セガ『スペースハリアー』発掘報告書 前編

  • 記事タイトル
    セガ『スペースハリアー』発掘報告書 前編
  • 公開日
    2021年01月08日
  • 記事番号
    4494
  • ライター
    ぱぱら快刀

みなさんこんにちは!
ゲームデザイン発掘隊、“特別”発掘隊長のぱぱら快刀仙人です。
今回の発掘ターゲットは、みんな大好き『スペースハリアー』だよ。この名作のゲームデザイン技法の真髄を、はりきって発掘していきますよ~。
このゲーム、一体何がどうして素晴らしいのか。その謎に挑戦する。ぼ~っとゲーム遊んでんじゃねーよ!
はじまりはじまり~。
  
  

<ゲーム紹介>

『スペースハリアー』は1985年稼動開始のセガの業務用機。
当時最先端の“疑似3D”表現技術を駆使した3Dシューティングゲームだよ。
多数のコンシューマ機にも移植されているので、そちらでおなじみのかたも多いかもね。

『スペースハリアー』は、3Dシューティングというジャンルの、ひとつの基本形を確立させた作品とも評されており、以後多くの作品に多大な影響を与えた歴史的名作!
縦スクの『ゼビウス』、3Dの『スペースハリアー』と並び称されるほどの、歴史的ターニングポイントになった重要タイトルなのです!

『スペースハリアー』についてのくわしい紹介は当サイトのアーカイブにもありますので、そちらも見てみてね!

しかし! ゲーム可動当時は初の可動筐体という大胆な商品企画ばっかり注目され、ゲームデザイン的なすごさはほとんど顧みられたことがなかったように思うのです。
今回はこの『スペースハリアー』を題材に、ぜひ注目していただきたい、埋もれたゲームデザインのツボを発掘していきます。
では始めるよ~。Get ready!
  
  

<ゲームの特徴>

『スペースハリアー』のゲーム的特徴は、以下の4点に集約されると言ってよかろうと思います(※可動筐体部分は除くよ)。

■スピード感
■爽快感
■異世界の独特な世界観(非日常)
■立体空間を感じるバーチャル感(空間感覚、実在感)

今回の発掘作業では、おもにこの4点に関わるゲームデザインについて、その秘訣を探っていくよ。
  
  

<発掘品目録>

その前に、今回紹介するゲームのツボたちを一覧にしておいた。
こういうまとめを作るのは企画屋の大事な仕事だからね。
  

  ― 前編 ―
■タイトル画面のツボ
 ツボNo.1 「キービジュアルで印象づける」
■ゲームスタートシーケンスのツボ
 ツボNo.2 「世界観の説明が最小限」
 ツボNo.3 「最初にプレイヤーの気分を盛り上げる」
 ツボNo.4 「ゲーム操作ルールを一瞬で説明」
■ゲームプレイ中のツボ#1
 ツボNo.5 「スピード感は立体空間で演出する」

  

  ― 後編 ― (2020年1月15日公開予定)
■ゲームプレイ中のツボ#2
 ツボNo.6 「爽快感と破壊の演出」
 ツボNo.7 「ゲームデザイン上の工夫いろいろ」
  
■世界観補強のツボ
 ツボNo.8 「効果的に異世界を見せる技」
 ツボNo.9 「世界観は画でみせよ」

  

<『スペースハリアー』のツボ>

では、ゲーム進行順に見ていくよ。
  

■タイトル画面のツボ

ツボNo.1 「キービジュアルで印象づける」

タイトル画面ってのは、キービジュアルとしてとっても重要。
『スペースハリアー』のタイトル画面は、一つ目のマンモス、モビルスーツみたいなメカ(肩に人が乗って手を振ったポーズ)、そんでタイトルロゴが金ぴか。
ぱっと見、何じゃこりゃあ? どういう世界やねん?? ってなる。
その結果として強い印象を残すことに成功してます。

ここでの注目ポイント。
よく見ると、マンモスやメカなどの絵はゲーム中の画像の使い回し。専用の画像素材はタイトルロゴと肩に乗った主人公キャラぐらいです。
ゲーム内の世界観素材を素直に利用するテクニック。容量も作業コストも節約できる、うまいやり方ですね。

