「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 第八回 ハイリスク・ハイリターン

  • 記事タイトル
    「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 第八回 ハイリスク・ハイリターン
  • 公開日
    2020年08月28日
  • 記事番号
    3435
  • ライター
    鴫原盛之

当コラムでは、「ゲームニクス理論」をもとに、なぜゲームがおもしろくなるのか、どうしてプレイヤーはゲームに夢中になってしまうのかを、おもしろおかしくご紹介していきます。

第八回目のテーマは、古くからアクションゲームでよく見られる、「ハイリスク・ハイリターン」の演出によって、よりゲームをおもしろくするアイデアです。
「お、あんなところに体力回復アイテムがあるぞ! でも、もし失敗したら谷底に落ちてミスになっちゃうし、次はボス戦だから体力が減ったままでは危険だし、どうしようかなあ……」などと迷った経験が、皆さんもきっとあることでしょう。そんなリスクを承知で、時にはイチかバチかでトライして、意中のアイテムやボーナス得点などの獲得に成功したときのうれしさは格別です。

以下、筆者の独断と偏見ではありますが、ゲームをよりおもしろくすることに成功した、「ハイリスク・ハイリターン」の秀逸なデザイン・演出の数々をご紹介していきましょう。

「ゲームニクス」とは?
現亜細亜大学教授のサイトウ・アキヒロ先生提唱による、プレイヤーが思わずゲームに夢中になる仕組みを理論・体型化したもの。
本稿では、「ゲームニクス理論」を参考に、ありとあらゆるゲームのオモシロネタをご紹介していきます。「理論」というおカタイ言葉とは正反対に、中身はとってもユルユルですので、仕事や勉強の休憩時間や車内での暇つぶしなど、ちょっとした息抜きにぜひご一読を!

のどから手が出るほど欲しくなる、アイテムやボーナス得点で「ハイリスク・ハイリターン」を演出

まずは有名タイトルから、典型的な「ハイリスク・ハイリターン」の実例を見ていきましょう。

以下の写真は、ファミコン用アクションゲーム『ロックマン』(カプコン/1987年)のワンシーン。
ステージの中盤、体力が少なくなった状態で取ると、体力が大幅に回復するアイテムがあるけれど、ちょっとでもジャンプの軌道を間違えると落下してミスになるという、極めてわかりやすい構図。
このような場面が、歴代の『ロックマン』シリーズには多数登場することは、本シリーズのファンであればよくご存知のことでしょう。
  
  

同じような「ハイリスク・ハイリターン」の設計は、プレイヤーにとって大きなご褒美となる1UPアイテムの配置でもよく見られます。

例えば、ファミコン用アクションゲームの『忍者龍剣伝』(テクモ/1988年)。以下の写真の場面では、ジャンプ中に剣を振ってクモ型のマークを斬ると1UPアイテムが出現します。
しかし、ジャンプの飛距離(左方向への移動)が足りないとアイテムは取れずに画面外へ落下し、逆に飛び過ぎると着地ができず、主人公のリュウが落下してミスになる「ハイリスク・ハイリターン」を生み出す、絶妙のデザインになっています。
  
  

狭い通路や足場など、たどり着くためには高い操作テクニックがプレイヤーに要求されるスペースに、得点アイテムや隠しボーナスを配置するのも、古い時代から数多く存在するアイデアのひとつです。

以下の写真は、スキーゲームの『アルペンスキー』(タイトー/1981年)です。
当たると転んでミスになる木や岩の間に、通過すると得点が入るポイントが随所に配置されていることがわかります。
さらに、乗るとスリップする氷の上を通りつつ、木や岩をギリギリでかわすと1,000点の高得点が入るポイントも時折出現します。
つまり、リスクが高い場所を通るほど、成功したときの得点が高くなるわけですね。
  
  

