「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 第二十三回 ボーナス得点

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    「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 第二十三回 ボーナス得点
  • 公開日
    2022年06月24日
  • 記事番号
    7850
  • ライター
    鴫原盛之

当コラムでは、「ゲームニクス理論」をもとに、なぜゲームがおもしろくなるのか、どうしてプレイヤーはゲームに夢中になってしまうのかを、おもしろおかしくご紹介していきます。

第二十三回目のテーマは、「ボーナス得点」です。

第十一回目の「ボーナスステージ」をはじめ、第八回目の「ハイリスク・ハイリターン」などでも取り上げたように、黎明期からプレイヤーがビデオゲームにハマる大きな動機となるのが得点の存在です。

得点はプレイヤーの実力を示すバロメーターである以上、「ボーナス得点」を獲得するために、いかにして高度なテクニックをマスターするのか? あるいは隠された謎を解き明かすのかは、全プレイヤーにとってまさに至上命題です。特に、一定の得点に到達するごとに自機のストックが増える「エクステンド」(※こちらは第二十回でテーマにしました)を導入したタイトルでは、その重要性はさらに増すことになります。

以下、今回も筆者の思い付く限りではありますが、ゲーム開発者たちの知恵と努力の結晶である「ボーナス得点」の例を、アーケードゲームを中心にいろいろとご紹介していきましょう。どうぞ最後までご一読ください!

「ゲームニクス」とは?

現亜細亜大学教授のサイトウ・アキヒロ先生提唱による、プレイヤーが思わずゲームに夢中になる仕組みを理論・体型化したもの。
本稿では、「ゲームニクス理論」を参考に、ありとあらゆるゲームのオモシロネタをご紹介していきます。「理論」というおカタイ言葉とは正反対に、中身はとってもユルユルですので、仕事や勉強の休憩時間や車内での暇つぶしなど、ちょっとした息抜きにぜひご一読を!

ステージクリア成功の報酬としても欠かせない「ボーナス得点」

古い時代から、多くのタイトルで導入されている「ボーナス得点」といえば、ステージクリアに成功したときに加算されるクリアボーナスです。

例えば『スーパーマリオブラザーズ』(任天堂/1985年)は、ゴール地点にあるポール(旗)にジャンプしてつかまるとステージクリアとなりますが、高い位置につかまるほど高得点(※最高5000点、最低100点)になります。ゴール地点に着いたからといって、すぐさま次のステージに画面を切り替えず、ちょっとしたお遊びを入れることで、クリアしたときの快感がさらに増すことは、きっと多くの皆さんが体験していることでしょう。
  

実は、ゴール時のアクションによって「ボーナス得点」が変化するアイデアは、『スーパーマリオブラザーズ』が元祖ではありません。本作よりも約1年前に登場した『パックランド』(ナムコ/1984年)には、ゴール地点に到達したときに主人公のパックマンをジャンプさせると、そのタイミングによってボーナス得点(※最高7650点、最低0点)が入るシステムがすでにありました。
  

古くから存在する、プレイヤーの腕に応じて「クリアボーナス」が変化する例のひとつに、残り時間を得点に換算するタイムボーナスがあります。

当コラムの第八回「ハイリスク・ハイリターン」でも紹介しましたが、『ドンキーコング』(任天堂/1981年)は残り時間の表示部分に「BONUS」と書かれていることからも明らかなように、ステージクリアに成功すると、残り時間がそのまま「ボーナス得点」として加算される仕組みになっています。

近年はほとんど見掛けなくなりましたが、『ポールポジション』(ナムコ/1982年)をはじめ『ハングオン』(セガ/1985年)や『アウトラン』(セガ/1986年)など、初期のレースゲームは走行タイムとは別に得点も表示し、ゴール後に残り時間や順位などに応じた「ボーナス得点」が入るアイデアを導入したタイトルが非常に多かったように思います。現在とは違って、昔は1人プレイ専用のタイトルが多かったため、得点を表示することでプレイヤー同士が腕を競いながら遊びやすくしたワケですね。
  

