クセがすごい!『カプコンアーケードスタジアム』で楽しめる“本能的に気持ちいい”が味わえるゲームたち
前回の『シューティング編』ではカプコンのゲームが持つ魅力の中でも“ゲームの手触りが本能的に気持ちいい”が重要として、『カプコンアーケードスタジアム』で楽しめるタイトルから、それを強く味わえるカプコンのシューティングゲームを紹介した。だがもちろん、カプコンのゲームの魅力はそれだけにとどまらない。
カプコンのゲームと言えば、世界観やキャラが濃くて熱くて、何だかそれがクセになる……そういうゲームが突然現われて、ゲームファンを驚かせてきたもの。
そこでこの「熱くて濃くてクセがすごいゲーム編」では、『カプコンアーケードスタジアム』で楽しめるタイトルから、文字どおりに熱くて濃い味のクセがすごいゲームを紹介していこう。
『フォゴットンワールド』
「奴は いたか?」
「ああ 今日こそ 息の根を止めてやるぜ!」
アニキ感に満ち溢れているマッチョ金髪&モヒカンのアツイ戦いと、シュールな世界観がクセになる。それが、この『フォゴットンワールド』だ。
『フォゴットンワールド』は、カプコンが1988年にリリースした横スクロールシューティングなのだが、ビジュアル、サウンド、ゲーム性と、そのすべてに異様とも思えるセンスが満ちている。
何といっても目を引くのは、金髪&モヒカンの主人公2人。ステージクリア時には彼らの濃い立ち絵のビジュアルが表示され、決めセリフを喋るのだが、このセリフがいい味わい。
例えばステージ2のボスダストドラゴンを倒したあとのセリフは、
「フン! ダストドラゴンなど 所詮俺たちの敵ではない!」
「まっ 少々てこずっちまったがな!」
というもの。熱いセリフに、ちょっとラフでニヒルな返しが刺さる、センス抜群な掛け合い。2人プレイ時には2人で声に出して言いたいセリフだ。
自分たちで言わずとも、この決めセリフはボイスがついている。
ただ、いわゆるひとつの社員ボイス(開発チームのどなたかが声を当てている)であり、セリフのかっこよさからはちょっとズレがあるような気がしなくもなく、それがなかなかにシュールな夢を見せてくれる類のものであり、一度みたら忘れない味をしている。
そんな2人なのに、なぜか公式設定の名前がない。
敵のボスとかには全部名前がついているのに。そんなわけで当時の雑誌や家庭用移植版などでは便宜上「名無しの超戦士」とつけられていたりする。「開発中は主人公のことを話すときどうしていたんだろう?」と不思議が広がるばかりだが、このIGCCのウェブサイトに掲載されている『西谷 亮インタビュー Part2』によると、「すっかり忘れてたんですよ」とのこと。
こちらのインタビューではそのほかにも『フォゴットンワールド』の秘話が満載なので、ぜひご覧いただきたい。
ゲームシステムも独特。
空を自在に飛び回れるシューティングゲームの自機のような存在でありながら、ショットは360度自由に角度を変えて撃てる。
アーケード筐体ではダイヤルのような特殊なローリングスイッチというボタンで、そのショットの角度コントロールを実現していた(『カプコンアーケードスタジアム』では角度調節をボタンでコントロールできることに加え、コントローラーの右スティックを傾けた方向にキャラクターやサテライトが向くようにもなっている)。
この独特なシステムのシューティングになった経緯についても上述の西谷亮氏のインタビューで語られている。それによると本作は当初はシューティングゲームではなくアクションゲームになる予定で、いわばコナミの『魂斗羅』のようなデザインを想定していたということだ。
そんな独特な操作で突き進む各ステージ、こちらも何でもあり。
序盤ステージの廃墟が広がるダストワールドからはじまり、中盤はピラミッドの世界、さらに終盤は広がる雲海の中、動く石像や不気味な地形が広がる天竺界と、プレイヤーを思わず「むう、面妖な……」と唸らせること間違いなしな世界が広がっている。
一方でBGMはというと、どこか静かで不気味だったり、どこか明るめでほがらかな曲もあったりと、こちらもセンスがすごい。
地面から突如生えてくるショップ内の曲はこれまたなごやかだったりして、プレイヤーの精神を揺さぶってくる。
はじめてプレイする人は、何だかシュールな夢を見ているかのような不思議な感覚に襲われるかもしれないが、それこそ『フォゴットンワールド』の醍醐味であり魅力。
一度味わえば、もう忘れることはなく、そしてときどき、あの超戦士の姿とセリフを思い出すことだろう。
この『カプコンアーケードスタジアム』があれば、いつでもアーケード版の彼らに会えるから安心だ!
