「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 第十一回 ボーナスステージ

  • 記事タイトル
    「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 第十一回 ボーナスステージ
  • 公開日
    2020年11月27日
  • 記事番号
    4217
  • ライター
    鴫原盛之

当コラムでは、「ゲームニクス理論」をもとに、なぜゲームがおもしろくなるのか、どうしてプレイヤーはゲームに夢中になってしまうのかを、おもしろおかしくご紹介していきます。

第十一回目のテーマは、高得点やパワーアップなどが獲得できるチャンスを演出する「ボーナスステージ」です。

第五回の拙稿では、疲労をためてしまったプレイヤーに束の間の休息を与え、緊張を和らげる効果をもたらすものとして、ゲームの本編とは別に用意された「コーヒーブレイク」の例をご紹介しました。こちらの演出は、単にキャラクターのアニメーションを見て楽しむものですが、「ボーナスステージ」はプレイヤーが直接キャラクターを操作したり、ボタンを連打するなどの方法でアクティブに遊べるのが特徴となります。

通常のステージでは獲得できない、高得点が狙える「ボーナスステージ」を用意することによって、プレイヤーはモチベーションが高まり、さらに成功時の快感、あるいは失敗したときの悔しさを演出することでますます夢中になってしまいます。
また、「ボーナスステージ」でしかお目にかかれない特殊なキャラクターを登場させたり、軽快なBGMを流すタイトルがとても多いことから、目でも耳でも楽しませてくれる特徴があるとも言えるでしょう。

以下、本稿ではアーケードゲームを中心に、「ボーナスステージ」によってゲームがよりおもしろくなった例をまとめてご紹介していきたいと思います。
  

「ゲームニクス」とは?
現亜細亜大学教授のサイトウ・アキヒロ先生提唱による、プレイヤーが思わずゲームに夢中になる仕組みを理論・体型化したもの。
本稿では、「ゲームニクス理論」を参考に、ありとあらゆるゲームのオモシロネタをご紹介していきます。「理論」というおカタイ言葉とは正反対に、中身はとってもユルユルですので、仕事や勉強の休憩時間や車内での暇つぶしなど、ちょっとした息抜きにぜひご一読を!

「ボーナスステージ」が生み出す快感とテンポの演出

「ボーナスステージ」の歴史は非常に古く、80年代初頭から多くのタイトルで導入されていました。

特に有名なのが、当コラムで何度もご紹介している『ギャラガ』(ナムコ/1981年)に導入された「ボーナスステージ」でしょう(※本作での名称は「チャレンジングステージ」)。
本作では、3面で最初の「ボーナスステージ」が登場し、以後4面ごとに同ステージが登場するようになっています。
さらに続編の『ギャラガ ’88』(ナムコ/1988年)では、パーフェクトを達成すると画面内に花火が次々と炸裂し、プレイヤーにより大きな達成感を与える演出が追加されました。
  

ほかにも『フォゾン』(ナムコ/1983年)、『ギャプラス』(ナムコ/1984年)など、初期のナムコ作品には一定間隔で「ボーナスステージ」が登場するタイトルが非常に多く、まさにお家芸とも言えるフィーチャーになっていた感があります。
また『マッピー』(ナムコ/1983年)では、BGMがちょうど終了したタイミングで「ボーナスステージ」がタイムアップとなり、『ギャラガ’88』には敵キャラがBGMのリズムに合わせて動く、サウンドとシンクロした演出が盛り込まれていた点でも特筆に値します。

当時は上記のナムコ作品以外にも、『ノーティボーイ』(ジャレコ/1982年)、『ジャイラス』(コナミ/1983年)、『マリオブラザーズ』(任天堂/1983年)、『フリッキー』(セガ/1984年)など、あらゆるメーカーのタイトルに一定間隔で「ボーナスステージ」が登場するアイデア導入されており、アーケードゲームにおける定番の演出になっていたことがうかがえます。

これらのタイトルにおける「ボーナスステージ」には、いずれも敵が一切攻撃をしてこない、または敵に触れたり画面外に落下しても、絶対にミスにはカウントされない共通点があります。得点が稼げるだけでなく、ゲームオーバーにつながるリスクが発生しない特典があるという意味でも「ボーナス」というわけですね。
  

