『平安京エイリアン』の復刻とリメイクを手掛けた市川幹人氏に聞く 後編
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- 記事タイトル
- 『平安京エイリアン』の復刻とリメイクを手掛けた市川幹人氏に聞く 後編
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- 公開日
- 2018年03月12日
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- 記事番号
- 269
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- ライター
- IGCCメディア編集部
2017年10月にアーケードの名作『平安京エイリアン』のリメイクを担当した、マインドウェアの代表取締役・市川幹人氏へのインタビュー。その後編では、市川氏がもつ『平安京エイリアン』への思い入れ、そして復刻版開発にあたりこだわった点などについてお聞きしました。オリジナルおよび進化した復刻版の魅力を、当研究所の大堀康祐所長とメンバーの石黒憲一氏とともに探っていきます。
ぱっと見て感じた『平安京エイリアン』の魅力
編集部 最初に『平安京エイリアン』をプレイしようと思った理由は何だったのでしょうか?
市川 僕はですね、MNM Softwareのときに開発した『Star Wars -Attack On The Death Star-』(1991年)を見てもらっても分かるように、パッと画面を見て他のゲームと明らかに違う雰囲気のゲームとか、見た目では遊び方が分からないゲームが好きで、そういうゲームは必ずやるんですね。
「何だこれは?」が超重要で、そういう意味でも『平安京エイリアン』を見たときには「何だこれ?」と思ったし、タイトルもみんな横文字という時代に『平安京エイリアン』って(日本語で)書いてあって…これはやるしかないですよね(笑)。
大堀 ちょっと記憶が前後しているんですけど、僕は八王子に住んでいたのであまりゲームの新しい情報が入ってこなくて。そんな中で、『コロコロコミック』に掲載されていた、すがやみつる先生の『ゲームセンターあらし』では『平安京エイリアン』が取り上げられているし、それと『スペースインベーダー』ブームの中、東大生が作ったゲームというので話題にもなっていたし、それで気になっていたんですよ。「これか、東大生の作ったゲームは!! 東大生と知恵比べか!」と思いながら遊びましたよね。
編集部 やっぱり2人プレイは魅力的でしたか?
大堀 そうですね。協力プレイのイメージが強くて、人と一緒に遊ぶと、ゲームってこんなに違うんだなって思いましたね。協力しているようで協力していないという、あえて今回は戦おうという遊び方もできるし、遊び方が広がったという印象ですよね。
市川 ゲームを解析してみると、めちゃくちゃ中身もすごくて、いろいろチャレンジしているのが分かりますよ。
大堀 そこまでひねってくるのが東大生なんでしょうね。普通に2人プレイを作れって言ったら、やっぱり『スペースインベーダー』の例にならい、交代制のゲームを作って終了ですよね。そこをひとひねりして協力プレイまで持っていくわけですからね。穴掘りも2人同時でやると速く掘れますからね。
市川 そうそう、すごく速いんですよ。しかも、デモプレイでその方法をしっかりと見せているんですよね。デモプレイも数種類入っていて、ちゃんと説明する役割を果たすように、かなりきちっと作られていて、(『平安京エイリアン』は)当時のゲームの中でもかなり良くできていましたね。
大堀 以前、原作者の1人である武重有正(*01)さんにお聞きしたことがありますが、デモにはあえて全部の要素を入れたとおっしゃっていました。
川 そうそう、このデモによって、PC版に移植するとき、後に大変な事件に発展することになってしまいました…。普通、ゲームのデモプレイというのは、プレイヤーが操作したレバーの方向とかボタンを押したというようなデータを持って、そのデータを使ってゲームのループを回るというプログラムなんですが、『平安京エイリアン』はそうじゃないんですよ。エイリアン1がこのフレームでは左に動いた、エイリアン2は上に動いたというようなデータに、そういうのが全部入っていて、ゲームのループを通らないんですよ。
大堀 なるほど、ちゃんと絵コンテが切ってあるような情報なんですね。
市川 そうなんです。最初は武重さんに頂いた資料を元にゲームを作ったんです。それでデモは寸分違わず動いたんですが、ゲームをプレイしたらすぐに「あれ? なんか違うな」と。一瞬にして「これ作り直さないとダメじゃない?」ということになりまして。ゲームの発売が10月13日だったんですが、9月11日の夕方にそれが判明して、急いで全部を作り直しました。アーケード版の『平安京エイリアン』は、エミュレーターをゼロから作り、移植をやり直したんですよ。
大堀 アーケード愛があってこそですね。
市川 おかげさまで『平安京エイリアン』の中のコードを丸裸にしちゃったんで、エイリアンの座標がメモリのどこに格納されているとか、もうすべてのことが分かるので、効果音だけステレオで鳴らす機能を付けたりしました(笑)。あと、アーケード基板は、効果音の1個1個に半固定抵抗が付いていて、それぞれのボリュームを自分で変えられるんですが、それもちゃんと再現したので、完全な移植ができたと思います(笑)。
大堀 こだわっているんですね。
市川 Part1とPart2の切り替えのロータリースイッチがあるんですが、それもアキバで写真を撮ってきて、それをグラフィック担当に振ったら、ちゃんとモデリングしてくれたので、きっちりと実物と同じだぞというのを作って実装しました(笑)。
編集部 ちなみに石黒さんは、当時の『平安京エイリアン』は遊びましたか?
