餅月あんこのゲーセンに行きたい!
第9回「土屋昇平さん&SATOMIさんの音楽の話を聞きたい!」(中編)
前回に引き続き、タイトーのサウンドチーム・ZUNTATAの土屋昇平さんと、奥様でボーカリストのSATOMIさんのダブル・インタビューをお届けします!
ほんとは、『グルーヴコースター』(2013年/タイトー)を一緒にプレイさせていただく、というだけの企画だったのに、なぜか大ボリュームのインタビューに!
今回も、おふたりと一緒にビールを飲んでるような気持ちでマッタリとお読みいただければ幸いです!
(※このインタビューは2020年3月上旬に行いました。)
※インタビューの前編は、こちら。
ゲーム以外でも……
昇:(メニューを見ながら)クリームブリュレもすごい美味しそうだよねぇ~~~。
―― 今って土屋さん、お酒まわってる状態ですか? お強いのですか?
S:全然強くないんですが、酔っぱらうことはないです。
昇:アルコールの限界はあるんですよ。だいたい12オンス……350mlの缶ビールが2本。
―― オンスで言われた!
昇:ないし、3本で終わりです。
―― 適度な楽しい感じでいいですね。
昇:これ僕が一番やってるSNSなんですが、ビール専門のSNSなんですよ。
―― ビール専門のSNS!?
昇: untappdっていうんですけど、みんながそのとき飲んだビールを、ただつぶやくだけ。
―― おもしろい(笑)! そんなのあるんですね!
昇:みんながメモ代わりに、「これ美味しかったよー」みたいな。
―― SATOMIさんもやってるんですか?
S:私は全然(アルコール)ダメなんで。
昇:彼女はまったく飲まないんですよ。
―― けっこう色々違うところもあるんですね。
S:そうなんです、全然違いますね。
―― でもいつもすごく仲が良さそうで、素敵ですよねホント。6コ上ってかなり違うじゃないですか、文化が。
S:そうそうそう。でも私、近くに住んでる親戚が(昇平さんと)同い年なんですよ。そういうこともあって、感覚としてはあんまりジェネレーションギャップを感じたことはないんです。
―― そっかー!
S:イトコのお兄さんお姉さんそうだったよねー。みたいな。
―― そうか、お姉さんもいらっしゃるし、私はひとりっ子なのですごく思うんですけど、兄弟がいる人って文化も色々入ってるし、わかってくれてて話しやすいところすごくありますよね。
S:そうかもしれないですねー。弟がいるので、年下はこう接すればなんとかなる、みたいなのはあります(笑)。弟は6つ離れてるんです。
―― SATOMIさんって、何だか先生みたいな感じがします。
S:先生とは違うけど……「ICT支援員」というのをやってます。週に1回、学校に訪問しているんです。
―― 小学校ですか?
S:小学校と中学校ですね。私は、基本的には小学校のみの訪問なんですが、中学校にもたまに行ったりします。
昇:週に3~4回、いくつかの学校に行ってる状態ですね。
―― これは原稿に書いても大丈夫なんでしょうか?
S:全然大丈夫です。むしろ書いていただいて。
昇:広めてほしいですね。
―― わかりました! ちなみに、ICT支援員というお仕事を全然知らないのですが、どういうことをされるんでしょうか?
昇:学校の先生って、今って、わら半紙とかそういうあまり使わないですよね。
―― わら半紙? プリントとか印刷物のことですか?
昇:そうそう。そういうのを、タブレットを使ったりとか。
S:まだプリントは使ってますね(笑)。えっと、これは自治体によって違いますが、私が行ってるところって、PC室に40台のタブレットがある環境なんです。普通の教室に持って行って使うこともできるし、たとえば体育の動画なんかも撮ることができるんです。で、その作業を先生が1人で行うのってかなり大変なんですよ。で、私がそれをサポートする、と。あと、授業でのICT活用について先生がたから相談を受けたり、実際その相談を受けた授業に入って先生や子どもたちのサポートをしたりします。
―― へぇ~!
