見城こうじのアケアカ千夜一夜

  • 記事タイトル
    見城こうじのアケアカ千夜一夜
  • 公開日
    2025年12月26日
  • 記事番号
    13784
  • ライター
    見城 こうじ

 

第51夜『ドラゴンバスター』(1984年・ナムコ)

クロービスの迷宮クエスト! ドラゴン退治だ

『ドラゴンバスター』は主人公クロービスを操作してドラゴン退治と王女救出を目指すアクションゲームです。

同社『ドルアーガの塔』の直後に出て、同じように剣と魔法の世界を描いたゲームだったため、当時よく比較もされましたが、ゲームとしてはまったくの別物といえます。

ラウンドの最後の敵として巨大なドラゴンが出てくるのも今なら珍しくありませんが、当時は大きなインパクトがありました。今回、アーケードアーカイブス版で見直して思い出したのですが、大胆にもデモ画面でドラゴン戦を見せているんですね。デモ画面で何一つ見せてくれなかった『ドルアーガの塔』とは対照的です(笑)。

コマンド技ともいえる2段ジャンプ、兜割り、垂直切り

操作は4方向レバーと、剣を振る&ファイアーボール発射の2ボタンです。ジャンプはレバーで行ないます。

慣れればキビキビしていてとても心地よい操作性なのですが、2段ジャンプ、兜割り、垂直切りと、今でいうコマンド技的な操作がいくつも入っていて、どれもうまく使いこなす必要がありました。

とくに剣を出したままジャンプ斬りを行ない、敵に大きなダメージを与えることができる兜割りは使いどころが多く、決まったときもじつに気持ちいい。この技の『ドラゴンバスター』の魅力への貢献度はとても大きいのではないでしょうか。

また、空中でレバーを下に入れて剣ボタンを押したままにする垂直切りは、長い縦の通路を落ちるときに必ずこの状態で降りたくなります。『パックマン』のメイズのコーナーでレバーをタイミングよく入れることで正面を向いて止まることのできる“構え”みたいなもので、意味がなくても何だかやりたくなる技ってありますよね。

当時のゲーマーの多くはこうした技を割と難なくこなしていましたが、改めて見るとけっこう癖のある操作だと思います。2段ジャンプを使わないと登れない崖なんて、いまだにぼくはよく失敗します。

HP制という仕様も当時のアーケードゲームとしては珍しく新鮮でした。とはいえ、もちろん、このゲームが最初というわけではなく、たとえば『ドルアーガの塔』にも内部的にHPの概念はありましたし、もっと古いゲームでいうと『オズマウォーズ』などもHP制でした。

ゲーム中に残りHPが僅少のときにだけコインを追加することでコンティニューできる仕組みも珍しいのではないでしょうか。ゲームオーバーになってからでは手遅れで、もう継続できないのです。

マップ探索の楽しさ、そして燃えるルームガーダー戦

『ドラゴンバスター』の大きな魅力の一つに、当時のアクションゲームとしては本格的なダンジョン探索が楽しめる、というものがあります。プレイヤーの目的は、「通路」とルームガーダーが待つ「部屋」から成るシームレスなマップを移動して、出口の扉を見つけ出すことです。

扉の位置は固定なので、プレイを重ねれば覚えることができるのですが、最初のうちは本当に巨大な迷宮をさまよっているような感覚が楽しめます。

通路内の移動時は急に襲い掛かってくる各種モンスターとの戦いがあり、そして部屋に入るとゲートが閉まり、逃げることのできない状況でのルームガーダーとの戦闘というメリハリの利いた展開。そこで勝利することで、アイテムが入手できたり、出口の扉が見つかるという仕組みがとてもよくできています。

ルームガーダー戦で、プレイヤーが神輿(みこし)に乗ってるかのように下からガンガン突き上げられるダメージの受けかたは、今なおとても独特なリアクションのように思います。そこから兜割りにつないで決まったときの気持ちよさもまた格別です。

また、マップがシームレスであることとも絡むのですが、ルームガーダー戦のユニークなテクニックとして、待ち構えている背後から部屋に侵入することで、相手に気づかれず楽に倒せる技があります。ちょっとユーモラスな絵面で、開発者も当然把握していた攻略法だと思うのですが、こんなゲームの穴を突いたような裏技的なものをそのまま残しているのがおもしろいですね。

最後に余談になりますが、黎明期アーケードにおける迷宮探索ものといえば、1980年にアメリカのスターン社から出された『Berzerk』も記憶に残るゲームです。

『Berzerk』は最終的なゴールがあるわけではなく、ある程度ランダムに構築されたマップを移動していくというもので、『ドラゴンバスター』のようにマップを把握して攻略していく要素は希薄ではありましたが、そんなプリミティブな内容ながらも不気味な雰囲気が感じられて、とても印象に残っています。

『ウィザードリィ』などもそうですが、迷宮探索で未知の領域に足を踏み入れるときの心細くもワクワクする感覚は、それぐらい初期のゲームから表現されていたように思います。

では、また次回。

DRAGON BUSTER™& ©Bandai Namco Entertainment Inc.
Arcade Archives Series Produced by HAMSTER Corporation

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