独自性の強いシステムで今なおマニアに支持される秀作『スーパーリアルダーウィン(SRD)』

  • 記事タイトル
    独自性の強いシステムで今なおマニアに支持される秀作『スーパーリアルダーウィン(SRD)』
  • 公開日
    2019年03月29日
  • 記事番号
    949
  • ライター
    こうべみせ

データイーストが1986年にリリースした縦スクロールシューティングゲームに『ダーウィン4078』というタイトルがある。

この頃のシューティングゲームは、『グラディウス』(1985年/コナミ)の大ヒットにより、自機の多彩なパワーアップを各社が競い合うようになってきていた。とはいえ、まだ多くのタイトルでは3~4種類程度のパワーアップしかなく、攻撃方法が19種類に変化する『ダーウィン4078』は大きなインパクトをプレイヤーに与え、好評を博すこととなった。

この『ダーウィン4078』の続編として、翌1987年に『スーパーリアルダーウィン』がリリースされる。生物の進化をモチーフとした自機のパワーアップシステムはさらに美しいグラフィックで描かれ、一層魅力を増した内容になって帰ってきたのだ。
今回はそんな『スーパーリアルダーウィン』について紹介しよう。

こだわりを感じるパワーアップ「進化」の演出

▲本作の公式デモ動画

『スーパーリアルダーウィン』は前作と同じように、空中と地上を撃ち分けるタイプの縦スクロールシューティングだ。「Evolution(前作は「Evol」※以下、EVOL)」と名付けられたアイテムを取得するごとに自機が何段階も強化されていくゲーム性が、アピールポイントではないだろうか。

本作ではパワーアップが「進化」と表現されている。EVOLを取得すると自機がグニャグニャと変形し姿を変えていく様は、まさに進化を思わせる演出。単純にパッと姿が切り替わっても良さそうなものだが、豊富なアニメパターンを用意して変形する姿を見せることで、プレイヤーに進化を感じさせることに成功しているといえるだろう。そこには制作スタッフのこだわりも感じることができる。

他に類を見ない多彩な攻撃バリエーション

本作は進化の段階ごとに個別の攻撃方法を持っている。進化は通常で12段階あるので、それだけでも12種類に攻撃が変化することになる。これに特定条件下で通常進化から分岐する「突然変異」と呼ばれる進化が6種類。突然変異後もさらに進化を続ける形態もあるので、攻撃バリエーションは実に20を余裕で超えることとなる

パワーアップによる攻撃の変化でこれだけのバリエーションを持つゲームは、筆者が知る限りでは後にも先にも本作だけだと思っている。

基本的には進化するごとに火力が上がっていくと思っていいのだが、攻撃スタイルが変化するという仕様上、使い勝手の悪い攻撃はもちろん存在する。その進化段階を回避するようにプレイすることも要求された。

進化条件が複雑なものほど絶大な威力を発揮した突然変異

突然変異は、地上にいる特定の生物に重なることで簡単に変異するものから、複雑な過程を経て変異するものまである。筆者のイメージ的には、簡単にできる変異ほどクセが強いトラップタイプの変異、条件が複雑なものほど強力な攻撃が手に入るという認識。

なかでも最強の突然変異GOAT DEAM(ゴートディーム)は、通常進化の最高段階から2段階の自然退化をさせて敵弾にあたると発生するというもの。説明だけ見ると簡単なようだが、最高段階にすることがまず難しく、そこから敵弾に当たらずEVOLも取らずに2段階もの自然退化をさせるのがいかに困難かは、プレイした者なら分かるだろう。

しかし、その見返りとして得られるGOAT DEAMの力はあまりにも強大だ。画面を埋めつくす(少々大げさかもしれないが)攻撃と敵弾に対しては無敵の防御力を誇り、攻撃ボタン長押しで発生する火の輪は、ボスキャラをもほぼ一撃で倒す。

突然変異については、偶然に発生条件を満たして変化するサプライズが、制作側による本来の狙いだったと思っている。しかし変異条件を覚え、それを実現できる腕がなければ先のステージを見ることが叶わないことも確かだ。その点で、非常に知識が要求されるゲームであったといえるだろう。

超絶難しいが無理ゲーではないギリギリの難易度

▲基本的には超高難易度なのだが、あっさり進めることもあるのでついプレイしまう

難易度はリリース当時より超高難易度として評価されているが、そこについては何とも判断が難しいと思っている。もちろん、単純に言ってしまえばコイン投入してスタートした時点から、敵の厳しい攻撃を受けるため、当時のアーケードゲームではよく見られた、初心者お断りゲームの一つであったといえるだろう。

