『キャメルトライ』は、こうして作られた 海道賢仁氏インタビューPart1
目次
『イーグレットツー ミニ』は、周辺機器であるパドル&トラックボールを購入すると、文字どおりにパドルやトラックボールでプレイするタイトルも遊べるようになります。
中でも『キャメルトライ』は、家庭用ゲーム機としては初めて本来の楽しみかたができるようになり、きっと夢中になったかたも多かったのではないでしょうか?
ここで気になるのは、『キャメルトライ』のステージは、どうやって作られたのか? ということです。
シンプルな操作と仕掛けだけで、なぜここまでプレイヤーを夢中にすることができるのか――その秘密をぜひ伺ってみたい。
ということで、ゲームデザイナー海道賢仁氏にインタビューを敢行、存分に語っていただきました。
なお、このインタビューは、明治大学 総合数理学部 教授の福地健太郎先生のご発案、IGCCの協力で行われたものです。
メインのインタビュアーは、福地先生にお願いいたしました。
【聞き手】
福地健太郎(明治大学 総合数理学部 教授)
大堀康祐(ゲーム文化保存研究所 所長)
奥野博之(ゲーム文化保存研究所)
「回転機能」から発想された
―― ではまず、『キャメルトライ』の開発体制についてうかがいます。過去の資料として、『マイコンベーシックマガジン』の1990年7月号に開発者インタビューが掲載されていましたので、それをお持ちしました。
海道 ベーマガライターの「やんま」さんの記事ですね。これでサウンド以外の人はほぼ全員名前が載ってます。あ、ZAK MUNN(ザックマン)さんだけ、何か肩書が抜けていますけど、彼はグラフィックやってます。ちゃんとみんなしっかりしゃべってますね。
当時のアーケードゲーム基板のはやりで、回転機能と拡大縮小ができるチップが出てきまして。ただ、回せるのはBG画面なんですね。タイトーでは「スクリーン」って言ってたんですけど。なので基本、描いてあるものに対して、それを回しながらスクロールするぐらいしかできなくて、アニメーションはできなかった。そういう制約のある回転機能を使ったゲームを何か作ろうと。
―― スクリーンは何枚使えたんですか。
海道 回転するやつは1枚、その他はF2システム標準のスクリーンです。表示のプライオリティーは割と自由に設定できるものでしたね。
その当時、回転機能はナムコさんやコナミさんがすでにやっていて、あとセガさんはスプライトでわりと強引に回してるぐらいの勢いだったと思うんですけど。タイトーはちょっと遅れて実現しましたね。
―― 過去のインタビューだと、『アサルト』(ナムコ, 1988)を見て、回転っておもしろいなっていうふうに発想されたとおっしゃってますが、そうした回転機能を見て、これをどういうふうに使ってみようかなという発想だったのですか。
海道 そうですね。回転させることがメイン。回転機能をめっちゃシンプルに使おうと。僕、『アルカノイド』のパドルコントローラが好きだったんで、もうそれでぐりぐりっと回したら楽しいんじゃないのっていうことで、1枚企画書を書いて。「迷路を回します」って実際に企画書に描いた絵をぐるっと回してプレゼンして、それで作ることになったっていうのが経緯ですね。
―― 迷路ゲームにしよう、と決まってからも、ではどんな迷路ゲームにするか、おそらくゲームデザインの方向は色々あったと思うんですけど、今の形になるまでに紆余曲折はありましたか。
海道 最初は宇宙飛行士を宇宙空間で転がすゲームでして、人間転がして、うわー、ぎゃーとかなるのもいいかなと思ったんだけど、当時『テトリス』がはやってたんで、ちょっと抽象的な、ボールを転がす感じに変えました。
―― 発想が変わったのはなぜなんですか。
海道 そっちのほうが売れるかなって(笑)。
他のゲームからの影響
―― やはり『テトリス』がヒットしていたのが影響した?