あと、当時の技術ではドット絵で金色を表現するのは難しかったため、ゴールドに光るタイトルロゴプレートもインパクト抜群でした。
その後の現在では、金ぴかアピールは特に珍しい技術ではなくなったため、ロゴデザインはもうちょっとオシャレなものに一新されています。

  
■ゲームスタートシーケンスのツボ

ゲームスタートすると、いきなりゲーム画面に切り替わり、画面奥に向かって主人公のハリアーちゃんが地上をダッシュで駆けています。
畳みかけるように音声が「ウェルカムトゥザファンタジーゾーン、ゲットレディ」と叫ぶ。
直後にハリアーは空中に飛び上がり、プレイヤー操作が可能となります。
これがゲームスタート時のシーケンス。あっという間だ。これをくわしく見てみるよ。
  
  

ツボNo.2 「世界観の説明が最小限」

何と! ゲームスタートボタンを押すと、ストーリーや背景設定の説明が一切ないまま、ファンタジーゾーンとやらの世界にいきなり放り出されます。この話の早さよ!

『スペースハリアー』はアーケードゲームですから、「プレイ時間は極力短くしたい」という営業上の必要性があります。
話が早いってのは、その制約を満たすためのゲームデザインですね。
ほかにも、ストーリー演出に回すデータ容量なぞない!という事情もあるでしょう。

また、コイン投入後に一旦タイトル画面に戻る点にも注意です。タイトル画面も世界観説明に一役買っていますね。
テキストや説明用グラフィックを用いず、最小限の手数でプレイヤーをゲーム世界に引き込む。
これらのテクニックや考えかたは応用性が高く、実に参考になりますな。
  
  

ツボNo.3 「最初にプレイヤーの気分を盛り上げる」

画面奥に向かって走れ!
ゲームスタート直後、何か問答無用で主人公が走っています。彼はなぜ走るのか。どこに向かって走るのか。そんな野暮な説明は不要です。
ひたすらに夕陽に向かって走る「青春ドラマ効果」ですね。
おれたちの青春はここからだ!
ただ全力で走る姿だけで、心と気持ちが盛り上がる。人間の本能ですから、抗うことはできません。
これを利用すれば、すげーやる気がでます。
困ったら主人公を走らせろ。この鉄則は覚えておきましょう。

そして叫ぶ!
叫びは走りとセットです。
「ウェルカムトゥザファンタジーゾーン、ゲットレディ」

当時としてはサンプリング音声はまだ珍しく、メモリ資源も多く占有する貴重技術です。
それをスタート直後にリッチに使うことで、当時的にはインパクトを出しつつ、最小限の状況説明(「ここはどこそこだ、おまえは××しろ」)にもなってる。
とゆーか、単純にかっこいい、シビれる音声です。

主人公は走る。ナレは叫ぶ。ドラマですね。
これがプレイヤーの気持ちを盛り上げます。
やるぞ、やってやる! 血がたぎってきたぜえぇぇ! という心の準備も整います。

叫ぶ、走る。
これらはゲームのみならず、数多のドラマやアニメでも多用されている鉄板演出です。
隙あらばぜひ取り入れたい。
雨なんか降ってるとさらに最高!
盛り上がるBGMも重ねれば気分はもう「ロッキー」ですぞ。
  
  

ツボNo.4 「ゲーム操作ルールを一瞬で説明」

『スペースハリアー』はすごくシンプルなシューティングですから、ゲームルールの説明もほとんど不要っちゃ不要なんですけどね。
それでも、何ができるできないかを一瞬で理解させるテクニックが散りばめられています。
そのシーケンスは以下のとおりです。

・ゲームスタート時は主人公がオートで地上を走っている。
・操作をプレイヤーに渡すタイミングで主人公が空中に飛びあがる。
・飛び上がったところで、ちょうど撃ち頃の茂みがあったり雲が飛んでたりする。

主人公が空中に飛び上がるのは、その位置が操作レバーのニュートラルポジションだからですね。
でもこの時点で、主人公が「地上は走る」「空も飛べる」ことが理解できます。

そして目の前に地面の茂みや、浮いている雲が向かってきます。
ここで何の気なしにショット弾を撃つと、それらに当たって爆発します。
比喩ではなく本当に爆発するのでビビります。

この一連の流れを「ショットテストシーケンス」と命名しましょう。
スタート直後にはこちらを攻撃してこないオブジェクトを出して撃たせる。
撃てば倒せることがわかる。
ついでに主人公キャラの移動操作も体験させる。
これで基本のゲーム操作ルールの説明は終わりです。あっという間のチュートリアルですね。
ちんたらした説明は一切なし。安全環境で練習させたらすぐに実戦投入です。ガンダムか!