S:その他、先生がたからのPC関係で使い方を教えてほしい、というお問い合わせに対応したり、Officeの使い方について困っていたら、コツなんかを教えたり、教材づくりのお手伝いをしたり、ちょっとした研修をしたり、ホームページの更新を手伝ったり……みたいな、校内のICT周りのお手伝いも私達の仕事です。
―― なるほど! ICT支援員さんってそんな色んなことをするんですね……! 全然知らなかったです。
土屋昇平さんとファミ通
昇:「ファミ通」は大好きでしたねー。編集者っていうのは僕にとって芸能人と同じ立ち位置だったんですよ。
―― わかります、わかります。
昇:水野店長さんや東府屋ファミ坊さんとか、謎な呼び名がついてるし……イザベラ永野さんとかも。
―― そうですね(笑)。
昇:この前、忍者増田さんにもお会いすることがあって、ご本人はわかってないかもしれないけど、僕ら(当時の)小学生にとっては、ホントに芸能人だったんですよ。完全にアイドルだったし。(ゲーム帝国の)総統とかね……どんだけ真似したかって話ですよ。語り部がすごい好きでさぁ……(とSATOMIさんに訴える)。
S:よく言ってますね。
昇:僕はゲーム雑誌すっごい読んでたんですよ。「ファミマガ」、「マル勝」も読んでました。途中から「月刊PCエンジン」なんかも読み始めて。ゲーム雑誌すっごい好きだったけど、ゲームの情報を得たかっただけじゃないんですよ。
―― と言いますと?
昇:やっぱり読者コーナーの秀逸さ。その中でも「ファミ通」はちょっと別格だったんですよね。「マル勝」も「ファミマガ」もおもしろかったんだけど、「ファミ通」のホントにね、あの……シュールなセンスが。お習字のコーナーが好きだったんですけど、意味がね、もう、わかんないの(笑)。
―― ですね~。
昇:あと、福田有宵先生の占いも。獣神サンダーライガーさんのコラムも超大好きで。買ったらゲーム記事より先にゲー帝のページを開いて、町内会読んで、って感じでした。お習字は何回か投稿しましたもん。採用されなかったけど、1回も!
―― ああ、編集部、もったいないことを!
S:字が汚いから(笑)?
―― ツッコミが!
昇:いや、お習字は、字がきれい、汚い、じゃないんだよ! おもしろさなんだよ! ホントおもしろいんだよ「ファミ通」は。最高。
S:よく言ってるんですよ。「ファミ通」良い、良いって。
昇:俺の青春の雑誌なんで。桜玉吉先生の『しあわせのかたち』も単行本全巻持ってたんですけど、ホントにとんでもないおもしろさで。あと、TACO Xさんとか気になるんですよ。いつも厳しい点数出す人。
S:点数……あぁ、クロスレビューでね。
―― すごい! その頃リアルタイムでは読んでなかったっておっしゃってたのに、よく話を拾いますね。すごいなー!
S:いや、私、何も(笑)。
―― すごいバレーボールの試合を見てるような気持ちになってきました。
昇:うん……(満足そうに)。
S:学校に行って、いろんな人と触れ合ってるからですかね(笑)。
―― 投げて打てる、ダルビッシュみたいな……。
S:でも多分、昇平さんと一緒になって、昇平さんの話が唐突すぎるときがあったりするから(笑)。
昇:え、そう?
S:「え、その話全然わかんない!!」みたいなのが。
―― SATOMIさんに説明足りないこと多いなぁって今日ここまで見てて思いました(笑)。
S:補足しないとね(笑)。(←わからない部分をSATOMIさん自身が察して補足するという高等テク)
昇:だって鈴木みそ先生の漫画とか青春だったからさぁ。
―― 話が続いてますね。
S:スイマセン、なんか。
―― いや、すごいですね! いや~、勉強になります(笑)。
S:でも自分のライブとかでMCが得意かって言われると、苦手なんですよ(笑)。
―― MCは何か別のスキルですよねぇ。でも配信とか向いてそうですね。以前土屋さんの配信をお見かけしましたが、お2人のトークを配信したりはしてないんですか?