海道 そう、ちょっと無機質なもののほうが、かえっていいかなーっていう。
―― 『マーブルマッドネス』の影響はどうでしょう。
海道 めっちゃありました。プレーヤーのキャラクターをボールにしたら、もうあとは、ゲームデザイン的には『マーブルマッドネス』でいいやっていう、回すことが目的だったんで。
―― 『マーブルマッドネス』だと障害として敵キャラクターが出てきますが、『キャメルトライ』はシンプルに迷路の仕掛けだけで障害を作ってらっしゃいますよね。この狙いはなんでしょう。
海道 わりとすぐに、敵はなくてもいいかなって。画面を回すとなると、それだけでゲームとして絶対に難しくなるなと思ったんですね。ならば、そこに敵とかうじゃうじゃ動いてなくてもいいなと。あと、敵を出すとなるとスプライト使うことになるんだけど、回転するスクリーンにぴったり追従させるのは、やればできるんだろうけど大変そうで。回転に対してコリジョン(衝突判定)をしっかり取るだけで、もう精一杯かなと。
様々なギミック
―― 迷路上の仕掛けだけでずっと間を持たせることができるという勝算は最初からあったんですか。
海道 レースゲーム、しかもソロのタイムアタックのゲームだとすればそれでいいかなと思って。あと、動かない敵として、タイマーが減るブロックとかを出せば、もうそれだけでプレーヤー的にはかなり嫌な気分になるので、それ以上の苦しみを用意する必要はないかなと。でも、振り返ればそんな感じなんですけども、思ってたときは、まずその迷路を作って抜けさせる、ゴールまで行くっていうとこだけにしか、目が向いてなかったですね。
あと、そもそも回転はBGスクリーンなんで、動かすことはできない。やれることもアニメーションができないから、例えばBGのちっちゃい領域を球が当たったら消すとかその程度で。あとはカラーパレットチェンジだけでできるギミック。迷路を構成する基礎的なパーツとして、ブロックがあって、斜めのブロックがあって、アールを描いた曲線のところもプログラマーのかたに相談したら、多分できるよっていうことになって、それでアール状のブロック。逆アールはちょっと面倒くさかったんで、それは省いたんですけど。
あとはピンボールとかパチンコみたいなモチーフで、ピンとバンパーを作って。あと、考えかた的にはレースゲームなので、カーブの前に予告の矢印ブロックとかも必要だろうと。さらにゴールまでの距離感がわかる数字のブロックとかを並べて、って考えた時点で、よし、これだけあれば多分ゲームになるでしょうという感じで、それで作り始めたという。
当時はむしろ、ゲームの世界観をいかに変な感じにするか考えて。スプライトの領域がすごい余ってるし、BGも3枚ぐらい余っちゃってるんで、じゃあ、超豪華な七重スクロールぐらいのことをやったほうが驚かれるんじゃないかって。開発中は、実は手前側にも垂れ下がったツタとか時々流れてったりとかして、めちゃくちゃ奥行き感のある映像だったんですけど、作ってるうちにコストダウンのために、もう通常のBGは要らんやろこの基板とか言われて、BG用のマスクROM(*01)をごっそり抜かれました。
―― 基板自体は変わってないけどROMだけ削除されたんですね。
海道 はい。だから、アーケードの『キャメルトライ』は、背景がBGではなく全部スプライトなんです。
―― 背景にスプライトぜんぶ突っ込んで、ゲーム部分はBGって、珍しいですね。ところで背景にペンギンやらナスカの地上絵やらが出てきたりというのにはそういう背景があったんですね。
海道 そうです。ちょっとシュールな、何か、イラッと頭くる感じで。
―― 統一した設定があったわけではなくて、おもしろそうだと思ったネタをどんどん入れてったんでしょうか。
海道 そうですね、その時々のただのひらめきというか、むしろ思い付きみたいな。あとは、作業コスト的に安くつく、描くのが大変じゃないものとか。トレーニングモードの背景は、僕が紙に適当にかわいい丸とか三角とかを描いて、それをスキャナーで取り込んで、ちょっとにじみを付けただけ。
『ロードランナー』のコンストラクションモード
―― さっき、仕掛けの数や種類を最初に決め打ちされたってお話されてましたけど、不安はなかったですか。
海道 そのときはそんなに深くは考えていなかったんですけど、あとはもう勢いだけでやり切ったっていう感じでした。
―― 途中で追加したくなったりしませんでしたか。
海道 いやもう、あるものをどう使おうか、組み合わせの妙ってアイデアがどんどん出てくるので、これ以上あってもむしろ困ったかもしれないですね。
―― 組み合わせの妙のおもしろさというのは、いつ頃から意識されてたものなんですか。タイトーさんに入る前からとか。
海道 それは前からですね。PCゲームとかファミコンゲームでもよくコンストラクション機能が当時ありましたけど、僕がすごくやってたのが、PC-8801の『ロードランナー』のコンストラクションモードで、200ステージぐらい自分で作ってました。
―― それ、今だったら売れますよね、『海道コレクション』。
海道 いや、実際そのデータをフロッピーディスク1枚1,000円ぐらいでコミケで売ったりしてました(笑)。
―― リアルにあったんですね。
海道 3枚ぐらいしか売れなかったですけどね。作った中で駄目なやつだけを除いて見繕って100面ぐらいのやつ。そういうので鍛えてたので、ステージを作るのは結構自信があったんです。『ロードランナー』も、別にそんなに仕掛けが多いわけじゃないし。
―― シンプルですよね。
海道 でも、それでもすごくいっぱいバリエーションを作れる。
―― アクション寄りだったり、パズル寄りだったりと、いろいろな面を作れますね。
https://tozaigames.co.jp/products/loderunner_history/
Tozai Games and Lode Runner are trademarks of Tozai, Inc. registered or protected in the US and other countries.
