『Dropping Drops』でまったく新しいゲームを切り開くマインドウェア市川幹人氏とサウンド慶野由利子氏に訊く

  • 記事タイトル
    『Dropping Drops』でまったく新しいゲームを切り開くマインドウェア市川幹人氏とサウンド慶野由利子氏に訊く
  • 公開日
    2026年04月10日
  • 記事番号
    14177
  • ライター
    松井ムネタツ

『平安京エイリアン』や『ウットイ』『ホバーアタック』など、1980年代のゲームを現代にリメイクし続けるマインドウェアから、まったく新しい完全オリジナルのアクションパズルゲームが登場しました。
この『Dropping Drops』は、画面の上から300個もの飴が落ちてくるので、その飴を得点となる「カタチ」の中にうまく入れて、ハイスコアを競います。
ゲームオーバーがなく、ひたすらスコアを競うというストイックなゲームシステムでありながら、初めてデジタルゲームを遊ぶ子どもでもわかりやすく楽しめるものにもなっています。
このゲームはどんな経緯で生まれたのか、『デンシライフ』シリーズでもサウンドを担当した慶野由利子氏を交えて、マインドウェアの市川幹人氏にお話を伺いました。

【聞き手】
松井ムネタツ

『Dropping Drops』のタイトル画面

ゲームの難易度を下げずに最後まで遊んでもらうには?

―― 『Dropping Drops』はどのようにして生まれたゲームなのでしょうか?

市川 これの元になるゲームは、2025年10月12日に開催された「第15回 マイコン・インフィニット☆PRO-68K」(X68000を中心としたレトロパソコンやゲーム機を持ち寄り、参加者同士で交流・展示・即売を楽しむイベント)の講演用に作ったものでした。このイベントには第1回からほぼ毎回参加しており、私の講演は恒例行事のようになっています。 このときは主題として「コントローラーが変わるとゲーム体験が変わる」をテーマにしました。同じゲームでもコントローラーが変わると体験が変わるよね、ということを話したかったんですよ。

それをわかりやすく体験できるように、キーボードやマウスで遊べるだけでなく、『デンシライフ』同様にKORGのnanoKONTROL 2(USBでPCに接続するMIDIコントローラー)でも遊べるようにしました。実際に遊び比べてみると、全然違う体験を感じてもらえると思います。

実際に触ってもらったらかなり評判が良くて、なおかつ面のバリエーションとか発展性もあったので、これはちゃんと製品として発売してもいいんじゃないか、と。

「マイコン・インフィニット☆PRO-68K」に出展したときの様子

―― なるほど、実際に反響を踏まえて製品化もいけそうな感触があったんですね。

市川 それともうひとつ、小沢純子さん(元ナムコのサウンドクリエイター。マインドウェアのゲームでは『Space Mouse 2』等のサウンドを担当)とゲーム作っていたときにあがった話題もきっかけでした。それは、初心者にゲームを遊んでもらうために難易度を下げることはせず、ゲームの楽しさをちゃんと理解して最後まで遊んでもらうにはどうしたらいいだろう、という話題だったんです。

『Space Mouse 2』(2020年発売)

市川 この話は小沢さんとすごく盛り上がって、そのとき作った『Space Mouse 2』は大成功となったのですが、今もその考えはずっと心の中に残っていました。

アクションゲームをやらないでRPGやアドベンチャーばかり遊んで育った人もいれば、格闘ゲームやFPSなどさまざまなジャンルでプロゲーマーもいるという中で、「イージー」や「ノーマル」「ハード」という難易度モードを搭載せずに楽しい時間を作るにはどうしたらいいんだろうか……ということを、このゲームでは突き詰めてみました。

―― nanoKONTROL 2以外のデバイスは候補にあがることはあったのでしょうか?

市川 これ一択でした。かなり売れたデバイスなんですよ。ボタンなどが「光る」という点が秀逸なんです。PC側から制御して各種ボタンを光らせることができるので、ゲームと連動させることができるんです。そのシーンで操作するボタンが光るので、ぜひ注目してほしいです。

KORGのnanoKONTROL 2

―― 「ゲームオーバーがない」というのは、かなり思い切ったゲームデザインですよね?

