アプリで始めるボードゲーム
目次
第2回:Hey, that’s my Fish!/それはオレの魚だ! ~魚をたらふく食うか、シャチに喰われるか?~
年末にかけて、日本では徐々に収束していたかと思われたCOVID-19であったが、感染力の強いオミクロン株の侵入により全国的に蔓延防止策が適用され、夜の食事にも困る始末。さらにはステルスオミクロンとかデルタ変異とか、3回目のワクチン接種が進まない中で、第7以降の波に向けて油断できない。
疫病阻止をテーマとしたボ―ドゲーム『パンデミック』シリーズはじりじりと売り上げを伸ばしているが、それ以外は難しい昨今だ。
前回お伝えしたボードゲームイベント情報でも、ニュルンベルク・トイ・フェアや大阪ゲームマーケットを始め、中止に追いこまれたものも少なくなかった(個人的には、地元・弘前の旅館での、宿泊型ボードゲームイベントがなくなったのは痛かった)。それでもフランスは意地を張り、カンヌ国際ゲーム際は予定通り実行すると言うのだから恐れ入る(フランスの世界最大のボードゲームメーカー・アスモデ社は、エッセンシュピール同様、参加を見送る)
2月25日(金)~27日(日)カンヌ国際ゲーム祭
https://www.festivaldesjeux-cannes.com/fr/
ここではアスドール(黄金のエース)賞とも呼ばれる、フランス年間ゲーム大賞が選出される。子ども、入門者、一般、熟練者の各部門での1位が競われ、実は日本人のゲームが2つノミネートされている。
山田空太の『粋』と、佐藤敏樹&愛瑠の『ハピエストタウン』である。どちらかでも受賞の栄誉を得られるよう、同じ日本人として切に願っている次第である。
こうなったら、お気軽なヒャッハー陣取りでストレス解消!
そんな鬱屈した空気のなか、今回紹介するタイトルは「Hey, that’s my Fish!」(Fantasy Flight Games)である。
8歳以上、20分、1~4人/2~4人
iOS版はこちら:https://apps.apple.com/jp/app/hey-thats-my-fish-hd/id432427965
Android版はこちら:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.fantasyflightgames.htmf&hl=ja&gl=US
あなたがたはペンギンで、ゲーム終了時、最も多く魚をゲットしていたら勝ちである。魚の数が同じなら、魚と一緒に手に入る浮氷タイルがより多いほうが勝鬨を上げる。ほら、簡単でしょ?
六角形(これをヘクスと呼ぶ)の各浮氷タイルは60枚あり、魚1尾いるタイルが30枚、2尾は20枚、3尾は10枚となっている。
アプリでは、各ヘクスは勝手にランダムに(8×8の)長方形に並べられ、ゲームの場としてのマップが作られる。
各プレイヤーは時計回りの順に、自分のペンギン・コマを、魚が1尾しかいない(かつ他のペンギンがいない)タイルに、1匹ずつ配置していく(魚が2尾もしくは3尾いるヘクスには、この時点では配置できない)。
配置できるコマの数は、プレイ人数によって異なり、2人なら4個、3人なら3個、4人なら2個である(プレイ人数と各人が配置できるコマを足すと6になる)。
手番では、自分のペンギンのいずれかを、直線状で好きな数だけ動かせる。そのとき、移動前に自分が居たヘクスと、そのヘクスにいた魚を獲得する(最初の1手では常に1尾。動いた先の(ペンギンが止まった)へクスにいる魚も「予約」となり、次に必ず獲得する。
1回の手番では、曲がることはできない。他のペンギンや場の端を超えて先には行けない。
このゲームでの一番の肝は、移動後に場からヘクスが除去される部分にある。これによって各ペンギンの動きに制限がかかる。どうやっても手番で動かせないペンギンはゲームから脱落し、その時点で保有する魚の数を数える(最後に足元にあった魚も数える)。
アプリでは、この瞬間にシャチが海面下から飛び出してきて宙に投げ上げるので、ご愁傷様である。弱肉強食、なんまんだぶ……。
マップの形状は、これから説明する実績を解除することで増えていく。
グッピー:コンピュータ3名を相手に5回勝利。
ヒメハヤ:コンピュータ3名を相手に10回勝利。
イワシ:コンピュータ3名を相手に20回勝利。
お利口:コンピュータ3名を相手に難易度:容易で勝利。
策略家:コンピュータ3名を相手に難易度:通常で勝利。
戦略家:コンピュータ3名を相手に難易度:困難で勝利。
忍者:コンピュータ3名を相手に「魚3尾」タイルを獲得せずに勝利。
手放し:コンピュータ4人ゲームを鑑賞。
