シンプルな中に戦略性を秘めた 麻雀パズルの王道『上海』

  • 記事タイトル
    シンプルな中に戦略性を秘めた 麻雀パズルの王道『上海』
  • 公開日
    2018年02月12日
  • 記事番号
    213
  • ライター
    ひろちゃんねこ

上海』は、麻雀牌を使ったパズルゲームです。

アーケードゲームとしては1987年にテーブル筐体で登場しました。

1987年といえば、『テトリス』などを代表するパズルゲームブームの真っただ中。私は当時19才で、大学のサークル仲間とカラオケの部屋待ちをしている時に、何気なく入ったゲームセンターで初めて『上海』と出会いました。

麻雀のゲームコーナーの一角に置かれていた『上海』。私はデモ画面を見た瞬間、「これはただの麻雀ゲームではないぞ」と閃きのようなものを感じました。パズルゲームを大好物とする私は、即座に参戦。

▲初代アーケード版『上海』のフライヤー

デモ画面を見て、同じ絵柄である2つの麻雀牌を取っていくことだけは理解できたんですが、一定のルールがあるようで、やみくもに麻雀牌を取ることはできないようです。わけも分からずにプレイしてみると、案の定すぐにゲームオーバーになりました。

それでも、何度もプレイするうちに、初めて一面クリア!

その達成感が何とも爽快で、以来、毎日ゲーセンに通うほど、どっぷりとこの『上海』にハマってしまいました。

単純さの中にある奥深さ

『上海』は、1面ごとに異なる形で積み上げられた麻雀牌を、同じ絵柄のペアで取り除いていくパズルゲームです。テーブルから牌が全部なくなったらゲームクリア。取り切れなかったらゲームオーバーとなります。

『上海』をトランプで例えるなら『神経衰弱』。しかし、『上海』には『神経衰弱』にはない以下のルールが存在しています。

1.牌の左右どちらかが空いていれば取り除くことができる
2.牌の上に他の牌が乗っていたら取り除くことはできない

この2つのルールが、『上海』を単純ではない奥深いパズルゲームに仕上げています。

私が『上海』にハマった理由は、ズバリこの「単純さの中にある奥深さ」にあります。

同じ牌が4つあり、幾通りもの取り方があり、取り方によっては手詰まりになる危険性もはらんでいます。そのため、先の先を読みつつ牌を取っていかねばならないという戦略的な側面も持っているのです。

取るべきか取らざるべきか、それが運命の別れ道!

先ほども述べたように、『上海』には4つの牌が存在します。牌はオリジナルの絵柄のものを含めて全部で144枚。36種類の同じ数字・絵柄が混ざっています。

牌は左右どちらかが空いているときにのみ取ることができるので、同じ牌が上下で重なり合っていたり、2種類の牌が交互に置かれていたり、また、同じ牌が隣り合って2種類のペアが連続して並んでいる場合は手詰まりとなってしまいます。

この手詰まりパターンに持ってこないためにも、上下に積まれた牌をすべて把握しておく必要があります。

面によっては2~4段に積まれており、すべての段にどの牌が置かれているかを把握するために、一瞬ですが下の段をのぞき見できるチャンスがあります。

▲牌が積み上げられている瞬間がのぞき見のチャンス!(動画は『上海』iOS版の公式動画)

それは、ゲームのスタート時。下の段から順に牌が積み上げられていくので、この時に目を皿のようにしてしっかりと牌をチェックし、配置を覚えておくことが勝敗のカギとなります。でも、実際に牌が並べられるのは数秒のことなので、なかなか見て覚えておくことは難しいんですけどね。

私はゲームを開始すると、まず、左右に空きのある同じ絵柄の4つの牌を探して取っていくようにしています。そうすることで手詰まりを回避できます。

上の牌を取り除くと下の牌の一部が見られることもあるので、ここでどの牌が隠れているのか予想しながら、次の一手を打っていきます。

ゲームをやり直しできる機会はたったの3回。それをうまく利用しつつ、3手4手先まで読みながら、全ての牌を取るための方法を考えていきます。そこが、ただのソリティアではない、碁や将棋のような戦略性を秘めた『上海』の面白さといえます。