市川 弾幕系のシューティング以降、シューティングゲームを遊べなくなった人は、「遊ぶたびに自分はうまくなっている」という体感ができなかったんじゃないかなと思うんです。なので、そこをもっと考えてみようと。

「スコアを競う」ということをやるので、ハイスコアを目指すのは大変だけれども、単にクリアするだけだったら誰でもできますよ、という形にしたんです。4面で1つのコースとなっており、それでゲームは終わるんですが、何度も遊んで各面でスコアを稼ぐコツを知っていただくようにしました。どんなにゲーム未経験者であっても、最初の1回目より2回目のほうが、いいスコアが出るんです。そうすれば成長体験を実感できるじゃないですか。またやればもっといいスコアを出せるかな、っていう気持ちになると思うんですよね。

『Dropping Drops』にはゲームオーバーがない

―― ハイスコアを目指すコツは?

市川 とにかく何度もやって、その面で一番高得点のカタチに1つでも多くの飴を入れるところから始めてください。あとは下に落ちてしまった飴は減点対象になるので、そのまえにどれだけ高得点のカタチに入れられるかがポイントになります。あとは4面の大きい飴ですね。これを高得点のカタチに入れるのは必須です。どの面も最初のころは飴がどう転がっていくかわからないと思うので、何度もプレイして全体の飴の流れを把握し、どうすれば高得点のカタチに誘導できるかをイメージしてください。

コースは全部で5つです(1コースにつき4面)。今後、コースを増やすことも可能ですが、レベルデザインを1つずつ奥深いものにしているので、じっくりとハイスコアを狙ってほしいですね。

各コースの最終面である4面には大きな飴玉が登場。これを高得点のカタチに入れることができれば大量得点となる
赤い飴だけでなく、青い飴が出てくるコースも。それぞれの飴のみが得点になるカタチがある

無機的な世界観かと思ったら、ある日突然メルヘンに!?

――『Dropping Drops』のサウンドを慶野さんにお願いすることになった経緯を教えてください。

市川 『デンシライフ』を作ったとき、ゲームの新規性について慶野さんにすごく褒めていただいたので、慶野さんにお見せして評価をいただきたい!という気持ちがありまして、まずはゲームを見ていただいたのですが、その流れでサウンドを一式お願いしました。ゲームが少し抽象的な雰囲気だということもあったので、いずれにせよこれは慶野さんに頼むしかないだろう、と。

無機的な画面の『デンシライフ2』

―― 実際にゲームを見たときの印象はどうでしたか?

慶野 最初にゲームの画面を見せていただいたときは、『デンシライフ』シリーズと同じような世界観をイメージしていました。

―― 画面から受ける印象は、似たようなイメージがありますよね。

慶野 なので、そういう世界観を想定して、無機的な無調のBGMを作り始めました。旋律の動きを1面は2度音程すなわちドレとかレミのみ、2面は3度すなわちドミやミソ、3面は4度、4面は5度というルールを自らに課して試みたんです。これがうまくいけばいいのですが、かなり難航しまして。そんなとき、突然ゲームが『ありすとゆーの飴玉工場』という可愛いタイトルになっていて……。ゲームの中にも「ありす」と「ゆー」が出てくると聞いて、私が想像していた「無機的な」世界観が崩れて、イチから作り直しになりました。

市川 最初は『デンシライフ』のような画面だったのですが、親子や家族で楽しめるようなものにしたかったので、『ありすとゆーの飴玉工場』というタイトルにしてガラっと雰囲気を変えました。
 

市川 ただこのタイトルにするなら、ありすを自機として操作させる必要があったのですが……これがまったくどうにもならなくて(笑)。そこからさらに「ゲームタイトルをまた変えます! ありすとゆーは出てきません」「飴玉工場という設定は残します」となって、現在のビジュアルになりました。古いレンガ造りの工場で飴を作っている、という設定は残しています。

―― 曲作りのコンセプトを聞かせてください。

慶野 ゲームを起動すると、nanoKONTROL 2を接続している場合はノブとフェーダーを定位置に置くときの効果音から始まって、そこから「TITLE」(タイトルミュージック)、「COURSE SELECT」(コース選択)、「BEFORE START」(選択後スタート)までは拍節感をあまり感じさせず、期待を膨らませるような流れにしました。プレイが始まったら三拍子で楽しく快活に、かつ盛り上がらずに淡々と繰り返し、効果音が際立つように倍音の多い音色は控えています。「GAME OVER」は「BEFORE START」と対をなすようにして、ハイスコア1位を登録するときの「TOP1 NAME」(スコア1位のときのネームエントリー)でここまでの一連の流れが頂点に達するような構成にしました。

―― ネームエントリーが往年のアーケードゲームっぽいですね。

慶野 市川さんが「ハイスコア1位のときより、2位以下のときに流れる曲に名曲が多い」と繰り返し言われていたので、だったら1位に名曲を!という気持ちで「TOP 1 NAME」を作りました。私の大好きなフェアグラウンドオルガンとアンティークオルゴールを一緒にしたような響きです。2位以下の「2-5 NAME」はメランコリックな雰囲気にしました。

市川 1位の曲「TOP 1 NAME」は本当に素晴らしすぎです。曲をいただいてすぐスマホに落として、毎日ずっとこれを聴いています。

ネームエントリーのとき、1位のときは「TOP 1 NAME」が流れる

楽曲構成と効果音のこだわり

―― BGMはどの曲から作り始めたのでしょうか?

