通好みのゲームがそろう『セガSYSTEM24』は今も輝きを失わない

通好みのゲームがそろう『セガSYSTEM24』は今も輝きを失わない  IGCC

SYSTEM24』は1988年にセガが販売開始したシステム基板だ。1994年までの7年間に対応ゲームが15タイトルリリースされた。発売当初こそシューティングゲームやアクションゲーム、レースゲームなど、バラエティー豊かにゲームが作られていたが、販売期間の後半に入る1991年ころからは、ほぼ麻雀、クイズゲーム専用機のような状況になる。

1990年前後のセガはシステム基板が乱立している時期にあり、『X-BOARD※1X-BOARD : 1987~89年にかけて販売されていたシステム基板。代表作は『アフターバーナーⅠ』『同Ⅱ』(1987年)、『スーパーモナコGP』(1989年)など。』や『Y-BOARD※2Y-BOARD : 1988~91年にかけて販売されていたシステム基板。代表作は『ギャラクシーフォースⅠ』『同Ⅱ』(1988年)、『パワードリフト』(1988年)など。』『SYSTEM32※3SYSTEM32 : 1990~95年にかけて販売されていたシステム基板。代表作は『ラッドモビール』(1990年)、『アラビアン・ファイト』(1992年)など。』などの通称「化物スプライト基板」上で動作する疑似3Dのゲームタイトルに注力していたようだった(これはあくまでもユーザー視点であって、実際に当時のセガの方針がそうであったかは不明)。

SYSTEM24はそのような中において、汎用筐体向けシステム基版のフラッグシップ的なポジションを目指していたのではないだろうか。当時は大型筐体のゲームがブームだったこともあり、プレイヤーの目も大作に集まりがちだったが、SYSTEM24用のゲームは個性的でおもしろいものが目立っていた。今回はそんなSYSTEM24と代表的な対応ゲームに光を当ててみたいと思う。

余談だが、AM1研※4AM1研 : 旧セガ第1研究開発部のこと。数多くあったセガ社内の開発部署の中ではもっとも古くから存在していた組織。他の部署がそれぞれ作家性を押し出した開発をしていたのに対し、会社商品としてのプロダクトを多く手掛けていた。代表作は『ギャラクシーフォース』(1988年)、『ゴールデンアックス』(1989年)、『ダイナマイト刑事』(1996年)など。が制作したゲームタイトルが目立っていたため、筆者は SYSTEM24を勝手にAM1研基板と呼んでいる。

他の基板を圧倒した高精細グラフィック

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▲他のゲームとひと目で違いが分かる高解像度グラフィックが目を引く存在だった

SYSTEM24の基本スペックは、CPUに10MHz駆動のMC68000※5MC68000 : モトローラ社(現 NXPセミコンダクターズ)が1980~96年の期間に製造していたCPU(MPUとも言う)。プログラマーには熱烈なファンが多い。当時のアーケードゲーム基板の多数がこれを採用していた。を2つ、音源にYM2151※6YM2151 : :ヤマハのFM音源チップ。多くのアーケードゲームメーカーが採用し、楽曲の再生に使用していた。ゲームミュージックといえばこの音源上で再生する楽曲だという古参プレーヤーは多い。、グラフィック描画はBG2面に拡大縮小機能付きのフレームバッファ式スプライト※7フレームバッファ式スプライト : 昔のゲーム機では、画面上を動き回るキャラクターの表示処理を軽くするために「スプライト」という画像合成機能を用いていたが、その方式の一種である。これ以前のラインバッファ方式では画面上で横に並べることが可能なキャラクター数に制限があったが、フレームバッファ式にその制限はない。を最大で2048個表示できるというもの。スプライト表示性能こそ高かったものの、総合的には当時の標準的な仕様だったと思う。

見た目ではっきりと分かる他のシステム基板との大きな違いは、水平走査周波数24.830kHzのモニターを使用する486×384ピクセルの高解像度グラフィックだ。当時の一般的な解像度といえば15.750kHzのモニターに出力する320×224。数字だけ見れば横166、縦160程度の増加にしか思えないが、実際に表示されている画像を比較してもらえればその違いは一目瞭然だ。もし、SYSTEM24のゲームが設置されているレトロゲーセンが近所にあれば、ぜひ同時期のゲームと画面を見比べてもらいたい。

