見城こうじのアケアカ千夜一夜
第40夜『べんべろべえ』(1984年・タイトー)

なおちゃんを救出せよ! 消防&レスキューアクションゲーム
『べんべろべえ』は主人公ダミちゃんが火災現場に乗り込み、消火活動を行い、ヒロインのなおちゃんを救出するレスキューアクションゲームです。
固定画面の階層型フィールドでゴールへ向かうジャンプゲームという点で、広義では『ドンキーコング』などの系譜といえます。ただ、そうしたゲームの多くは画面の最下段から始まって上へ進んでいくタイプで、『べんべろべえ』のように上からスタートして最下段へ向かうゲームは比較的珍しいように思います。
近い時代だと、同じくタイトーの『エレベーターアクション』もビルの屋上から侵入して下へ降りていくゲームです。また、ゲーム内容には一切反映されていませんが、やはり同社の『ルパン三世』もオープニングデモでビルの屋上から侵入しています。

内輪ネタ満載のおかしなおかしな世界観
ゲーム内容を改めて見ると、よくわからない世界観で何だかすごい! よく企画がとおったものだなあと思います。
主人公は三枚目のコミカルヒーロー風。登場キャラクターもヘンテコなデザインのものばかりで、それぞれの名前には学芸大、川崎、町田などの地名が冠されています。これは当時タイトー開発部の一部がこの近隣にあったがゆえのネーミングだと思うのですが、じつにローカルなネタ。ぼくも通学や通勤でこの付近の沿線を使っていた時期があるので笑ってしまいます。
他にも同社『ちゃっくんぽっぷ』や『エレベーターアクション』のキャラクターが隠し要素として登場したり、インストラクションカードにも遊び心が詰まっていたり、この時期のタイトー開発部の若さが炸裂している感じです。
消防とレスキューという設定は王道ともいえるので、これでまっとうなキャラクター設定に寄せていたらどんなゲームになっていたか夢想してしまいますが、でもそれではおもしろくないのでしょうね。『べんべろべえ』はこれでこそ『べんべろべえ』なのだと思います。

細かな操作が求められる放水アクションや階段の移動
目の前の炎には放水による消火で対応します。前方へ放物線を描くように放水されるのですが、レバー上下でこの放物線を調整することができます。この使いわけによって、遠近の炎を狙い撃つことができるほか、障害物の揺らぐ蛍光灯に当てて押し返す使いかたもできます。
ちょっと戸惑うのが階段の昇降操作が細かいことです。踊り場まで含めて立体的に描かれたビジュアルに合わせて、丁寧にレバーを入力する必要があります。階段の昇降でこんなに細かく操作させられる2Dゲームは珍しい気がします。
また、障害物の中でおもしろいのが、手前にロッカーが倒れてくる立体的なギミックです。他にも奥の壁が崩れて手前に落ちてくるなどの仕掛けもあります。
もちろん今ではとくに珍しい仕掛けではないのですが、前述の階段も含めて、この時代のサイドビュー2Dアクションにおいてこれだけ奥行きを意識したギミックが多用されていることも、このゲームのユニークさの一つだと思います。
最後にもう一点、ラウンドクリア時に、下部に表示されたタイムボーナスが画面を縦断してスコアに加算される演出は、同社『スペースチェイサー』と一緒ですね。他社ではあまり見ない演出なので、出てくるたびにちょっとニヤリとしてしまいます。
では、また次回。

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