見城こうじのアケアカ千夜一夜

  • 記事タイトル
    見城こうじのアケアカ千夜一夜
  • 公開日
    2026年07月31日
  • 記事番号
    14532
  • ライター
    見城 こうじ

 

第63夜『TRACK & FIELD』(1983年・KONAMI)

叩け! 叩け! 画期的なスポーツ競技ゲーム

『TRACK & FIELD』は陸上競技をテーマにしたスポーツゲームです。競技種目は、100メートル走、走り幅跳び、槍投げ、110メートルハードル、ハンマー投げ、走り高跳びの全6種。4人まで一緒に遊ぶことができます。

ボタンを叩く速さ、タイミング、長さに特化したゲーム性と高い競技性から、大きなヒットを記録するとともに、のちに多くのフォロワーを生み出したゲームでもあります。

1983年当時の国内版のタイトルは『ハイパーオリンピック』でしたが、アーケードアーカイブス版は、海外版『TRACK & FIELD』が収録されています。国内版タイトルに慣れ親しんでいる自分としてはちょっと違和感もあるのですが、今回の記事は『TRACK & FIELD』という呼称で統一します。

当時にして極北の競技ゲームだったのではないか

黎明期のアーケードゲームは、構造上、以下の特徴を持っていました(現代でも変わってない部分もあります)。

・顧客→カジュアル層が多く、すぐに理解できる遊びである必要がある
・収益構造→100円単位の価格設定が基本のため、短い時間である程度満足させる必要がある
・技術的な制約→プレイヤーに与えられる報酬の表現に質的・量的な限界があった

――結果として、“上手にプレイできたかどうか”、つまり“勝ち負け”を強調した遊びにならざるを得なかった面があります。現代のゲームに比べると、遊びの幅はずっと狭かったと思います。

これは何もビデオゲームに限った話ではなくて、その何十年も前……いや、それこそ百年以上も前から、エレメカの類いであったり、スマートボールや射的や金魚すくいのような遊びであったり、縁日のような場所を含め、娯楽施設の遊びにはそういうものが多かったわけです。

個人的に、『TRACK & FIELD』は、1983年にしてゲームが持つそうした“競技性”を濃縮して表現した、極北のゲームの一つだったように思います。

ほんの数秒のトライアルの間のボタンを押す速さとタイミングと長さだけで競う、その密度と純度の高さ。1/60秒の絶妙な操作が求められる、アクションゲームの精髄が凝縮されたような遊びといえるかもしれません。

ボタン連打ゲームとしての魅力と問題点

『TRACK & FIELD』の操作は3つのボタンで行います。中央がJUMP、両サイドがRUNボタン。速く走ったりパワーを溜めるときは2つのRUNボタンを交互に叩くのが基本です。

このゲームではRUNボタンを素早く叩くことが好成績に直結します。そこで有名なのが、指の爪や各種の器具・道具を用いた高速連打問題です。開発者としては指で素早く叩くことを(当然ですが)想定していたと思うのですが、より高速で入力できるさまざまな方法をプレイヤーがあっという間に見つけてしまったのです。

爪を立てて左右にボタンをこするようにして入力するなんてのはまだ可愛いもので、定規を弾いて振動させることでボタンを叩く方法なんてちょっと感心してしまいます(それ以上に、今見るとプレイしている絵面がシュールでちょっと笑ってしまう)。

ただ、より問題として大きかったのが、コインやガシャポンカプセルの類いを使った連打法です。これらの器具を使って先ほどの爪のようにボタンをこするわけです。このやりかたは本当にコントロールパネルを傷つける。当時のパネルの損耗っぷりといったら本当にひどいものでした(もちろん、爪や定規の場合でも、ボタンに優しいとはいえなかったと思います)。

当時のゲームセンターでは、「こすりは邪道だ」「器具を使うのは反則ではないのか」といった議論もよく交わされていました。『TRACK & FIELD』の稼働当時にはまだ創刊されていなかったゲーム専門誌『ゲーメスト』でも、後年、主にシューティングゲームの連射方法をめぐって、ボタンのこすりを是とするか非とするかが盛んに議論されています。まさに現実のスポーツ競技でも常に巻き起こる、反則問題やルール解釈の議論と同じです。

ちなみに当時、『TRACK & FIELD』以外にもこの手法が有効なゲームがあって、それらも被害を受けていました。データイーストの『大相撲』辺りのコントロールパネルも、ズタズタにされていましたね。

その反省から、後に作られた続編や他社のフォロワー的作品は、どれもそれができないような工夫がなされるようになりました。たとえば、2つのボタンを叩くゲームの場合、交互に規則的に叩かないと入力が反映されない、といった具合です。

ただ、個人的な感覚ですが、最初の『TRACK & FIELD』には、そうした問題点・欠点も含めて、のちの同ジャンルのゲームにはないプリミティブで豪快な魅力があったようにも思います。始祖的存在ってしばしばそういうものですよね。

では、また次回。

©Konami Digital Entertainment
Arcade Archives Series Produced by HAMSTER Co.

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