派手さはなかったものの完成度の高いゲームが次々と登場

ゲーム交換が楽なシステム基板として、SYSTEM24は当初フロッピーディスクで対応タイトルが供給されていた(メンテナンス性が低かったこととコピー対策のため、途中からROMキットでの供給に変わる)。

どのゲームもグラフィックが緻密で、画面内に表示される情報量も多く、まさに基板の特徴である高解像度を生かしたタイトルばかりだった。先代ともいえるシステム基板『SYSTEM16※8SYSTEM16 : 1985~94年頃まで販売されていたシステム基板。代表作は『ファンタジーゾーン』(1986年)、『エイリアンシンドローム』(1987年)、『コットン』(1991年/開発サクセス)など多数。シリーズのように多数の有名タイトルがあるわけでもなく、X-BOARDやY-BOARDのように演出がド派手な花形タイトルもない地味な存在のシステム基板ではあるが、『ゲイングランド』(1988年)や『ボナンザブラザーズ』(1990年)などのタイトルを覚えている読者は多いのではないだろうか。

そんな対応ゲームについて、おすすめの意味合いを込めて代表作を紹介していこう。

『ホット ロッド』(1988年)

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▲4人まで参加できる箱庭タイプのレースゲーム。仲間と輪になって遊べる気軽さが良かった。ハンドル付きの専用筐体でリリース

トップビュータイプのレーシングゲーム。全方向にスクロールするレースコースで、ライバルカーとゴールインを競い合う内容となっている。いわゆる一般的なレースゲームとは様相が異なり、ハイスピードで疾走する爽快感は目指していない。ゆっくりしたゲーム展開で、コース取りなど正確な運転技術を競うような内容だった。

ゲーム内で賞金を稼いで車をパワーアップさせる要素もあった。時間制限があり、時間内にゴールできなければゲームオーバー。

レースゲームのカテゴリではあるが、最大4人でワイワイと遊ぶパーティーゲームと言っても差し支えないだろう。移植作品はないが、類似したゲームにPCエンジン用で発売されていた『モトローダー』(1989年/日本コンピュータシステム)がある。

『スクランブルスピリッツ』(1988年)

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▲シューティングゲーム本来のおもしろさを味わえる良作。初心者から上級者まで腕前に応じた楽しみ方ができた

縦スクロールシューティングゲーム。すでに演出やパワーアップが派手になっていた当時のシューティングゲームおいて、珍しい存在となったシンプルな内容が特徴。雰囲気的には『1942』(1984年/カプコン)に近いかもしれない。

パワーアップは僚機(ウィングマン)が左右に付くだけ。僚機が攻撃に加わるので発射弾数が通常よりも多くなる。また、僚機は緊急回避時のボムとしても使え、敵弾を防ぐバリアーの役割も果たす。攻撃は対空と対地に分かれているが、弾はワンボタンで同時に発射される。切り替えボタンで対地と対空それぞれ有利な状態に変化できたので、状況に応じて切り替える戦略性がゲームをおもしろくしていた

『ゲイングランド』(1988年)

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▲じっくり取り組むという言葉がピッタリの戦略型アクションシューティング。練り込まれたゲームシステムに魅了されたファンが多かった

固定画面のシューティングアクションゲーム。具体的な販売数は分からないが、筆者はSYSTEM24対応ゲームで最大のヒット作だと思っている。最大で20種類のキャラクターから1体を選んで出撃し、一定時間内に敵を全滅させればステージクリア。敵を全滅できなくてもステージには脱出エリアがあり、持ちキャラ全てを脱出させてもステージクリアはできる。

キャラクターは1体ごとに異なった移動力や攻撃方法が設定されている。射程距離の長さ、発射した武器の軌道や弾道の高低差、さらに、弾の発射位置が体の中央であったり右手からだったり、実に細かい性能差がある。高低差が存在するステージ内の地形や、敵キャラの配置を見て、現在の持ち駒から戦略を立てていく奥深さがあった。個人的にはゲーム史に残る名作の一つだと思っているのだが、スペースの関係で細かい部分まで説明しきれないのが残念。機会があったらじっくりと紹介してみたい。