『パックランド』(ナムコ/1984年)では、各ステージで得点アイテムのフルーツがたくさん出現しますが、その多くが単に道なりに進むだけでは取れない場所に配置されています。
ステージによっては、落ちると即ミスになる池や狭い足場の上や、敵のゴーストに囲まれやすい場所に出現するので、簡単には得点を稼がせてくれません。
しかも、フルーツは一定時間が経過すると消えてしまうので、プレイヤーにとってはフルーツを狙えば狙うほど、慌ててミスをする確率が増すと言えるでしょう。

そんなリスクを負いつつ、主人公パックマンを正確にコントロールし、フルーツを取れたときは実に快感です。しかも、フルーツは以下の写真のように1個目は100点、2個目以降は、300点、500点、1,000点とどんどん得点がアップするので、取れば取るほど快感が増します。

とりわけアーケードゲームでは、一定のスコアに到達するとエクステンド(主人公のストックが増える)するルールを導入していることが多いので、たとえ危険と隣り合わせであることがわかっていても、プレイヤーはエクステンドを達成するために、ついついチャレンジしてしまいます。
  
  

得点アイテムを利用した「ハイリスク・ハイリターン」の例は、ほかにもいろいろあります。
シューティングゲームから一例を挙げると、『V・Ⅴ(ヴイ・ファイヴ)』(タイトー、開発:東亜プラン/1993年)ではパワーアップカプセルを1個も逃さずに回収してステージをクリアすると、パーフェクトボーナスとしてカプセル回収ボーナスが2倍にアップします。

さらに、1周全6ステージですべてのカプセルを取ってクリアすると、オールステージパーフェクトボーナスとして一気に500万点が加算されます。
自機をフルパワーアップさせた後も、敵の攻撃をかいくぐってカプセルを集めるという、常に高いリスクを負いながらプレイしたことに対する最高のご褒美と言えるでしょう。

また『バトルガレッガ』(エイブル、開発:ライジング/1996年)では、得点アイテムの勲章を逃さずに連続で取り続けると100点、200点、300点と徐々に得点が増え、最高1万点までアップします。
ただし、途中で1個でも取り損ねると、また100点からやり直しになってしまうので、敵の攻撃をかわしつつ、勲章を取り続けるには当然リスクが伴います。

勲章を取ったときの効果音を、得点によって複数のバリエーションを用意しているのも見逃せないポイント。
さらに、最高の1万点の勲章でしか聴けない、特別な獲得音を用意することで、プレイヤーに対し1万点までアップさせたときの達成感をサウンドで演出しているアイデアも実に見事です。
  
  

パワーアップやアイテムについての「ハイリスク・ハイリターン」の演出

ゲーム中に、さまざまなパワーアップやアイテムが登場するにもかかわらず、プレイヤーにアイテム類をあえて取らせない(使わせない)という、まさに逆転の発想で「ハイリスク・ハイリターン」をデザインしたタイトルもあります。

アクション、シューティングゲームでよくあるパターンが、例えば『飛翔鮫』(タイトー、開発:東亜プラン/1987年)などのように、ステージクリア時に残っていたボンバー、あるいは強力な武器のストック数に応じてボーナスが加算されるというシステムです。

同様の例は、『1942』(カプコン/1984年)にもあります。
本作では、ステージクリア時にストックしていた宙返り(緊急回避)の数によって、1個につき1,000点のボーナス得点が加算される仕組みになっています。
つまり、使えば使うほどゲームを有利に進めることができる武器などを、あえて使わないというリスクをおかしたことに対するリターンを用意しているというわけです。
  
  

ボンバーをあえて使わせない、ストックボーナスのアイデアをさらに発展させたのが『首領蜂』(アトラス/1995年)です。

本作では、ステージクリア時にストックしていたボンバーの数に加え、ボンバーのキャパシティ(最大ストック数)に応じたボーナス得点が加算されます。
ゲームスタート時のキャパシティは3個ですが、ボンバーを3個使用するたびにキャパシティの数が1個ずつ増え、最高で7個分まで増やすことが可能です。