シャチの親友:手番1回で、コンピュータ2名を排除。
お大尽:25~34勝利点でコンピュータ3名に勝つ。
大君:35~44勝利点でコンピュータ3名に勝つ。
鯨なみ:45勝利点以上でコンピュータ3名に勝つ。
全部オレの!:コンピュータ1名に対して、50%以上の地形タイルを獲得。
独善行進曲:1人ゲームで50点以上獲得。
他に調整できるのは、コンピュータ・プレイヤーの強さと、各プレイヤーの手番の持ち時間(5秒~5分、もしくは無制限)である。スリリングなプレイのために、強さは最強、持ち時間は30秒をお勧めしておこう。
紙版との違い
このゲームは、アークライトより『それはオレの魚だ!』というタイトルで実物版が発売されている。価格は1,760円(消費税10%込)。
https://arclightgames.jp/product/%E3%81%9D%E3%82%8C%E3%81%AF%E3%82%AA%E3%83%AC%E3%81%AE%E9%AD%9A
簡単な動画解説もある。
アプリ版との違いはいくつかある。
最初にお勧めするマップの形状は、確かにアプリ版と同じく8×8で、スムーズにヘクスを配置するための便利なシートのPDFも公開されている。
https://arclightgames.jp/wp-content/uploads/2021/08/HTMFtilesheet.pdf
しかし、慣れてきたらそれにこだわる必要はない。プレイヤー同士でランダムにヘクスをつなげ合って、好きなような形状にすることができる。
そしてやはりコマの質感である。各プレイヤー用の4匹のコマは、どれもポーズが違ってユーモラスである。こいつらを使ってプレイすると思うだけで、つい笑みがこぼれる。
作者はリトアニアの物理学者アルヴィダス・ジャケリウナス。
2003年、ドイツのバンブース社から発売された初版では、リトアニア語でペンギンを意味する『Pingvinas』というタイトルだった。
2005年、ファランクス社から出し直された際には、バンブースの社長にしてゲームデザイナー、ギュンター・コルネットによるルール調整が入り、以降は作者としてふたりの名前がクレジットされている。
2006年日本ボードゲーム大賞・海外ゲーム・入門者部門の受賞作である! 他にも海外のさまざまな賞にノミネートされている。
このゲームで勝つためのコツは2つある。
1つは盤面の見極めである。プレイ人数が多くなればより難しく展開もカオスになるが、それでも誰がどこに動きそうか予想をつけ、自分のペンギンはなるべく広く動けるよう、他人のペンギンは動けなくなるように移動経路を考えよう。2人ゲームでは、これしかない。
しかし3~4人ゲームでは、その上でのヘイト・コントロールが重要になる。他人のペンギンを潰したり、目立って獲得する魚が多かったりするプレイヤーは、憎まれやすい(ヘイトを貯めやすい)。つまり「誰にも憎まれないよう、目立たぬよう行動し、でもいつの間にか最後にはちゃっかり勝っている」というプレイが理想的なのである。
派手ではないかもしれないが、ジリジリとした緊迫感が病みつきになるこの作品、地球温暖化を微妙に皮肉っている味もある。アプリで遊んだ後は、是非とも実物で試していただきたい。
ボードゲームイベント紹介
それでは現在予定されているボードゲームのイベントをいくつか紹介しよう。
ただし前回同様、コロナの影響によっていきなり中止になる可能性があるので、訪問を考えるかたは、直前までにきちんと情報を確認いただきたい。
2022年4月23日(土)~24日(日) ゲームマーケット2022春
https://gamemarket.jp/access
2022/5/7(土)名古屋ボードゲーム楽市@1st
https://twitter.com/nagoya_bodoge
2022/12/24(土)ホッカイドウシュピールフェスト
https://www.h-spielfest.com/
さて、今回まではアプリと紙版が同時並行に存在するゲームを紹介してきたが、いよいよ次回はアプリと実ゲームが融合した『ディテクティヴ:シーズン1』の魅力に迫ってみたい。
乞御期待!
https://arclightgames.jp/product/%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%86%E3%82%AF%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B4%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%83%B31/