ゲーセンミカド池袋新店オープン! その裏側と、2店舗体制となるミカドの戦略とは!?

ゲーセンミカド池袋新店オープン! その裏側と、2店舗体制となるミカドの戦略とは!?  IGCC

首都圏でレトロゲームのラインナップが豊富なゲームセンター(以下、ゲーセン)と言えば、近年テレビなどのメディア露出も多い「高田馬場ゲームセンター ミカド」(以下、高田馬場店)をまず挙げるプレイヤーは多い。もともとミカドは新宿歌舞伎町で2006年から営業していたが、2009年に立ち退きを余儀なくされ、高田馬場へ移転。以来、2011年の震災時の収益減などの危機を乗り越え、現在も高田馬場で営業中だ。

そのミカドが、新店として2018年10月1日に「池袋ゲーセン ミカドinランブルプラザ」(以下、池袋店)をプレオープン、同21日にグランドオープンを迎えた。この池袋店については、まだご存じない方もいるかもしれない。

今回は両店の店長であるイケダミノロック氏(以下、イケダ氏 ※1イケダミノロック : 本名・イケダ稔。ゲーム映像作品の企画・制作などを手掛ける会社「INH」の代表取締役、ゲーセンミカド店長、バンド「HEAVY METAL RAIDEN」ギタリスト、ゲーム実況者、イベントMCなど、さまざまな顔を持つ。同氏の生い立ちについて知りたい方は以下の動画がおすすめ。
「イケダミノロックのそんな感じでおネガいします(仮) 第24回(終)
)に取材し、池袋店オープンの経緯と今後の展望を伺った。

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▲イケダ氏と当研究所の大堀康祐所長。ゲームセンターを「店舗営業」という形で守るイケダ氏と「ゲーム文化保存」という形で守る大堀所長は、ともにお互いをリスペクトし合っている(画像は2017年3月開催のミカド主催イベント「春のシューティング祭2017」参加時のもの)

ミカド新店舗発表~池袋店プレオープンまで

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▲2018年6月30日の「HEAVY METAL RAIDEN」ライブの様子

プレオープンからさかのぼること3カ月前の2018年6月30日、秋葉原クラブ・グッドマンで行われたバンド「HEAVY METAL RAIDEN※2HEAVY METAL RAIDEN : シューティングゲーム『雷電』シリーズの爆音公式ゲームミュージックバンド。同シリーズのメインコンポーザー・佐藤豪氏がベーシストを、イケダ氏はギタリストを務める。公式サイト」のライブ中に、「ミカド新店舗オープン予定」が発表された。観客の多くを占めるミカド勢※3~勢(ぜい) : 特定のゲームタイトルや、ゲームセンターを中心に形成されるコミュニティの呼称(例:ミカド勢=ミカド常連プレイヤー、ギルティ勢=「ギルティギア」シリーズプレイヤーなど)。は突然のニュースに驚き、新店舗への期待や場所を予想する声も多く聞かれた。

そして、このミカド新店舗発表から2カ月半が過ぎた9月19日、池袋の老舗ゲームセンター「池袋ランブルプラザ」がひっそりと休業した。昨今、ゲームセンター店舗数は減る一方ということもあって、「池袋ランブルプラザ」常連客は休業を実質の閉店と受け取り、惜しむ声は多かったものの、プレイヤー界隈で大きなニュースになることはなかった。

しかしその10日後の9月29日、長らく続報がなかったミカド新店舗について、SNS上で「池袋ゲーセンミカド inランブルプラザ 10月1日プレオープンします!」との告知があり、ミカド勢やランブルプラザ常連は驚きに包まれた。まさかランブルプラザがミカドになるとは!

驚きの発表から2日後の10月1日、ランブルプラザは休業前のラインナップそのままに、「池袋ゲーセン ミカドinランブルプラザ」として新店舗としてプレオープンしたのだ。

ランブルプラザ引継ぎの裏側とは…?

