「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 第十四回 コレクション

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    「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 第十四回 コレクション
  • 公開日
    2021年05月28日
  • 記事番号
    5313
  • ライター
    鴫原盛之

当コラムでは、「ゲームニクス理論」をもとに、なぜゲームがおもしろくなるのか、どうしてプレイヤーはゲームに夢中になってしまうのかを、おもしろおかしくご紹介していきます。

第十四回目のテーマは「コレクション」です。

現在では主にPC・スマホ用ゲームにおいて、いわゆるガチャによって新たなキャラクター、あるいはアイテム類を収集することがプレイヤーにとって大きな楽しみとなっており、同時にメーカーが収益源として利用している例は、もはや数え切れないほど存在します。
『ねこあつめ』(ヒットポイント/2014年)のように、庭先に集めたネコを愛でるだけという極めてシンプルな内容ながら、「コレクション」に特化した内容で大人気を博したタイトルがあることも、きっと多くの皆さんがご存知のことでしょう。

ビデオゲームにおける遊びの要素を動詞で表すと、例えば『ブレイクアウト』(アタリ/1976年)はブロックを「崩す」であり、『パックマン』(ナムコ/1980年)であればクッキーを「食べる」となりますが、ガチャに限らず「コレクション」、すなわち「集める」という行為も、古くからいろいろなタイトルに導入されている遊びの一要素であるように思われます。

以下、「コレクション」の要素を導入したゲームをいろいろとご紹介しつつ、なぜプレイヤーは「集める」という行為によって、ゲームについつい夢中になってしまうのかを考えていくことにしましょう。

「ゲームニクス」とは?
現亜細亜大学教授のサイトウ・アキヒロ先生提唱による、プレイヤーが思わずゲームに夢中になる仕組みを理論・体型化したもの。
本稿では、「ゲームニクス理論」を参考に、ありとあらゆるゲームのオモシロネタをご紹介していきます。「理論」というおカタイ言葉とは正反対に、中身はとってもユルユルですので、仕事や勉強の休憩時間や車内での暇つぶしなど、ちょっとした息抜きにぜひご一読を!

  

「コレクション」はRPGにおける定番の遊び

多くの皆さんが、「コレクション」が楽しいゲームで真っ先に思い付くのは、やはり『ポケットモンスター赤・緑』(任天堂/1996年)を第1弾とする『ポケモン』シリーズになるのではないでしょうか? 行く先々でポケモンたちをゲットし、ナンバリングされた「ポケモン図鑑」を埋めていく楽しさは、もはやくわしい説明は不要ですね。
  

『ポケモン』シリーズに限らず、とりわけRPGでは主人公たちが装備する武器や防具、あるいは敵を倒すとドロップするアイテム類を「コレクション」するのも大きな楽しみかたのひとつです。

また「コレクション」をすべて集めると、「アイテムマスター」などの特別な称号をプレゼントされるなど、プレイヤーの努力を称える演出を取り入れたタイトルも少なくありません。特に、称号の種類がたくさん登場するタイトルの場合は、称号自体も「コレクション」として機能することになります。
  

ところで、ビデオゲームにおいて「コレクション」する楽しさを最初に盛り込んだタイトルは何だったのでしょうか? 大変申し訳ないのですが、正確に「これが元祖」と断定できるタイトルは今のところまだわかっていません。

古くから、「コレクション」の楽しさを多くのプレイヤーに知らしめた代表例としてハッキリと断言できるのは、RPGの古典的名作『ウィザードリィ』(サーテック/1981年)シリーズです。

本シリーズに登場する「ボルタック商店」は、アイテム類を販売するだけでなく、プレイヤーが入手したアイテムを売ることもできるのですが、売却したアイテムは消滅せず、以後お店の商品リストに追加されます。つまり、商品リストがプレイヤーの努力、実力を示す「コレクション図鑑」としても機能するわけですね。

元祖『ウィザードリィ』の開発者、アンドリュー・グリーンバーグとロバート・ウッドヘッド両氏が、あらかじめ「ボルタック商店」を「コレクション図鑑」にも活用できる構想を持っていたのかはわかりません。ですが、結果的にこのシステムがプレイヤーから熱狂的な支持を得る大きな要因のひとつになったことは間違いないでしょう。
「コレクション」の楽しさを知らしめたという意味でも、『ウィザードリィ』シリーズはエポックメイキングな作品であるように思えてなりません。
  