『バトルサーキット』
カプコンのアーケードタイトルと言えばベルトスクロールアクションも欠かせない存在。
その中でも特に個性が強くて濃いゲーム体験を味わえる1本としてオススメしたいのが、この『バトルサーキット』だ。
本作の世界は、近未来、サイボーグ、賞金稼ぎと犯罪者の戦い、といったようにサイバーパンク的な世界観。
生体チップを用いたサイボーグが存在する未来の世界。
賞金稼ぎのサイボーグを操作して、世界征服を企むマフィア組織「デリート」と悪の天才科学者「ドクターサターン」と戦っていく。
こうして文章で書くとヘビーな世界観なのかなと思えるが、テイストはアニメ的でコミカル。だがそれでいて、カプコン特有のキャラの濃さ、ノリの良さ、濃い味わいが随所に込められているゲームなのだ。
プレイヤーキャラクターは5人。
スタンダードな主人公ポジションの「サイバーブルー」は正統派だが、チームリーダーの「キャプテンシルバー」は超軟体質でダルシム的に腕を伸ばしてパンチしたり、体を大砲に変えたりとやりたい放題。海賊王に俺はなる的ゴムゴム人間を思わせるところも。
3人目の「イエロービースト」は黄色の毛に身を包んでいる女性獸人キャラ。
でもこの世界ではモデルの仕事もしているし、獣人なのに獸をしつける的なムチをビシバシふるいまくったりと、いろいろツッコミどころはあるが、スピードキャラで扱いやすく、プレイ感の気持ちいいキャラだったりする。
4人目は、相棒の女の子ポーラちゃんを背中に乗せて戦う、空を飛べる隻眼のダチョウの「ピンクオーストリッチ」だ。もう何を言っているかよくわからないと思うが、乗っている女の子がピンクなのではない。
女の子は相棒で、ピンクはダチョウなのだ。
バタバタはばたきながらのダッシュに、空を飛んで空中から『ストリートファイターIII』のユンの雷撃蹴のごとく敵を踏み蹴りしまくる。
狂暴でクールなダチョウなのだ。
最後の5人目は“超自然パワーを持つ謎の生命体”「エイリアングリーン」だ。
もう謎の生命体だし、名前からしてエイリアン。
見た目としては自由に動きまわれるようになった植物のようであり、誰がどうみてもクリーチャーだ。
でも見た目とは裏腹にボイスはかわいい。そして会話シーンでは「楽勝でおま!」など関西弁を話す。
ちなみに投げキャラ。
もうキャラが濃いというか、個性の渋滞がすごい。キモかわいい。
さてゲーム内容にも触れておこう。
プレイスタート時に響く「バトォサーキィット!」のボイスから、悪の天才科学者「ドクターサターン」を追い詰めたシーンから始まる“いきなりクライマックス的な展開”、軽快かつちょっとムーディーなBGMをバックに、ゴーゴー!とプレイヤーをせかすサポート役ハリーのボイスなど、全体にアメコミやアメリカンTVショー的なケレン味たっぷりの演出がテンポよく続いていくのが気持ちいい。
カプコン作品小ネタやどこかで見たようなオマージュがそこら中にあるのもポイントで、例えばステージ2のジョニーはギターを構えたエルビスプレスリー的キャラクターでありつつも、残像を残しながら高速移動しつつ音符型の爆弾をばらまいて攻撃してきて、「この動き、この技、ロレント!?」(『ファイナルファイト』等に登場するキャラ)となったりと、ゲームファンならちょっとニヤッとするような遊び心がたっぷりだ。
ちなみに本作のストーリーは全世界のコンピュータを支配することができる「天帝システム」の起動ディスクをめぐっての戦いになるのだが、この「天帝」というキーワードも、先に紹介している『フォゴットンワールド』で宇宙を征服していた天帝バイオスを思わせる。
もちろん『バトルサーキット』は濃いキャラとノリだけのゲームなんかでは断じてない。
プレイの手触りが抜群にいい、カプコンのベルトスクロールアクション最終世代の傑作だ。
プレイヤーキャラはみなそれぞれに、格闘ゲーム的なコマンド技をもっていて、それをうまく繰り出すことがポイント。
技の多くは敵に複数回ヒットする、いわゆる多段ヒットの性質のものが多く、敵にズババババーーン! と連続ヒットしていくのが気持ちいい。
