「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 第九回 協力プレイ

  • 記事タイトル
    「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 第九回 協力プレイ
  • 公開日
    2020年10月02日
  • 記事番号
    3713
  • ライター
    鴫原盛之

当コラムでは、「ゲームニクス理論」をもとに、なぜゲームがおもしろくなるのか、どうしてプレイヤーはゲームに夢中になってしまうのかを、おもしろおかしくご紹介していきます。

第九回目は、複数のプレイヤーが同時に遊べることでゲームがおもしろくなる、「協力プレイ」がテーマです。
友人たちと「協力プレイ」で遊んだら、1人ではクリアできなかったゲームがクリアできたとか、いっしょに遊んだらいつもより楽しかったという経験が、皆さんもきっとあることでしょう。
今ではFPSやMOBAなど、eスポーツ大会で使用されているゲームには「協力プレイ」、あるいはチーム同士での対戦が当たり前のように導入されていますが、なぜ「協力プレイ」によってゲームがおもしろくなるのでしょうか?
以下、本稿では主に80~90年代にかけて発売されたアクションゲームを中心にピックアップして、その理由を改めて考えてみたいと思います。

「ゲームニクス」とは?
現亜細亜大学教授のサイトウ・アキヒロ先生提唱による、プレイヤーが思わずゲームに夢中になる仕組みを理論・体型化したもの。
本稿では、「ゲームニクス理論」を参考に、ありとあらゆるゲームのオモシロネタをご紹介していきます。「理論」というおカタイ言葉とは正反対に、中身はとってもユルユルですので、仕事や勉強の休憩時間や車内での暇つぶしなど、ちょっとした息抜きにぜひご一読を!

連係プレイを編み出すことでより楽しく、かつ有利に遊べるのが魅力

主にアクションゲームにおいて、プレイヤーが「協力プレイ」の存在を特にありがたいと感じるのは、援軍を得たことで敵を倒しやすくなる、すなわち1人プレイ時よりも攻略が容易になることでしょう。

その典型例のひとつが、ご存知『マリオブラザーズ』(任天堂/1983年)。マリオが敵をひっくり返し、すかさず相方のルイージがキックして倒すといった要領で、2人で連係プレイを編み出すと攻略しやすく、なおかつおもしろくなることは、もはやくわしい説明は不要でしょう。

ほかにも『いっき』(サン電子/1985年)や『ソンソン』(カプコン/1984年)、家庭用でも『ワープマン』(ナムコ/1985年)、『アストロロボ・ササ』(アスキー/1985年)など、連係プレイが楽しめるゲームは古い時代からたくさん存在します。

また、『タイムクライシス』(ナムコ/1996年)や『ザ・ハウス・オブ・ザ・デッド』(セガ/1997年)シリーズなどのガンシューティングゲームも、プレイヤー同士で声を掛け合いながら遊べる楽しさがありますが、ただ2人で画面に向かってガンを撃ちまくり、1人プレイ時より銃声や弾痕が増えるだけも何だか楽しくなりますよね?
  
  

上記のタイトルは、いずれもプレイヤーが操作するキャラクターの性能はすべて共通ですが、プレイヤーごとにキャラクター、あるいは役割がまったく異なる「協力プレイ」ができる作品もいろいろあります。

近年のタイトルから、そのわかりやすい例を挙げるとすれば『スーパーマリオオデッセイ』(任天堂/2017年)になるでしょう。本作では、2人プレイ時は1Pが主人公マリオを、2Pがその相棒である帽子のキャッピーを操作する「協力プレイ」を導入しています。しかも、キャッピーは1人プレイ時とは異なり、制限時間なしで空中を自由に動けるので、2人でうまく連係すれば1人プレイ時よりも攻略がしやすくなるメリットがあります。

あるいは、『ファイナルファイト』(カプコン/1989年)や『D&D』(カプコン/1994年)シリーズに代表されるベルトアクションゲームも、プレイヤーキャラクターごとに性能が異なることで、よりおもしろさを引き出したジャンルであると言えるでしょう。また、3Dアクションゲームの『スパイクアウト』(セガ/1998年)も、「協力プレイ」による多彩な攻撃のコンビネーションが編み出せる秀逸なタイトルでした。
  
