餅月あんこのゲーセンに行きたい!
第26回「ダライアス女子会をしたい!(中編)」
祝『ダライアス コズミックリベレーション』発売! というわけで、エムツー・辛島由紀子さん、ライターのきらり屋さん、『ダライアス外伝』練習中の弟子サラさんと4人でオンラインダライアス女子会 ~2021春の陣~ を開催いたしました!
前回に引き続き、今回も『GダライアスHD』の移植ディレクターを担当されたエムツー・辛島さんに開発エピソードを中心に色々うかがっていきます!
テアトロ50(EX)はどこに?
辛島由紀子さん(以下『辛』):私も聞きたいことがあるんです。今回この『GダライアスHD』に、テアトロ50筐体をイメージした壁紙を入れたんですけど、私は『Gダライアス』のリリース当時にはまだゲーセンに行ってなくて……当時のゲーセンで、テアトロ50って見たことありますか?
きらり屋さん(以下『き』):私もメガロ50の同人誌(筐体ぼん「スーパーメガロ」)を作ったときに、いろいろ記憶を辿ったり、人に聞いたりしたんだけど、筐体が何か、っていうことに注目してた人は少なくて、でっかい筐体があったのは覚えてて「あの店はタイトー系だったから、じつはテアトロだったのかな」と言いながらも、正確には何だったのかは覚えてない、っていう人が多かったんですよ。
辛:そうですか~!
弟子サラさん(以下『弟』):画像検索してみたら、各メーカーさんの大型筐体って、意外と見た目、似てますね……!
辛:そうなんですよ~(笑)。
――― テアトロ50、振動があるんですよね。
辛:そうです。セガさんのメガロ50も振動があるんですよね。
き:そうらしいですね、最初のやつは。
辛:『Gダライアス』の基板を持って行ってテアトロ50で動かしたら振動するのかな、とか、試してみたかったんですけど、あまり現存してなくて。あの頃『バーチャファイター』が稼働してたのってセガ系のお店だけですか? タイトーのお店にもありました?
弟:昔、池袋の地下、サンシャインの「ザ・ゴリラ」は、セガ系じゃなかったけど、大型筐体があって、メガロだったと思うけど……。
辛:当時、メガロと思い込んでたけど実はテアトロだった、ってこともけっこうあるっぽいんですよね……! 大型筐体の調査はいずれしてみたいなぁと思うんですけど……イーグレット29とか、そのへんもあんまりなくて。
き:私も探したけど、そうですね~。
――― アーケードゲーム博物館さんにないですかね? コロナ禍になっちゃってなかなか遠出できなくなっちゃったんですけど、行ってみたいですよね。あと、テアトロ50はどこかの県にあるっていうツイートを見たような……。
辛:岐阜にあるみたいなんですけど、それはノーマルのテアトロ50筐体なんです。探してるのはテアトロ50EX筐体のほうで。
――― ノーマルとEXの違いっていうのは振動とかですか……?
辛:それが、くわしくはわかってないんです。資料があまりなくて、当時開発してたかたに、口伝でお聞きしたりしてます(笑)。
き:口伝(笑)!
辛:『ダライアス』の初代の筐体は現存しているのですが、途中の時代の筐体が、意外と残ってないんですよ。90年代くらいって、わりと資料を探そうとすると、見つかりにくい年代な気がします。
――― あぁ~、逆に!
辛:そうなんですよ。すごく古いゲームはわりと保管されてるんですけど、汎用筐体みたいなものは見つかりにくかったりします。
――― ゲーム大好きなすごいお金持ちの人とかが集めてほしいですよね……。
辛:90年代中期くらいの筐体を集めてる人は少ないみたいですね……!
処理落ちの仕組み
――― ではちょっとここで、ウワサの処理落ちについてお聞きしていきたいと思うんですが……さとうさん(エムツーのデザイナーさん)も「辛島さんには処理落ちについてぜひどこかのメディアで聞いてほしい」ってツイートしてらっしゃったから、別件でやりとりしたときにちょっと聞いたら、「辛島さんに、処理落ちの『しょ』ぐらい言えば、すごい喋ってくれると思います」って。
一同:(笑)
――― 処理落ちの部分の移植がとにかく大変だったってことなんでしょうか。
辛:そうですね、大変でした! 元ゲームの『Gダライアス』は、ハード性能上の限界やデータの読み込みとかに左右されて、ゲームにスローがかかる(処理落ち)ことが多かったんですね。
――― ふむふむ。
辛:それをPS4やSwitchの様な最新ハードで動かすと、まったく処理落ちしない! なので、ハード側の特性みたいなものを疑似的に、わざと負荷をかけて再現するようなことをやりました。
――― なるほど、そういうことなんですね。
辛:元ゲームが処理落ち前提でゲームバランスを調整しているので、ちゃんと再現しないと、ゲーム性が変わってしまうんですよ。
――― そうなんだ! それをいっぱい微調整したってことですか。すごいですね……!
辛:そうですそうです。基板と移植を同じ条件で比べる必要があるので、基板をまず録画するんですけど、そのときに無敵の状態にしたり……。
――― 無敵?
辛:死なないようにするって意味です。死んじゃうとズレちゃったりするので。そういうので比較しながら見たり。方法がアナログなんですが(笑)。今回の開発期間では詳細な調査が難しかったので、人力というか、手作業でやった感じです。あんまりスマートなやりかたじゃないから恥ずかしいんですが(笑)。本当なら洗濯機で洗えるかもしれない洗濯物を、一生懸命手洗いしたような、そんな感じです(笑)。
――― わかりやすい! そっかそっか、本来はなくていいはずだった処理落ちを、プレイヤーさんがオリジナルと同じ感覚で遊べるように、合わせて作ってるんですね。しかもわざわざ手作業で……!