ここには重要な示唆があります。
ゲーム開始前から大抵のプレイヤーが想像できる範囲の、わかりきった操作ルールに関しては、その想像を確認できる場を設けるだけでチュートリアルとして機能するってこと。
チュートリアルだからといって、手取り足取りな過剰説明は、親切どころかプレイヤーをバカにすることに繋がります。
どこまで説明するかの見切りは、現代のゲームでも重要なポイントです。

なお、このショットテストシーケンスは、ゲームでは『ゼビウス』が特に有名で、お手本としてよく引用されてますね。
その他多数のゲームで見られるものなので、ぜひ見つけてみると良いですぞ。

個人的には、スタート直後に長々としたチュートリアルやシナリオはやめてほしい。
プレイヤーがある程度操作を試してから、その後必要なタイミングで短いチュートリアルを挟むほうが好みです。
そうでないと「はよゲームさせろ! 面倒くせえ!」とキレて速攻アンインストールの刑です。
スピードが求められる現代では、プレイヤーの時間を過剰に食い潰すことは罪とみなされます。

■ゲームプレイ中のツボ

さて、やっとゲームプレイ中のツボ発掘までたどり着いた。
ここから先はゲームプレイ感覚に直結する重要なゲームデザインテクニックとなる。
準備はいいかな~?
それではさっそく行ってみよう~!
  
  

ツボNo.5 「スピード感は立体空間で演出する」

ここで、まず絶対真理を説明するよ。
それは「スピードとスピード感は別物!」という事実だ!
ズガガーン!

わかりやすい例で喩える。
たとえば人工衛星や国際宇宙ステーション。
もうおわかりですね。あいつら実は秒速数キロメートル、つまり時速1万kmとか2万kmとかの超スピードで飛んでいる。
なのに見た目ではスローすぎてあくびが出る。
比較対象物がなかったり、固定カメラに向かって突っ込んでくることもないからですね。

この真理はゲームでも同じ。
ただ速いだけでは遅い!
スピード感とは、速く見せる演出技法なのである! ばばーん!

では『スペースハリアー』ではスピード感がどのように表現されているのか。
その技法を見てみるよ。
  

・地面の格子模様

まず、地面が格子模様になっている点に注目。
特に水平方向の線が重要。この模様が奥から手前に迫ってくることで、前方に進むスピードをわかりやすく表現してます。
一番の基本だけど、奥から手前に向かってくるモノがないとスピード感は出ないのだ。
加えてカメラ位置をなるべく低い位置に持ってきてる。
カメラ高さを地面に近づけると視点が低くなり、さらにスピード感が強調されるのだ。

ちなみにこの地面の格子模様は、描画の1ラインごとにカラーパレットチェンジを制御することで奥から手前へ流れているように見せているというレガシー技術です。
同じ技術は各社で使ってた。
もしかセガだけ違うやりかたしてる可能性もあるけど、多分そう。

あと細かいことだが、主人公ハリアーくんが地面を走るアニメーションもスピード感演出に一役買ってる。
あいつ走るとき、けたたましいランニングモーションで疾走してるよね。
その頑張って走ってる姿が何気にスピード感を補助してるんです。

これらの複合効果として、主人公の飛行速度は一定なのに、空中よりも地上に近づくほどスピードが増してるよう感じる。
この体感速度の落差もスピード感に繋がっているのであった。
うまいことできてんな。
  

・自機、敵、弾、すべて地面に影が落ちている

『スペースハリアー』では立体空間をさらにしっかり認識させる工夫として、画面上のすべてのオブジェクトが地面に影を落としてる。
主人公や敵キャラはもちろん、飛んでる雲とか敵味方のショット弾にすら影がついているという徹底ぶり。

影を落とすことで立体感が際立つ。
立体空間という認識が強化され、結果スピード感につながっているのだ。

さらに影の効果はもう一つある。
単純に画面に表示される物体が、影の分だけ増えるのだ。
2倍だぞ2倍! ブツがたくさん迫ってきたほうが速度マシマシに見える。
うまいのは、ブツを増やしてもただの影ってこと。
ゲームには無関係なので難易度とかに影響しない。実にうまいなこの野郎。
  