  

クイズゲームも、古くから「協力プレイ」のありがたさを体験できるジャンルのひとつです。

例えば、正解が誰もわからない四択クイズが出題され、しかもプレイヤーの1人のライフが残り1個しかなく、1問でも間違えたらゲームオーバーになるピンチを迎えたとしましょう。そんなときは、ライフがより多く残っている側のプレイヤーがヤマ勘で答えることで、たとえ不正解であっても選択肢を1つ減らすことで仲間を助けることができます。そんな間接支援ができるのも、「協力プレイ」ならではのおもしろさと言えるでしょう。
  
  

ゲームによっては、「協力プレイ」時に簡単になり過ぎたり、あるいはアーケードゲームであれば100円で延々遊ばれるのを防ぐため、1人プレイ時よりも敵や敵弾の数が増えるケースがあります。

そこで、「協力プレイ」のときは倒すとパワーアップアイテムを出す敵キャラの出現数を1人プレイ時よりも増やし、ゲームバランスを調整するとともに、プレイヤー同士でアイテムの取り合いになるのを防いでいる例もあります。『1943』(カプコン/1987年)や『雷電』(セイブ開発/1990年)などがこれに該当します。
  
  

ほかにもゲームを攻略するうえで重要なアイテムを、全プレイヤーで共有できるようにすることで「協力プレイ」のおもしろさを引き出している例もいろいろあります。

古いタイトルから例を挙げると、2人同時プレイができるシューティングゲームの『エグゼドエグゼス』(カプコン/1985年)では、画面内のすべての敵弾を消すことができる「クラッシュ」のストック数を、2人のプレイヤーが共有する仕組みになっています。ですから、「クラッシュ」のストックが増えるアイテム「佐吉(さきち:★マーク)」を取ることで、自分自身だけでなくパートナーも支援していることになります。

同様に、2人同時プレイができるファミコン用アクションゲーム『スーパーチャイニーズ』(カルチャーブレーンエクセル/1986年)では、マヨケや宝剣、鏡などの攻略に欠かせない重要アイテムは、アイテムを取っていないプレイヤーにも効果が発揮されるようになっています。
  
  

「協力プレイ」でしか遊べないシステムを導入しておもしろさを演出

「協力プレイ」を選択したときに限り、特殊な武器やアイテムが出現したり、ルールが変わることでゲームをおもしろくしている例もいろいろあります。

例えば『ツインビー』(コナミ/1985年)では、2人プレイ時に自機をタテに重ねた状態でショットを撃つと「スター攻撃」(拡散ショット)、左右に並んで合体すると「ファイヤー攻撃」(正面に強力なショットを放つ)という2種類の特殊攻撃を繰り出すことができます。
同じく、前述の『雷電』や『コズモギャング・ザ・ビデオ』(ナムコ/1992年)などにも、味方の機体を撃つと強力な拡散ショットが撃てるアイデアが搭載されていました(※後者は特定のアイテムを取ったときのみ使用可能)。

ほかにも『BATSUGUN(バツグン)』(タイトー、開発:東亜プラン/1993年)では、2人のプレイヤーが同時にボンバーを発射すると、単独で使用したときよりも強力な「合体ボンバー」が繰り出せるアイデアを導入していました。さらに本作には、「協力プレイ」時はステージクリアするごとに、選択した機体(キャラクター)によって変化するセリフの掛け合いが見られるという、ちょっと変わった演出も盛り込まれています。
  
  

「協力プレイ」によって特殊なアクションが増え、なおかつ攻略がぐっと楽になる優れた作品としては、Wii用ソフトの『NewスーパーマリオブラザーズWii』(任天堂/2009年)を挙げないわけにはいきません。

本作では、最大4人まで同時プレイが可能で、しかも同時プレイ時は、誰か1人がゴール地点に到達すれば、ゴールできなかったほかの3人のプレイヤーもクリアしたとみなされます。
加えて、腕に自信のないプレイヤーは、パートナーのマリオに「おんぶ」で運んでもらったり、敵に触れてもミスにならない「シャボン」の中に入ったまま、ほかの味方にクリアを任せることも可能です。

