「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 第二回 隠れキャラ

  • 記事タイトル
    「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 第二回 隠れキャラ
  • 公開日
    2020年02月28日
  • 記事番号
    2711
  • ライター
    鴫原盛之

当コラムでは、「ゲームニクス理論」をもとに、なぜゲームがおもしろくなるのか、どうしてプレイヤーはゲームに夢中になってしまうのかを、おもしろおかしくご紹介していきます。
第二回目のテーマは、マニュアルやインストカードに掲載されず、プレイ中にもヒントが示されない秘密の存在、いわゆる隠れキャラクター(以下、隠れキャラ)です。
かつて、ファミリーコンピュータ全盛期には数多くのゲームに登場し、ゲーム雑誌の裏技コーナーで盛んに紹介されたことから、「隠れ」という名前でありながら、プレイヤー間ではおなじみの存在となりました。
たとえゲームの進行とは直接関係がなくても、発見するとうれしさのあまり、ゲームにますます夢中になってしまう。そんな隠れキャラの魅力や存在意義をご紹介していきたいと思います。

「ゲームニクス」とは?
現亜細亜大学教授のサイトウ・アキヒロ先生提唱による、プレイヤーが思わずゲームに夢中になる仕組みを理論・体型化したもの。
本稿では、「ゲームニクス理論」を参考に、ありとあらゆるゲームのオモシロネタをご紹介していきます。「理論」というおカタイ言葉とは正反対に、中身はとってもユルユルですので、仕事や勉強の休憩時間や車内での暇つぶしなど、ちょっとした息抜きにぜひご一読を!

プレイヤーに驚きと感動を与える隠れキャラの存在

ファミコンブーム以前の古い時代から、熱心なゲームファンの間では隠れキャラの存在はすでに知られていました。

特に有名なのは、シューティングゲーム『ゼビウス』(ナムコ/1983年)に登場した2種類の隠れキャラ、ソルとスペシャルフラッグ。当ゲーム文化保存研究所の大堀康祐所長が書いた同人誌「ゼビウス1000万点の解法」で、その存在が全国的に広く知れわたったことも、ゲーム文化の歴史として特筆すべきことでしょう。

ソルは、出現地点に向けてブラスター(地上用の攻撃弾)を撃つとタケノコのようにニョキニョキと姿を現す、地下に潜むメモリータワーという設定の隠れキャラです。ソルの位置は一見しただけではわかりませんが、出現地点に照準が合うと赤く点滅するので、これを利用して探すことができるようになっていました。

ソルは出現させると2,000点、破壊するとさらに2,000点の高得点が加算されるのが大きなメリットでした。
また、本作は6万点おきに自機のソルバルウが1機増える(※2万点到達時にも1機増える)ので、ソルの隠れた場所を覚えて出現および破壊できるテクニックを持ったプレイヤーほど、より有利にゲームが進めることができました。
 
   

一方、スペシャルフラッグは照準を合わせても点滅せず、出現位置は毎回ランダムで変化する(横ライン上のいずれか1か所になる)ので、自力で発見するのはとても難しい隠れキャラでした。
出現させると1,000点、さらに取るとソルバルウが1機増えるので、発見したときの喜びはひとしおでした。
   
   

筆者は『ゼビウス』の発売当時は小学生でしたが、ゲームセンターで上手なお兄さんたちが次々とソルを出現させているのところを初めて見たときは、「どうして、何もないところからニョキニョキと生えてくるんだろう?」と不思議でしようがありませんでした。
後になって、たまたまゲーセンで知り合った人から、出現する場所はあらかじめ決まっていることを教えてもらい、そうだったのかと驚いた思い出があります。また、照準が点滅する
フィーチャーを知ったことによって、いくつかのソルを自力で発見できたときには本当に感動しました。

隠れキャラがもたらす、プレイヤーの学習効果

次に、隠れキャラを発見できることによって、プレイヤーのゲームの腕が上達する(または、うまくなった気になれる)効果をもたらしてくれる例をご紹介していきます。

有名タイトルのなかから、その典型的な例を挙げるとすれば、やはり『スーパーマリオブラザーズ』(任天堂/1985年)がいの一番となるでしょう。

本作には、取ると主人公マリオのストックが増える、1UPキノコがあちこちに隠されていました。出し方は、特定のブロックを下からジャンプして叩く方法と、一見すると何もない空間に向かってジャンプすると、隠しブロックとともに出現する場合との2種類がありました。

プレイヤー目線で言えば、より驚きと感動が得られるのは、やはり後者のほうでしょう。
最初に1UPキノコが隠されているのはワールド1-1、つまり1面ですが、ここで一度でも発見できたプレイヤーは、「あ、このゲームには空中にも何かが隠されていることがあるのか。もしかしたら、以降のステージにも何かを隠している場所があるのでは?」という発想が自然とわいてくることでしょう。
つまり、1UPキノコのような隠れキャラには、プレイヤーに対してゲームの腕が上達するきっかけを作るという効果もあるのです。これは前述のソルと同じですね。
   
     

もうひとつ、『スーパーマリオブラザーズ』からおもしろい例をご紹介しましょう。
以下の写真はワールド1-4、大魔王クッパ(のニセモノ)が出現する直前の場面で、合計6個の隠しブロック(コイン)があります。
      
