セガ3Dシューティングの原点『ズーム909』

  • 記事タイトル
    セガ3Dシューティングの原点『ズーム909』
  • 公開日
    2019年07月16日
  • 記事番号
    1134
  • ライター
    前田尋之

セガは3Dが大好きである。といっても、いわゆる「立体視」のことではなく、主観視点や後方視点を中心とした「視点」「カメラアングル」的な意味での3Dである。

この技術はポリゴン(*01)の発展に伴って一気に花開いたジャンルであるが、まだそのような映像技術が一般的でない2Dの時代から、セガは挑戦し続けてきた。『スペースハリアー』(1985年)や『アフターバーナー』(1987年)、『ギャラクシーフォース』(1988年)はもちろん、『アウトラン』(1986年)以降のレースゲーム全般、『レールチェイス』(1991年)のようなアトラクション色の強い作品まで、2Dアーキテクチャを用いてこれほどまでに3Dにこだわり続けたメーカーは珍しい

そんなセガの3Dゲームの原点ともいえるタイトルが『ズーム909』である。1982年に発売された本作は、パースペクティブ(遠近感)効果を駆使し、無限に広がる宇宙を想像させてくれた。今回は、『ズーム909』の魅力を再発掘していきたい。

パースペクティブ効果を初めて採用したビデオゲーム

▲この遠近効果が当時では新鮮であった

『ズーム909』は後方視点の残機制3Dシューティングである。自機の宇宙船を操作して、遠方から飛んでくるUFOを撃破するというもので、まさに『スペースハリアー』の原点といえる内容。筐体はレースゲームなどでよく見られる大型のコックピット・タイプ(*02)と、いわゆるアップライト型筐体のミディ・タイプ(*03)の2種類が用意された。

操作系は、トリガーボタン付きの操縦桿型レバー1本と、自機のスピードが可変できるスロットルレバーから構成されており、このあたりは後の『ギャラクシーフォース』に影響を与えたフシがある。セガ自身「パースペクティブ効果を初めて採用した驚異のスペース・ビデオゲーム」とアピールしており、本作にかける自信の程が窺える力強いキャッチフレーズといえるだろう。

▲当時のパンフレットより。自信に溢れた力強いキャッチコピーが印象的

事実、本作が発売された1982年はまだ『ゼビウス』(1983年/ナムコ)も発売されていない時代。『バトルゾーン』(1980年/アタリ)といった先人はあったものの、3Dシューティングというジャンル自体もまだ確立されておらず、ラスタスキャン方式(*04)で3D表現を実現したゲーム自体、おそらく本作が初めてであった。特に遠方から迫ってくる柱や壁の迫力は圧巻モノで、個人的な体験で恐縮だが、筆者はこれを体感したいためだけに、何度も本作を遊び続けたものである。

▲爆発シーンも当時としては迫力満点だった

グラデーション表現が遠近感を生み出す

▲背景のグラデーションが美しかった

『ズーム909』を構成する要素としてもう1つの重要なトピックとして挙げられるのは、背景に施されたグラデーションの美しさであった。1ラインごとにパレット制御することで実現されたグラデーション表示は、色の多さによる美しさはもちろんのことながら、遠方に向かうにつれて暗くグラデーションをかけることによって、遠近感の表現にも一役買っていたのである。トンネル内のセクションは、後の『ギャラクシーフォース』の惑星内シーンを彷彿させるものがあり、セガの3D表現の美意識はこのようなところに受け継がれていたのかもしれない。

なお、くしくも同じ1982年に、ナムコからもラスタスキャン方式を採用した3D視点のレースゲーム『ポールポジション』が発売されているが、グラデーションを用いた立体感・遠近感といった点においては『ズーム909』に軍配を上げたい(もちろん、ゲーム性としては『ポールポジション』も名作であることは間違いないが)。

スピードコントロールで高得点を目指せ!

▲敵司令艦の4基のエンジンを狙え

ゲーム内容は前述の通り、障害物を回避しながらUFOを撃破するというものだが、1ラウンドが6つのセクションから構成されており、セクションクリアをするためには「残り時間の間ミスをせずに生き残る」もしくは「残り時間内に一定数のUFOを破壊する」の2通りの方法がある。6つ目のセクションでは敵司令艦が待ち受けており、これの4隅にあるエンジンを破壊することで撃破。1ラウンドクリアとなる。

残り時間と敵UFOの機数は画面上部に表示されており、残り時間がそのままボーナス得点として加算される。そのため、高得点を狙うためにはいかに早く全滅を狙うかがカギとなる

ここで、自機のスピードを可変できるスロットルレバーの存在が生きてくるわけだが、当然スピードを上げると敵UFOに激突してしまうリスクが跳ね上がるため、適切なスピードコントロールがスコア上達につながるというわけである。また、編隊で登場するUFOは全滅させると通常得点のほかに別途ボーナス得点が加算されるため、こちらも確実に破壊しておきたいところだ。

余談だが、本作はゲーム画面内にスコア表示がなく(SG-1000版を除く)、画面外左側にデジタル7セグメントを使用して表示していた。スコアランキング上位5位の得点も同じく左側に常時表示されており、上位スコアを塗り替えるモチベーションアップに一役買っている。この手法は同社の『モナコGP』(1979年)にも採用されていた。

家庭用移植に恵まれなかった不遇の名作

▲北米で発売された『Buck Rogers: Planet of Zoom』のフライヤー

本作はアメリカでも1982年に『Buck Rogers: Planet of Zoom』というタイトルで発売されている。アメリカで人気を博したSF連続活劇『バック・ロジャース』の版権を取得したため、それを受けてのタイトル変更だが、ゲーム内容は日本のものと同一であった。

▲『バック・ロジャース』のキャラクターを前面に出しているかのように見えるが、内容は日本のものと同じ

一方、これだけ革新的なゲームだった『ズーム909』であるが、日本における家庭用への移植例はSG-1000用とMSX用くらいしか存在しない。いずれもオリジナルのアーケードゲームとは大幅にスペック差のあった機種だっただけに忠実な移植は望むべくもなく、1ラウンドのセクション数は4セクションに減少。上から見下ろした視点による全方位スクロール面が追加されるというアレンジ移植となった。この全方位スクロール面は、自機が中央に固定された『アステロイド』(1979年/アタリ)といった趣だが、極めて難易度が高いことも手伝って、アーケード版を家庭で遊びたかったファンにとっては今ひとつな評価にとどまった。

▲セガの3Dシューティングの原点ともいえる作品

セガの3Dシューティングの原点であり、マイルストーンとも言うべき『ズーム909』がオリジナルのまま遊ぶ機会がほとんどないというのは、実にもったいない話である。本作の魅力に触れてもらうという観点からも、今からでもアーケード版の完全移植が望まれるタイトルといえる。

ⒸSEGA

前田尋之

脚注   [ + ]

01. ポリゴン : 従来の縦横の2次元座標による平面的な「絵」ではなく、多角形の組み合わせによって奥行きを加えた3次元座標によって表現された立体的な映像技術。
02. コックピット・タイプ : 戦闘機の操縦席を模した、モニターから座席まで一体化した大型筐体。
03. ミディ・タイプ : 座席はなく、立って遊ぶタイプの省スペース型筐体。
04. ラスタスキャン方式 : ブラウン管時代のテレビで一般的に使用された、画面の左上から右下に向かって短冊状に走査線を走らせて画面を生成する表示方式。

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