炸裂するカプコンサウンド! 『カプコンアーケードスタジアム』の“本能的に気持ちいい”が味わえるゲームたち

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    炸裂するカプコンサウンド! 『カプコンアーケードスタジアム』の“本能的に気持ちいい”が味わえるゲームたち
  • 公開日
    2021年03月05日
  • 記事番号
    4915
  • ライター
    山村智美

カプコンのゲームが持つ魅力をみなさんはどのように表現されるだろうか?
老舗にして巨人、そして新しいブランドを次々に生み出す多様性もあるカプコンだけに、人それぞれに思い浮かぶ「良さ」があると思うが、その根源を探ればそこにあるのは、“本能的に気持ちいい”ということではないだろうか?

キャラクターの動きが気持ちいい、音が気持ちいい、疾走感のあるノリが気持ちいい……それらが混ざり合って“ゲームとしての手触り”が気持ちいいが完成している。

本稿ではそんな“気持ちいいゲームの老舗カプコン”の原点と言えるタイトルが楽しめる『カプコンアーケードスタジアム』から、カプコンサウンドが炸裂しまくりのカプコンシューティングを紹介しよう。

『1943 -ミッドウェイ海戦-』

派手さがありつつもクラシックなシンプルさも保っている。往年のカプコンシューティングの味が一番ストレートにわかる“抜群にいいところ”。それが『1943 -ミッドウェイ海戦-』だ。

80年代~90年代のゲームセンターには必ずと言っていいほど設置されていたロングヒット作であり、『カプコンアーケードスタジアム』をダウンロードすれば無料でプレイできる1本となっているのも納得のチョイス。

本作は、1987年に稼動開始された縦スクロールシューティングにして、カプコンシューティングの代表と言っていい『19』シリーズの第2作目。プレイヤーはアメリカ軍の陸軍戦闘機P-38ライトニングを操作して、太平洋戦争におけるミッドウェイー海戦で日本海軍と戦っていく。
  

シューティングゲーム全盛の時代の中で『1943 -ミッドウェイ海戦-』は、遊びやすさと独自のケレン味や派手さからくる気持ち良さという魅力を進化させたタイトルだ。

自機は1発の被弾では死なないライフ制となっており、被弾してしまってもそこでプレイのテンポを切らずに継続できる。また、それと同時に「これ以上敵の弾を喰らったらやられてしまう!」という危機感をジワジワ与えることもできるわけで、初心者へのとっつきやすさ配慮と同時に独自の緊張感と演出を両立できる仕組みだ。

派手さと爽快感においては、バリバリ撃ちまくれるショットのパワーアップ、子機が両サイドについてくれるサイドファイター、敵の攻撃を立体的に避ける宙返り、さらに画面内の敵に一気にダメージを与えられるメガクラッシュなど、前作『1942』より演出面のパワーアップがポイント。

ステージ終盤には「ワレ敵艦隊発見セリ コレヨリ攻撃ニウツル」という入電が画面いっぱいに表示され、自機が急降下! 破壊目標である敵旗艦が登場するなど、ケレン味たっぷり、かつ、ちょっと立体感も感じさせる演出が光る。

一方で、雑魚敵の動きなどにほどよく『ギャプラス』など80年代前半に登場したシューティングゲームからの系譜が感じられるところもあって、シンプルな味わいが残りつつも当時の加速している進化度合いを味わえる。
  

たくさんの魅力と見どころがある本作だが、“本能的に気持ちいい”をもっとも高めているのはサウンド! 弾を連射しているときのショット音の気持ち良さ、破壊される敵機の爆発音の気持ち良さが、ものすごくクッキリとしていて印象的。プレイ中の没頭感を高めてくれるものになっている。

『1943 -ミッドウェイ海戦-』は、『カプコンアーケードスタジアム』をダウンロードすれば無料で楽しめるので、何はなくともまずはダウンロードして、プレイしていただきたいところだ。

『1943 -ミッドウェイ海戦-』

『19XX -The War Against Destiny-』

『1943 -ミッドウェイ海戦-』から約9年後、1996年に登場したのが『19XX -The War Against Destiny-』だ。

『19』シリーズの最高傑作の呼び声も高いシリーズ後期の1本であり、カプコンが自社で開発した最終作でもある(シリーズの続編には『1944 -The Loop Master-』があるが、そちらはライジングが開発を手がけた)。

なお、『19XX -The War Against Destiny-』はこれまで家庭用ハードへ収録されておらず、この『カプコンアーケードスタジアム』が初収録となる。
  

第2次世界大戦をモチーフにしてきた従来のシリーズとは異なり、本作は世紀末の近未来(稼動時の1996年当時からみて)が舞台。架空の兵器も多数登場するのだが、自機がプロペラ機なところやステージ目標の艦隊名、そしてステージクリア時には飛び去っていくカットでぴしっと決めるところなど、ここぞというポイントはしっかり『19』シリーズを踏襲。そうしたベースに近未来ならではのド派手さや、何でもあり感も加わっているところが魅力だ。

