『燃えプロSP』開発者・市川幹人氏に聞く 後編 ~プロレスラーから普通の主婦まで、個性的なキャラクターが続々と登場する『燃えプロSP』の開発裏話~
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- 記事タイトル
- 『燃えプロSP』開発者・市川幹人氏に聞く 後編 ~プロレスラーから普通の主婦まで、個性的なキャラクターが続々と登場する『燃えプロSP』の開発裏話~
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- 公開日
- 2018年03月26日
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- 記事番号
- 300
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- ライター
- IGCCメディア編集部
世界で最も有名とされるゲームセンター「高田馬場ゲーセン ミカド」にて、2014年より密かなブームとなっているレトロなアーケードゲーム『燃えろ!!プロ野球 ホームラン競争』(1988年)。その復刻版となるスマートフォン向け『燃えろ!!プロ野球 ホームラン競争SP』(以下、燃えプロSP)の開発を担当した市川幹人氏にインタビューを敢行しました。
後編となる今回は、プロレス団体「アイスリボン」とのコラボレーション企画で、ゲームにキャラクターとして登場している現役女子プロレスラーの世羅りささんも迎え、『燃えプロSP』の開発話などをさらに掘り下げてお聞きしていきます。面白開発秘話、登場する人々のあっと驚くエピソードまで、たっぷりと伺いました。
面白エピソードだらけの開発秘話
編集部 ゲームのお話を頂いた時は、どんな感想をお持ちになりましたか?
世羅 そうですね。やっぱりゲームが好きなので、自分がゲームのキャラクターになるというのは夢でしたし、お話を頂いて、「世羅りさ」をいろんな人にプレイしてもらえるんだと思うと、ぜひやってみたいという気持ちが大きくて、即答でした。
編集部 その時点で『燃えろ!!プロ野球 ホームラン競争 SP』というゲームはご存じでしたか?
世羅 まったく知らなくて、こういう話があるんだけどというのを藤本つかささん(「アイスリボン」選手代表)から聞いて、それで初めてスマホで見ました。ゲームもシンプルで、ボタンを押して離すだけのような簡単な操作なので、いつも遊んでいます。
でも、最初はボタンをずっと押したままにしておくということが分からず、ボールが来た瞬間にピッピッと押して操作していました(笑)。
編集部 ボールが来るまで押し続けて、離すとスイングというのはちょっと珍しい操作ですよね。
市川 理由は、スマホの場合、ボタンを押してスイングだと、60分の1のタイミングで見た場合、ボタンを押したという認識が若干遅れるためです。
例えば少しの雨で画面に水滴がついていたりすると、特にAndroidはさまざまな機種があるので、ボタンを押した動作を遅れずに認識するのは難しいんですよ。それで「押す」と「離す」のでは、どちらが正確に認識できるかという議論になり、より正確に認識できる「押して離す」仕様にしました。
あとAndroidの一部の機種には、画面に傷が付いているスマホの場合、そこがずっとタッチされていると認識する機種があります。しかし、「押して離す」なら、ほとんどのスマホで正確に認識するので、この仕様を採用しました。
世羅 なるほどー。最初、全然ボールを打てなくって、操作は簡単なのになんて難しいゲームだと思っていましたけど(笑)。分かってからは、楽しくなりましたけどね(笑)。
編集部 ホームランが打てるようになるまで、かなり練習されました?
世羅 ゲーム内大会の「第1回 アイスリボン杯」(2016年夏開催)のときは、ベルトがかかっているというのがあったので、必死でプレイしました。
市川 そうそう。ゲームの中でいろんな大会が開かれるんですが、「第1回 アイスリボン杯」もその大会の一つなんですよ。優勝者は、初代「ICE x 燃えプロSP王座」となり、ゲーム内でチャンピオンベルトを進呈するようにしました。
そのゲーム大会の最終日が、実際の後楽園ホールであったプロレス試合と重なり、本試合終了後、そのまま打ち上げとなりました。ゲーム大会の順位も「これで決定かなぁ」と思って(ゲーム画面を)見ていたら、その時点で順位が2位の藤田あかねさんが突如ゲームを始めて、ホームランを打ち出して追い上げ始めました。すると、それに気がついた世羅さんもまたゲームをやり出して、この人たちは暇人なのかと思うぐらいに盛り上がっていましたね。この2人が最終日だけで2,000本ぐらいホームラン打ったんじゃないかな(笑)。
編集部 やっぱり、負けられないという魂に火がついたんですかね(笑)。
世羅 そうですね(笑)。
市川 2人ともその大会は、最終順位がひと桁でしたよ。彼女たち、ゲーマーなんですよ(笑)。改めてプロレスラーの凄さ、人間力みたいなのを感じました。ほんと、(彼女たちが)スマホゲームをやってるのを管理者画面からみていただけでも(熱気が)伝わってくるんですからすごいですよ。
世羅 試合の前日も結構頑張って、私がアイスリボン内の1位の状態で最終日を迎えたんですよ。しかも、その日は(実際の)タイトルマッチもあったんです。自分のベルトの防衛戦があったので、やっぱりその試合の後でゲームができるかどうか分からなかったので、前日に余裕をもって点数を稼いでおいて(ゲーム大会の)最終日を迎えたんです。
しかし、防衛戦は負けてしまって…。あー負けたなぁというダメージも大きかったし、首も痛かったので、家に帰ってもスマホはできない状態だったんですけど、ちょっと最後の方でゲーム(『燃えプロSP』)をのぞいたら、「やばい、順位抜かれている」っていう状況だったんで、そこから必死にやりました(笑)。
市川 僕は運営側なので、最後に集計するためにデータベースを眺めながら、リアルタイムで順位を見ていたんですが、「いやーこの2人、飯も食わずにやっているな」という感じでしたよ。「本気でやっているな」と思って見ていました(笑)。
世羅 こっちもゲーマーの意地があるし、アイスリボンのいち野球ファンという意地もあったので、ギリギリまでやっていました。
市川 いやもう、ガチですごかったですよ。見ていて楽しかったですね。
世羅さんキャラが放つ新しい秘技とは?