・奥行きを深くとって大きな立体空間をつくる

次にスピード感に重要なのは「立体空間を認識させる」ことだ。
プレイヤーが感じる空間が広ければ広いほど、スピード感の演出効果は高くなるのだ。

3D表現の場合は、奥行きをできるだけ深くとれば、広い空間に見せることができ、結果スピード感が増すのである。
下の図を見れば、直感的にそれが理解できると思う。

左が「奥行きを遠くとった」場合。右は「奥行きがあまりない」場合。

『スペースハリアー』でも3D空間の奥行きをわりと深く取っている。
奥のほうからじわじわグワッと迫ってくることでスピードを感じるカラクリだ。

これを現代的にいえば、オブジェクトやビルボードのファークリップ距離を深く取れ、ということね。
そのとき、別に全部を遠くまで描画する必要はなくて、一部の負荷の低いものだけ選んでクリップ距離を遠くにおけば充分。
それでそれなりに奥行きが遠く空間が広く見えるのだ。
多少チョロまかしてもわりとバレない。大胆にやってみよう。

この空間テクニックは2Dの画面スクロールにも応用が利くぞ。
プレイヤーに立体空間を意識させればスピード感の演出手法が広がる。
いろいろ応用も効くので覚えておくと役に立つ。

2Dの例:手前側に飾りオブジェクトを流す
画面スクロールよりちょっと速く流すだけでもスピード感てきめん

・超高速スクロール面のひみつ

『スペースハリアー』をしばらくプレイしていると、ゲームクリアまでに3回ぐらい超高速な特殊ステージに遭遇する。
急にスクロール速度が速くなって焦る。
多くのプレイヤーにとって鬼門となる残機殺し面だ。何度ここでやられたことか。

このステージでは、実際にスクロール速度が速くなる。
何てこった。今までのスクロールは本気ではなかった。まだ余力を残していた。
もちろん、スピードはスピード感ではない。
こんなに速くしなくても充分にスピード感は出ていた。
しかしここでさらにスピードアップしたのだ。殺しにきやがったよ。

単にスクロール速度を上げるだけなら、プロの仕事とはいえない。
せっかく上げたスピードを、さらなるスピード感に繋げるのが本物のプロの仕事だ。
殺しにきてるからな。

この超高速スクロール面ではこれまでのステージとは違い、空から天井が下りてくる。
天井は地面と同じ格子模様だ。とどのつまり、このステージは上下を地面に挟まれた一種の閉鎖的な空間になる。

天井部分は地面と同じに超高速でスクロールしている。
つまり、画面内に占めるスクロール領域が倍になったということだ。2倍だぞ2倍!

単に速度があがっただけにとどまらず、体感速度もさらに上げるテクニック。
その追い打ちでスピード感演出を強化し、効果を倍加しているのだ。

実際の速度アップ以上にスピード感が増し、プレイヤーの焦りは最大限となる。
超ビビる。さすがはセガの仕事である。殺しのライセンスだ。
  


ツボNo.6 「爽快感と破壊の演出」

シューティングゲームであるかぎり必要となるのは爽快感だ。
撃てば吹き飛ぶ。連射を叩き込む。敵は爆裂四散する。
撃つか撃たれるか、その殺伐としたタマの取り合い。これこそシューティングの醍醐味で――。
……
……

おっとっと。すごく中途半端だけど、誌面も尽きたので前編はここまでだそうです。
隊長、話長くてごめんね……。

でもここまで読んでくれてありがとう~。
そしてすごくいい話だ!と思ったかた、もしもおいでになったらSNS等でシェアしてくださるとわたしもみんなも嬉しいです!
質問等あったら、ハッシュタグは #IGCC でお願いします!
後編もよろしくね!
  

<次回、後編予告!>

前編では、まさかの途中尻切れトンボで終わった発掘調査報告。
しかし後編ではさらに驚愕のツボの秘密が怒濤の勢いで明かされる。
果たして発掘隊長ぱぱら快刀の運命は!?
この発掘報告はうまくオチるのか??
だがそのとき、天より謎の美少女が……現れたりはしないけど、ますますヒートアップする隊長の語りに、刮目せよ。

次回、『スペースハリアー』発掘報告書 ~後編~。
次もぱぱらと発掘に付き合ってもらう。

©SEGA ©SEGATOYS

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