さらに、各プレイヤーが同時にヒップドロップを繰り出すと、画面内の敵を一掃する強力な「同時ヒップドロップ」になったり、味方の頭を踏み台代わりにすることで、通常よりも高くジャンプできる「協力ジャンプ」などが使えるメリットもあります。
  
  

とりわけユニークなアイデアを導入しているのが、横スクロールシューティングゲームの『スカイキッド』(ナムコ/1985年)。本作では、自機が敵の攻撃を受けるときりもみ状態になって徐々に落下し、そのまま地面に墜落するとミスとなりますが、墜落する前にボタンを連打することで体勢を立て直すことができます。

さらに2人同時プレイ時は、何ときりもみ状態になった味方に向かってショットを当てることでも、元の状態に復帰させることができるという驚愕のアイデアを採用していました。
  
  

「ぜひ、『協力プレイ』で遊んでほしい!」という、開発者の強いメッセージが込められているのが『バブルボブル』(タイトー/1987年)です。なぜかと言いますと、本作で真のエンディングを見るためには、2人同時プレイで全面クリアすることが条件になっているからです。

また、本作は画面がスクロールしない、固定画面方式のアクションゲームですが、ステージによってはマップデザインや敵キャラクターの配置が左右非対称になっているため、2人とも同じ攻略パターンをすればクリアできるとは限りません。よって、2人でいろいろと思案しながら連係プレイが楽しめるという点でも、非常に優れた作品であると言えます。

その他の「協力プレイ」を生かしたアイデアいろいろ

主にアーケードゲームでは、1人プレイのハイスコアとは別に、「協力プレイ」時のスコア(参加プレイヤーのスコアの合計)によるランキングを集計することで、ハイスコア争いによるチーム戦を促している例が古くからいろいろあります。前述の『コズモ・ギャング・ザ・ビデオ』がその一例です。
  
  

「協力プレイ」中に、プレイヤー同士でゲームの腕、あるいは運を競わせる要素をあえて盛り込むという逆転の発想を取り入れて、ゲームをおもしろくした例もたくさんあります。

例えば、『クルクルランド』(任天堂/1984年)や『アイスクライマー』(任天堂/1985年)の両ファミコン用ソフトでは、成績の良かったプレイヤーにのみボーナス得点を加算することで、プレイヤー間で競争をあおるシステムがありました。
  
  

「協力プレイ」の導入によって、ビデオゲームならでのおもしろさを生み出したジャンルのひとつとして特筆したいのがスポーツゲームです。

近年の作品では、コナミの『ウイイレ』こと『ウイニングイレブン』シリーズに導入されている、最大3人で同時にプレイできる(※3対3でのチーム対戦も可能)CO-OPモードがその代表的な例です。本モードでは1チーム11人のうち、参加したプレイヤーがカーソルを合わせた選手を1人ずつ操作することによって、さまざまなコンビネーションプレイを編み出せるところに、1人プレイとは違った楽しさがあります。

『ウイイレ』シリーズと同様に、2人で同じチームの選手を動かして「協力プレイ」ができるアイデアは、『サッカースーパースターズ』(コナミ/1994年)や『リベログランデ』(ナムコ/1997年)といったサッカーゲームのほか、バスケットボールゲームの『スラムダンク』(コナミ/1993年)、『スラムダンク2』(コナミ/1996年)など、古い時代のアーケードゲームですでに導入されていました(コナミ製品が多いですね!)。

このように、サッカーやバスケットボールなど、たくさんの選手がプレイする団体スポーツを題材にしたゲームであっても、わずか2、3人のプレイヤーだけで「協力プレイ」が遊べてしまうところも、ビデオゲームならではのおもしろさだと言えるのではないでしょうか?
この素晴らしいアイデアを最初に採用したタイトルは何だったのか、たいへん申し訳ないのですが、筆者もはっきりとはわかっていません。それにしても、発案者は本当に天才だと思います(もしご存じの方は、ぜひご一報を!)。
  
  

仮説:シューティングゲームの衰退は「協力プレイ」の調整・配慮不足が一因だった?