古い時代のアーケードゲーム、とりわけアクション、シューティングゲームの大半は、いわゆるエンディングが存在せず、主人公や自機のストックがゼロにならない限りエンドレスに遊べるようになっていました。
さらに、これらのタイトルの多くは7万点、10万点おきなど、一定のスコアに到達するごとにエクステンド(1UP)するフィーチャーが用意されていました。

その結果、「ヨシ、あと1万点で1機増えるから、次の『ボーナスステージ』まで何とか粘ろう!」などといった要領で、プレイヤーは次回のエクステンドや「ボーナスステージ」を基準にして自然と目標を設定できるようになり、ゲームにますます夢中になる相乗効果を生み出していました。
今ではほとんど見掛けなくなった感はありますが、エクステンドと「ボーナスステージ」を組み合わせておもしろくする演出は、ゲーム史上に残る偉大な発明ではないでしょうか?

エンドレスではなく、1周クリアするとゲームオーバーになるタイトルにも「ボーナスステージ」が登場する例はもちろんあります。
『スペースハリアー』(セガ/1985年)、『天地を喰らうII』(カプコン/1992年)、『コズモギャング・ザ・ビデオ』(ナムコ/1992年)などがこれに該当します。

ちなみに、『ギャラガ』や『マリオブラザーズ』、『スペースハリアー』などのタイトルでは、最初の「ボーナスステージ」でうまく得点を稼ぐと、ちょうどエクステンドとなるスコアに到達します。
これは推測になりますが、あらかじめ開発スタッフが「ボーナスステージ」とエクステンドのタイミングが重なるように調整し、プレイヤーの達成感をより高める意図があったのではないかと思われます。

特に『スペースハリアー』は、500万点を超えたときの1回だけしかエクステンドが発生せず、しかも練習をかなり繰り返さないと最初の「ボーナスステージ」である5面に到達することができません。
ミスになるリスクのない「ボーナスステージ」を、プレイヤーが気持ち良く遊んでいる最中に、ちょうどエクステンドするように調整したアイデアは本当に素晴らしいと思います。
  

主人公がパワーアップする報酬がもらえる「ボーナスステージ」の例

成功すると高得点ボーナスが入るだけでなく、主人公または自機がパワーアップする報酬が得られる「ボーナスステージ」が登場するタイトルもいろいろあります。

古いタイトルから一例を挙げますと、『ムーンクレスタ』(日本物産/1980年)では4番目に登場する敵編隊を全滅させると、自機をドッキングさせる「ボーナスステージ」を遊ぶことができます。
合体に成功すると、残り時間分のボーナス得点が加算されるとともに、単体のときは単発でしか撃てなかったショットが連射できるようになります。
ただし、ドッキングに失敗すると機体を失うリスクがあるため、プレイヤーは敵と戦う通常のステージとはまた違った形で、緊張感が持続することになります。たとえ「ボーナスステージ」であってもミスが起きる、本作は数少ない例のひとつですね。
  

一方、『エクセリオン』(ジャレコ/1983年)の「ボーナスステージ」には、敵の倒した数に応じたボーナス得点に加え、ボタンを押したままで高速連射する、強力なシングルビームのストック数も増えるアイデアが盛り込まれています。
もしシングルビームのストックがゼロになると、単発のデュアルビームしか撃てなくなり不利な戦いを強いられますから、プレイヤーにとって「ボーナスステージ 」は実にありがたい存在となります。
  

90年代のゲームセンターを彩った対戦格闘ゲームにも、おもしろい「ボーナスステージ」を導入したタイトルが存在します。

その代表例が『龍虎の拳』(SNK/1992年)。
本作では、一定のステージをクリアするごとに「ボーナスステージ」が出現し、成功すると主人公リョウの体力、もしくは気力ゲージの最大値がアップしたり、超必殺技が使えるようになります。
また本作の「ボーナスステージ」は、プレイヤーが3種類のなかから自由に選択できるようにすることで、プレイヤーにどれを選べば攻略しやすくなるのかを考えさせる、すなわち戦略性を持たせているのも大きな特徴です。

以下の写真は、コマンド入力を一定回数成功させると超必殺技の覇王翔吼拳が使えるようになる「ボーナスステージ」の一種、「超必殺技伝授」の場面です。
ほかにも、目押し一発勝負による「ビール瓶切り」(成功すると体力アップ)と、ボタン連打による「氷柱割り」(成功すると気力アップ)があり、本編とはまた違ったおもしろさがあります。
  

スコアが存在しないタイプのゲームにも、実は「ボーナスステージ」のアイデアを盛り込んだタイトルがあることをご存知でしょうか?