『ラリーX』(ナムコ/1981年)や、『イー・アル・カンフー』(コナミ/1985年)、『ワンダーボーイ モンスターランド』(セガ/1987年)など、自機や主人公の燃料またはライフのパラメーターが設定されたタイトルは、ステージクリア時に残った燃料の分だけ得点が加算される、すなわちライフボーナスが昔から定番の「ボーナス得点」だったように思われます。つまり、極力ミスを減らすか、移動量やプレイ時間を少なくするほど「ボーナス得点」が稼げることになります。

やがて時代が進むと、『コズモギャング・ザ・ビデオ』(ナムコ/1992年)や『ダライアス外伝』(タイトー/1995年)など、多くのタイトルで全面クリア時に自機や主人公のストック数に応じた「ボーナス得点」が加算される、いわゆる残機ボーナスを採用したタイトルが増えた感があります。もしかしたらライフボーナスは、残機ボーナスのご先祖様にあたるアイデアなのかもしれませんね。

ちなみに、家庭用でも『スーパーマリオブラザーズ2』(任天堂/1986年)など、アーケードゲームに比べると少ない印象ですが、残機ボーナスを導入したタイトルがいくつか存在します。
  

黎明期から数多く存在する、敵キャラを倒すことが目的のアクション、シューティングゲームにおいては、敵を倒せば倒すほどクリアボーナスが高くなる得点システムが定番になっている感があります。

『サンダーセプター』(ナムコ/1986年)をはじめ、『アルゴスの戦士』(テクモ/1986年)『アフターバーナーII』(セガ/1987年)などのタイトルは、ステージをクリアするごとに敵を倒した数に応じた「ボーナス得点」が加算されます。得点アップの演出を追加することでステージクリアの達成感がより高まり、プレイヤーのモチベーションはますますアップします。

『1942』(カプコン/1984年)などに導入された、敵を撃墜した数ではなく、撃墜率(パーセンテージ)によってクリアボーナスが加算されるのもおもしろいアイデア。ほかにも『ドンキーコング3』(任天堂/1883年)ではタイムボーナスに加え、敵に奪い取られずに守り抜いた花(植木鉢)の数に応じた「ボーナス得点」が入る、独自のアイデアが盛り込まれていました。
  

ルールは極めてシンプルながら、ユニークなクリアボーナスのアイデアを導入していたのが『スイマー』(テーカン/1982年)です。

本作では、敵や障害物をかわしつつ、イチゴなど同じ種類のフルーツを4個集めると、ステージクリア後に宝箱が開いて「ボーナス得点」が加算されます。さらに1周全ステージクリア後にも、4個集めたフルーツの種類に応じた高得点が獲得できる、2重の「ボーナス得点」システムが用意されていました。

アイテム類を集めると獲得できるクリアボーナスシステムを、より高度に発展させたのが『V・Ⅴ(ヴイ・ファイブ)』(タイトー、開発:東亜プラン/1993年)。本作は、敵のアイテムキャリアを倒すと出現する、パワーアップカプセルをすべて回収して1面をクリアすると、パーフェクトボーナスとして「ボーナス得点」が2倍になります。

さらに2面以降もパーフェクトを続けると、「ボーナス得点」が3倍、4倍とアップし、全6ステージのパワーアップカプセルを全部取って1周クリアに成功すると、7倍のパーフェクトボーナスに加え、オールステージパーフェクトとして500万点の大ボーナスが獲得できます。
  

プレイヤーの挑戦意欲を高める、魅惑のテクニカルボーナスの数々

ここからはクリアボーナスではなく、プレイヤーのナイスプレイによって随時発生する「ボーナス得点」をいろいろとご紹介していきましょう。

往年の名作『パックマン』(ナムコ/1980年)には、主人公のパックマンがパワーエサ(クッキー)を食べると敵のゴーストが一定時間イジケ状態になり、その間にゴーストに噛み付くと「ボーナス得点」が入るルールがあることは、皆さんもよくご存知のことでしょう。