S:してないですね。
―― 掛け合いがすごいおもしろいのですけど……土屋さんはTwitterではクールなイメージですけど、直接お話をうかがうとすごくやわらかい感じで、印象がだいぶ違いますよね。
S:そうそう、Twitterだとちょっと硬派な感じですよね。
―― しかもクールなのにちょいちょいおもしろいこと混ぜてくるじゃないですか。
S:ICT支援員の仕事で、子供と直接接するんですよ。で、子供がおもしろいことを言ったらツッコムみたいな(笑)。
―― ああ、先生とやりとりするだけじゃなく。
S:授業に入って、指導は直接はしないんですけど、困ってることがあったら「ここはこうしたほうがいいよ」とか「一緒に探してみようか」っていう感じで。
―― へぇ~! そうそう、さっき、『グルコス』やりながら教えてくれる感じがすごい慣れてて、先生っぽいと思って(笑)。そうか、カメラマンもやられてて、ICT支援員もされてて、歌も歌われてて……まだ何か隠してることあります!?
S:いや、多分、ないんじゃないですかね(笑)。
―― しかもツッコミも上手いし。SATOMIさんご自身としては、一番力を入れてるのはどの部分なんですか?
S:一番やりたいのは音楽なんですけど。ICT支援員のほうでも得られるものがたくさんあるのでバランスは取れてる感じです。
―― でも『グルコス』にも歌が入ってるし、イベントにも出られてるし、ファンのかたもいらっしゃるし。
S:そうですね。『グルコス』に関してはダンナさんは私に歌わせるのはあんまり、だったみたいなんですけど(笑)。
『グルーヴコースター』について
昇:彼女に歌ってもらったのは、最初、仮歌みたいな感じで歌ってもらって、後で別の人に……っていうつもりでやったっていうのもあるんですけど……最終的に歌ってはもらったけれども、まぁ、しょうがない(?)。
―― またまた! SATOMIさんのボーカル曲、さすがだなと思いました。雰囲気合ってるし。
S:ありがとうございます、ホントに。
―― だって歌詞もねぇ……『ZUNTATA RARE SELECTION “SHOHEI TSUCHIYA WORKS”』(Youtube視聴はこちら)は、聴いたら1曲目がいきなりSATOMIさんのボーカル曲で、かっこよくて震えましたよ。
昇:僕はボーカル曲、声はゲームにわりと入れていきたいんですよ。そもそもは。可能な限り。
―― ボーカル曲、すごく良いですよね。SATOMIさんは歌詞も書かれてますよね。
S:『Smash a mirror』(『グルーヴコースター』収録曲)の時は、〆切がかなり迫ってたのに、突然「曲できたから、歌詞書いて」って言われたんですよ。で、「書けなかったらこの話ナシね」みたいな(笑)。で、必死で書いて(笑)。
―― ひぇー! そうだったんですね!
S:で、どういうイメージか聞いたら、「紫のメガネが樹に刺さってるイメージ」とか……。
昇:紫じゃなくて緑ね。
S:緑か。
―― え!?(笑)
S:何かわけのわからないことばっかり言われてて(笑)。
―― そのキーワードだけで歌詞を書かなきゃいけないんですね!
S:書けるわけないじゃん、っていう(笑)。
―― (歌詞を確認して)入ってないですよね、メガネ(笑)。
S:もうええわ、私の勝手でいく、みたいな(笑)。で、こうなりました。
昇:緑色のメガネが樹に刺さるのは、僕の重要なイメージなんです。
S:意味わからへんし!
昇:え、そうなの? 何で?
S:ホンマにわからなさすぎて、メガネと樹の絵、描いとったもん、そのとき(笑)。
―― えらい……! 理解しようとしてる……(笑)。
S:最終的に『It’s a pit world』が、(土屋さん曰く)「このクソみたいな世界」みたいな感じのイメージとのことだったので。
昇:どの作曲家もそうだと思うけど、僕はできるだけ、音楽を作るときにはメッセージを込めたいんですよ。「何となくそのシーンに合うから」ではなくて、しっかりとしたメッセージを込めたいと思ってます。特に音ゲーだと単体で生きてくるから。
―― なるほど。
昇:「プレイして楽しい」っていうのは二の次で、その音楽自体に、きちんとしたメッセージを、僕は乗せたい。
―― へぇ、そうなんですね! プレイ感が二の次ってすごい衝撃的なんですけど!
