ゲームセンター聖地巡礼「1980~1990年代 新宿」前編

  • 記事タイトル
    ゲームセンター聖地巡礼「1980~1990年代 新宿」前編
  • 公開日
    2018年04月10日
  • 記事番号
    318
  • ライター
    忍者増田

ナムコ直営店「プレイシティキャロット」のロケテストにゲーマーが詰めかけた

▲現在の新宿アルタ。かつて、この大型アルタビジョンにゲームを映して、ナムコのゲーム大会が開催されていた

―― では、新宿東口付近ですが、当時どんな店舗がありましたか?

大堀 当時は新宿アルタの裏にもけっこうゲーセンがありましたね。シグマ(*01)やセガのゲーセンとか…。

―― 現在も「新宿スポラン 本館」がありますね。

見城 当時アルタは、ナムコ主催の『ニューラリーX』(1981年/ナムコ)大会の会場になったりしていたよね。1次予選を各地のゲーセンでやって、2次予選をアルタの中でやっていましたね。そして、決勝は2階のテラスに出てやっていた記憶があります。

――あの大型アルタビジョンに映してやったんですか?

見城 そうです。迫力あってすごかったですよ。外にギャラリーも大勢集まっていましたね。

大堀 あったあった! でも、僕は予選落ちしたからあまり覚えていない(笑)。

▲決勝はテラスで行われ、外からプレイヤーの姿を見ることができたようだ。(写真は現在のもの)

見城 僕は1次予選を突破して2次予選で落ちました。アルタには来られたけど、テラスには行けなかった!(笑)。決勝に出た方って、今どうしているのかなあ。

大堀 ゲーム文化保存研究所のTwitterで募集しましょうか? 「当時テラスまで出られた方にお話を伺いたいんでご連絡ください」とか。

見城 ちょっとうろ覚えなんだけど、優勝賞品のほかにディナーご招待かなんかがあった気がしますね。

―― お2人ともその大会にちゃんと出場しているのがさすがですね。

大堀 僕が高校生になり、新宿のゲーセンに通うようになって衝撃だったのは、当時、神として崇めていたナムコさんの直営店「プレイシティキャロット」があったことですね(笑)。僕が育った多摩市や八王子市にはなかったので。

― 「プレイシティキャロット 新宿店」があったところは、現在「椿屋珈琲店」になっているんですね。

▲ブロックで作られた大きなパックマンと、大堀氏。かつて「プレイシティキャロット 新宿店」があった正面の通りは、映画『ピクセル』が公開された2015年に、本編に登場するゲームキャラクターたちにジャックされた

大堀 「プレイシティキャロット 新宿店」はゲームマニアの聖地でしたね。ちなみに、正面の通りは「新宿クリエイターズ・フェスタ2015(*02)の際、映画『ピクセル(*03)に登場するゲームキャラクターたちにジャックされました。ブロックで作られた大きなパックマンが飾られたりしていて、圧巻でしたよ。

見城 僕は当時、新宿東口に来たらまず「プレイシティキャロット 新宿店」に入って、その後、歌舞伎町一番街のほうに入っていくという感じでした。僕は「プレイシティキャロット 巣鴨店」でバイトをしていたんだけど、その前に新宿店で研修をしていました。

大学に入ったときに「絶対ナムコのゲームセンターでバイトしたい!」と思っていて、ナムコに電話したら、ちょうど巣鴨店がオープンする直前だったんで、まずは新宿店で研修をすることになりました。2日間だけで、すぐに巣鴨店に移りましたが。生まれて初めてバイトしたゲーセンが新宿店なんで、やはり思い出深い。1日中立ちっ放しで足が棒になったのをよく覚えています。

大堀 当時ナムコに入社した人って、直営店のゲームセンターで研修をするという流れがありましたよね。

見城 そうですね。まぁ、僕の場合はまだバイト時代で、入社する前の話ですが。

大堀 地方の子たちが修学旅行なんかで東京に来たときは、「プレイシティキャロット」の巣鴨店や新宿店、そして同じくナムコ直営店の「ゲームブティック高田馬場店」に行くというケースが多かったですね。