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▲10月2日、プレオープン翌日の池袋店入口

2018年5月、新店オープン発表の1カ月前に、イケダ氏はある決断をした。

実は、高田馬場店のあるオアシスプラザビルと池袋店のあるランブルプラザビルは、もともとオーナーが同じだ。イケダ氏は過去に、オーナーから2店舗運営を持ちかけられたことがあったものの、所有する筐体数の不足もあり、高田馬場店に集中して店舗を運営していた。

一方、ランブルプラザはここ数年、とあるきっかけでオーナーが自ら運営していたが、それ以前は別のオペレーターが運営していた。しかし、近年収益が厳しくなり、別の業態への転換も検討していたオーナーは、過去にイケダ氏が辞退した2店舗運営をもう一度持ちかける。大きなリスクを伴うかもしれない新店舗の運営について、イケダ氏は家族やスタッフに相談した。

ちょうどその頃、ミカドと交流があったゲームセンター「マットマウス鹿島田・新川崎店」が15年の営業に幕を下ろす。これにはイケダ氏も大きく影響を受けたという。

個人運営のゲームセンターがまだまだ元気なところを証明し、業界を盛り上げたい

イケダ氏は、マットマウスの閉店に背中を押されたかのように、オーナーからの申し出を受け入れる決断をした。

通常、同じ場所でもゲームセンターのオーナーが変わって再度オープンする場合、風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)が定める営業許可を新たに取得するには1カ月以上かかり、すぐには開店できない。ただし今回は、オーナーは変わらず屋号を変更する形で運営形態の変更を行うことができたため、約10日間という短期間でのリニューアルオープンが可能となった。

この約10日間後のプレオープン時、ゲームのラインナップはまったく変わっていなかった。休業期間中、スタッフは店内やバックヤードにあった大量のゴミをひたすら廃棄していたため、ゲームの入れ替えはできなかったのだ。ゴミは4トントラック数台分にも及ぶ量で、とても営業と並行して進められる作業ではなかったという。店内の整備は、今後の運営に必須な最低限を行い、プレオープンの10月1日を迎えた。

プレオープンを迎えた池袋店の手応えは?

平日月曜からのプレオープンにもかかわらず、池袋店には大勢のプレイヤーが訪れた。ラインナップが休業前と変わっていないこともあり、いきなりお客さんが増えることはないだろうと考えていたイケダ氏らの予想はいい意味で裏切られ、いきなりのフル回転を強いられることとなった。そのため、当初、増員スタッフは最低限に抑える予定だったが、手が足りなくなったことで、急きょミカド勢に池袋店スタッフとして参加してもらい、対応したそうだ。

しかも、その時点において高田馬場店の売り上げが落ちるわけでもなく、2店舗体制での運営スタートはまずまずの手応えだったようだ。

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▲10月20日に開催された 『星霜鋼機ストラニアEX』トークイベントの様子。左からイケダ氏、丸山博幸氏(グレフ代表)、ヨナオケイシ氏、エリック・チャン氏(ShowMeHoldings CEO、「exA-Arcadia」プロジェクトメンバー)

もちろん、プレオープン期間中の施策を目当てに訪れたプレイヤーも多い。プレオープン期間の数日、exA-Arcadia(エクサ・アルカディア )基板※4exA-Arcadia : ShowMeHoldingsが発表したアーケード向け新システム基板。近年のシステム基板では当たり前となっている1クレジットごとの分配収益(従量課金)をなくし、全額をゲームセンター側の収益とできることが大きな特徴。公式サイトを使用した新作シューティングゲーム3作『アカとブルー TYPE-R』(タノシマス)、『インフィノスEXA』(ピコリンネソフト)、『星霜鋼機ストラニアEX』(グレフ)のロケテストが行われたほか、10月3日には『テディボーイ・ブルース』(1985年/セガ)、『スペースハリアー(シットダウンタイプ)』(1985年/セガ)、『アフターバーナーⅡ(アップライトタイプ)』(1987年/セガ)、『ドルアーガの塔』(1984年/ナムコ)が稼働開始。その後『セガラリーチャンピオンシップ』(1994年/セガ)、『スリルドライブ3』(2005年/コナミ)など、近隣ではミカド以外で遊べないタイトルが続々稼働開始し、これらを目当てに訪れるプレイヤーも増えた

また、高田馬場店で日常的に開催されている格闘ゲームの大会もスタート。今後は配信もしていく予定だという。

イケダ氏にとっての池袋のゲーセンとは…?