編集部 世羅さんは、どのキャラでプレイしているんですか?
世羅 もちろん自分のキャラクターでプレイしています。自分しか育てていないです。
編集部 キャラのレベルは、MAXですか(笑)。
世羅 MAXになったと思ったら、上限解放でどんどん上がっていくから、「あれ? レベルはいつMAXになるんだろう?」っていう状況で育っています(笑)。
市川 上限は50ですね。
世羅 じゃあまだまだですね。
市川 世羅さんのキャラクターも4バージョンありますからね。しかも、この後に新しいキャラクターが登場しますからね。実はこの人、剣道もすごいんですよね。
世羅 はい3段です。
市川 なので、このあと中打ちの剣道バージョンで出ていただく予定なんですが、その後は、女優バージョン、あと写真集とかDVDも出されているのでグラビアバージョンと、最低3バージョンは作りたいと思っています。
世羅 おお、グラビアバージョンですか(笑)。
市川 うちのドット絵担当者が心血を注いで、世羅さんの美しさがドット絵になっても1ミリも損なわれないようなものを作ります! 担当者は大変ですよ、世羅さんが納得のいくものを作らないと命に関わりますからね(笑)。
編集部 おおー(笑)。ちょっと見てみたい気もしますが(笑)。
市川 そんなキャラクターがゲームに出てくるなんてあり得ないじゃないですか(笑)。だいたい「剣道バージョンの中打ち」っていうのも、こんなの野球ゲーム史上初で、あり得ないですけどね(笑)。
世羅 だって空振りしたら、がーんってぶつかりますよね。
市川 「イテー」って感じですよね。
世羅 次、痛くて打てないですよね(笑)。
市川 わかんないですよ。「何すんのよ!」ってキャラクターがいきなり逆ギレして、ピッチャーが「すいません」って謝ってくるかもしれませんね。
世羅 謝ってくるんだ(笑)。
市川 (ピッチャーキャラの)ルース(ベーブ・ルース)はね、きれいなお姉さんに弱いから、真ん中に優しい球を投げてくるかもしれないけど(笑)。
編集部 そういう仕様が入っているんですか?
市川 ルースは、いくつかの女性キャラクターに対してデレデレモードというのがありますね。
世羅 私(のキャラ)は、ルースにデレデレしてもらったことがない気がする…。
市川 やっぱりそれは、世羅さんが極道ですからね。極道がデレデレされている場合じゃないんで(汗)。
世羅 そうですね(笑)。
編集部 世羅さんのキャラは、何か特別な要素があるんですか?
市川 世羅さんの場合はいろいろ入っていますが、1つは「カープ女子バージョン」というのがあって、背番号14番のピッチャーが出てくると、「背番号14番は私のものだ」と言って怒り出しちゃうとか。
あとは、最新版のゲームには「Azure Revolutionバージョン」というタッグチームのバージョンがあるんですけど、世羅さんは雨女で有名なので、これのときはスキルを使うと雨が降ってきます。この仕様は、世羅さんに「雨を降らせてください」と言われて作ったんだけど、雨が降った後に何が起きるかは考えていませんでした。
結局、インターネットの番組内で決めることにしました。何にしようって放送で投げかけて決まったのが、雨の後、ピッチャーが雷に撃たれて能力が大幅に減退するという話になりました。
世羅 楽しみですね(笑)。
市川 ま、この間までシングルのチャンピオンベルトを持っていた方なので、そんなクラスの人が打席に立つんだから、それぐらいのことは起きるんですよ。相手ピッチャーもそのぐらいの覚悟で来てねってことですよね(笑)。