『クラックダウン』(1989年)

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▲画面内に表示される情報量が多く、高解像度を生かしたSYSTEM24ならではのゲーム。隠密行動でいくか、派手に暴れるかで、そのプレイヤーの性格がプレイスタイルにはっきり現れた

指定されたポイントに時限爆弾を仕掛けて脱出するトップビューのアクションシューティングゲーム。このタイトルも、SYSTEM24ではメジャーな部類に入るだろう。物陰に隠れたり壁に張り付いたりして敵をやりすごすプレイスタイルは、MSX2版の『メタルギア』シリーズ(1987~1990年/コナミ)を彷彿とさせる。もっとも、敵に見つかってもメタルギアほどシビアな展開にはならず、銃撃戦で敵を倒しながらゲームを進めてもまったく問題はない。

ただし、銃を使わずにステージクリアすれば特別ボーナス点が加算されるなど、さまざまなボーナスフィーチャーがあるので、ハイスコアを目指す際にはテクニカルなプレイが必要とされた

『ボナンザブラザーズ』(1990年)

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▲当時主流の単純形状を組み合わせた3D風のデザインがキャッチー。『クラックダウン』と似たゲームシステムながら、サイドビューにすることで異なったおもしろさを生み出していた

時間内にお宝をすべて盗み出し、建物から脱出する泥棒ゲーム。『クラックダウン』(1989年/セガ)がトップビューだったのに対し、本作はサイドビューでゲームが進行するが、壁に張り付いて敵から隠れたり、定められたチェックポイントをすべて通過してゴール地点を目指すなど共通点は多い。

機材が非力だったこの頃は、単純な形状を組み合わせたようなプリレンダCG※9プリレンダCG : リアルタイム計算で出力される3DCGではなく、あらかじめ用意しておいた画像や動画のデータを素材として用いる3DCG。3D用画像LSIを気軽に採用できなかった時代に多く使われていた手法だった。がよくあったが、本作も似たようなテイストで画像が描かれていた。SYSTEM24の高解像度グラフィックにそれがマッチし、印象的な画面となっていたゲームだ

PCゲームテイストのタイトルが多く、自宅プレイがマッチするシステム基板

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▲ローンチタイトルの『ホット ロッド』は専用筐体でのリリースだったが、以降のタイトルは汎用筐体(24.830kHzモニター対応)向けに作られていくこととなる

今回の記事を執筆するにあたり、SYSTEM24対応ゲームをいくつかプレイしてみたが、つい時間を忘れて長時間遊んでしまった。SYSTEM24のゲームタイトルは同時期のゲームと比較して実に通好みだ。派手な演出はなく地味なものが本当に多い。

当時のセガは、体感ゲームと呼ばれていた大型筐体タイトルでヒットを連発していたので、余計にそう感じるのかもしれない。しかし、それは華やかなゲームの影に隠れてしまっていたというだけで、本来ならば注目すべき佳作の多いシステム基板だったと思う

ただ、どのゲームも内容についてはあまりゲームセンター向きではなかったのかなと個人的には思っている。プレイ時間が長くなるゲームデザインのものが多かったということで、オペレーターにとってはあまり歓迎できないラインナップだったのではないだろうか。それは、SYSTEM24を販売していた途中から、短時間プレイでインカムの期待ができる麻雀ゲーム、クイズゲームばかりがリリースされたことからも容易に想像できる。

思えば、ローンチ作の『ホット ロッド』から始まる一連の対応タイトルが、実にPCゲーム的であったように感じるのは筆者だけだろうか。当時稼働していた多くのゲームは、ハイスピードで迫り来る敵との戦いがメインで、それに対応するには(攻略をパターン化していても)脊髄反射的な操作を要求されるものばかりだった。

それに対して、SYSTEM24対応タイトルのほとんどは、ゆっくりとした展開が中心。ゲームの局面に応じた正確な判断を要求されるゲームデザインは、高解像度グラフィックのせいもあり、まるでPCゲームのようだった。SYSTEM24の特徴を一言で表すとしたら、優良PCアクションゲームをアーケードゲームとして遊ばせていたような基板と言っていいのかもしれない。

©SEGA

脚注   [ + ]