迫りくる時間が手元を狂わせる

アーケード版の『上海』には時間制限が設けられています。この時間制限がくせ者です。

ゲーム画面の下に残り時間のバーが表示され、残り時間がなくなればゲームオーバーで、牌を取るごとに残り時間は増えていきます。

残り時間が少なくなるとバーは点滅し始め、さらに気持ちを焦らせます。

「手に汗握る」とはまさにこのこと。残り時間が1分を切ると、ボタンを押す指からも汗がジワリと出てきます。そんな時でも、冷静沈着に一手ずつ確実に牌を取り除いていかねばなりません。と言っても、冷静にできたためしなんて一度もないんですけどね。

この迫りくる焦りも、『上海』の魅力ではあります。

期待を裏切りまくるエンディング

▲アーケード版『上海Ⅱ』の当時のフライヤー

『上海』のもう一つの魅力、それはクリアできた時に表示されるボーナス画面です。これまでに、『上海』は、『上海Ⅱ』(1989年)や『上海 万里の長城』(1994年)、『上海 真的武勇』(1998年)などのシリーズを世に送り出してきましたが、その都度、このボーナス画面に趣向が凝らされていました。

1989年にSUNSOFTより出された『上海Ⅱ』は、ボーナス画面に女の子が出てくるものでした。1面をクリアした時には水晶に包まれた女の子の赤ちゃんが、2面をクリアするとちょっと育った女の子が出てきます。

2001年当時、新入社員だった私は、会社の帰りに馴染みのゲーセンに行き、この『上海Ⅱ』の台に座りました。ゲーセンのお兄ちゃんともすでに顔見知りになっていて、お兄ちゃんは「また来てんの?」と言いながら、私の横に座って見物を始めました。

いつもなら、たいてい3〜4面でゲームオーバーになってしまうのですが、その日は順調にパズル面をクリアしていきました。ボーナス画面の女の子も、ゲームをクリアするたびに育っていきます。

「お? お?」と言いながらゲーセンのお兄ちゃんが身を乗り出します。ふと気が付くと、私の周りには5〜6人のギャラリーがいました!

「こいつは最後まで勝負を降りるわけにはいかない!」と気合を入れて最終面に挑みました。そして、クリアしてしまったのです!

「お〜〜っ」というお兄ちゃんとギャラリーのため息。

期待は、そう!クリア後に出てくる女の子に決まっているでしょう!

「お!」最終面クリアのボーナス画面が出ました。

「一炊の夢」と書かれた文字と肩に湿布、背中にお灸の跡がある老婆のヌードが!

「いくらなんでも…こりゃないよ」

固まった私からギャラリーがいづらそうに離れて行き、ゲーセンのお兄ちゃんも私の肩をポンと一つ叩くと仕事に戻って行きました。

そんな見る者の期待を裏切る(?)楽しさも、『上海』の魅力かもしれませんね(苦笑)。

大人も楽しめる奥の深いゲーム、それが『上海』!

戦略性の高いパズルゲームとしてだけではなく、ボーナス画面のおまけまで用意されている『上海』。私がハマってしまった理由をご理解いただけたでしょうか?

今はスマートフォンの無料アプリでも遊べます。皆さんもぜひ、『上海』の魅力にどっぷりハマってくださいね!

©SUNSOFT

こんな記事がよく読まれています

2018年04月10日

ゲームセンター聖地巡礼「1980~1990年代 新宿」前編

今回から、新企画「ゲームセンター聖地巡礼」の連載がスタートします。当研究所・所長の大堀康祐氏と、ゲームディレクターであり当研究所のライターとしても協力いただいている見城こうじ氏のお2人が、1980~1[…]