グロいが爽快・傑作アクションゲーム『西遊降魔録 流棒妖技ノ章』

グロいが爽快・傑作アクションゲーム『西遊降魔録 流棒妖技ノ章』  IGCC
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▲『西遊降魔録』の当時のフライヤー

西遊降魔録 流棒妖技ノ章』は、1988年にテクノスジャパンが世に送り出した、画面固定・面クリア型のアクションゲームです。名前の通り「西遊記」がモチーフとなっており、プレイアブルキャラクターは孫悟空・猪八戒・沙悟浄の3人。2人同時プレイが可能でした。

筆者は当時、小学生でした。この前に出たテクノスジャパンの代表作『熱血硬派くにおくん』も『ダブルドラゴン』もプレイした記憶はありますが、エンディングまでは辿り着くほどにはやり込みませんでした。面白くなかった、というわけではありません。当時小学校低学年ですから、そんなに小遣い銭がなかった、というのが最大の理由です。

しかし、ちょうど学年が上がり、もらえる小遣いも増えた頃、『西遊降魔録 流棒妖技ノ章』が登場しました。練り込まれたアクション性。当時の基準では極めてリアルだったグラフィック。そして、当時のコンシューマーゲームにはない、アングラ的な世界観。筆者は、幼馴染の友人とともに、文字通り連コインに連コインを重ねて『西遊降魔録 流棒妖技ノ章』をやり込みました。

80年代後半の有終を飾る作品

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▲フライヤーの裏表紙にはキャラクターの説明がある

1988年というのがどういう年かというと、コンシューマーではあの『ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ…』が登場した年に当たります。1978年の『スペースインベーダー』ブームから10年の時が流れ、80年代のアーケードゲーム興隆は山場を越えてはいました。

しかし、まだ1991年の『ストリートファイターⅡ』登場による対戦型格闘ブームは始まっておらず、ゲームメーカーの主戦場はコンシューマーゲームに移りつつあるという流れの時代でした。

テクノスジャパンは傑作『熱血硬派くにおくん』と『ダブルドラゴン』を擁し、当時アーケードゲーム界の覇者として君臨していました。『西遊降魔録 流棒妖技ノ章』は『ダブルドラゴン』の翌年に登場し、筆者の家の近所の駄菓子屋の脇の、3台のアップライト筐体が置かれているゲームコーナーに現れました。小さなスペースではありましたが、そこは当時、地元の小中学生で大いに賑わうスポットだったのです。

悟空になって観音菩薩と戦うゲーム!?

アーケードのゲームで、エンディングを見るに飽き足らず、その後も繰り返し遊んだ記憶があるのは、対戦型格闘ゲーム以外で、筆者にとっては後にも先にもこの『西遊降魔録 流棒妖技ノ章』だけです。何がそんなに魅力だったのでしょうか。

ゲームの基本的なあらましを説明する前に、一番インパクトのあった部分から説明していきましょう。このゲームで最も印象深いものは、全5面のステージのうち、3面と5面に登場する、三面十腕の巨大なボスキャラクターです。

今調べると3面に登場するものが「ラーヴァナ」、5面に登場するその色違いのラスボスが「ネオ・ラーヴァナ」という名があるようですが、ゲーム中に名前は出ません。当時、プレイヤーの間では、ラスボスは「観音」、3面の方は「ニセ観音」と呼ばれていました。

ラーヴァナというのはインドの神話に登場する魔神で、観音とはまったく別ですが、当時の我々にそんなことはもちろん分かりません。『西遊降魔録 流棒妖技ノ章』は、「西遊記がモチーフなのに、敵として観音菩薩が登場するカオスなゲーム」として認識されていたわけです。

脳髄だけになっても戦い続けるラスボス

 全部で5面のゲームですから、ボスキャラクターは他にも3体いたはずですが、正直それらについてはあまり覚えていません。ですので、ラーヴァナの話を続けます。

ラーヴァナとネオ・ラーヴァナは、基本的には色違いなだけで同じ姿ですが、ギミックは大きく違います。3面のラーヴァナは、登場時の姿で固定であり、倒すと、全身が崩れて消えます。

一方、ラスボスであるネオ・ラーヴァナはというと、攻撃するごとに腕がもげたり、胴体がもげて生首のまま宙に浮いて攻撃してきたり、果ては脳髄だけになって攻撃してきたりします。脳髄状態では、こちらの攻撃を受けると酸のようなものを吐いてきて、これが非常にかわしにくくて厄介です。

脳髄状態でさらに攻撃すると、脳に目玉と牙が生えたグロテスクな姿に変貌し、これが最終形態です。それを倒せばエンディングとなります。

80年代の子供向けのアクションゲームとしてはかなり不気味なギミックであり、そこがこのゲームに筆者がのめり込んだ理由の一つです。

連コイン必須の鬼難易度

では、基本的なゲームの構造を説明します。まず、攻撃には通常攻撃があります。術は回数に制限があり、アイテムを拾うと使用回数が回復します。3人のプレイアブルキャラクターのうち、孫悟空はバランス型、猪八戒は通常攻撃型、沙悟浄は術の威力に比重が置かれたキャラクターとなっていました。

このゲームは全体的に難しいです。敵の攻撃は厳しく、1コインあたりの残機は3体であり、しかもタイムアップによる死亡もあって、事実上連コイン必須です。

幼馴染と2人でプレイしていて、ラスボスの脳髄形態くらいまできて、幼馴染の方は所持金が尽きたということがありました。筆者はその後も一人でコイン投入を続け、激戦の末に、どうにか一人でエンディングまで漕ぎ着けたのでした。

続編もなく、コンシューマー移植もされなかった「名作」

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移植されることのなかった名作

最後に、なぜこれが忘れられた名作になってしまったのかについて語ります。

表面的な理由は簡単です。ファミコン版に移植もされず、そして続編も出なかったからです。ファミコン版を出す計画は存在したと言われますが、何らかの理由によって、実際には出ませんでした。また、タイトルはいかにも続編の登場を予感させますが、結局ひとつも出ていません。

続編も出ないほど売り上げが低調だった、というわけではないと思います。少なくとも、筆者の通った駄菓子屋ゲームコーナーでは大人気でした。

ここからは推測になりますが、テクノスジャパンの経営戦略が、このゲームを忘れられた名作にしてしまったのではないでしょうか。テクノスジャパンは、その後大ヒットした『くにおくん』シリーズに注力していきます。しかも、登場当初の『熱血硬派くにおくん』のイメージからは遠ざかった、等身の低くなったディフォルメキャラによる、スポーツなどをテーマとしたゲームが中心になっていくのです。

結果として、『西遊降魔録 流棒妖技ノ章』のコンセプトを受け継ぐゲームは、今に残っていません。ですが、あの時感じたあの熱狂、ギャラリーのあの熱気を思い出すたびに、あれは確かに名作と呼ぶに値するゲームであったと思います。ゆえに、筆者は『西遊降魔録 流棒妖技ノ章』を「忘れられた不遇の名作」と呼ぶ次第です。

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