本質的な気持ち良さであるショットや爆発などのSEがもたらすサウンドの気持ち良さは本作でも抜群。BGMも、もの悲しさ漂うシリアストーンな曲もあれば、リズム帯が引き立っているパーカッション曲もあったりとバリエーション豊かで、BGMの良さも印象に残ること請け合いだ。
  

本作最大の魅力は、“マーカーミサイル”というショット。ショットボタンを長押しして放つ溜め撃ちで、その溜め撃ちした敵を一定時間ロックオンする。そのロックオンした敵に緑色の追尾弾を撃ちまくれるというわけだ。

このマーカーミサイルは非常に強力で、敵弾を避けながらダメージを与えられるものになるので、ボスや硬い敵に的確にロックオンすることが重要になる。通常弾とロックオン中の弾は別々に発射されるので、硬い敵をロックオンしつつ、通常弾で他の雑魚敵を片付けるなど、使い方の組み立てがプレイのポイントになる。

こうしたテクニカルな要素も入ってやりこみの度合いが深い本作は、それでいて複雑過ぎず、難しすぎず、でも簡単過ぎず。さらに得点稼ぎの要素もアツイというわけで、シューティングファンからシリーズ最高傑作と称されるのも納得のタイトルとなっている。家庭用ハード初収録ということもあり、プレイしたい1本だ。
  

『カプコンアーケードスタジアム』的には先に紹介した『1943 -ミッドウェイ海戦-』と続けざまにプレイして比較することで、9年ほどで圧倒的にパワーアップしたグラフィックスやサウンド、さらにゲーム性の深みに、思わず声が漏れることは間違いない。

『19XX -The War Against Destiny-』

『プロギアの嵐』

『プロギアの嵐』は2001年にカプコンよりリリースされた横スクロールシューティングゲームだが、開発はシューティングゲームで知られるケイブだ。そのため、カプコン色ではなく、弾幕高難易度で知られるケイブシューティングのひとつとしての色が非常に強く、『カプコンアーケードスタジアム』収録タイトルの中でも異色の1本と言える。

家庭用ハードへのアーケード版の完全な収録は日本国内向けには初めて。様々な事情から『プロギアの嵐』の収録は難しいとされてきただけに、今回の『カプコンアーケードスタジアム』収録に驚き&喜びの声をあげたシューティングファンの人も多いだろう。
  

比較的新しい、2001年稼動作品ということもあり、シューティングながらストーリー展開もしっかり用意されているところが大きな魅力。永遠の命を手に入れた老人たち「元老院」に、新兵器「ガンフライヤー」に乗り込んだ少年空士隊の少年パイロットたちが立ち向かっていく……という物語となっている。
  

ゲームシステムのほうはというと、高い難易度を誇る弾幕シューティングであり、ケイブシューの流れのひとつとしても特徴的なシステムが多数搭載されているタイトルだ。

通常のショットを撃っているときは高速移動できる『フライヤーモード』というモードになるが、ショットボタンを押しっぱなしにすると、敵を自動的に追尾する弾を撃つ『ガンナーモード』に。ただしガンナーモードは移動が遅くなるので、使い分けが重要。

このフライヤーとガンナーの使い分けは、『プロギアの嵐』稼動後の2003年にリリースされたケイブの『ケツイ~絆地獄たち~』にも継承されている。

敵が撃ってきた弾を敵機を撃破したときの爆風で巻き込むと宝石(ジュエル)に変化するという、これまた『ケツイ~絆地獄たち~』に踏襲されていったスコアシステムがあり、画面を覆うような弾幕も爆風巻き込みでジュエル化して切り抜けつつスコアを高めていける。

この敵の弾をジュエル化させてスコアアイテムを大量獲得していく気持ち良さ、いわゆる“ジャラジャラ感(スコアアイテムがジャラジャラ降ってくる意)”は本能的な気持ち良さが味わえるぞ。

『プロギアの嵐』

『U.S. Navy』

カプコンのシューティングゲームというと、まずパッと思い浮かぶのは『19』シリーズであり縦スクロールのタイトルだと思うが、横スクロールものでは『エリア88』が思い浮かぶ人もいることだろう。

この『U.S. Navy』は、カプコンが1989年に『エリア88』をリリースした翌年の1990年にリリースしたタイトル。ステージ開始時にアイテムショップで特殊な装備を購入してからスタートするといったプレイの流れ、ショットのパワーアップなどの基本的な仕様、さらには多くの敵機のグラフィックスも『エリア88』と共通していたりと、『U.S. Navy』は『エリア88』のシステムを踏襲したオリジナル後継作と言っていいタイトルだ。
  