      

次に、ワールド6-4の写真を見てみましょう。同じく、大魔王クッパ(のやはりニセモノ)が出現する直前の場所ですが、先程の1-4の地点と同じように見えませんか?
その類似性に気づき、かつ1-4の隠しブロックの存在を知るプレイヤーであれば、「もしかして、ここにも隠しブロックがあるのではないか?」とひらめき、ここでも隠しブロックを発見できるとともに、「やっぱりそうだったのか!」と大きな感動を得られるハズです。
筆者も当時、この発見によって「もしかして、自分はゲームの天才なのかも?」という壮大な勘違い(苦笑)をし、ゲームの腕に自信を持たせてくれたことを今でもよく覚えています。
      
       

この隠しブロックと似たようなケースは、ほぼ同時代に発売されたほかのタイトルにも見られます。

その一例が、ファミコン版のアクションゲーム、『スペランカー』(アイレム/1985年)の隠れキャラであるダイヤモンド。各ステージに1個ずつダイヤモンドが隠されていて、隠し場所を爆弾で破壊すると出現し、取ると5,000点のボーナスが入ります。
以下の写真は、1面と2面のダイヤモンドを出現させたところです。やっぱり、どちらも隠し場所の地形が似ているような気がしませんか?
        
      

明確な出現法則に基づいて用意された隠れキャラ

今度は、出現地点を覚えるとともに、ある一定の条件・法則を満たすことで出現する隠れキャラの例を見てみましょう。

以下の写真は、アクションゲーム『グーニーズ』(コナミ/1986年)のファミコン版です。
本作では、隠れキャラの出現場所はあらかじめ決まっていますが、ステージごとに出現方法が異なります。例えば、1面であれば出現地点でキックを出す、2面はしゃがむ(十字キーの下を押す)キーの上を押す、といった具合です。
つまり本作では、隠れキャラの出現場所を推理するとともに、操作方法の法則性をいろいろ試行錯誤しながら見つけ出すという楽しさがあるわけですね。

また、本作の隠れキャラは取ると5,000点のボーナスとなりますが、一定時間後に消えてしまいます。
消えた場合の得点は1,000点で、なおかつ一部の隠れキャラは左右に動きながら出現するため、高得点を稼ぐには隠し場所の推理力と同時に操作テクニックを要求されるのも、本作ならではのおもしろさと言えるでしょう。
     
      

ちょっと変わっているのが、ファミコン用アクションパズルゲーム、『レッキングクルー』(1985年/任天堂)の隠れキャラの出現法則です。

本作では、爆弾を2個破壊したあとに、特定の爆弾を爆発させると隠れキャラが出現するようになっています。
隠れキャラの種類は、ブタ(800点)、サンタクロース(1,600点)、ネコ(3,200点)、ゴールデンハンマー(3,200点+マリオがパワーアップする)の全4種類。おそらく、発売当時はほとんどの人が、出現する隠れキャラはランダムだと思っていたと推測されますが、実は一定の法則によって決められています。
その法則とは、「ステージの数字+(隠れキャラ出現直前までに)ハンマーを振った回数の合計値を8で割った時の余りの数で決まる」というもの。余りが0、3、6いずれかの場合はブタ、1ならゴールデンハンマー、2または5の場合はサンタクロース、4または7の時はネコが出現します。
ですので、例えば4面でハンマーを振った回数が5回であれば、(4+5)÷8=1(余り1)なので、ゴールでハンマーが出現することになります。

つまり本作では、隠れキャラの出る爆弾の位置を調べつつ、暗算をしながら遊ぶという楽しみ方もできるわけですね。特に、ゴールデンハンマーは主人公のマリオがパワーアップする効果もありますので、この法則を知っていれば断然有利にゲームが進めることができます。
     
     

以上、隠れキャラの効能や存在意義をざっとご紹介してみましたが、いかがでしたでしょうか?

冒頭でも述べたように、80年代のファミコンブーム期は、各ゲーム雑誌で裏技紹介コーナーがたいへんな人気を集めていました。
ここで紹介されたゲームは人気がさらに上がることから、やがてメーカー側が雑誌に掲載されることをあらかじめ計算に入れたうえで、隠れキャラを仕込んだソフトが登場するようにもなりました。
つまり、「ゲームニクス」とは別に商業的な意味でも、当時は隠れキャラがとても重要な存在だったわけです。

今ではインターネットを通じて、情報が世界中に瞬時に拡散される時代となったこともあり、このような隠れキャラの存在は少なくなった感があります。
ですが、上記のような隠れキャラを利用した偶然性、あるいは法則性が生み出すおもしろさも、ビデオゲームならではの大きな魅力のひとつと言えるのではないでしょうか。

なお、このような隠れキャラや隠しアイテムを使用した、プレイヤーを夢中にさせるくわしい仕組みについては、サイトウ・アキヒロ教授と筆者の共著、「ビジネスを変える『ゲームニクス』」(日経BP)の第2章、「原則3-C 発見する喜び」のところで書かれていますので、ご興味がある方はぜひご一読ください。

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