アイテムの「コレクション」を販促イベントに利用したおもしろい例としては、シミュレーションRPGの『タクティクスオウガ』(クエスト/1995年)があります。

本作では、シナリオをある程度まで進めると地下100階まで存在する広大なダンジョン、「死者の宮殿」が出現します。このダンジョンは無視したまま先に進んでもエンディングに到達することは可能なのですが、ここでしか入手できない強力なアイテムがたくさん存在しますので、明らかに「コレクション」を遊びの一要素として盛り込んでいます。

さらに「死者の宮殿」には、最深部に最低2度到達することが入手条件となる、獲得難易度が極めて高い秘宝、その名もファイアクレストというアイテムが登場するのですが、実は本作の発売当時、ファイアクレストを入手したプレイヤーを対象にした、画面写真を撮影してメーカーに送ると抽選でグッズが当たるキャンペーンが実施されていました。

リアルの販促イベントに、ゲーム内の「コレクション」を利用していた事例があったことも、ゲーム史上に残る出来事と言えるのではないでしょうか?
  

リアルの「コレクション」要素を導入して大ブレイクしたカードゲーム

「コレクション」の要素を取り入れることで、大ヒットを飛ばしたタイトルとして忘れてはいけないのが、『遊戯王デュエルモンスターズ』(コナミ/1998年)と、アーケード用サッカーゲームの『WCCF』こと『WORLD CLUB Champion Football SERIE A 2001-2002』(セガ/2002年)を嚆矢とするカードゲームのシリーズです。

『遊戯王』は、プレイ中に入手した(デジタルの)カードを前述の『ポケモン』シリーズと同様に、通信ケーブルを利用してほかのプレイヤーとトレードできるようになっていました。つまり、リアルのトレーディングカードと同様の方法で「コレクション」できるようにしたわけですね。

さらに本作では、トレード時にカードの組み合わせによっては、何と送り先のプレイヤーが受け取るカードが変化してパワーアップすることもあります。リアルのカードではけっしてできない遊びかた、その名も「融合」という斬新なアイデアを導入していた点でも本作は特筆に値します。

『WCCF』シリーズは、1プレイごとに1枚もらえる(※後期のシリーズでは、クレジットを投入するとカードを追加購入できるシステムも導入されました)、実在のサッカー選手の写真がプリントされたトレーディングカードを集めてチームを作り、選手を育てながら試合をする新しい遊びを実現し、稼働を開始した直後から大人気を博しました。現在でも後継のシリーズとして『WCCF FOOTISTA2021』(セガ/2021年)が稼働を続けています。

『WCCF』の大ヒットを皮切りに、同じくセガの『甲虫王者ムシキング』(セガ/2003年)や『おしゃれ魔女 ラブ&ベリー』(セガ/2004年)をはじめ、多くのカードを「コレクション」して遊ぶタイトルが次々と登場するようになりました。
今でもカードゲームは、アーケードの定番ジャンルのひとつとなっていることからも、バーチャルでもリアルでも、カードゲーム用のカードを「コレクション」する行為の楽しさに変わりはないようですね。
  

また、カードゲームではありませんが、PS2版『J.LEAGUEプロサッカークラブをつくろう!3』にも「コレクション」する楽しさが増す工夫があります。

本作には、現役を引退した選手のバストアップ写真を「記念アルバム」に登録したり、特定の選手を獲得すると「選手名鑑」にトレカのようにデザインされたイラストが入手できる機能がありますので、サッカーあるいはスポーツトレカのファンであれば思わずニヤリとしてしまうことでしょう。

実名で登場するスター選手、あるいは未来の逸材を見付けてチームを強化する楽しさとは別に、ある共通項を持った選手を探し出して獲得を目指す「コレクション」の要素も盛り込むことで、遊びの幅をさらに広げているわけですね。
  

アクションゲームの遊びの幅も広げる「コレクション」システム

ここからはアクションゲームに導入された、プレイヤーの挑戦意欲を掻き立てる「コレクション」の例をご紹介します。

「コレクション」が、シリーズ定番の遊びのひとつになった代表例は、やはり『スーパーマリオブラザーズ』(任天堂/1985年)シリーズになるでしょう。本シリーズには、特殊なコインなどの「コレクション」を増やすことによって、新たなステージにチャレンジできる特典が追加されるシステムがあることは、おそらく皆さんもよくご存知でしょう。