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▲池袋店地下1階では、上海シリーズの中でも特にインカムが高い『上海Ⅱ』(1989年/サン電子)が3台稼働している

イケダ氏は、かつて池袋にあった「ゲームスポット・モアイ」に店員として勤務していたことがある。同店はサンシャイン60通りから1本横に入った場所にあったため、それだけで大通りのゲームセンターと客数がまったく違い、常に集客に苦労していたという。

サンシャイン60通りは都内でも珍しく、男女問わずすべての年齢層がさまざまな目的で行き来する場所で、ゲームセンターに限らず、いろいろな業種で日本一の売り上げを誇る店舗が多数並んでいる。

池袋勤務時代(1990年代)のイケダ氏は、プレイヤーとしてゲーセンの「セガ池袋GIGO(ギーゴ)」へ通い、全盛期の『バーチャファイター』シリーズ(セガ/1993~2015年)に給料の大半を注ぎ込むような生活を送っていた当時はまだビデオゲームの設置面積も多かったが、プライズ機※5プライズ機 : UFOキャッチャー(セガ)に代表される、景品(プライズ)を獲得することが目的のゲーム機。ゲームセンターは風俗営業法第23条第2項により「遊技の結果に応じて賞品を提供してはならない」と定められているが、同法運用にあたっては公安委員会より「小売価格がおおむね800円以下のものを提供する場合」はそれに当たらないというルールが示されている。の売り上げが大きく伸び、設置面積を拡充していた過渡期でもあった。プライズ機メインのゲームセンター勤務が長かったイケダ氏は、その運営ノウハウを自然と身に付けていった。

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▲池袋店1階プライズコーナー。これらプライズ機の景品も、これからミカドらしく変わっていく…?

池袋は現在も日本有数の歓楽街であり、大手ゲームセンターも多い。こうした激戦区で、池袋店の今後の勝算についてイケダ氏に伺うと、やはり「他店との差別化」が挙げられた。

池袋界隈では、池袋ミカドのように2Dシューティングゲームを遊べる店はほかにない。そして、パズルゲームを置いている店も少ない。大手ゲームセンターはといえば、プライズ機と最新ネットワーク対応筐体が中心で、ミカドとはまったく逆のラインナップだ。また、池袋店は繁華街の真っただ中にあり、ミカドを知らない一見客の来店も非常に多い。

そのため、高田馬場店ではあまり売り上げが見込めないプライズ機の運営にも力を入れていくとイケダ氏は言う。もちろん、周囲のゲームセンターもプライズ機には力を入れているため、今後はミカドらしい、他店と違った切り口のプライズ機企画も予定している。

高田馬場店と池袋店の棲み分けは…?

高田馬場店は、決してレトロゲーム「だけ」のゲームセンターではない。安定したインカムを上げているタイトルの一つが『ギルティギア』シリーズ(1998年~/アークシステムワークス)で、その大会を主催するじょにお※6じょにお氏 : ミカド高田馬場店店員かつギルティギアの大会運営者。じょにお氏のTwitterを中心とするコミュニティも高田馬場店にある。

では、池袋店のオープンにより池袋にも『ギルティギア』のコミュニティができるのかといえば、そうではない。プレイヤーはゲームタイトルだけに惹かれて来店するのではなく、対戦相手や大会、コミュニティなど、さまざまな導線によって来店する。イケダ氏によれば、「池袋ランブルプラザ」では以前からKOF(『ザ・キング・オブ・ファイターズ』)シリーズ(1994年~/SNK)の対戦が盛んだったとのことで、彼らKOFプレイヤーを呼びこむことで、新たなコミュニティができるのではないかと期待しているそうだ。

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▲池袋店2階は格闘ゲームの対戦台を中心に、シューティングも稼働している

また、高田馬場店では購入してこなかった、ここ数年の新作ゲーム筐体が池袋店にはある。これらを活用し、池袋店周辺の他店舗で行われていない種類の大会を池袋店で開催することも検討しているという。イケダ氏が「ミカド事件簿※7ミカド事件簿 : 新宿「ネイキッドロフト」で不定期開催されるイベント。番組としてその一部を動画配信している。」で披露したアイデアには、通常はプレイヤーが持っているゲームカードを筐体に常備し、皆で1つのキャラを育てていくという遊び方もあるが、これには限らないだろう。

さらには、高田馬場店で以前から開催している大会「ストリートファイターカーニバル※8ストリートファイターカーニバル : 『ストリートファイター』シリーズ(1987年~/カプコン)の複数タイトルを使った大会を日替わりで数週間にわたって開催し、入賞者に与えられるポイントを競うイベント。種目は主に対戦格闘だが、『燃えろ!!プロ野球 ホームラン競争』(1987年/ジャレコ)など、別ジャンルのゲームで対戦を行うこともある。」を、池袋店とまたいで2店開催することで、より盛り上げたいという狙いもあるそうだ。

これからの「ゲーセンミカド」はどうなっていく…?