ゲームの攻略を進めるうえでは、当然ながらボンバーをどんどん使ってキャパシティを増やし、たくさんストックできるようにするほど戦いやすくなりますが、実はキャパシティが少ないほどクリアボーナスが高くなる仕組みになっています。
よって、より得点を稼ぎたい場合は、ボンバーを極力使わない攻略パターンの構築が求められることになります。
ですから、もし全ステージで最高のキャパシティボーナスを狙う場合は、1プレイ中に2個までしかボンバーが使えない計算になりますので、プレイヤーはたいへん大きなリスクを負うことになります。
  
  

ちょっと変わった例としては、『エグゼドエグゼス』(カプコン/1985年)に登場する「WOP」というアイテムがあります。
「WOP」とは、「POW」を裏返したデザインになっていて、取ると自機のパワーアップ効果が失われる効果を持つ「パワーダウンアイテム」なのですが、実は1万点のボーナスが加算されるメリットもあります。

パワーアップを維持して安全に進むのか、それともあえて不利な状況に追い込んでまでハイスコア更新を目指すのか? アイテムが出現してから、スクロールして消えるまでの短い時間に、プレイヤーに重大な選択を迫るという、とてもユニークなアイデアではないかと思います。

プレイ時間、クリアタイムを利用した「ハイリスク・ハイリターン」のアイデア

次に、アイテムのような物理的な報酬ではなく、時間を利用した「ハイリスク・ハイリターン」の例を見てみましょう。

まずは古い時代の有名タイトルから。『ドンキーコング』(任天堂/1981年)の3面(※ファミリーコンピュータ版では2面)では、敵である火の玉をかわしつつ、リフトに乗ってから素早く連続でジャンプすると、ゴール地点までの近道を通れる、すなわちショートカットができるポイントがあります。
ただし、ジャンプのタイミングが遅れたり、あるいは早過ぎると主人公のマリオが落下し、即ミスになるリスクが生じます。

また、本作ではゴールまでの到達時間が短いほどボーナス得点が高くなります(※画面右上に「BONUS」と表示され、タイマーの役割も兼ねています)から、連続ジャンプのテクニックをマスターすれば得点稼ぎにも役立つことになります。
  
  

制限時間内にクリアする、あるいはゴールタイムを競うタイムアタック形式のレースゲームでも、ショートカットによる「ハイリスク・ハイリターン」をデザインしたコースがしばしば登場します。

とりわけ有名なのは『スーパーマリオカート』(任天堂/1992年)シリーズでしょう。
本作シリーズでは、一時的にオフロード上でも減速せずに高速で走れる効果を持つ、アイテムのダッシュキノコを利用してカーブの内側を突っ切るなどの方法で、ショートカットをすることができます。
ただし、途中でダッシュキノコの効果時間が切れると大幅なタイムロスにつながるリスクがあり、またオフロード上には土管や看板などが配置され、高度な操作テクニックが要求される場合もあります。

さらに本シリーズは、狭くて入りにくい、あるいは触れると一時的に足止めされるトラップが配置されたコース上にアイテムボックスを置くという、物理的な「ハイリスク・ハイリターン」も用意されています。
これはまさに、「ハイリスク・ハイリターン」のハイブリッド仕様と言えるのではないでしょうか?
  
  

「ハイリスク・ハイリターン」システムはアイデアの宝庫

ここからは、アイテム類やマップデザイン・配置とはまた違ったアイデアで、「ハイリスク・ハイリターン」を演出した例をご紹介しましょう。

有名なシューティングゲームから一例を挙げると、『スターフォース』(テーカン/1984年)では浮遊要塞のラリオスを合体前に倒すと、5万点のボーナスが入る裏技が用意されています。
ボーナスを獲得するためには、コア(弱点)になるべく接近してボタンを素早く連射することが必要で、しかもコアに向かって周囲からパーツが接近してくるので、ボーナスに失敗すると自機がパーツにつぶされてミスとなるリスクが生じます。

このアイデアは、本作の家庭用のほかにも、『スターソルジャー』(ハドソン/1986年)のラザロをはじめ、『スターソルジャー』以降のシリーズ作品に継承されています。
また、ラリオスやラザロが出現するときにはBGMが変わり、1対1のスリリングな勝負を演出するアイデアも秀逸でした。
  