元祖『スーパーマリオ』にはこのシステムがありませんが、続編の『スーパーマリオブラザーズ2』(任天堂/1986年)には、大魔王クッパを倒してエンディングに到達すると獲得できる★マーク(※タイトル画面に表示されます)を8個以上集めると、ワールドA-1以降の追加ステージが遊べるアイデアが早くも登場しています。

また『スーパーマリオオデッセイ』(任天堂/2017年)では、パワームーンを一定数以上集めるごとに、新たな国(ステージ)へと進めるようになります。「コレクション」を増やすためには、プレイヤーの死角になりやすい位置に隠されたパワームーンを発見したり、少しでも操作を誤ると即ミスになる場所にあるパワームーンを取るテクニックが必要となります。つまり、パワームーンの獲得枚数がプレイヤーの実力を示すバロメーターの役割も果たすことになります。

本作も『スーパーマリオ2』と同様に、大魔王クッパを倒してエンディングを見るためには、すべてのパワームーンを入手する必要はありません。その代わり、最後に隠された難易度の高いステージも含めて全面クリアするためには、ほぼすべてのパワームーンを集めることが必要となります。

ほかのシリーズ作品でも、『NewスーパーマリオブラザーズWii』(任天堂/2009年)ではスターコインが、『スーパーマリオ3Dランド』(任天堂/2011年)ではスターメダルがパワームーンと同じ役割を果たしています。
このような「全ステージ制覇のためには、アイテムを『コレクション』することが必須になるぞシステム(仮称)」は、もはや『スーパーマリオ』シリーズの名物と言っても差し支えないでしょう。
  

「コレクション」を増やした報酬として、遊べるステージやアイテムが増える特典を用意したタイトルはまだまだたくさんあります。特に、ガラケー時代からの携帯・スマホ用のアクション、あるいはアクションパズルゲームに多く見られる印象があります。

例えば、ステージごとの成績を★マークや勲章などを表示する形で3または5段階で評価し、一定数以上のマークを「コレクション」すると未知のアイテムがもらえたり、先のステージに進むためルートが解放されるなどといった要領ですね。皆さんも、このようなシステムを導入した携帯・スマホ用ゲームを遊んだ経験をきっとお持ちのことでしょう。
  

ここで、ちょっと閑話休題。

ビデオゲームの黎明期は、プレイデータをセーブしながら遊べるタイトルがなく、そもそもハード側にセーブ用のメディアが搭載されていませんでした。やがて、PC用ゲームではカセットテープやフロッピーディスク、ファミコンであればディスクシステムやバッテリーバックアップROMを使用することでセーブができるようになりました。

ビデオゲームにおける「コレクション」システムの進化の歴史は、そんなメディアの技術的発展とは切っても切れない関係にあると言えるでしょう。もし前述の『ウィザードリィ』にセーブ機能が搭載されていなければ、膨大なプレイ時間を費やしてキャラクターを育てたり、アイテムを「コレクション」しようと思う人は多分ほとんどいなかったハズです(当時としては画期的なタイトルゆえ、人気は出たとは思いますが……)。

『NewスーパーマリオブラザーズWii』も、セーブ機能があるWiiで発売したからこそ、スターコインの「コレクション」による追加ステージのプレゼントが可能になったと言えます。セーブ機能なしで、毎回電源を入れるたびに1面から始めて、すべてのスターコインを集めながらワールド9クリアを目指すのは、いくらなんでも非現実的ですよね。

では、古い時代のアーケードや家庭用ゲームは、セーブ機能がなかったせいで「コレクション」の要素があるタイトルは一切存在しなかったのかと言えば、けっしてそうではありません。

例えば『ドルアーガの塔』(ナムコ/1984年)は、剣で敵を攻撃するだけでなく、数々の隠されたアイテム(宝箱)を発見して「コレクション」する遊びも同時に楽しめるのが特徴です。しかも、全ステージをクリアするためには入手が必須となるアイテムがいくつもありますので、本作では「コレクション」が絶対に欠かせない遊びの一要素になっているのです。

また『レインボーアイランド』(タイトー/1987年)には、ワールド1~7で特定の方法で敵を倒すと出現する7色のダイヤモンドをすべて集め、なおかつボスを倒すと出現する大きなダイヤモンドをすべて取ると、ワールド8以降のステージに進めるアイデアが導入されていました。