見城 ナムコ直営店は、いろんなナムコゲームのロケテストが頻繁に行われたんで、そのたびに楽しみに来る人が多かったですよね。ゲーマーにはとても魅力的だった。『ファイナルラップ』(1987年/ナムコ)のロケテストも確か新宿店でやっていたはず。

―― うらやましいです。当時、茨城の田舎で育った私はロケテストの存在すら知らなかったです(笑)。

▲「プレイシティキャロット 新宿店」跡地。現在は椿屋珈琲店。当時は、大堀氏や見城氏ほかゲーマーの憧れの場所だった

見城 『ファイナルラップ』が出た当初、通信ゲームが珍しかったんで、最初は内容を瞬時に把握できないプレイヤーも多かったんです。それで「プレイシティキャロット 新宿店」にあったプレイヤー交流ノートに厳しい評価が書かれていたんですけど、数日後にプレイヤーが通信プレイの楽しさを理解すると、一転して「ナムコはすごい! 天才だ!」みたいなことが書かれていました。数日でガラッと評価が変わっちゃった(笑)。それを読んで開発の方も喜んでいましたね。

大堀 当時のゲーセンといえば暗い店舗が多かったけど、ナムコの直営店は、照明も含めて明るい雰囲気を出していた印象があります。だから、居心地も良かったですね。店員さんもちゃんと制服を着ていて、とてもきれいなイメージがありました。

見城 そうでしたね。僕もバイト時代は制服を着ていました。ちゃんとワイシャツとネクタイ着用で…。

大堀 メンテナンスもしっかりしていたしね。レバーが斜めに入らない、なんていうことはなかったし、ボタンが反応しないと(スタッフに)言えば慌てて直してくれました。新宿店は1階と地下1階にゲームが置かれていました。地下1階にトイレがあって裏が「桂花ラーメン」だったんで、トイレに行く際に豚骨のにおいがしていたのもいい思い出(笑)。あと、地下2階の奥に入っていくと、小さい秘密の倉庫みたいなのがありましたね。

見城 なんでそんなところに入ったの?(笑)

大堀 当時、店員さんに見せてもらったんだもん(笑)。

見城 覚えてないなあ(笑)。研修は2日間だけだったしなあ。ただ、のちにナムコに正式入社してからは、僕も再度ロケテストのお手伝いで何度か新宿店に来店していました。

大堀 新宿店がなくなったときは、ほんとショックでしたね。新宿のナムコ直営店は「プレイシティキャロット 新宿店」のほかに、歌舞伎町の「プレイシティキャロット 一番街店」がありました。一番街店が先になくなって、その後も新宿店はけっこう耐えていましたが、結局なくなりました。

脚注

脚注
01 シグマ : かつて、ゲームセンターなどのアミューズメント施設を運営していた会社。メダルでゲームを楽しむという運営システムで独自のブランドを確立した。現在の社名はKeyHolder(キーホルダー)。
02 新宿クリエイターズ・フェスタ : 新宿駅周辺の公共空間や施設などを活用して開催されている一大アートイベント。多くのアーティストに発表と発信の場を提供。2011年から毎年開催されている。
03 ピクセル : ゲームキャラクターに扮して地球侵略を開始した宇宙人と人類の攻防を描いたアドベンチャー映画。2015年公開。『パックマン』や『ドンキーコング』など、日本生まれのゲームキャラクターも多数登場。

こんな記事がよく読まれています

2018年04月10日

ゲームセンター聖地巡礼「1980~1990年代 新宿」前編

今回から、新企画「ゲームセンター聖地巡礼」の連載がスタートします。当研究所・所長の大堀康祐氏と、ゲームディレクターであり当研究所のライターとしても協力いただいている見城こうじ氏のお2人が、1980~1[…]