ゲームセンター聖地巡礼「1980代 京都」前編 2018年11月26日
命がけだった『アフターバーナー』の搬入
今ならストップがかかる危険な運搬方法とは…?
――さて、「ビッグキャロット京都店」といえば、三原さんが「コロニー落とし(*01)」と呼んでいる、大きな事件があったと伺っています。
三原 「ビッグキャロット京都店」は地下1階にあったわけですが、ある日『アフターバーナー』(1987年/セガ)の大きな筺体を地下に入れるために、店のスタッフや俺ら常連含めて50人くらいのメンバーが集まった。
筺体をまず太い紐でグルグル巻きに縛って、地下に向かう階段の上に布団を敷いて、数十人で紐を握って上からちょっとずつゆっくり滑らせて降ろしていったんです。「万が一のことがあったら、下にいるヤツはサッと避けろよ」なんて言われて(笑)。
――そんな一か八かみたいな…(笑)。
三原 もう、一歩間違ったら大変なことですよ(笑)。で、なんとか下まで降ろして店に入れたんですけど、朝の6時くらいから集まって、昼くらいまでかかったと思います。
――開店までには間に合わなかったと(笑)。
三原 はい。そしてさらに、ゲームが動かなかったという…(笑)。
―― えっ、壊れていたんですか?
三原 結局、階段の上をガンガンと乱暴に移動させたんで壊れていた(笑)。半日かけて修理していましたよ(笑)。いや、1~2日かかったかなぁ…。
大堀 あの筺体を紐で吊って入れるというのが、もう無茶だよね(笑)。今なら誰かが「やめましょう」って全力で止めるでしょう(笑)。
三原 これ、落ちてきたら死ぬよな…と思いました。
大堀 今回の探訪で、実際に「コロニー落とし」の階段を見ることができましたね。
三原 しかも、途中に踊り場的スペースがあって、俺の記憶よりさらに難易度が高くてヤバかった(笑)。
大堀 あそこを通すのはキツいですね。
三原 あの筺体を回収するときは、バラして店から出したらしいです。普通にバラせる部分はバラバラにして。最後のころは、もう破棄レベルだったと聞いています。
――そういうことも事実として記しておきたい情報ですね。
三原 あと、このビルの1階のミスタードーナツにはお世話になりました。今はもうないホームカット(*02)というドーナツが当時70円で、よくそれを買ってからゲームをしていましたね。
「ビッグキャロット京都店」は、もともとバーか何を改装して作ったゲーセンみたいで、変な形のカウンターがあって、そこで飲み物が買えた。ミスドでホームカットを買って、下に行って炭酸水をただでめぐんでもらって、友達とホームカットを半分こして食べる…。当時はホームカットとキャベツが俺らの主食でした。もうミスドにはホームカットがないのが寂しいですね。
京都ハイスコアラーのもう1つの聖地「GAME’s WiLL」
三原 最終的に「ビッグキャロット京都店」は店長が交代して、スコアラーが1コインでねばるのがうっとうしかったのか、スコア集計がなくなるなどの方針転換があった。それでスコアラーたちがみんな、一乗寺の「GAME’s WiLL」という店に移ったんです。その後、「ビッグキャロット京都店」は閉店しました…。
――数多くのハイスコアラーを輩出したお店でしたが、なんとも切ない幕切れだったのですね…。
大堀 常連の売り上げは侮れなかった、ということだね。
三原 ゲーム好きは、1年365日ゲーセンに行かない日なんて1日たりともないという時代でしたからね。俺も、1日5分だけでもゲーセンの空気を吸っていないと、スコアラーとして終わる…と思っていました(笑)。
――その「GAME’s WiLL」は、2015年まで営業していたらしいですね。
三原 長くやっていたゲーセンですね。ネオン管でできた「GAME’s WiLL」という看板があったのを覚えています。
大堀 跡地を訪問したら、「GAME’s WiLL」は駅から離れていたんですね。なのに、なんでここにみんな来るようになったんですか?
三原 「ビッグキャロット京都店」と同じく、「GAME’s WiLL」ではハイスコア集計をやっていたのでね。京都に来てハイスコアを競うなら、わざわざここに来ないとダメだった。「GAME’s WiLL」は、「ビッグキャロット京都店」の方向転換の後に、京都のハイスコアラーの聖地となった場所なんです。
――「GAME’s WiLL」があった建物には現在、糸の専門店「AVRIL pépin(アヴリル・ぺパン)京都 一乗寺」というお店が入っています。大堀さんの聞き込みで、現「アヴリル・ペパン」が跡地で正しいことが分かりました。
三原 今回最初に訪問したのが「GAME’s WiLL」の跡地でしたね。大堀さん、最初の時点で近所の店に入ってまで聞き込むとか、俺、若干引き気味でしたわ(笑)。「えっ、ほかの店ん中入って行くんや?」と(笑)。
大堀 そんなこと言わないでくださいよ~(笑)。1回しか来られないんですから、しっかり聞き込みしたいじゃないですか(笑)。
――でも本企画では、その大堀さんの刑事張りの聞き込みで、明らかになった事実がたくさんありますね(笑)。
脚注