その数少ない例のひとつが『タントアール』(セガ/1993年)。
本作は、パズルをはじめ迷路、ボタン連打や目押しなどのさまざまなミニゲームに挑戦し、一定のノルマを達成するとクリアとなるゲームで、ノルマ未達成、あるいは誤答をするとハート(ライフ)が1個減り、ハートのストックがゼロになるとゲームオーバーになります。
本作の「ボーナスステージ」は、飛行機を操作してミサイルを避けながら、一定数以上の風船を取るとハートが1個増えるルールになっています。
たとえ得点が存在しないゲームでも、「ボーナスステージ」を登場させる意味はちゃんとあるわけですね。
  

その他の「ボーナスステージ」の例

出現するタイミングが決まっておらず、特定の条件をそろえたときに限り「ボーナスステージ」に進めるようにしたタイトルもあります。

例えば『忍者くん 魔城の冒険』(タイトー、開発:UPL/1984年)では、各ステージに1回だけ出現するアイテム(玉)を3個集めて、3個目を取ったステージをクリアすると「ボーナスステージ」に進めます。
よって、アイテムを取らないことには「ボーナスステージ」をまったく遊ぶことができず、高得点を狙うためには敵の攻撃を避けつつ玉を取るというリスクも生じることになります。
  

その続編にあたる『忍者くん 阿修羅ノ章』(UPL/1987年)では、一定のステージをクリアするごとに「ボーナスステージ」が出現するルールに変わりました。
前作は得点稼ぎの要素しかありませんでしたが、こちらは得点稼ぎに加え、クリアに成功すると忍者くんの使える武器が増える、すなわちパワーアップする報酬も用意されていました。

また本作では、ステージによっては敵が攻撃を仕掛けてきたり、高度な操作テクニックがないとクリアできない場面も登場します。
そこで、プレイヤーのストレスがたまらないよう、もしクリアが難しいと思った場合は途中であきらめて(※スタート地点付近にある鳥居に入る)、次のステージに進める救済措置を用意するアイデアも取り入れられています。
  

『バブルボブル』(タイトー/1987年)では、ホーリーウォーター(薬瓶)のアイテムを取ると敵がすべて消滅し、同時に得点アイテムがたくさん出現して、通常ステージが瞬時に「ボーナスステージ」へと切り替わる、おもしろいアイデアが導入されていました。
「ボーナスステージ」に移行後、制限時間内にすべてのアイテムを取るとパーフェクトボーナスが加算され、なおかつパーフェクトが取れなくても、タイムアップ後は次のステージに無条件で進めるので、全100面クリアを目指すプレイヤーにとっては実にありがたいフィーチャーでした。
  

通常ステージとまったく同じルールで、大幅に難易度を下げたステージを「ボーナスステージ」として登場させるタイトルもあります。

例えば『ニューラリーX』(ナムコ/1981年)の「ボーナスステージ」では、敵のレッドカーが一切動かなくなるので、通常のステージよりもかなりクリアしやすくなります。
ただし、当たると即ミスになる岩はコース上のあちこちに出現し、もしミスをすると強制的に次のステージに飛ばされるというリスクがあります。

また『アフターバーナーII』(セガ/1987年)にも、全22ステージ中に8面と17面の2度、ミサイルを撃つ敵機が一切出現しない「ボーナスステージ」が登場しますが、こちらも自機が外壁などにぶつかった場合はミスになってしまいます。

なお『ニューラリーX』は、筆者が知る限りでは「ボーナスステージ」(※本作での名称は「チャレンジングステージ」)が導入された最も古いタイトルなのですが、ビデオゲーム史上初めてこのアイデアを取り入れたタイトルは何だったのか、現段階ではわかっておりません。もしご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひご一報を!
  

