ゲームミュージックを通して世界で活躍するドナ・バークさんインタビュー

ゲームミュージックを通して世界で活躍するドナ・バークさんインタビュー  IGCC

コナミのアクションゲーム『メタルギア』シリーズのコンサート「メタルギア in コンサート」が、2018年7月7日(土)東京文化会館・大ホールで行われ、大盛況のうちに幕を閉じました。このコンサートは、2017年7月に大阪で行なわれたコンサートの反響を受けての再演で、引き続き10月10日ロサンゼルス、同13日ニューヨーク、同28日パリでも開催が決定しています。

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▲コンサートでは多くのファンが駆け付けた(写真提供:DAGMUSIC)

『メタルギア』シリーズは、1987年にコナミからMSX2※1MSX2 : マイクロソフトとアスキー(現アスキー・メディアワークス)によって提唱された8ビット・16ビットのパソコンの共通規格「MSX」規格の一つ。1985年に発売が開始された。専用ソフトとして発売されて以降、長年にわたって多くの続編がリリースされ、全世界累計販売本数が5,380万本(2018年3月末現在)を超える人気タイトルです。敵地に潜入していくスリリングなシステムが人気を集め、その楽曲には、緊張感を極限にまで高める曲や、ダイナミックなアクションシーンにぴったりの曲が盛りだくさん。7月7日に行なわれたコンサートでは、栗田博文氏の指揮により東京フィルハーモニー交響楽団が歴代の名曲を生演奏して会場を沸かせました。

同コンサートでトリを飾ったのがオーストラリア出身の女性アーティスト、ドナ・バークさんです。第1幕の最後に「The Best Is Yet To Come」、第2幕の最後に「Snake Eater」と「Heavens Divide」を力強く歌い上げ、生管弦楽と共に大ホールを『メタルギア』色に染め上げました。

ドナ・バークさんはミュージシャンとしての活動以外に、これまで数多くのゲームやアニメで声優、歌手も務めてきたほか、東海道新幹線などでの英語車内アナウンス、テレビ出演など幅広く活動してきた人物です。そんな彼女に、これまでのゲーム関係の活動と、これからの活動について伺ってきました。

ゲーム業界におけるミュージシャンとしての一歩

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▲六本木にある自社スタジオ「DAGMUSICスタジオ」でインタビューに応じるドナさん

――まずは、ドナさんご自身のことを教えてください。子ども時代はゲームで遊んだりしていましたか?

ドナ 実はお金がなくてあまりゲームをする機会がありませんでした。双子の兄はすごくアーケードゲームが好きで、よくゲームをしに行っていましたが、私はレコードを聞きながら歌ったりして遊ぶことが多かったです。あとは、家から海が近かったこともあってビーチで泳いだり…。水の中に潜っているときの無音状態が好きでした。

――そんなそんなドナさんが最初に仕事としてかかわったゲームと、そのきっかけを教えてください。

ドナ 最初に私が仕事として関わったゲームは、『サイレントヒル2』(2001年/コナミ)ですね。アンジェラ役のオーディションを受けたことが、私をゲーム業界へと導くきっかけとなりました。
この仕事は声だけではなく、モーションキャプチャーも頼まれて引き受けたんですが、タイトなバイクショーツにTシャツ、水泳帽子、ランニングシューズという格好でやらなければいけなくて驚きました!

その後に声の吹き込みを別のスタジオでやりました。実はその時に、ゾンビの声も演じることになったのですが、自分の想像以上にとても怖い声が出せたんです! それにびっくりして咳き込んでしまい、笑ってしまって大変でした(笑)。

――最初のお仕事にして、声だけでなくモーションキャプチャーまで担当されたんですね。では、ほかに初期のお仕事で印象的だったものは?

ドナ 『 ダンスダンスレボリューション スーパーノヴァ』(2006年/コナミ)に収録されている「Star Gate Heaven」の仕事をいただいたことで、その後本格的にゲームミュージックにかかわるようになりました。デモテープを送ったら、藤森崇多※2藤森崇多:コナミデジタルエンタテインメント所属の作曲家。主にSota Fujimoriなどの名義で活動し、『ビートマニアⅡDX』シリーズや『ダンスダンスレボリューション』シリーズ、PS2版『魂斗羅』シリーズなどを手掛けてきた。トランス、ハウス系の楽曲を得意とし、シンセサイザーに対する造詣が深い。さんが私の声を選んでくれました。これは本当に幸運だったと思います。彼は英語がとても堪能で、本当に熱心な方で、一緒にお仕事するのがとても楽しかったです。お会いした最初の頃に結構盛り上がって、インプロ(即興演奏)できたのも思い出に残っています。私は作詞とボーカルを担当することになり、歌はコナミのスタジオで録音しました。

次に印象的だったのが、英語版『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』(2003年/任天堂)の「Morning Sky」(オープニングテーマ)と「 Moonless Starry Night」(エンディングテーマ)です。2曲とも作詞と歌を担当しました。作曲家の谷岡久美さん※3谷岡久美 : 作曲家・編曲家。1998年から2009年までスクウェア・エニックス(旧スクウェア)に在籍、『チョコボの不思議なダンジョン2』『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』シリーズなどに携わった。現在はフリーランスとして活動中。初期には彩京の『堕落天使 – The Fallen Angels -』などにも携わっている。が書かれた曲がとても素敵で、アイルランド系音楽の要素も含まれていたので共感しやすく、歌詞を書きやすかったです。私の先祖はアイルランド系であることもあって、その当時から今に至るまでアイリッシュバンドの活動をしているんです。
この仕事を通して、ゲームと音楽がどのようにつながっていくのか、音楽の力というものを感じました。『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』をやって、ゲーム業界にやっと入れたな、という実感が湧きました。

――アイリッシュバンドというのはどのような音楽ですか?

