーが放つ手裏剣は射程が短く、連射も利かないため、やみくもにショットボタンを押していてもなかなか敵は倒せません。うまくタイミングを計って撃ったり、相手の上を取って体当たりし気絶させることで、確実に手裏剣を当てるなどの技が必要になってきます。
また、逆にプレイヤーが上から敵の体当たりを食らうと、一定時間こちらが身動きが取れなくなります。互いが体術を駆使して戦う格闘アクションといった装いのゲームです。

次々登場するどの敵も存在感抜群!
敵の仕組みがよくできていて、前述のとおり、思考ルーチンが優れているのもそうですし、構成がまたよいのです。
原則として1つのステージにつき敵は1種類に統一されていて、これが3ステージ続きます。3ステージ目に1体だけボス格として違う敵が登場し、それが次の3ステージではメインの敵になります。ボス格として顔見せした敵が、次はザコに降格する感じです。少年漫画でボスキャラが次のシリーズでかませ役になるがごとしです。
当時の考え得る作りだと、3ステージごとに丸々敵が入れ替わったり、もしくはもう少し不規則に混合させると思うんです(終盤のステージでは混合していくのですが)。じつにセンスを感じさせる構成です。
各敵の攻撃の特徴を書き並べると、射程の短い直進弾、ホーミング弾、爆弾連射、高速連射、障害物を画面に残していく、超高速連射、壁で反射する長射程、気絶させないと倒せないなど、テキストにするとそこまで大きな差がないように見えるかもしれませんが、主人公の能力がそれほど高いわけではないので、この違いが大きいんですね。
個人的には、「障害物を画面に残していく」獅子舞のステージ辺りからかなり大変だと思います。画面中が炎だらけになって、どんどん行動可能領域が限定されていくのです。
巻物ボーナスを集めるにも駆け引きがある
ステージクリア時には、ゲーム中に集めた巻物の数に応じてボーナスが入ります。この巻物が坊主めくりになっていて、欲をかくとボーナスがパーになる辺りの運要素も楽しいのですが、巻物が画面上に同時に一つしか存在できないのも独特ですごくよいですね。
よくある仕様としては、時間で消えてしまうタイプが多いと思うんです。そうではなく、次の巻物を出現させると、一つ前のものが消えてしまう。敵を倒せるチャンスに一瞬躊躇してしまいそうになる。そんな駆け引き・葛藤が発生するわけです。
なぜならば奇妙な玉を3つ集めたからなのだ
ゲーム中に出現するストレンジボールを3つ集めるとボーナスステージへ進めます。ボーナスステージは通常ステージと同じ「横移動」「斜めジャンプによる上への移動」「真下への落下」のアクションで成り立っています。細かくいうと、ショットでターゲットの位置をズラすこともできます。
これらのアクションを組み合わせて時間内にターゲットを集めるというシンプルなルールながら、パズルとしてよくできています。

まったくの余談ですが、ボーナスステージ突入時の“Because you have three strange balls.”というメッセージも昔からずっと印象に残っています。「ボーナスステージが始まったのはこういう理由なのだ」という何とも几帳面な説明文。
考えすぎかもしれませんが、このような表現をする制作者だからこそ、こんなロジカルなゲームシステムを見事にまとめ上げることができたのではないか、なんて感じたりもします。
本当に今プレイしてもおもしろいゲームなので、未プレイの人にはぜひ遊んでほしいです。
では、また次回。


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