Lode Runner is protected under US and international copyright laws Ⓒ1983-2018 Tozai, Inc.
海道 『キャメルトライ』でいえば、「当たっちゃ駄目なもの」「当たっても何ともないもの」「当たると得するもの」「場合によっては得したり損したりするもの」があって、あとバンパーのようにどこに跳ねるかわからないみたいな、このぐらいの種類があれば、もうこれで全部やれちゃうかな、ぐらいに考えていました。裏付けがあるわけではないんですけど、ぱっと見たときの感覚として、もう大丈夫かなって。
―― 本能的なものっていうよりも、経験的にこれでいけるなと思われた?
海道 そうですね。あともう1つは、BGしか使えないんで、ネタ的にはそれ以上あんまりやりようがなかったというか、ブロックパーツのネタ出しができなくて。取りあえずこれで始めて、駄目だったら先々考えようぐらいの。
開発ツール
―― では、基本形ができるまでは開発は速かったのでしょうか。
海道 そうですね。プログラマーにプログラミングをしてもらってる間にキャラクターとか、グラフィックもほぼ全部描いて、それからコンストラクションツール、要するにステージエディターを実機上で作ってもらって。
―― 実機ということはF2システム上で動くということでしょうか。
海道 そうです。F2システムの開発用のがあって、タイトーの場合、それに開発用のコントロールボックスをつないで。モニターもテーブル筐体に入ってる玉(モニター)を自作の木箱で囲っただけのやつ。自作っていっても、タイトーの筐体屋さんが作るんですけど。で、そこに別途、パドルコントローラーを接続して、要するにパドルコントローラーとジョイスティックが両方使えて、デバッグツールなんかはジョイスティック側で操作するっていう開発環境でした。
で、一般の筐体にはないデバッグ用のボタンを押すとコンストラクションモードが起動してエディットできると。ただ、ステージエディットは一度には1ステージ分しかできなくて、エディットしたらいったんデータを吐き出してセーブするという仕組みでやってました。
―― エディットは画面で見えてる部分をスクロールさせてエディットしていく感じなんですか。
海道 基本的にそうです。
―― 最初に全体像は決めないんですか。
海道 全体像は決めます。ただそのツールは回転BGを縮小させてステージ全体を表示することはできるんですけど、そうすると今度はエディットができなくて、ビューだけなんです。
マッピングスキル
海道 僕、『地獄めぐり』とかも、マップは紙に描いてやってました。そのスキルの源は、『ブラックオニキス』とか『夢幻の心臓』とかのマッピング(*02)なんです。
―― マッピングで鍛えた。
海道 マッピング、超頑張ってやったんで。タイトーに入ってからも、『ドラクエ2』のダンジョンの全マップを自分で書き取ったり。あの落とし穴だらけのダンジョンにキーッときたので全部マップ作った。あと、『ファイヤークリスタル』や『ファンタジアン』とか、やってるやつは基本全部取ってます。『夢幻の心臓』ではダンジョンだけじゃなくて、地上マップも全部写し取りました。
―― それ、もう残ってないんですか。
海道 多分残ってないですけど、ちょっとすげー話でしょ? なので、マップは方眼紙に描くっていうのがもう染み付いていて。『キャメルトライ』のときは、タイトー社内のA4方眼紙があって、それを使って自分で『キャメルトライ』のステージデザイン専用の用紙を作りました。ステージサイズの枠を描いて、あと名前欄とか、使えるパーツの種類とかも参考欄に全部描いて。それをコピーするんですけど、コピーで方眼が消えちゃう用紙だったんで、方眼がクロスするところ全部にドットを一個一個書いて。
―― めっちゃアナログですね。
海道 それをめっちゃいっぱいコピーして。基本的には、まず用紙に大まかなマップを書いて、それを見ながら開発用の実機のエディットツールでパパパパパンッと配置していく。ジョイスティックのいいところは、一操作に確実性があるので、画面見ずに確実な操作ができるんです。ブラインドタッチみたいな。だから紙を見ながらパパパッと打っていけば早いっていう。
