セガパステルカラーは永遠に
『スペースハリアー』ほど、多種多様なゲームハードに移植されている作品は少ないでしょう。
ゲーム史に燦然と輝くあのギネスブックホルダー『パックマン』に勝るとも劣らない、いやその『パックマン』と移植数において世界で1、2を争っているのは『スペースハリアー』であるというのは紛れもない事実です。
私もこの『スペースハリアー』は“特に好き”だったゲームだったこともあり、アーケード版と出会う前に購入したセガ・マークIII版を筆頭に、その後は移植されるたびに購入していたものです。
X68000版、PCエンジン版、ファミコン版、ゲームギア版、スーパー32X版、そしてセガサターン版……ここで「家庭用でどこまでAC版を再現できるか」という移植人の戦いは一旦終わったんですね。
しかしさらにドリームキャスト『シェンムー』に“ゲーム内ゲーム”として収録され、ついにはPS2でリメイク版を経て『コンプリートコレクション』が。
国内で発売されたあらゆるゲームマシンを渡り歩く『スペハリ』、私はこの時点で「自分の知らない『スペハリ』はまだどれくらい存在するんだろう……」という思いに駆られたんです。
さらに「海外ではどんな移植版『スペハリ』が存在しているんだろう?」と。
おもちゃ屋の店頭デモで見た独特の『パステルカラー』の魅力にとりつかれ、『セガ・マークIII』を買ってもらってからはセガの虜になっていた私。
さらにゲームセンターへと活動の場を広げた少年を待っていたのは、かのアーケード版『スペハリ』でした。
「マークIIIと全然違うやんけ……」と、その目も耳も画面にまるで釘付け。
より一層鮮やかなパステルカラー、大きくて生き生きと動くキャラクターはスムーズに拡大縮小し、地平線のかなたの背景まで二重にスクロールしている……まるでモニターの中にドラゴンランドが存在するかのような、アーケード独特の高品位な世界に見事に魅了されてしまったのです。
そこからです。「家でゲーセン版に近い『スペハリ』が遊べるようになるその日」が来るまで移植版を追いかける人生が始まったのは。
やがて、家庭用ゲーム機の性能が『スペハリ』時代のアーケードを遥かに凌駕するようになり、『スペハリ』の移植戦争も完全終結したPS2時代。
ふと生まれたのが、先ほど書いた「自分の知らない『スペハリ』移植版」に対する探究心。
そうなるともういても立ってもいられなくなり、自分が所有していたもの以外の移植版を調べ、そして現物を集め始めました。
国内ではP6やFM77など電波新聞社の各種PC移植版、そして海外ではコモドール64版やAmstrad CPC版、ZX Spectrum版などの御三家、Amiga、Atari ST、IBM-PCなど馴染みのないPCのバージョン、北米にしかないGBA版……ありとあらゆる移植版を集めきり、さらに例えば32X版なら北米版、EU版、アジア版というように同機種でも国によって違うバリエーションのものもあらかた収集。
さらに移植ものだけに飽き足らず、あらゆる関連作品やグッズ系、資料など、もううちにないものはこの世に存在しないのではないかというところまで集めました。
誰が見に来るわけでもないのにそれらを綺麗にディスプレイし、眺めては悦に入る日々。
『スペハリ』との付き合いももう35年あまり。
その足跡や思い出のかけらを集める日々はようやく落ち着いたという感覚。それでもなお、いまだに3DSやSwitch、アストロシティミニなどで家庭用にやってきたり、仮想空間「神室町
」で実際に遊ぶことができる『スペハリ』を見るにつけ、「この付き合いは死ぬまで続きそうだ」と苦笑いせずにはいられません。
少年の頃に受けた強烈な印象って、いくら年齢を重ねようとも心に深く刻み込まれているというか、当時感じたワクワクっていつまで経っても消えないものですよね。
僕らのような80年代に少年期を過ごしたゲーマーは、あの頃ゲーセンで見た美しいグラフィックのアーケードゲームたちが与えてくれた鮮烈な思い出が心の中に脈々と生き続けているに違いありません。
私の場合、もちろんそのたくさんのゲームたちにも衝撃を受けたのですが、その中でひと際、一番胸に刻み込まれたのが『スペースハリアー』であり、そしてもう一つ、それと同等のワクワク感を植え付けたのが『ファンタジーゾーン』でした。
どちらもセガの看板とも言える歴史的作品。
後世に物語の繋がりも公式に採用され、名実ともに「姉妹作」となった2作ですが、『スペハリ』の開発初期タイトルが『ファンタジーゾーン』であったという有名な話は、その深い繋がりを如実に表しているエピソードと言えましょう。
(疑似)3Dと横スクロール2Dという違いはあるものの、同じセガの同年代シューティング。『ファンタジーゾーン』も、家庭では決して味わうことのできない素晴らしくカラフルなパステルカラーグラフィック、立体的なスクロール、生き生きと動き回るキャラクター。そう、心に刻まれた鮮烈な印象の本質は『スペースハリアー』とまったく同じだったのです。
だから好きなんだろうな、この2作が。
『ファンタジーゾーン』もずーっと長く付き合ってきました。
ほぼ『スペースハリアー』と同じ期間ですもんね。
『スペハリ』ほどではないにせよ移植作品も多く、こと日本国内においては『スペハリ』に肉薄するほどの移植数であり、現在はこの2作がほぼ1セットで移植されているようなイメージとなっています。
こちらも移植版の歴史は非常におもしろく、オリジナルのアーケード版とほぼ同時期に開発されたというセガ・マークIII版、そして『マークIII版で再現できなかったところだけは何を犠牲にしても再現するゾ!』という気合を感じたファミコン版、早々に移植戦争を終わらせてしまったX68000版などなど。
3DS版で背景の二重スクロールが本当の立体になってしまったときは得も言われぬ感動がありました。
いつまでも感動を与え続けてくれる『ファンタジーゾーン』は本当にすごい作品ですよ。
『スペースハリアー』と『ファンタジーゾーン』。
岡田奈々さんの歌ではありませんが、まさにこの2作は『パステルカラーの思い出』。
今でもその画面を見ると、当時感じた思いが胸にぶわーっと蘇ってきます。
すごくワクワクした、ドキドキした、目がキラキラした……そんな初恋のようなキュンとした少年時代の気持ちをいつでもプレイバックしてくれる『スペースハリアー』と『ファンタジーゾーン』とはいつまでもいつまでも付き合っていきたいと思うアラフィフの“少年”なのでした。
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