見城こうじのアケアカ千夜一夜

  • 記事タイトル
    見城こうじのアケアカ千夜一夜
  • 公開日
    2025年12月12日
  • 記事番号
    13785
  • ライター
    見城 こうじ

 

第50夜『ぺんぎんくんWARS』(1985年・UPL)

村の動物たちによる対戦形式の“ドジボール”アクション

『ぺんぎんくんWARS』は動物たちによる対戦形式の“ドジボール”アクションゲームです(“ドッジボール”ではないオリジナル競技)。2本先取で勝利となり、トーナメント方式で先へ進み、優勝を目指します。

プレイヤーはぺんぎん、対戦相手は猫やコアラなど、そして試合場を埋め尽くす観客もすべて動物という、何とも可愛らしいゲームです。

操作は2方向レバー1ボタン、ボタンはボールをつかむ/投げるのに使います。

プレイヤーとコンピュータキャラクターがお互いに10個のボールを投げ合い、敵陣に入れたり相手にぶつけることで、10個すべてを相手の陣地に投げ込めば、その時点でパーフェクトゲームとして勝利になります。タイムアップまでもつれ込んだ場合は、その時点で自陣に残ったボールの少ないほうが勝ちです。

敵にボールをぶつけて気絶させる要素があるので、格闘ゲーム的でもあるのですが、HP制というわけではありません。ただ、気絶しているすきにボールをすべて投げ込まれて勝負が決まるようなことはよく起こります。ここは格闘ゲームのK.O.勝利に近いですね。

なお、いかにも2人用の対戦モードがありそうなゲームなのですが、最初のアーケード版にはそのような仕様はありません。その後の移植版や続編によっては搭載されています。

相手にボールをぶつけてパーフェクトゲームを目指せ

“ドジボール”という設定からもわかるように、ちょっとドッジボールを彷彿とさせるゲームですが、『ポン』だったり、エレメカの『エアホッケー』のアレンジもしくは発展型ゲームともいえるかもしれません。

というのは、ドッジボールとは異なり、プレイヤーは相手との距離を詰めたり、逆に離れることもできず、あくまで左右2方向移動のみの操作で、相手との距離を保ったまま戦うゲームだからです。

ただ、大きな特徴として、基本が正面対正面の戦いであることが挙げられます。原則としては斜め球や変化球の類いを投げることはできず、ボールが真正面に飛んでいく。

なので、その点に関しては前述の『ポン』『エアホッケー』や、後年の『フライングパワーディスク』のような感覚でプレイすると、ちょっと面食らいます。

そのため、攻略としては敵とできるだけ座標を合わせ、隙を突いて正面からボールをぶつけていくようなやりかたが基本になります。当然ながら、プレイヤー側も敵のボールを回避することが何よりの鉄則になります(ぼくはあまり上手ではないので、間違っていたらすみません)。

ゲームとしては、さらにそこに互いのボールの衝突や移動型の障害物が入ることで、斜めの反射による紛れを発生させるようにしています。

斜めのボールが混ざることで軌道の読みの難しさが加わると同時に、ボールの滞留時間が長くなるので、複数のボールが同時にさまざまな軌道で飛び交うことにもなり、一気に難しくなるのです。

障害物は残り時間が減ってきたときに出現します。これは前半のややシンプルともいえるゲームによる膠着状態を崩す狙いが大きいのではないかと思います。

一見シンプルな遊びの中にさまざまな工夫が盛り込まれている

ゲーム性を高めるための他の工夫としては、ボールをつかんだ際にわずかに硬直時間が発生するので相手のボールが迫ってるときは細心の注意が必要だったり、気絶している相手に連撃を加えたいときに、自陣に散っているボールを拾いに行くための時間が必要で、必ずしも間に合うとは限らない辺り、よくできていると思います。

また、豪華なことにボーナスステージが3種類も用意されているのですが、うち2つはエアホッケーとモグラ叩きがベースになった遊びです。どちらも当時の定番エレメカです。メインモードも含めて制作者のかたがどういった遊びをヒントにこのゲームを作り上げたかが推察できます。

最後に、これは野暮な感想かもしれませんが、『ぺんぎんくんWARS』というタイトルに何ともいえぬ可笑しみを感じるんですよね。

このゲームの舞台設定からすると、ぺんぎんくんは他の動物たちと同じ立場でトーナメント競技に出場している一参加者に過ぎないのだから、本来であれば(?)その競技名の類いをタイトルにするのがセオリーな気がします。たとえば『アニマルドジボール』のような。

そこであえての「ぺんぎんくん」推しで、かつ「WARS」というなんでやねんな言葉のチョイスがなんとも素敵です(プレイヤーはぺんぎんくんしか操作できないから、ということはあるにせよ)。

このタイトルのおかげで、ゲームのハチャメチャさとハードルの低さが伝わってきますものね。

では、また次回。

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