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▲ゲーセンミカドのイメージキャラクター「ミカドちゃん」は、ミカドの常連でもあるというマンガ家・押切蓮介氏のデザインによるもの (※画像はゲーセンミカド公式Twitterより引用)

イケダ氏に今後の両店について聞いたところ、「まずは単純に2倍になった賃料を稼ぐために、運営・イベントに力を入れることはもちろん、インカム以外にもさまざまな収入源を増やしていきたい」と返ってきた。

収益に関しては、配信動画の一部有料化や、ニコニコチャンネルの有料会員向けブロマガを開始したほか、YouTubeの「Super Chat※9Super Chat : YouTubeの視聴者が配信者に向けてコメントを送る際に、有料でコメントを装飾することができる課金機能。いわゆる「投げ銭」システム。」も導入を検討中。そのほか、テレビ東京系列のドラマ『ノーコン・キッド 〜ぼくらのゲーム史〜』(2013年10~12月)や、アニメ『ハイスコアガール※10ハイスコアガール』 : 押切蓮介による同名マンガ作品のアニメ版。制作にはゲーセンミカドも協力した。20187月~9月に12エピソードがTOKYO MXほか放送され、続編3話のOVA化かつNetflix配信(2019年3月)も発表されている。』において、劇中ゲーム動画の制作にも協力しており、直接の収入となっている。また、現在テレビ東京系列局で放送中のゲームバラエティー番組『勇者ああああ~ゲーム知識ゼロでもなんとなく見られるゲーム番組~』(2017年4月~)でも、時折ミカドスタッフが番組に登場している。このようなメディア露出による知名度アップも、集客につながっていくだろう。

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▲10月21日の池袋店グランドオープン当日、入口には開店を祝う花が多数飾られた。大堀所長の名前も見える

そうした動きはミカド以外のゲームセンターすべてが真似できるものではないが、ミカドが見本となって、ほかのゲームセンターをも引っ張っていきたいという強い思いがイケダ氏にはある。

イケダ氏は最後にこう語った。
昨今、閉店するゲームセンターも多いけど、中古屋で1万円もしない基板を活用し、汗水たらして大会を開催していくことで、ゲームセンターは運営していけるってことを証明したい。ミカドのやり方をパッケージとしたゲームセンターを増やしていきたいですね」

変わり続けるゲーセン、それがミカド!

インベーダーハウスからの流れでゲームセンターという業態が生まれた頃、そして、対戦格闘ゲームの絶頂期など、ゲームセンターで人気ビデオゲームを稼働させておけば、それだけで集客ができ、インカムが上がった時代があった。しかしそれはほんの一時期で、ゲームセンター運営者は常に同業他社や周辺他業種と集客を競い合い、家庭用ゲーム機やスマートフォンとプレイヤーの時間を奪い合ってきた。

最新ゲームやレトロゲームを稼働させ、メンテナンスをしておくだけでは、なかなか収益は上がらない。こにクレジットを投入するプレイヤーが訪れることで収益となり、プレイヤー間のコミュニティが形成され、店に定着することでさらに収益が上がる。ここでいうコミュニティとは、対戦相手やスコアを競う相手のこともあれば、同人サークル、飲み友達、バンド仲間であってもいい。

ミカドは新宿時代からさまざまなイベントを開催し、それらをきっかけに多種多様なコミュニティを生み出してきた。イベントは毎年少しずつ変わり、コミュニティの形も変化し続けてきた。中には消えて行くコミュニティもあるが、確実にその数と人数は増えており、それらがミカドを支えている。

池袋店という新たな施設、新たなゲーム機の数々を得たことで、今後のミカドのイベント展開に選択肢が広がった。これからも変わり続けるであろうミカド両店と、その周辺に集まる人々に少しでも興味を引かれたならば、まずはミカドに足を運んでみてはいかがだろうか。

店舗情報

高田馬場ゲーセン ミカドinオアシスプラザ
住所:東京都新宿区高田馬場4-5-10 オアシスプラザビル1F・2F
電話番号:03-5386-0127
営業時間:10:00~24:00
休み:なし
駐車場:なし

池袋ゲーセン ミカドinランブルプラザ
住所:東京都豊島区東池袋1-42-19
電話番号:なし
営業時間:10:00~24:00
休み:なし
駐車場:なし
公式サイト
公式Twitter(総合アカウント)

脚注   [ + ]