見城こうじのアケアカ千夜一夜
第36夜『マーカム』(1983年・サン電子)

南極大陸のマーカム山へ向かい、敵基地を叩け!
『マーカム』は8方向レバー2ボタンの横スクロールシューティングゲームです。レバー操作で斜め方向にも発射できるショット、発射時に高さを調節できるミサイル、そして戦闘の舞台が徐々に南極へと近づいていくドラマ性が大きな特徴です。
タイトル“マーカム(Markham)”の由来は、南極大陸にある山の名前「マーカム山」から来ていると思われます。敵の本拠地がここにあるイメージなのでしょう。
荘厳なBGMも耳に残ります。この時期のサン電子の音楽は、他にも『ザ・ギネス』『ぺったんピュー』など印象的な曲ばかりです。
横スクロールながら『ゼビウス』の影響は大
この時期のシューティングゲームのほとんどがそうなのですが、『マーカム』にも『ゼビウス』の影響がそこここに見られます。
グレー基調で一部に幾何学的な形状の敵がいること、他の敵に混じって出現する大型のボス格の存在、反転の際に機体の裏側を見せて去っていくなどの敵アニメーションの手法、そして背景の変化で見せる物語性など、その多くは『ゼビウス』を境にメジャーになった見せかたです。
ただ、『マーカム』に使われている基板はあまり高性能とはいえず、『ゼビウス』の後追いで出す上で苦労もあったのではないかと思います。たとえばスコアを表示する領域がゲーム領域と切りわけられていたり、“GAME START”などのメッセージを表示する際にも透明色を使って背景と重ねることができず、テキストが黒バックになっている等々。

ショット、ミサイルともにひと工夫あり!
ショットはレバーニュートラルだと真横に飛んでいくのですが、上もしくは下に入れると斜め前方へ飛んでいきます。
これは後年のナムコ『スカイキッド』とも同じ仕様なのですが、ここで思い出すべきは同じサン電子の『コスモポリス』です。縦方向と横方向の違いはあるのですが、『コスモポリス』もレバーを入れることでショットが斜め方向へ飛んでいきます。
『マーカム』のスタッフが『コスモポリス』を元にこのシステムを採用したかはわかりませんが、この共通点は注目したいところです。
また、ミサイルは通常のショットで倒せない敵を撃破するために使います。『ゼビウス』でいう地上物と空中物の撃ちわけに相当する仕様といってもよいかもしれません。
とくに大型円盤は下部に弱点があり、そこにミサイルを当てないと破壊できません。最終要塞を撃破する際にもミサイルを使います。
このミサイルの操作法がユニークで、ボタンを押したままにするとどんどん下降していき、離すとその時点のY座標のまま直進していきます。これを使ってうまく敵と軸を合わせるわけです。
前述の斜めショットにしても、このミサイルにしても、自機の上下方向のレンジをカバーするための仕組みという点で、コンセプトが一貫しています。

適切に上がっていく難易度、気軽に遊べる良作
ゲームとしては丁寧に作られていて、自機の操作システムにしても、南極の敵要塞へ向かうバックストーリーにしても個性的でおもしろかったと思います。
難易度の上昇カーブもよくできていて、前方から直進してくる単純な敵から始まり、曲線移動する敵、耐久力の高い敵、編隊攻撃をしてくる敵を経て、画面上の弾数もどんどん増えていきます。少しずつトリッキーな敵が増え、前後からの挟み撃ちにも合うようになり、難易度がじわじわと上がっていく感じです。
前述の、ボタンを押している間下降するミサイルについて改めて思ったのですが、これがたとえば迷路壁などの地形ヒットのある『グラディウス』や『R-TYPE』のようなゲームだったら、また用途が広がってひと展開できたかもしれませんね。前述のゲームのフォースやオプションのように、自身が行けない壁の向こう側に撃ち込むイメージです。現代の技術で作られた『マーカム・リブート』なんてちょっとおもしろそうです。
最後に、個人的な思い出ですが、学生時代にサン電子の東京営業所でアルバイトをしていた時期があります。仕事の内容は、開発中の新製品をプレイして意見を述べたり、企画会議に参加するようなものです。IGCC編集長の手塚一郎氏も一緒にアルバイトをしていました。
そこで最初に見せてもらったゲームが、この『マーカム』でした。既にほぼ完成バージョンだったため、とくに意見を述べるような機会はなかったのですが、発売前のゲームを遊ばせていただいたことはとても印象に残っています。
では、また次回。

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