辛:他にも、『Gダライアス』はデータが大きいゲームなので、ステージの途中で次のマップデータの読み込みなどが行われたりするので、処理落ちしやすくなるんですよ。
――― あ~、そうなんだ!
辛:ゲームの読み込み時にけっこう処理落ちが起きたりするので、そういったところを疑似的にかけたりとか。SwitchやPS4の本来のスペックではそういう処理落ちはまったく起きずに動かせるので、ちょっぱやで進むんですけど、データの読み込みの負荷はこれくらい、とか、CPUの負荷はこれくらい、描画の負荷はこれくらい、とかっていうのを見ながらやるような感じでした。
――― すごい……! もし処理落ちがなかったら、クリアできなかったり、点数が稼げなかったり、アーケードでプレイしたときと同じようにできない! ってなるからですかね。
辛:そうです! 処理落ちがなくなると、さっきお話したビームも長引かなくなっちゃうので、ボスの難しい攻撃をビームの弾消しで乗り越えるような攻略が使えなくなったりとか、そういうプレイ感覚の違いにもつながってしまうというか。
――― なるほどー、そういうことなんですねー!
アーケード版に近い感覚でプレイできるように
――― あとソボクな疑問なんですけど、アーケード版で処理落ちをしてたのはどうしてなんでしょうか? アーケード機ってすごくパワーがあるイメージなんですが……。
辛:『Gダライアス』は、過去の『ダライアス』シリーズに比べて、3Dのゲームなので、データが大きいんですよね。なのでその分読み込みの時間がかかったりする、っていう感じだと思います。
――― あ~、なるほど~!
辛:『GダライアスHD』の処理落ちは完璧にできているわけではなくてまだまだ発展途上なので、そのうちもっと色々とお話できるようになるかもしれないです!
――― なんか、ものすごくがんばってらっしゃるっていうのを。発売後もパッチが出るギリギリまでずっと作業されてたとかっていうウワサを。
辛:今までエムツーで過去のたくさんのゲームを移植して、処理落ち再現のノウハウはあったんですけど、『Gダライアス』の基板は初めての移植だったんです。この基板での処理負荷のかかり具合は奥が深くて、解析をして、テストプレイヤーさんたちにも沢山テストをしていただいて、ギリギリ最後まで調整をしていました。
――― テストプレイヤーさんたちも大変でしたね……! 処理落ちはいずれはプログラムの計算とかでできるようになるかもしれないんでしょうか。
辛:そうなんですよ。まだ「なんでここ半透明処理ないのに処理落ちしてるんだろう、わかんないよね」みたいなことがたくさんあって(笑)。
――― ゲーム性として今の技術だったら処理落ちしないでいけるのに、もとの状態を再現しないといけないっていう……あれ、『GGアレスタ』(※エムツーから発売されている『アレスタコレクション』に収録されているタイトルには、処理落ち再現を切り替えられるオプションがあります)は快適モード(という名前の処理落ち)のオン・オフがあるじゃないですか。『GダライアスHD』は処理落ちのオン・オフはニーズとしてはない感じだったんですか?
辛:なくはないと思うんですけど、今までの移植された『Gダライアス』では、アーケード版の処理落ちを再現できたものがなく、お客さんからの要望も強かったので、今回はとにかくアーケード版に近い感覚でプレイできるように、アーケード版に近づけることだけを考えて作った感じです。
――― なるほど、そうなんですね!
コントローラーの振動の正しい使い方!?
――― ところで私、『GダライアスHD』をPS4のコントローラーでプレイしてるんですけど、めちゃめちゃ震えるじゃないですか。
辛:そうなんです、わざと強めにしてて。『ダライアス』シリーズはシートが振動するので、コントローラーをお尻に当てても振動が感じられるような強さにしてあるんですよ、あんまり大きい声で言えないですが(笑)
一同:(笑)
――― え~、本当ですか!?
辛:2P側のコントローラーも接続しておくと振動するようになってるので、1Pのコントローラーでプレイしながら、2Pのコントローラーをお尻に当てて、筐体で体験するのに似てるような振動を……というようなこともできます(笑)。ケイブのシュー太郎さんが実際に『ケイブるてれび』でやってくださってて。
――― そうなんですか!?
辛:『ダライアス コズミックコレクション』で、実際にお尻に敷いて「キタキタキタキターッ」ってやってる配信があって、ああ、使いかたをよくわかってくださってるなと(笑)。
参考リンク:シュー太郎さんがSwitchのコントローラーで振動を実演されているツイートはこちら – ケイブるてれびTwitterアカウントより
――― さすがですね……!
辛:なので、筐体っぽいイメージで振動は強めにしてるので、強すぎるな、と思ったら、弱くしたり、OFFにしたりしていただけると。
――― なるほどー。こんなにコントローラーがブルブルするの初めて、ってくらいだったので、プログラム的に振動の強弱があるのかなと思って。設定としては最大ぐらいの振動なんじゃないでしょうか? これ。
辛:ありますあります。『GダライアスHD』のコントローラーの振動はそれでも最大よりはちょっと抑えめにしたんですが、他の家庭用ゲームに比べたら強めだとは思います。
――― あんなにブルブルすると思ってなかったのでけっこうビックリしました(笑)。
中編あとがき
ダライアス女子会、次回はみなさまからお寄せいただいたQ&Aスペシャルです!
どうぞお楽しみに~!
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