慶野 最初に作ったのはチュートリアルステージのBGM「TUTORIAL STAGE」です。当初はノーマルステージ用に作ったのですが、あまりにのんびりしすぎていたので、もっとアップテンポのほうがいいと思って作り直したら今度は忙しなさすぎて、テンポを落としてようやく「NORMAL STAGE」のBGMに落ち着きました。最初に作ったのんびりしすぎた曲を、市川さんからの提案でチュートリアルステージのBGMとして採用していただきました。

市川 この曲、ボツになりそうだったんですよ。いい曲だったので、せっかくだから使いたいと思いまして。

―― 効果音もすべて慶野さんが作られたということですが……。

慶野 試作段階のゲームを見て、「飴が落ちてくる音が必要」と思って、私のほうから効果音を提案しました。音楽よりも先に効果音を作ったのは、私のゲームサウンド人生の中で初めてのことだと思います。このパラパラパラーと降ってくる音が絶対必要だと思ったんです。

市川 ゲーム中に鳴っている効果音は3種類で、飴が壁に当たった音と、カタチに当たったときの音、飴同士が当たった音です。カタチの音は、色ごとに音程を変えているのですが、これはプログラム側で処理しています。どのカタチに入ったのか音でわかったほうがいいですし。

OPTIONのSOUND TESTから、BGMや効果音を聴くことができる

―― これだけの飴が画面に出てくると、ずっと効果音が鳴り続けてしまいそうですが、そのあたりはどう処理しているのでしょうか。

市川 飴が画面中に300個出てきますが、飴が何かにぶつかって効果音が鳴ったら、3/60(約0.05秒)は次の効果音を鳴らさないようにしています。人間の感覚って不思議なもので、それでしっくりくるんですよ。ぶつかったときの効果音を全部鳴らすと、とくに序盤はずっと効果音が鳴りっぱなしになるので、そこはチャンネル数などいろいろテストや調整をして、この形になりました。

―― 本作のBGMや効果音を作っていく中で、特に苦労した点があれば教えてください。

慶野 今回使用した楽曲の中には悩んだものはないのですが、セルフ没にした最初の無機的な曲にはとても悩みました(笑)……あのまま作っていても完成しなかったかもしれません。

―― サントラCDを発売するそうですが……。

市川 『Dropping Drops』の曲が全部入っているのはもちろんですが、リミックスも2曲入っています。あとはゲームのダウンロードキーも入っているので、このCDを買っていただければゲームも音楽も楽しめます。3月21日に 東京たま未来メッセで開催される「RETRO GAME SUMMIT Lv.5」で先行販売して、4月14日からAmazonや秋葉原のBeepなどで本リリースとなります。ダウンロードキー付きサウンドトラックが3,300円(税込)、STEAM版が700円(税込)、NFC付きミニCDキーホルダーが1,320円(税込)です。
商品ページ(近日公開予定):http://pinball.co.jp/games/DD/

『Dropping Drops』のCD

―― 最後に『Dropping Drops』について、ゲームの注目ポイントやサウンドの聴きどころなど、メッセージをお願いします。

慶野 先ほどお話しした、ゲームスタートする前からネームエントリーまでの大きな流れを感じていただければ嬉しいです。今回、効果音から作り始めて、その音を想定してBGMを作ったので……音楽も効果音もまとめて一緒に作ることができてよかったです。

市川 まず音についてですが、今回もKamata(コルグのシンセサイザーアプリ『KORG Gadget』用のチップチューン音源)で作っていただいたので、1980年代のアーケードゲームっぽさを感じていただけるんじゃないかと思います。『デンシライフ』のときもサウンドに対する反響が一番大きかったですしね。

ゲームについて、まったく新しい体験ができるものになっていますので、とにかく何度も遊んでみてほしいですね。ピンボールやレースゲームに似た部分があって、その盤面やコースを少しずつ覚えながら攻略を考えていくような要素があります。物理エンジンで飴の動きを表現しつつ、1980年代アーケードゲームの画面固定アクションゲームの雰囲気をぜひ楽しんでください。

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