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▲年季の入ったアイリッシュ打楽器を取り出し実演しながら説明するドナさん

ドナ これはアイリッシュ音楽に使う太鼓で、ヤギの革でできているんです。古い感じがするでしょ? 『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』を担当した当時アイリッシュ系の音楽が東京で少し流行っていたんです。「METAL GEAR SOLID VOCAL TRACKS※4METAL GEAR SOLID VOCAL TRACKS(2015年9月/コナミデジタルエンタテインメント):『メタルギアソリッドV ファントムペイン 』の発売に合わせてリリースされた企画アルバム。過去の『メタルギアソリッド』シリーズの中でも人気が高いボーカル曲オリジナル8曲に加えて、 このアルバム用にドナさんによるカバー・トラック5曲も新規収録された。の「The Best Is Yet To Come」の音源提供でも、これを演奏したんですよ。

――おおっ、そう聞くとすごく価値を感じますね!

ドナ 水で濡らして使うんです。

(と、にわかに持っていたペットボトルの水をかけるドナさん。一同笑)

――わりと大胆に扱って平気なんですね(笑)。ところで『アウトラン2』(2003年/セガ)にもかかわってらっしゃったんですね。

ドナ 『アウトラン2』の「Life Was A Bore」では、曲の中で喋るパートが多かったのですが「アメリカ英語の発音で」という指定があってちょっと緊張しました。私はオーストラリア出身で、普段オーストラリア英語の発音なのです。

ゲームの場合、声や曲を収録してから発売されるまでに時間がかかります。収録されてから1年後などに発売されるので、制作している時点ではどんなゲームになるのか、どんな反響があるかまったく分かりません

その当時はまだキャリアが始まったばかりだったので、とにかくいろんな仕事をして自分のキャリアを積み上げたいと懸命になっていた時期で、ゲームのことを考えるというよりは、ひたすら音楽のことに集中して仕事をするという感じでした。今ならもっと楽しむ余裕があるんですが…。

懸命にキャリアを積み上げた先に

▲2018年7月7日の「メタルギア in コンサート」で披露された「Sins of The Father」(ドナ・バーク公式チャンネルより)

――そのほか、これまでどのようなゲーム音楽に携わりましたか? 特に印象に残っているお仕事を教えてください。

ドナ 『メタルギアソリッドV ファントムペイン』(2015年/コナミデジタルエンタテインメント)の「Sins of The Father」です。それまで、こんなに大きい作品にかかわったことはありませんでした。抜擢されたときに、どれだけ自分がラッキーかということが分かっていました。制作に数年もかかった大作で、クリエイティブなチームにかかわることができてとても幸運でした。1つ、面白かったエピソードとしては「Sins of The Father 」はここ(ドナさん自身が持つ「DAGMUSICスタジオ」)で録音されたんですよ

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▲これまでのキャリアについて振り返るドナさん

――え、コナミには立派な音楽スタジオがありますが、ドナさんのスタジオで収録が行なわれたんですか? それはまた、一体なぜ?

ドナ なぜかは分かりませんが…(コナミの会社とうちのスタジオが)すごく近いことも関係あったのかもしれませんね。向こうのスタジオで収録するより、こちらに来たほうが早かったのかしら?

その後、ロスアンゼルスに録音に行きました。それまでは、わざわざ海外での録音を依頼されたことがなかったので、これは本当に特別なことでした。多くの有名なアーティストが歌ったキャピトル・スタジオ※5キャピトル・スタジオ : アメリカの大手レコード会社キャピトル・レコード本社がある「キャピトル・タワー」内に敷設されているレコーディング・スタジオ。1956年に完成して以来、数多くの著名アーティストの作品を世に送り出してきた。で自分も歌えたことで、これまでのキャリアが一段とアップしたように思えました。ここで自分もアーティストになったんだという感覚を持ちました。

そして「Sins of The Father」は、ゲーム発売の2年前から有名になり始めました。E3※6E3 : 「Electronic Entertainment Expo」通称「E3(イースリー)」。米ロサンゼルスで1年に1度、数日間にわたって開催される世界最大のコンピューターゲーム関連商品の見本市。」の会場でも流れましたし、「東京ゲームショウ2013」でも歌と共に巨大スクリーンに「 COMING SOON」と表示されたのがとても印象に残っています。自分の歌声がループで流れていて、「すごい作品に携わったんだな」と実感しました。

この曲のために初めてジムに通って体を鍛えました。歌自体がとても情熱的でパワーを要する曲なので、サビの部分で声を美しく出そうとすると途切れることがあったんです。なので歌のトレーニングだけでなく、体のトレーニングも積み重ねて、体全体で歌えるようにしました。

――トレーニングが必要とは…歌うのが相当難しい曲なんですね。

ドナ 今は簡単です。

(一同笑)

ドナ でも、当初は練習なくしては無理でしたね。そんな経験もあって、すごい大作だったということが体の奥深くに刻まれています。

脚注   [ + ]