閑話休題。

主に80~90年代にかけて登場した、背景(マップ)が強制スクロールするタイプのシューティングゲームで、「協力プレイ」が導入されているにもかかわらず、1人プレイでしか遊んだ経験がない、あるいは他人が「協力プレイ」を遊んでいる姿を見掛けたことがないという経験を皆さんはありませんか? これはあくまで筆者の私見となりますが、このようなタイプのシューティングゲームで「協力プレイ」をする光景は、とりわけゲームセンターでは時代の経過とともに、ほとんど見掛けなくなったように思われます。

実は、かつてのゲーム雑誌に掲載されていた、アーケードゲームで全国1位の座をかけて争う「ハイスコアコーナー」では、1人プレイとは別に2人同時プレイのスコアを集計したタイトルもありましたが、1人プレイに比べると集計対象となったタイトルは圧倒的に少ない感があります。

以下、かつて筆者が経験した強制スクロール型のシューティングゲームにおいて、ある時期から「協力プレイ」のモチベーションがガクンと下がり、やがて遊ばなくなった体験談をお話させていただきます。

モチベーションの低下を招いた大きな理由は2つあります。
まずひとつ目は、前掲の『1943』や『雷電』などのように、「協力プレイ」で遊んでもパワーアップアイテム、もしくはアイテムを持った敵の数が1人プレイ時と変わらないゲームが少なからずあったことです。

つまり、2人でアイテムをシェア(または取り合い)する必要が生じるため、フルパワーアップまでの時間が掛かってなかなか爽快感が得られない、あるいは1人プレイのほうが手っ取り早くパワーアップできて敵を倒しやすいので、わざわざ「協力プレイ」を選ぶメリットが感じられないケースがあったわけですね。

もうひとつの理由は、時代が進むごとに縦スクロールシューティングの場合は左右に、横スクロールの場合は上下に任意スクロールする、すなわちマップの横幅(※強制横スクロールの場合は縦幅)が1画面内には収まり切れないタイトルが増えたことです。

なぜ、任意スクロールでモチベーションが下がったのかと言いますと、1人のプレイヤーが画面の端に、すなわち縦スクロールシューティングでは左右の隅に自機を動かして横にスクロールさせると、もう片方のプレイヤーは自機を動かしていないにもかかわらず、マップや敵の位置、敵弾の軌道が任意スクロールした分だけズレてしまうからです。

その結果、予期せぬスクロールが往々にして生じるため必然的に難易度が上がり、自分の意志とは無関係にマップや敵の軌道がズレることでミスになった場合は、非常に納得がいかずにストレスがたまってしまうわけですね。筆者が最初にこれに気付いたタイトルは何だったのかは忘れてしまいましたが、この体験がきっかけで、シューティングゲームで「協力プレイ」を積極的に遊ぼうと思わなくなったのは事実です。

左右、または上下にマップを拡大することで、より広大な世界を演出するアイデア自体はとても優れていると思います。
ですが「協力プレイ」においては、そのメリットがなく、逆に攻略をするうえで支障をきたしてしまうのは大きな問題だったように思います。
たとえプレイヤー間で高い評価を得たシューティングゲームであっても、「協力プレイ」が1人プレイと同様に盛り上がったという話はあまり聞かない印象があるのですが、もしかしかたら上記の理由が大きかったのかもしれません。皆さんはどう思われますか?

この件については、筆者が調べた限りでは先行研究や開発者インタビューなどで言及した記事を見た記憶がないので、今後の研究課題ですね。
  
  

以上、「協力プレイ」のアイデアあれこれを、思い付く限りでまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか?

アーケードゲームでは、古くは『ガントレット』(ナムコ/1986年)や『カルテット』(セガ/1986年)、あるいは『スパイクアウト』などのように、最大4人まで同時にプレイできる専用筐体をわざわざ開発し、「このゲームでしか体験できない遊び」を我々プレイヤーに提供したことも、「協力プレイ」の楽しさが増す一要素になっていたと思われます(※『スパイクアウト』は、汎用のビデオゲーム筐体でも遊べるようになっていました)。

なお、「協力プレイ」に関するくわしい説明は、サイトウ先生と筆者の共著「ビジネスを変える『ゲームニクス』」の「原則3-D-⑫:協力・対戦プレイの導入」のところに書かれていますので、ご興味のある方はぜひご一読ください。

ではまた次回!

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