『パックマン』では、ゴーストに1匹噛み付くと200点、2匹目は400点、3匹目が800点で、4匹目に噛み付くと最高の1600点の「ボーナス得点」が加算されます。敵を退治するごとに得点が倍になる演出は見た目にもわかりやすく、プレイヤーの達成感をぐっと高めてくれます。

これと同様に、1回のアクションで敵をたくさん退治すればするほど、「ボーナス得点」が高くなる例は昔からいろいろあります。

例えば『ペンゴ』(セガ/1981年)は、敵のスノービー1匹にブロックを当てて倒すと400点ですが、2匹まとめて倒すと1600点に、3匹倒せば3200点へと大幅にアップします。同じく『ディグダグ』(ナムコ/1981年)も、「岩石落とし」で敵を1匹だけ倒した場合は1000点ですが、2匹倒すと2500点、3匹だと4000点にアップし、8匹まとめて倒すと最高の15000点ボーナスが加算されます。
  

昔からシューティングゲームでよく導入されているのが、特定の敵の編隊を全滅させると「ボーナス得点」が加算されるアイデアです。『ギャラガ』(ナムコ/1981年)で4面以降に出現する、3機編隊の「特殊ギャラガ」を全滅させると高得点が獲得できるのがその一例です。

ほかにも『タイムパイロット』(コナミ/1982年)をはじめ、『ツインビー』(コナミ/1985年)、『1942』(カプコン/1984年)、『エグゼドエグゼス』(カプコン/1985年)、『ダライアス』(タイトー/1987年)など、この「ボーナス得点」システムを採用したタイトルは枚挙にいとまがないほどたくさんあります。
  

また前述の『ギャラガ』、および『ギャラクシアン』(ナムコ/1979年)や『ボスコニアン』(ナムコ/1981年)には、フォーメーションを組んだ敵編隊の種類や倒しかたで「ボーナス得点」が変化する、素晴らしいアイデアを採用していましいた。

『ギャラクシアン』に登場する敵の「ギャルボス」は、単独飛行時に倒すと150点ですが、護衛のエイリアンが2体いるときに倒すと300点にアップし、さらに護衛を2体とも倒してからギャルボスを仕留めると800点の高得点が獲得できます。800点を取るためには、敵編隊が大量に放つ弾や体当たりを浴びるリスクが高まりますが、ハイスコアの更新を目指すべく、ついついチャレンジしたくなるおもしろさがあります。
  

その時々の瞬間的なアクションに対してではなく、長時間ノーミスでプレイし続けるプレイヤーに対して「ボーナス得点」を加算するアイデアも、これまたおもしろい例がたくさんあります。

『1942』では、各ステージに出現する敵の大型機を倒すと2000点が加算され、2機目の大型機を倒すと「ボーナス得点」が2500点にアップします。以下、1機を倒すごとに3000点、3500点……と500点刻みで「ボーナス得点」が上がります。ただし、途中でミスをすると「ボーナス得点」がリセットされて2000点に戻ってしまうので、得点を稼ぐためにはいかにミスをしないかが重要なポイントになります。
  

さらに高度な連続撃破ボーナスは、『首領蜂』(アトラス、開発:ケイブ/1995年)や、その続編の『怒首領蜂』(アトラス、開発:ケイブ/1997年)シリーズの名物である、一定時間内に敵を連続で倒すと幾何級数的に得点が跳ね上がるコンボボーナスシステムでしょう。

実は、このコンボボーナスは『首領蜂』シリーズなどのシューティングが元祖ではありません。筆者の知る限りでは、「コンボ」という名称を付けて最初に導入したのは、おそらく対戦格闘ゲームの『スーパーストリートファイターII』(カプコン/1993年)ではないかと思われます。

『スーパーストII』にコンボボーナスが導入されたことで、プレイヤーは「ボーナス得点」がもらえるうれしさに加え、連続技として相手にヒットしたことをひと目で確認できるメリットも同時に生まれました。本作の登場を機に、コンボボーナスは対戦格闘ゲームの定番の演出となりましたので、まさに歴史に残る画期的なアイデアだったと言っても過言ではありません。