  

また、『ギャラガ』(ナムコ/1981年)はファイター(自機)を2機合体させることで攻撃力が倍加しますが、合体するためには敵のボスギャラガにわざとファイター1機を捕まえさせてから、ボスギャラガを倒して捕虜になったファイターを奪還しなくてはいけません。
つまり、一時的にファイターが1機やられたのと同じ状況にするというハイリスクを負うわけです。

合体に成功すると、敵を倒すのが容易となり得点も稼ぎやすくなりますが、ファイターのサイズが実質2倍になったことで敵の攻撃に当たりやすくなるという、また新たなリスクが生じることになります。
ちなみに、ボスギャラガを倒す際は、誤って捕まったファイターを撃ってしまうと同士討ちとなり、本当に1機ミスしたことと同じになってしまいます(1,000点のボーナス得点は入るのですが、実に悲しいボーナスですよね……)。

ほかにも、機体やパーツと合体するとパワーアップして攻撃力が増す反面、機体が大きくなるリスクを負うというアイデアは、『ムーンクレスタ』(日本物産/1980年)や『テラクレスタ』(日本物産/1985年)、『スラップファイト』(タイトー、開発:東亜プラン/1986年)、『宇宙戦艦ゴモラ』(UPL/1990年)など多くのタイトルで見ることができます。

これらとは逆の発想を取り入れた例としては、ブロック崩しゲームの『アルカノイド リベンジ・オブ・ドゥ』(タイトー/1987年)があります。
本作には、取ると自機のバウスの長さが2分の1に縮む、「リダクション」というアイテムが登場します。
もしアイテムを取ってしまうと、短くなった分だけボールを打ち返すのが当然難しくなってしまいますが、その代わりにブロックや敵を倒したときの得点が通常時の2倍にアップすることで、「ハイリスク・ハイリターン」を演出するおもしろいアイデアが盛り込まれていました。
  
  

とりわけ独創的なアイデアで、「ハイリスク・ハイリターン」を実現させたのが『オメガファイター』(UPL/1989年)。
本作では、倒した敵と自機との距離によって「×1」から「×10」(1~10倍)まで10段階の得点倍率が掛かりますが、倍率は距離が近いほど高くなるため、得点稼ぎを狙えば狙うほど、敵に体当たりされてミスをするリスクが高まることになります。

さらに、この倍率システムにはもうひとつの特徴があります。
最高倍率の10倍で敵を倒すと、画面上部にある倍率ゲージがアップし、ゲージが満タンになると1UPアイテムが出現するという、言わば「2重ハイリスク・ハイリターン」システムになっているのです。
今から30年以上も前に、これほどまでにユニークなアイデアがすでに生まれていた事実には改めて驚かされます。
  
  

以上、「ハイリスク・ハイリターン」の演出例を思い付くままにざっとご紹介してみましたが、どんなご感想をお持ちになったでしょうか?

特にアーケードゲームの場合は、もしプレイヤーに100円で長時間遊ばれてしまうとゲームセンターの経営者が悲鳴を上げてしまいます。
そこで、「ハイリスク・ハイリターン」の仕掛けをあの手この手と用意し、プレイヤーのチャレンジ精神を煽る、あるいは(意地悪な言い方ですが)ミスを誘うアイデアが、長年の歴史のなかでたくさん生まれたのだなあと、本稿の執筆にあたって調査をしながら改めて思った次第です。

なお、本稿でご紹介した内容は、サイトウ先生と筆者の共著『ビジネスを変える「ゲームニクス」』の「原則3-B-⑤:ハイリスク・ハイリターンの調整」などのページでくわしく解説しています。
また、デンマークのゲーム研究者イェスパー・ユール氏の著書、『しかめっ面にさせるゲームは成功する ─ 悔しさをモチベーションに変えるゲームデザイン』(ボーンデジタル刊)にも、プレイヤーは失敗してもゲームを遊びたがるという、「ハイリスク・ハイリターン」に通じる記述がたくさん載っています。
ご興味のある方は、ぜひこちらもご一読ください。

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