先程、『スーパーマリオ』シリーズには「全ステージ制覇のためには、アイテムを『コレクション』することが必須になるぞシステム」があると説明しましたが、実は80年代に登場したアーケードゲームにも同じアイデアが導入されていたことには、今さらですが驚かされるばかりです。
  

新たな付加価値をもたらす「コレクション」を利用したおもしろいアイデア

ゲームの本編とは直接関係ない場面で、プレイヤーへのプレゼント的な要素として「コレクション」を導入することで、ソフトにさらなる付加価値を持たせた例もいろいろあります。

例えば、プレイステーション版の『鉄拳3』(ナムコ/1998年)は、アーケードモードでエンディングまで到達すると使用したキャラクターごとに異なるムービーが流れますが、一度見たムービーは以後、いつでもシアターモードで再生することが可能となります。

実は、このシアターモードの存在はマニュアルには書かれていません。つまり、ムービーデータの「コレクション」ができる機能自体を、プレイヤーを驚かせる仕掛けとしても利用しているわけですね。またシアターモードでは、初代『鉄拳』(ナムコ/1995年)と『鉄拳2』(ナムコ/1996年)のディスクを読み込むと旧シリーズのムービーも再生できる、ファンの心をくすぐる独創的なアイデアも盛り込まれていました。
  

ほかにも、「コレクション」を導入したおもしろい例としては、プレイステーション2用ソフト『カプコン クラシックス コレクション』(カプコン/2005年)があります。

本作は、『ストリートファイターII』(カプコン/1992年)や『魔界村』(カプコン/1985年)など、カプコン歴代のアーケードおよびスーパーファミコン用ソフト22タイトルを収録したオムニバスソフトですが、各タイトルでプレイ中に特定の条件を満たすと、いつでもインストカードや開発資料の閲覧、アレンジ版のBGMが聴けるなどの特典が獲得できる、文字どおりのお遊びが用意されています。
  

近年のタイトルで、開発スタッフが意図して「コレクション」をする楽しみを用意した代表例としては、『大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL』(任天堂/2018年)をはじめとする『スマブラ』シリーズがあります。

本シリーズでは、プレイヤーが入手したアイテム類を随時登録する「フィギュア名鑑」のほか、総プレイ回数や勝利数などの条件を満たすごとに、さまざまな報酬が得られる「クリアゲッター」と呼ばれるシステムなどが導入されています。(※初期のシリーズに「クリアゲッター」はありません)

「クリアゲッター」で得られる報酬は、バトルの際に使用できるアイテムをはじめ、キャラクターのフィギュア、アイテムとの引き換えに利用するポイント、あるいはいつでも好きなBGMが聴けるCDなど、実にバラエティに富んでいます。さらに「クリアゲッター」のメニューを開くと報酬のリストが表示され、遊ぶたびに「コレクション」がどんどん増えていく楽しさも満喫できます。

一度獲得した「クリアゲッター」の報酬に隣り合った未知の報酬は、その獲得条件が公開されるなど、プレイヤーを飽きさせない工夫が施されているのも見逃せないポイントです。
獲得条件のなかには非常に難易度が高いものも存在しますが、アイテムのゴールデンハンマーを集めておくと、たとえ獲得条件を満たしていなくても、ハンマーで破壊することで報酬がゲットできる、一種の救済措置を用意しているアイデアも特筆に値します。
  

以上、今回は「コレクション」をご紹介しましたが、どんなご感想をお持ちになったでしょうか?

「コレクション」導入の参考例として、いくつかの古いアーケードゲームもご紹介しましたが、そのルーツを細かくさかのぼると、おそらくアナログ時代のフリッパー、すなわちピンボールやスロットマシンに行き着くように思われます。

なぜならピンボールには、特定のギミックをすべて倒す、あるいはランプを点灯させるなどの条件を満たす、すなわち「コレクション」をそろえると、ボールがエクステンド(1個追加)したり、バックボードに仕組んだボーナスゲームが遊べるようになる、などといったギミックがいろいろあったからです。

もしこれらの歴史をつぶさに調べたら、それだけで「ゲームシステムにおけるコレクション論」とでも題した、ひとつの論文が書けてしまいそうですね。

なお、「コレクション」に関するくわしい内容は、サイトウ先生と筆者の共著「ビジネスを変える『ゲームニクス』」 の「原則3-D-⑦ コレクション性の導入」に掲載されていますので、ぜひご一読をおすすめします。

それでは、また次回!

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