―― ダンプリストを打ち込むような話ですね。
海道 そうそう。
ナイトストライカーとの違い
―― 『ナイトストライカー』のときは、テキストファイルでステージデータを作っておられましたが(参考記事は、こちら)、『キャメルトライ』の頃にはそういうやりかたはなくなっていたんですか。
海道 『ナイトストライカー』のときは実機上でステージエディター作るのが後回しになってたんですよね。プログラマーの津森が、何かコースデータないとそもそも何もゲーム画面が出せないので、仮でテキスト形式のコースデータをバーッと打って。それをいろんなステージにコピペして使ってたんですけど、結構出来が良かったんで、これ採用って。そのままエディターは作らずにやったんですけど。それ以前の、例えば『チェイスH.Q.』とか『コンチネンタルサーカス』では、いわゆる「田植え機」と呼ばれるツールで、ボタンを押すとコースがちょっと進んで、ここにこの看板を植えますっていう、そういうツールを作ってやってたそうなんですけど。『ナイトストライカー』は、本来はそういうのを作る予定ではあったんですけど、後回しにされてて、そして仮打ちのデータで、これで十分じゃない?ってなったんで、作らなくてもよくなりました。
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ステージづくりで考えたこと
海道 『ナイトストライカー』の場合、コースデータといっても、要は全部背景じゃないですか。多少ゲームには関係しますけど。だから割と適当でいいんですけれども、『キャメルトライ』はレースゲームというか、パズルゲームになってくるんで、作った後に、相当試して調整していかないといけない。ステージエディターが絶対必要だっていうのは、『ロードランナー』の経験からも、最初からわかってました。それでエディターを先に作ってもらって。それと並行して、紙に最初にいろいろステージマップ描いて作り始めていました。
―― 紙に描くとき、最初に何を考えるんですか。
海道 ステージによって違うんですけれど、一番最初はルールを覚えてもらうための面とか、ラクダの形っていうこともあれば、とにかく気持ち良く流れていくスプリントステージとか。
―― ステージごとに何となくテーマみたいなのが。
海道 そうですね。この面はこのパーツの組み合わせ構造をいっぱい使って作ろうとか。
―― ステージ構成は、最初に計画を立てるんですか、それとも、1つ前のステージがこうだから、次のはこうしようみたいな。
海道 まず最低限必要なのは、ルールとか役物を覚えてもらうためのステージじゃないですか。あと、すごく簡単なの。その後は、もう大体思いつきです。紙に向かって何枚も描いて。
社内でコンテストをやった話
海道 ただやっぱり1人でやってるとネタ切れになるので、せっかく用紙も作ったんで、これを社内の皆さんにばらまいて、ステージマップのアイデアコンテストみたいなの、ってやったんですけど、やっぱりね、人が適当に考えたものって、しかも全然当事者じゃない人たちが考えたものなのでって、使えるネタが全然集まってこない(笑)。すごいいっぱいまいて、結構戻ってはきたんですけども、全部見て、これも駄目、これも駄目、って。
―― どうして駄目だとわかるんですか。
海道 もう最初っからギャグでふざけて書いたやつとか(笑)、あと複雑過ぎたりとか。
―― プレーヤー目線で、このステージ遊ぶならこんな感じって、頭の中でシミュレートしてジャッジするんですか。
海道 そういうのもあります。あと、見るからにちょっと形が凝り過ぎなものが多かったり、逆にすごい大ざっぱで、これやっても全然おもしろくねえよみたいな。全ボツです(笑)。でも1枚だけ使えるものがありました。細部はだいぶ手をいれたんですけど。
―― 採用されたものがあったんですね。
海道 それは『ミッドナイトランディング』のメインプログラムをした岩井さんというかたがデザインしたステージで。なので岩井さんの名前の付いたステージが1個だけあります。
―― エキスパート8面の「IWAI SPECIAL」ですね。この「IWAI」って何だろう、とずっと思ってたんですよ。では、岩井さん以外の応募作は全てボツになったんでしょうか。他のステージに流用されたものってありましたか?