ほかにも、シューティングゲームでコンボボーナスを取り入れたタイトルとしては、同じ色の敵キャラを3機連続で倒すごとに「ボーナス得点」が加算される『レイディアントシルバーガン』(トレジャー/1998年)、などがあります。
  

主に80年代に相次いで登場した忍者アクションゲームにも、ユニークな「ボーナス得点」の裏技があります。

以下の写真は、『忍者くん』(タイトー、開発:UPL/1984年)で隠しボーナスを獲得した場面です。本作には、手裏剣を1発も無駄撃ちせず、すべての手裏剣を命中させて敵を全滅すると1万点の「ボーナス得点」が獲得できる、おもしろい裏技があります。また『SHINOBI』(セガ/1987年)には手裏剣を一切使わず、刀による接近攻撃だけを使用してステージをクリアすると2万点が入る、通称「SHINOBIボーナス」の裏技が隠されていました。
  

敵を連続で倒すのではなく、得点アイテムを連続で取り続けると「ボーナス得点」が増えるシステムも、プレイヤーのチャレンジ精神を大いに刺激してくれます。

中でも特に優れているのが、第八回「ハイリスク・ハイリターン」でも紹介した『バトルガレッガ』(ライジング/1996年)のシステムでしょう。

本作では、敵や地上物を倒すとたまに出現する勲章を、画面外に逃さず連続で取り続けると得点がアップします。最初の勲章は100点で、以後1個取るごとに100点ずつアップして、10個目の勲章は1000点になります。11個目は2000点で、以降3000点、4000点と今度は1000点ずつアップし、19個目以降の勲章は取ると1万点の「ボーナス得点」になります。

勲章は得点が上がるごとにデザインも変わり、獲得時のSE(効果音)も変化するのも見逃せないポイントです。特に1万点の勲章は、いかにもゴージャスなデザインで、なおかつ1万点の勲章でしか鳴らない特別なSEも用意されているので、プレイヤーが獲得に成功したときの快感をいっそう高めてくれます。

本作以外にも、アイテムをノーミスで取り続けることで「ボーナス得点」がアップするアイデアは、『ゲーム天国』(ジャレコ/1995年)や『ライデンファイターズ』(セイブ開発/1996年)などのタイトルにも導入されています。
  

最後に、ちょっと変わった「ボーナス得点」のアイデアをご紹介します。

敵を倒し続けるのではなく、逆にまったく倒さないことで隠し「ボーナス得点」が入る、驚異のアイデアを搭載していたのが『ナイトストライカー』(タイトー/1989年)です。

本作には、敵を一切攻撃せず、ダメージを一切受けずに敵の攻撃をすべてかわし、なおかつ対ボス戦でもボスの自爆タイマーがゼロになるまで粘ってからクリアすると獲得できる、「パシフィスト」と呼ばれる隠し「ボーナス得点」があります。しかも、連続して「パシフィスト」に成功すると、「ボーナス得点」がさらにプラスされます。

避ければ避けるほど高得点が稼げる、まさに秀逸な逆転の発想! ノーミスですべての敵の攻撃をかわすのはけっして簡単ではありませんが、見事「ボーナス得点」の獲得に成功したプレイヤーは、自身のゲームの腕を大いに自慢することができますよね。
  

以上、古典的タイトルの導入例を中心に、数々の「ボーナス得点」を紹介しましたが、どんなご感想をお持ちになったでしょうか?

「ゲームで得点を稼ぐことは楽しいことだ」を見事に具現化したアイデアの数々は、まさに歴代ゲーム開発者の皆さんの知恵と努力の結晶であると言えるでしょう。ほかにも、ぜひ皆さんに知っていただきたい、素晴らしい「ボーナス得点」システムはまだまだたくさんありますので、次回以降に紹介できればと考えております。

なお、「ゲームニクス理論」における「ボーナス得点」に関するくわしい解説は、筆者とサイトウ・アキヒロ先生の共著「ビジネスを変える『ゲームニクス』」の「原則3-B:ストレスと快感のバランス」などのページに書いてありますので、ご興味のあるかたはぜひ御覧ください。

それでは、また次回!

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