『1942』(カプコン/1984年)では、4面ごとに「ポイントアップステージ」と画面に表示され、敵機が撃つ弾の数が減る、つまり難易度が下がることで「ボーナスステージ」として機能するアイデアが盛り込まれていました。
本作は、ステージをクリアするごとに撃墜率に応じたボーナス得点が加算されるので、敵の攻撃が緩むことで「ポイントアップ」、すなわちスコアが稼ぎやすくなるというわけです。

同じく、カプコンの『エグゼドエグゼス』(カプコン/1985年)では、特定のステージの中盤に「ハイポイントエリア」と題したエリアが出現し、敵が弾を撃たなくなったり、取ると画面内の敵がフーズ(得点アイテム)に変化する「POWアイテム」が出現することで、プレイヤーに得点を稼ぐチャンスを与えるアイデアを導入していました。
このように、「ボーナスステージ」として独立した場面を用意せず、ステージ内のイベントという形で登場させた例は、ほかにも『スクランブルスピリッツ』(セガ/1988年)などがあります。
  

クイズゲームにおいては、成功するとお手付き(ライフ)のストックが増えたり、次のステージのノルマが下がるミニゲームが、「ボーナスステージ」として特定の場面で登場するタイトルが多いように思います。
『アテナのハテナ?』(アテナ/1993年)、『苦胃頭捕物帳』(タイトー/1990年)、『ゆうゆのクイズでGO!GO!』)(タイトー/1991年)などがこれに該当します。

ほかにも、『早押し対戦クイズ・ハイホー』(日本物産/1987年)のように、全ステージクリアに成功すると、さらにオマケでクイズが遊べる「ボーナスステージ」を用意した例もあります。
  

手強いボスキャラが出現する直前に、「ボーナスステージ」が必ず登場するアイデアを取り入れたのが『バラデューク』(ナムコ/1985年)です。

本作は、6面ごとに巨大なボスキャラが出現しますが、その直前のステージ、つまり5面や11面、17面などは、主人公の武器である波動銃がパワーアップするアイテムや、ボス戦で主人公とともに戦うキャラクター、パケットなどが隠されたカプセルが大量に出現する「ボーナスステージ」になっています。
ボス戦の直前にカプセル回収面を必ず登場させることで、プレイヤーに多少息抜きをさせつつ、なおかつ強敵との戦いに備えるチャンスを与えるという非常に優れたアイデアです。

ただし、カプセル回収面でも少数ながら敵キャラクターが出現し、主人公がやられた場合はミスとしてカウントされます。
また、カプセルの中身はランダムで変化し、なかには敵キャラが潜むトラップが仕掛けられている場合もあるので、毎回プレイヤーが望んだとおりにパワーアップできるとは限りません。
  

以上、「ボーナスステージ」の例をいろいろとご覧いただきましたが、どんなご感想をお持ちになったでしょうか?

高得点が加算され、なおかつエクステンドのチャンスが広がり、ローリスクで先に進める「ボーナスステージ」は、プレイヤーにとってこれほどありがたい存在はないでしょう。
しかし、ゲームセンター側の視点で見ると、「ボーナスステージ」を利用してプレイヤーにどんどん得点を稼がれ、100円で長時間遊ばれてしまうとビジネスが成り立たなくなってしまいます。

時代の経過とともに、ことアーケードゲームに関しては「ボーナスステージ」が遊べるタイトルが減った感がありますが、その原因はまさにここにあったのではないでしょうか?
今となっては「消えた文化」に近いかもしれませんが、先人たちのさまざまな創意工夫には敬意を表さずにはいられません。

最後に、余談をひとつ。
現在も、世界中で人気を博しているNintendo Switch用ソフト『大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL』(任天堂/2018年)の「勝ちあがり乱闘」モードでは、全ステージクリア後にスタッフロールの文字やロゴを破壊して遊ぶ、一風変わったシューティングゲームが遊べるようになっています。
シューティングゲームを遊ぶと、得点が加算されるだけでなく、結果に応じた報酬がもらえることもあるので、これも一種の「ボーナスステージ」と呼べるでしょう。

実は、エンディングでスタッフロールを撃つアイデアは、本作が元祖ではありません。
本作の発売からさかのぼること何と26年前、アーケード用シューティングゲームの『雷龍(サンダードラゴン)2』(サミー工業、開発:NMK/1993年)ですでに導入されていました。『スマブラSPECIAL』が元祖かと思いきや、実は前例があったことには、今さらながら驚かされるばかりですね……。

なお、「ボーナスステージ」に関するくわしい説明は、サイトウ先生と筆者の共著「ビジネスを変える『ゲームニクス』」 の「原則3-A-⑧ ブレイクを準備する」や「原則3-B-④ 快感要素の基本事項」のところに書かれていますので、ご興味のある方はぜひご一読ください。

それでは、また次回!

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