しかし、さまざまな部分で救済措置は取られている。ゲーム開始直後は進化2段階目からのスタートとなるので、敵弾に1回当たっただけでは退化するだけでミスにならない。退化中のアニメーション中は無敵状態になる。倒すとEVOLに変化する敵が多く登場するので進化する機会が多く与えられている。つまり、“1発死に”となる敵本体との接触さえなければ、進化と退化を上手につなげることによって、ある程度は先に進むことができるギリギリのバランスの上に成り立っているのだ。

突然変異条件を覚えたり、攻略をパターン化したりすることによっても先へと進みやすくなる「覚えゲー」要素も強いので、決して無理ゲーではないと思う。初プレイ時にボコボコにされてもめげなかった者だけが一歩一歩先へ進める典型的なアーケードゲーム、と表現してもいいのではないだろうか。

パワーアップアイテムの取得が攻略のキモ

▲進化の段階による有利と不利、突然変異条件など、覚えることが多いシューティングだった

パワーアップは特定の敵を倒すことで出現するアイテムで可能になる。進化と退化を繰り返すゲームデザインであるためか、ゲーム全編を通じてアイテムが次々と出現する。

もちろん、アイテムがまったく出現しなくなるタイミングは存在するが、それを考慮しながらパターンを組み立てる醍醐味があった。

E(EVOL)自機の攻撃方法を変化させる。本作では「進化」と表現しており、1つ取得するごとに1段階パワーアップする。パワーアップとはいうものの、攻撃方法自体が変化していくので、火力は上がっても使い勝手の悪い攻撃が混在している点に注意しなければならない。また、EVOLを一定時間取得できないと、自動的に1段階退化してしまう。実は、特定の進化段階で自動退化をさせ、再びEVOLを取得することが最強パワーアップ(突然変異)の鍵にもなっている。
黒EVOL通常のEVOLと同じ効果ではあるが、自機の攻撃を当てるとその場で動きを止める。その性質を利用すれば、GOAT DEAM(突然変異経由による最強進化形態)時に発生する火の輪を上手に利用して持ち運ぶことが可能。進化時間切れになりそうなタイミングで取得することで最強状態を長引かせるテクニックが使える。また特定の進化段階で取得することで突然変異が発生するアイテムでもある。
Spアイテム自機の移動速度が上がる。スピードアップは1段階のみ。
Arアイテムアーマーを装着。1つのみ有効で、自機の前方にバリアが装着されて敵の攻撃から守ってくれる。
DNA地上にいるトカゲを攻撃することで出現する。ミスをした後に、取得した数だけの進化段階で再スタートできる。
まゆボスを倒すことで入手できる自機の分身。いわゆるオプションアイテム。

アレンジ移植版の「ダーウィン4081」は秀逸な完成度

本作を完全移植した移植版は、残念ながらリリースされなかった。しかし、本作をベースに前作『ダーウィン4078』の要素をミックスした『ダーウィン4081』(1990年/セガ)がメガドライブ用として存在する。

実はこの『ダーウィン4081』の完成度は非常に高く、名作との呼声が高いタイトルとなっている。取得しやすくなったアイテム、ゲーム中盤であるにもかかわらずトラップが極悪すぎるステージ5の廃止、当たり判定の改善など、ゲーム全体を通じて納得できる難易度に調整されていて、挑戦しがいのある内容になっているのがうれしい。

発売元はセガであったが、開発はデータイーストが行ったという話を聞いている。おそらくは不本意な形でリリースせざるを得なかった「スーパーリアルダーウィン」の完成形だったのではないか、と筆者は思っているのである。中古ショップで見かけたら、ぜひ購入をおすすめしたいタイトルだ。

深く知るごとに面白くなっていく通向けの秀作

突然変異の条件を知ることでようやく本格攻略の出発点に立てるなど、ビギナーお断りといった感が強いタイトルではあった。しかし、攻撃の多彩さや進化・退化時のなめらかな変形パターン、突然変異などのギミックで、プレイヤーのみならずギャラリーまで楽しませる魅力的なゲームだったと思う。

当時としては基板スペックの制限で諦めた仕様もおそらくあっただろうし、スケジュールの関係で調整しきれなかった部分もあるのではないだろうか。実際に今プレイしてみると、そう感じる部分が要所要所に見えてくる。

これは噂の範疇を出ないのだが、かつて、難易度調整を施されて格段にゲーム性が良くなった海賊版が存在したという。もちろん、そのようなものは本来許されるべきものではないのだが、好きなゲームをより良くしたいというファンの心理は理解できる。

そのような意味では、本作もぜひオープンIP化してファンによる二次創作を可能にしてくれると、まだまだ発展しそうな余地がたくさん残されたゲームではないかと思うのだ。ダーウィンシリーズは、ゲームそのものが進化できる素材でもあるのだ。

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こうべみせ

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