石黒 新作としてプレイしていました。最初は純正で遊んでいたんで、電気音響版の筐体も知っています。『平安京エイリアン』にはセガ版もあって、セガ版は2本のジョイスティックが付いていているんですが、そっちでも遊んでいました。
市川 はいはい、2本のもありましたね。あ、そっちが本家じゃないんですね。
石黒 セガ版はもともと『ヘッドオン』(1979年)と『スペースアタック』(1978年)の筐体なので、デュアル1かな。デュアル1の筐体はジョイスティックが片面に2個付いているので、一方は4方向の操作で移動して、もう一方はレバーの左右で穴を掘る・埋めるをやっていたんですよ。
僕はジョイスティックで遊べることが『スペースインベーダー』の楽しさだと思っていたので、『平安京エイリアン』のセガ版はそのジョイスティックが2本だったので、より面白いなという印象でした。
大堀 新作でやっていたんだ。やっぱりすごいね。
石黒 でも僕はまだ小さかったので、東大生うんぬんというのを理解できる年ではなかったし、それはずいぶん後から知った話ですね。
市川氏がリメイクで心がけたこと
編集部 『平安京エイリアン』に感じていた魅力のようなものは、開発する際にどう影響していくんでしょうか?
市川 ゲームを作るときは、正直、元のゲームの魅力とかは全く考えていなくて、どうしたらみんなが楽しいと思ってくれて、なおかつ、世界中の人が「わー!」と驚いてくれるようなものを作る(かという)ことだけを考えました。
まずは基本の「掘って埋めてエイリアンを倒す」というルールは踏襲して、あとはなるべくみんなが楽しいと思ってくれる形にしました。かといって(オリジナルの雰囲気を)壊そうとも思っていないので、一番良くなる結果が原作に近いというのであれば、それはそれでいいし、とにかく何の先入観も持たずに作り始めました。
その結果、プレイ時間の長かった『平安京エイリアン』を、短い時間で起承転結があって、高揚感が得られるようなアレンジに変えました。それと2人プレイが面白いゲームなので、これが4人プレイになったらさらに「ギャーギャー」言いながら楽しめるんではないかなと考えてリメイクしました。
編集部 それで、復刻版は4人同時プレイが可能になったんですね?
市川 そうですね。4人同時プレイと時間制という本筋が最初に決まって、「せっかく掘るんだから、なんかお宝が埋まっていてもいいんじゃない?」ということで、7つのお宝をコース中に埋めることも決まりました。
去年(2017年)の7月14日から作り始め、7月30日のネット配信の番組で試しにみんなで遊んでみました。それからすぐ、海外のライターに向けてSteamでサンプルを配信したところ、評判を呼んで、そこから少しずつアレンジする作業を進めていきました。
そんな中で、トランスで有名な「Ibojima(イボジマ) 」(*02) のメンバーが『平安京エイリアン』のサンプルを遊んでいたらしく、9月18日の夜に突然、その「Ibojima」のメンバーから1曲7分ぐらいの10曲とともに、「これをキミの『平安京エイリアン』で使ってくれ」というメッセージが送られてきました。それで僕は「いやいやそんなキミに払えるようなお金はないから」と返すと、彼は「いやこれはいいんだよ、使いな」って言うので、それで2曲を使わせてもらうことになりました。それほど(「Ibojima」のメンバーにも)気に入ってもらえて、うれしかったですね。
脚注