あらゆるゲーム機を総なめにしたデコ最大のヒット作『マジカルドロップ』

  • 記事タイトル
    あらゆるゲーム機を総なめにしたデコ最大のヒット作『マジカルドロップ』
  • 公開日
    2018年09月22日
  • 記事番号
    567
  • ライター
    前田尋之

テトリス』(1988年/セガ)の大ヒット以来、定番ジャンルとなった固定画面の落ち物パズルゲーム。

今回紹介する『マジカルドロップ』(1995年/データイースト)も、その流れを受けてリリースされた広義の意味での落ち物パズルゲームだが、手軽なルールと爽快な連鎖を武器に、ほかの類似ゲームとは一線を画す独自のポジションを築くことに成功したタイトルである。

あまたの落ち物パズルが発売される中、なぜ成功できたのか。本稿ではその魅力に迫ってみたい。

すべては『テトリス』から始まった落ち物パズルブーム

アーケード版『テトリス』によってもたらされた、世界的な落ち物パズルゲームの一大ブーム。ゲームセンターでは、外回りの営業サラリーマンが『テトリス』に興じている姿が日常風景となり、あまりのヒットぶりにセガも爆発的な需要に追いつかず、SYSTEM-E版を急遽開発して販売するといった対応をとっていた。

これだけのヒット作であれば、その供給不足の合間を縫って「2匹目のドジョウ」を狙うメーカーが出てくるのも自然な流れである。事実、主だった各メーカーがわれ先を争うように固定画面のパズルゲームをリリースしていた。

そんな波が一段落ついた後も、同ジャンルはアーケードロケーションにおける定番ジャンルとして定着。

ひたすら持久力を競った『テトリス』に対して、ステージクリアの概念を導入した『フラッシュポイント』(1989年/セガ)に『クラックス』(1990年/アタリゲームズ)、シューティング要素を導入した『クォース』(1989年/コナミ)、複数の消去方法が複合した『コズモギャング・ザ・パズル』(1992年/ナムコ)や『クレオパトラフォーチュン』(1996年/タイトー)など、枚挙にいとまがない。

その中でも、とりわけエポックメイキングだったのは『コラムス』(1990年/セガ)による「連鎖」、『ぷよぷよ』(1992年/セガ)による「対戦」という要素で、以後に発売された落ち物パズルゲームはほとんどこの2つの要素を含んでいると言っても過言ではない。

いわば、『テトリス』を開祖として「連鎖」と「対戦」の2つが合わさることによって、落ち物パズルゲームの基礎が完成したと言ってもいいだろう。

簡単に連鎖が楽しめる、敷居の低いゲームシステム

▲『マジカルドロップ2』(ネオジオ版)のパンフレット

『マジカルドロップ』は前出の「連鎖」と「対戦」を備えた、わりと後発でリリースされた固定画面の落ち物パズルゲームである。

ただし、『テトリス』などのように上から降ってくるものが床に積み上がるのではなく、最初からドロップが積まれた状態の天井自体がゆっくり降りてくるというもの。

このパターンはほかに『パズルボブル』(1994年/タイトー)、『マネーアイドルエクスチェンジャー』(1997年/フェイス)、『ランドメーカー』(1998年/タイトー)などが挙げられる。

つまり、厳密には「落ち物パズル」と表現するのは適当ではないが、冒頭であえて「広義の意味での」と触れた理由はここにあり、了解されたい。

基本的なルールは、画面下部にいるピエロを左右に操作して、降りてくる天井のドロップを「すう」ボタンで吸い寄せ、「はく」ボタンで吐き出し、同じ色のドロップを縦に3つ以上繋げると消すことができる。

なお、この際に消すブロックと隣接している同色のドロップも同時に消えるため、これを利用して連鎖を起こすことが可能。降りてくる天井が最下段まで到達してしまえばゲームオーバーとなる。

一番の特徴は、消えている最中のドロップに、さらに同色のドロップを「はく」ボタンでぶつけてやると、一緒に消える上に連鎖扱いになるという点。これを後付け連鎖と呼び、高得点・高連鎖を得るためには必須のテクニックといえる。

特に2人で対戦プレイをする場合、勝つためには常に相手のエリアにドロップを送り込む作業の応酬となるため、より重要性が高いといえるだろう。

▲後付け連鎖でガンガン連鎖が入る! この快感は本作独自のもの(画面写真はプロジェクトEGG公式サイトの『マジカルドロップ2』より引用)

パズルゲームでありながら思考型ではなくアクション寄り

『マジカルドロップ』はパズルゲームでありながら、『ぷよぷよ』などのように「連鎖を発生させるために事前に仕掛けを仕込んでいく」という思考型ゲームではなく、とにかく「後付け連鎖による力技で押し切る」という、アクションゲーム寄りに大きく比重が置かれたゲームシステムである。

逆にいえば、落ち物パズルが苦手で連鎖ができないというユーザーでも、手軽に連鎖を発生させやすく爽快感を得やすいゲームなわけで、その手軽さが評価されたのか、多数の家庭用ゲーム機に移植されることとなった。

ただし、同種のタイプのゲームによくある「特定の色のドロップがすべて消える」など、特殊効果を発生させるドロップが多数存在するため、偶発的な要素で戦局が左右されやすく、ガチの競技としては残念ながら向かない。

しかし、常に吸って吐いてを繰り返しながら思わず熱くなるプレイスタイルは、どことなくスポーツ的である。そのため、複雑なルールを必要としないその手軽さも相まって、友達や家族で盛り上がるにはぴったりなゲームだと思う。

▲どこかスポーツ的な楽しさを持ち合わせた『マジカルドロップ2』(画面写真はプロジェクトEGG公式サイトの『マジカルドロップ2』より引用)

多数の移植と続編に恵まれた『マジカルドロップ』

データイーストのゲームはよく言えば通好み、悪く言えばニッチなゲームが多く、後年に一定の評価を得ることはできても、常に移植に恵まれるメジャータイトルは数少なかった。

そんな同社において、『マジカルドロップ』はスーパーファミコンをはじめプレイステーションやセガサターン、ゲームボーイといった主だったハードはもちろんのこと、ネオジオポケットなどのマイナー機種に至るまで、実に多数の移植に恵まれた

また、旧作もプレイステーションのゲームアーカイブスをはじめ、アケアカNEOGEOのプレイステーション4版『マジカルドロップ2』(2017年/ハムスター)、『マジカルドロップ3 』(2018年/ハムスター)の他、Xbox One、ニンテンドースイッチ向けにダウンロード販売されているので、今でも気軽に遊ぶことができる。遊んだことがない方は、ぜひこの爽快感を体験してほしい。

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前田尋之

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