『U.S. Navy』の最大にして最高の魅力は、曲のかっこよさ。

もう曲がひたすらにかっこいい。ステージ開始前のミッションブリーフィングの曲から「これはっ!」と電流が走るようなかっこよさで、そこから始まる各ステージの曲ももちろん言うに及ばず。FM音源YM2151の響きがビンビン心を揺さぶってきて、曲に陶酔しながらプレイに没頭していける。
  

曲のかっこよさ、登場する自機や敵機のかっこよさ、ショットの手応えに爆発の効果音の気持ち良さが光る『U.S. Navy』だが、世界観はなかなか独特。

プレイヤーは米国海軍の所属で、戦いの舞台は序盤はJ国という架空の国になるのだが、ステージ背景に“108”と書かれているどこかでみたような気がするビルがあったり、“昭和総合病院”があったり、“CAPCOM”のビルがあったりと遊び心も随所に見られる。

ステージ中盤以降は、当時の横スクシューティングのお約束と言っていい“巨大戦艦ステージ”が多数登場、スクロール方向の反転(ちゃんと自機が宙返りで旋回して方向転換する)もあったりとステージギミックが多彩になっていく。

ステージが進むにつれどんどんとシリアスさが高まり、それにあわせて曲も硬派に、高揚感を高めていく。いずれのステージの曲も屈指のかっこよさだが、中でもいよいよ敵組織の要塞へと乗り込んでいくというステージ9の曲は鳥肌もののかっこよさ! 『カプコンアーケードスタジアム』ならコンティニューし放題なので、ぜひ終盤ステージの曲をプレイして聴いてみてもらいたい。『U.S. Navy』の熱さとかっこよさに惚れること間違いなしだ!

『U.S. Navy』

『バース -OPERATION THUNDER STORM-』

1992年にリリースされた縦スクロールシューティングの『バース -OPERATION THUNDER STORM-』は、ベースに『19』シリーズを感じさせつつも新たな進化を目指した、意欲作な存在だ。

第2次世界大戦モチーフで渋さが光っていた『19』シリーズに対し『バース -OPERATION THUNDER STORM-』は世界設定が近未来でロボット・メカ感が高まって派手になり、サウンドもノリの良さやかっこよさが強調されている。

この4年後の1996年に同じく近未来モノへと発展していった『19XX -The War Against Destiny-』をリリースしたという意味では『19XX』誕生の布石となった存在と言ってもいいのかもしれない。
  

1992年という、アーケードゲームシーンが加速して、よりリッチに派手になっていく中でテンポが良くスピード感のあるプレイ体験へと進化していったのを感じさせる本作。

1ステージはそれまでのシューティング作品からすると短め(ただしステージ数は30と多い)で、BGMが1ループしてボス戦に入って終わるというような、曲の展開と盛り上げにシンクロさせたような構成だ。

ステージ1は特にそれがわかりやすくて、ヒーローものや戦隊ものの主題歌のような歌詞のありそうなメロディーラインをしたノリのいいBGMで、その曲が1ループしたなというところですぐにボス戦へと突入していく。

他のステージでも、そうした口ずさみたくなるサウンドに、ショット音と敵の爆発音がオーバーラップし“本能的に気持ちいい”が炸裂して、プレイヤーをノックアウトしてくれる。ステージ数が多いだけに曲数も多いが、序盤なら特にステージ8のかっこよさは特筆もの。
  

システムも意欲的でユニーク。自機のオプション装備的なものに“ポッド”というものがあるのだが、プレイ開始時に選択するポッドのタイプに“ファジー”というものがある。おりしも1992年頃は家電製品などにファジー(あいまいに)という言葉が流行っていたころで、このポッドのファジーというタイプも、敵弾に“それなりに”反応して自動で防いでくれるというユニークなものになっている。

ボムは最大5発まで使えるのだが、ボムは時間回復する。さらに、レバーを回すと回復が速まるという、レバガチャ回復を搭載! 当時は『ストリートファイターII』シリーズ大ヒットの中であり、気絶してピヨったらレバガチャで回復するのをゲームファンがみんなしていた時代。それに影響され採用したのかは定かではないが、本作ではボム使用後は「うおおお!」っとレバガチャしまくって熱くプレイするという、独特なものになっている。
  

隠しアイテムに『ストリートファイターII』のリュウもいて、出現時に「昇龍拳!」とストIIボイスを響かせてれたりと、遊び心もばっちり。名作の多いカプコンのアーケードシューティングだが、実は筆者の個人的なオススメはこちらの『バース -OPERATION THUNDER STORM-』だ。ぜひプレイして、その熱さとおもしろさを感じていただきたい。

『バース -OPERATION THUNDER STORM-』

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©本宮ひろ志 ©サード・ライン ©集英社  ©CAPCOM U.S.A., INC. 2021 ALL RIGHTS RESERVED.

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