北関東のレトロゲームファンが集う聖地「VGMロボット深谷店」
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埼玉県深谷市の「ビデオゲームミュージアム ロボット 深谷店」(以下、VGMロボット)は、北関東で唯一のレトロアーケードゲーム専門店ではないだろうか。
VGMロボットを運営している株式会社ロボットは2012年設立のまだ若い会社。以前は群馬県藤岡市でレトロアーケードゲーム専門店を出店していたが、惜しまれつつも閉店。当店にゲームを移設して現在の形になったそうである。
当初はレトロゲームのみでゲームセンターを作ったとしたら…というテストケースで営業し始めたそうだが、現在では北関東エリアにとどまらず、青森や熊本からもプレイヤーが遠征してくるというレトロゲームの聖地となっている。本記事では、そんな北関東の新たなレトロゲームの聖地ともいえる「VGMロボット」の魅力を探ってきたい。
レトロゲーム設置台数150台以上の店内は壮観
VGMロボットのゲーム設置台数は150台超と圧倒的なタイトル数を誇る。レトロアーケードのみで構成されるゲームセンターとして、この規模はおそらく全国でも有数のものではないだろうか。最寄りのJR高崎線深谷駅からは約2.5kmと、電車で訪れるにはやや厳しい立地ではあるものの、郊外店なので大型駐車場を完備。都内の専門店と違って、こういった部分が全国からプレイヤーを集める理由でもあるのだろう。
1フロア営業の広い店内スペースでは、ゲームジャンルごとにコーナー分けされているので目当てのゲームにたどり着きやすい。大まかにはシューティングゲームエリア、対戦格闘ゲームエリア、名作ゲームエリアといった感じ。もちろん、大型筐体のゲームも設置されている。
『ドルアーガの塔』(1984年/ナムコ)や『グラディウスⅡ』(1988年/コナミ)などの若いプレイヤーでも知っているようなメジャータイトルだけではなく、『フォゾン』(1983年/ナムコ)や『ムーンパトロール』(1982年/アイレム)といった古くからのプレイヤーでも忘れかけていたようなタイトルまで稼働しているところには、お店のポリシーを感じ取ることができる。
取材時の印象としては、まさにゲームの歴史を勉強できるといったたたずまいで、子連れでやってきては昔のゲームを子供に教えているお父さんプレイヤーもいるそうだ。
ゲーム大会やフリープレイなどイベント盛りだくさん
VGMロボットでは、毎月1回、不定期に対戦格闘ゲームの大会を開催しており、毎月常連プレイヤーたちの熱い対戦を見ることができる。取材時(2018年4月)には『GUILTY GEAR Xrd REV 2』(2017年/セガ・インタラクティブ)の店舗大会が行われており、参加者限定でYouTubeにおいて大会動画も配信している。
また、イベントは店舗主催のものだけではなく、プレイヤーの持ち込み企画が採用されることもある。これまでも『電撃文庫 FIGHTING CLIMAX IGNITION』(2014年/セガ・インタラクティブ)の店舗大会や紅白戦などが、プレイヤー企画として開催されているそうだ。ほかにも、500円定額で対戦し放題の深谷対戦会やフリープレイイベントなどもあり人気を得ている。
これらのイベント情報は店の公式Twitterで発表されているので、そちらをチェックしてみてもよいだろう。
YouTubeやFRESH!でも定期的に映像配信しているので、そちらも要注目。イベントの映像配信はほかのレトロゲーセンでもよく行われていることではあるが、VGMロボットの映像配信が特徴的なのは、それがライブ中継であることだ。そのとき店内でプレイされているゲームがリアルタイムで中継されているのは、見ていてなかなかおもしろい。対戦格闘ゲーム中継のときなどは、今すぐお店に行って参加したくなるほど熱くなってしまうことも。中継されるゲームタイトルは毎回変わるのだが、自分が得意なゲームタイトルであればネットで腕前をアピールしてみてはいかがだろうか。
店内にはVGMロボットでの各ゲームスコアの過去ベストも掲示されている。常連をはじめとするプレイヤーたちが記録を塗り替えようと熱いプレイを繰り広げているようだ。
自分のお気に入りの基板を共有できるサービス
VGMロボットのユニークなサービスとしては、基板のレンタルが挙げられる。通信機能のないゲームが対象で、お店の在庫基板から好きなタイトルを1日単位で貸し出してもらえるのだ。対戦ゲームは3,000円、それ以外のゲームは2,000円となっている。アーケード基板をプレイできる環境がある人にとっては、料金を気にせず自宅でじっくりと好きなゲームに取り組むことができる見逃せないサービスといえるだろう。
個人的には『ドルアーガの塔』や『フェアリーランドストーリー』(1985年/タイトー)、『サイキック5』(1987年/ジャレコ)などをレンタルしてみたいと思った。
その反対に、自分が所有している基板をお店に持ち込むことも可能となっている。ほかのプレイヤーにも遊んでもらいたいお気に入りのタイトルや、自慢したくなるレア基板を持っている人は利用してみてはいかがだろうか。持ち込み時には所定の手続きがあり、当日いきなり持ち込むことはできないので、その点だけ注意が必要だ。
レトロゲームを後世に残すための取り組みも
ロボットはそもそもレトロゲームをレンタルすることでレトロゲームの文化を残したいという志のもと代表の山崎孝氏が起こした会社だ。一般的に「ガチャガチャ」などと呼ばれるカプセルトイ自動販売機の設置・運営からスタートし、軌道に乗せたところで自販機設置店へのビデオゲーム導入を試みたとのこと。
しかし、ガチャガチャを設置しているようなお店にアストロ筐体(*01)やブラスト筐体(*02)を設置しても浮いた存在になってしまうことが悩みのタネだったそうだ。
そこで大量のアストロ筐体やブラスト筐体を使って始めたのが、深谷店の前身となるVGMロボット藤岡店だった。並行して、株式会社ロボットの本社で「ガチャガチャ」と並べても違和感のない小型のオリジナル筐体「ビデオゲームキッズ」が開発された。幅43cm、奥行き53cm、高さ104cmと「ガチャガチャ」の1.5倍ほどの大きさながら、18.5インチ液晶モニターと2プレイヤー分の1レバー6ボタンを装備したJAMMA規格基板対応の本格筐体だ。
現在は雑貨店、駄菓子屋、ショッピングセンターなどに、ビデオゲームキッズ筐体とともにレトロゲームのレンタル事業も展開中だ。また、ビデオゲーム基板なしの筐体のみでも販売しているので、興味がある人はレトロPC・ゲームショップ「BEEP秋葉原」などに問い合わせてみるといいだろう。
レトロアーケードゲームを愛してやまないVGMロボット
北関東のレトロゲーム聖地としてVGMロボットの取材を進めるうちに、運営会社のロボットがゲームセンターの運営以外にも、レトロアーケードゲームへのさまざまな取り組みをしていることが分かった。VGMロボットでの店舗営業、基板レンタル、ビデオキッズ筐体開発・販売など、ここまで広範囲の活動でレトロアーケードゲームの魅力を広めようとしている会社もそう多くはないと思う。
大規模なレトロゲームセンターは、どうしてもプレイヤー人口の多い都内や大都市圏に出店される傾向にあるが、深谷という本州の中心近くの土地で営業していることも、地方在住のプレイヤーにとって利用しやすいお店だと言えるのではないだろうか。自動車でも足を運びやすい立地なので、ぜひ一度は訪れてVGMロボットの魅力に触れていただきたい。