昇:プレイ感は他の人が作ってくれるので(笑)、譜面を書く人にがんばってもらって。僕は、単純に、音楽なのでね。
S:でもあれやで、『It’s a pit world』……プレイヤーの皆さまには通称「ツァピ」って呼んでもらってる曲なんですけど、歌詞で、「My brain’s turning green rapidly.」ってあるんですけど、「自分の脳みそが緑色になる」っていう意味で(笑)。
―― ここで緑が!
昇:この曲の作詞は僕なんです。
―― ほぉ~……。それにしても、プレイ感よりメッセージを優先してるゲーム音楽家のかたってあまりいないのでは……普通逆では……?
昇:その曲が存在する意味があるのかなぁ……と思っちゃうんですよね。だからやっぱり、何を伝えたいのか、っていうのはしっかり表現していきたいですよ。じゃないと、これだけ世の中にたくさん音楽があって、ゲームもたくさんあって、僕はやっぱり、表現したいことがあるから(音楽を)やっているんで。
S:『Smash a mirror』も、パッと聴いた感じはおしゃれな感じなんですけど、歌詞をよく見ると、「すごい深刻なこと言ってない!?」みたいな感じなんですよ(笑)。
―― あ、けっこう怖いですよね。
S:リリース当時、エゴサして(曲の感想を)見てみたら、「トンカチで頭を殴られたような感じだ」とか(笑)。
―― それは狙いどおりというか、いい意味じゃないですか?
S:そうですね。その曲をきっかけに変わろうとしていたかたもいたりして。
―― へぇぇ、聴いた人の人生にも影響を与えて。
S:そう、それはすごい嬉しかったな~。言葉の力ってすごいよね~。
昇:うん。
―― それはいい歌詞を書いたからですね。
S:まぁ、必死でしたけどね。無我夢中に書いて「何かできた!!」みたいな(笑)。タイトルが最後まで決まらなかったんですよ。「タイトルどうする」って言ってて、いろんなタイトルをバーッといろいろ言われて。こういう突拍子もない人なので、突拍子もないタイトルを(笑)。
昇:突拍子もなくないよ? 意味はあるの!
S:でも最終的に『Smash a mirror』っていうのが出てきたので、それ! って。
―― ちなみにどういう意味なんでしょうか?
S:歌詞の中に「Smash my heart. Smash to pieces.」っていうフレーズが出てくるんですけど、「今の自分がイヤだから、叩き割る!」みたいな。
昇:ホントはこれも僕が歌詞を書こうと思ってたんですけど、『It’s a pit world』があまりにも暗い歌詞だったので、彼女がそのアンサーソングとしてすごく書きたいって言って。もうちょっと希望を持たせたいと。僕はあんまり「希望」っていうのは表現したくないので。
S:そこでいわゆるミュージシャンの方向性の違いですよ(笑)。
―― バンドがよく解散するやつ!
S:そうそうそう(笑)。バンドがよく解散する理由のひとつの、方向性の違いが生まれるわけです(笑)。
昇:僕は「希望なんてないだろう!!」みたいな(笑)。
S:でもやっぱり仕事で子どもと接してるからか、絶望だけだと良くないな、と思って(笑)。
昇:彼女は、「希望」をちゃんと伝えたいというのがあって、アンサーソングとして、この歌詞は全部、彼女が考えたんです。「希望」っていうコンセプトで。
―― そうなんですね~! なるほど。
昇:僕が作った『It’s a pit world』は、まぁ絶望というわけでもなくて、世の中クソだけど、クソならクソなりの生き方がある、世の中なんてみんなが思ってるほどいいもんじゃないよ、っていう歌詞なんですよ、端的に言うと(笑)。
S:『Smash a mirror』は、「However…(和訳:でもね……)」で(歌詞が)終わってるんですよ。
―― ああ、気になります、それ。
S:「希望」とはいえ、最後は、こちらが答えを与えるわけじゃなくて……これね、ドリカムの吉田美和さんの影響なんですけど(笑)、あくまで歌詞はその人に届いたらその人の解釈で……っていうのを目指して、こういう終わりかたなんです。
―― ああ~、なるほど。
S:だから、「However…」の次は希望なのか絶望なのか、実はハッキリさせてないんです。
―― それは聴く人に委ねるっていうことですね。
というわけで、続きは次回の「後編」で。
最後までお読みいただき、どうもありがとうございました!
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