攻撃ひとつひとつもガツッとしたヒットストップ感があって気持ちいいし、アクションのテンポやスピード感もプレイしやすくて心地のいい、良いバランスに仕上がっている。
カプコンが連綿と作り上げてきた2Dアクションの粋が感じられる。
「何だこれ(笑)」と思わず笑ってしまうようなクセのあるキャラやアクションの数々、ノリのいい展開、それでいてプレイの手触りは抜群に気持ちよくて、遊びこんで練度が上がるほどにプレイは気持ちよくなっていく。友だちや家族とワイワイ遊ぶとさらに楽しい。
『カプコンアーケードスタジアム』でぜひ楽しんでほしい1本だ。
『天地を喰らう』
どちらかと言えば続編の『天地を喰らうII 赤壁の戦い』のほうがベルトスクロールアクションの傑作のひとつとして有名だろうか。
『カプコンアーケードスタジアム』には『天地を喰らうII 赤壁の戦い』も収録されているが、本稿では初代の『天地を喰らう』をピックアップしよう。
『天地を喰らう』は、家庭用ハード初のアーケード版の完全移植は今回の『カプコンアーケードスタジアム』が初めて。かつてPCエンジンSUPER CD-ROM2に移植版が発売されたが、スペックに合わせて調整されたもの。
アーケード版の完全移植は今回が初だ。
『天地を喰らう』がリリースされたのは1989年で、ベルトスクロールアクションの金字塔『ファイナルファイト』が登場する直前(半年ほど前)。
そのタイミングに開発された『天地を喰らう』は、ベルトスクロールアクションの一歩前、エッセンスとしてシューティングからの進化の間にあるような、独特なゲームになっている。
原作である本宮ひろ志氏の漫画「天地を喰らう」のイラストを活かすべく、プレイ画面の下部にプレイヤーキャラの顔イラストを配置、その横には技を放つときやアイテムを獲得したときにセリフのテキストを表示をするなど、キャラの魅力を活かす工夫がされている。
プレイヤーは劉備、関羽、張飛、趙雲、の4人から選択するが、この初代『天地を喰らう』では常に馬上で戦っていく。
ボタンで右攻撃と左攻撃を使い分けるという操作になっているので、“右に移動しながら左の敵を斬る”という変則的な操作も可能だ。
プレイフィールのほうはと言うと、本作をプレイした人は心地よい手の疲れと、「うりゃ~りゃりゃりゃりゃりゃ~!」というボイスと、「ズバババババーズバババババー」というSEが脳裏に焼き付くことになる。
必殺技として、ボタン連打で放つ「流星剣」とボタン長押しで放つ「真空剣」があるのだが、この「流星剣」が強い。
強すぎる。
はっきり言って連打ゲーの領域だ。
「流星剣」は攻撃のリーチが長くて隙もない。
そのためプレイヤーはみな、「流星剣」を出し続けるためにひたすらボタン連打することになり、「流星剣」を出しているときの「うりゃ~りゃりゃりゃりゃりゃ~!」というボイスとともに自らも「うりゃ~りゃりゃりゃりゃりゃ~!」と言いながらボタン連打をするものであり、ゲームセンター内に「ズバババババーズバババババー」という音が響きわたればブルースは加速していく。
でも手動のボタン連打は疲れちゃうので、『カプコンアーケードスタジアム』では連射機能を使って気軽に楽しむのもいいかもしれない。
原作の濃い魅力をどのように活かすのか。
当時カプコンが『エリア88』などいわゆる版権モノタイトルに取り組んだひとつであり、その工夫やゲーム性の確立から、続編の『天地を喰らうII 赤壁の戦い』が、ひいてはカプコンのベルトスクロールアクションの歴史ができていったことを考えると、貴重な1本。
ぜひご家庭で思う存分にアーケードオリジナルボイス版でうりゃ~りゃりゃりゃりゃりゃ~!していただきたい。
©CAPCOM CO., LTD. 2021 ALL RIGHTS RESERVED.
©本宮ひろ志 ©サード・ライン ©集英社 ©CAPCOM U.S.A., INC. 2021 ALL RIGHTS RESERVED.