海道 部分的にこれはいいかも、っていうのはあったような気がしますけど、基本的に他の人が描いてくるもの、何か違うんですよね。
ステージエディタの話
―― ちょっと話を戻してしまうんですけども、レベルエディターのところで、ジョイスティックとボタンで操作できたとおっしゃってましたけど、タイトーのドット打ちツール(*03)と似たようなものだったのでしょうか。
海道 そうです、そうです。
―― そうしたエディター用コントロールパネルは、ゲームタイトルごとに作る文化がタイトーにあったのですか。
海道 基本的には汎用の開発コントロールパネルがあるので、それを使います。アナログスティックだとかパドルコントローラだとかトラックボールだとかの特殊デバイスについては、拡張ケーブルで接続できるようになってます。ただそういう特殊デバイスはプログラマーの人数分は揃ってなくて、1人か2人だけが持ってて。それ以外のかたは全部ジョイスティック。そのコントロールパネルのボタンのところは、JAMMA規格の全部のボタンつなぎました、ぐらいの感じだったので、基本的にはどんなゲームでもできるんですよね。なので、会社で研究用に買った『ストリートファイターII』なんかも、このコントロールパネルでできて、実際会社で残業して対戦してました。
―― 残業?(笑)
海道 あのコントロールボックスは、今売ったらめっちゃ売れると思うんですけど。
―― 以前、Twitterでも、タイトーのドット打ちツールは最強だっていうようなことをおっしゃってましたけど、ゲーム開発一般でも、ジョイスティックとボタンという操作体系が便利だったということですか。
海道 そうですね。一応、ドット打ちツールとプログラム開発用のコントロールパネルは別物なんですけど、でも基本的にその種のツール類はジョイスティックです。他にもソースコード打つ用のテキストエディターはUNIX上で自社開発のを使ってました。西角さんとかはもう、ゲーム作るときは、ゲームの基板から、ツールから、ソフトのアセンブル環境から、全部自作っていう文化でしたね。
レベルデザインの話
―― 『BASICマガジン』のインタビューでも、マップデザインに一番頭を使ったとおっしゃっていたんですけど、マップを作って調整していく工程は、開発期間の内のどれぐらいを占めていたのでしょうか。
海道 マップ作りはほぼ1人で、大体一ヶ月弱ぐらいの期間で作ったので、全体の開発期間の中では短いほうかな。でも4分の1ぐらいにはなったと思います。正確にいうとほとんどずっと会社に寝泊まりして作ってた。その一ヶ月の間で、休みは1日あったかなかったか。家に帰ったのは合計で5~6日もないんじゃないの、といったら言い過ぎか。夜中の2時ぐらいに会社を出て家に帰って、朝9時に会社に戻るみたいな、そういう生活です。中央研究所へは自転車で大体20分ぐらい。
―― 自転車で20分って結構ありますよね。
海道 よく警察に職質されたりとか(笑)。そのぐらいの期間で、ものすごく集中して作ってた。それ以降はほとんど調整したり手を加えることもなく、バグもそんなになかったんで。もっとも壁抜けバグは発見できなくて、ちょっとがっくりしたんですけど。
―― マップを見て気になるんですけど、コースに関係ないとこまでブロックを埋めてあるステージもあれば、そうじゃないステージもありますね。
海道 壁の厚さは大ブロックで1つ分が基本。ただ、1ブロックだけだと不安だったんで、コースの壁は保険の意味で2ブロックの厚みで構成しました。
―― 空間を全部埋めちゃったほうがさらに安全だとは考えなかったんですか。
海道 打つの面倒くさかったから(笑)。
―― ラクダのステージ(スペシャルの1面)って周りすかすかじゃないですか。なのに、こういう(エキスパート2面)のは全部きれいに埋めてますよね。
海道 それはそのときの気分です。これは埋めたやつから掘って作ったものだったり。ラクダのほうは、形優先なので。
―― ラクダを描いて、そこから仕掛けをどうしようかっていう感じなんですか。
海道 はい。
今回は、ここまで。
次回からは、各ステージの製作意図などをお聞きしていきます。
『イーグレットツー ミニ』発売中!
『イーグレットツー ミニ』は、1996年に登場したアーケード筐体を卓上サイズで再現し、1978年発売の『スペースインベーダー』から1997年までの間にゲームセンターで活躍した40タイトルのゲームを内蔵したゲーム機です。本体だけでゲームを楽しむことができます。
また、別売りの拡張セットでさらに10タイトル、計50タイトルが遊べます。
今回ご紹介した『キャメルトライ』は、この拡張セットに収録されています。ご興味のあるかたは、ぜひ!
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