「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 第六十回 コレクションPart2
当コラムでは、「ゲームニクス理論」をもとに、なぜゲームがおもしろくなるのか、どうしてプレイヤーはゲームに夢中になってしまうのかを、おもしろおかしくご紹介していきます。
第六十回のテーマは「コレクションPart2」です。
筆者とサイトウ・アキヒロ先生の共著『ビジネスを変える「ゲームニクス」』では、「原則3:はまる演出」の一要素として「原則3-D-⑦:コレクション性の導入」を掲げています。
前回(第十四回)に紹介した『ポケモン』シリーズの元祖、『ポケットモンスター赤・緑』(任天堂/1996年)の「ポケモン図鑑」のように、入手したキャラクターやアイテムなどにナンバリング、あるいはファイリングされる仕組みがあると、プレイヤーは空欄をついつい埋めたくなってしまいます。
昨今では、プレイステーションシリーズのプラットフォームには、特定の条件を満たすとプレイヤーのゲームの腕を称える、トロフィーが獲得できる機能が標準搭載されています。トロフィーの存在によって、日々ゲームスキルの向上を目指すとともに、その「コレクション」に夢中になっている人も少なくないでしょう。
実は「コレクション」に夢中になる仕掛けは、いざ調べてみるとほかにもたくさんあることがわかります。
以下、今回も筆者の思い付く限りではありますが、古今東西のタイトルから、「コレクション」を利用したさまざまな「はまる演出」の例をまとめてみました。どうぞ最後までご一読ください!
「ゲームニクス」とは?
現亜細亜大学教授のサイトウ・アキヒロ先生提唱による、プレイヤーが思わずゲームに夢中になる仕組みを理論・体型化したもの。
本稿では、「ゲームニクス理論」を参考に、ありとあらゆるゲームのオモシロネタをご紹介していきます。「理論」というおカタイ言葉とは正反対に、中身はとってもユルユルですので、仕事や勉強の休憩時間や車内での暇つぶしなど、ちょっとした息抜きにぜひご一読を!
ゲームのメイン目標にもなり得る「コレクション」
『モンハン』こと『モンスターハンター』(カプコン/2004年)シリーズは、倒した敵がドロップするさまざまな素材を集め、新たな武器や防具を作るのが大きな楽しみのひとつであることは、もはやくわしい説明は不要のことと思います。
本シリーズの素材集めのように、時には「コレクション」自体がゲームの大きな目標となる例は、古い時代のタイトルにも数多くあります。
例えば『ファイナルファンタジーVIII』(スクウェア/1999年)には、RPGの定番である、ゴールド(お金)を払うことで武器や防具が買える店が存在しません(※消費アイテムを売る店はあります)。
本作で新たな武器を入手するためには敵を倒す、あるいは盗むなどの方法で入手できるアイテム(素材)を集めて「ジャンク屋」に行き、手持ちの武器を改造することが必要です。さらに本作では、「コレクション」した素材を「精製」することで、新たな魔法を作り出すこともできます。
RPGでは多くの場合、どんな敵を倒しても共通の報酬としてゴールドがもらえますが、素材は敵によってドロップする種類も数も異なります。よって、新しい素材や装備品が欲しいプレイヤーは、たとえメインのストーリーを進めるうえでは寄る必要がない場所であっても、未知なる獲物を求めて冒険しようというモチベーションを得ることになります。
また『ベイグラントストーリー』(スクウェア/2000年)には、敵がドロップする複数の武器や防具を集めて、新たなアイテムを作り出す「合成」の仕組みが導入されています。


© SQUARE ENIX
CHARACTER DESIGN: TETSUYA NOMURA
LOGO ILLUSTRATION:© YOSHITAKA AMANO
『スマブラ』こと『大乱闘スマッシュブラザーズ』(任天堂/1999年)シリーズは、プレイ中に特定条件を満たすことで「コレクション」アイテムだけでなく、プレイヤーキャラクターであるファイターもどんどん追加されます。
実は本シリーズ以前にも、プレイヤーキャラクターの「コレクション」がゲームの大きな目標となっていたタイトルがあります。
例えば『女神転生』(ナムコ/1987年)シリーズには、敵の悪魔を説得して仲間に加える、すなわち「コレクション」する楽しみがあります。さらに本シリーズでは、仲間の悪魔を数体「合成」することで、新たな仲間を生み出せるおもしろさがあることでも有名です。
『ヘラクレスの栄光IV』(データイースト/1994年)は、自らの肉体を持たない主人公たちが、行く先々で出会った人物たちの体に乗り移れる、その名も「トランスファーシステム」という独創的なアイデアが盛り込まれています。
本作に登場する、トランスファーできる人物は100人を優に超えます。加えて数々の強敵を倒し、シナリオを進めるためには、トランスファーできる優れたスキルを持った人物の存在が欠かせません。なので、必然的にプレイヤーはトランスファーできる人物の「コレクション」に熱中することになります。



©PAON DP Inc.
「コレクション」を利用した「褒め演出」
第十四回でも紹介した『ドラゴンクエストXI』(スクウェア・エニックス/2017年)は、入手したアイテムの種類が一定数を超えるごとに「かけだしコレクター」「一流コレクター」「コレクション王」などの称号が付与され、プレイヤーの偉業をたたえてくれます。
加えて本作では、上記以外にもプレイ中に特定の条件を満たすと、さまざまな称号が獲得できることによって、称号自体が「コレクション」の対象としても機能しています。
このように、熱心に「コレクション」をしたプレイヤーの努力を褒め称える演出を盛り込んだタイトルは、ほかにもたくさんあります。
以下の写真は、スーパーファミコン版の『ドラゴンクエストIII』(エニックス/1996年)です。本作には、小さなメダルをすべて集めると、普段はメダルの獲得枚数を教えてくれる人物が「あなたこそ勇者の中の勇者!」などとしゃべる「褒め演出」が用意されています。
些細なことかもしれませんが、たった1人のセリフを変えただけでも、より達成感や嬉しさが増す、素晴らしいアイデアではないかと筆者は思います。


© ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/SQUARE ENIX
© SUGIYAMA KOBO
℗ SUGIYAMA KOBO
『ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド』(任天堂/2017年)と『ゼルダの伝説ティアーズオブザキングダム』(任天堂/2023年)には、カメラで撮影したキャラクターやアイテム、素材などを図鑑に収める、すなわち「コレクション」する遊びが導入されています。
さらに両タイトルでは、主人公リンクの自宅を建てると、部屋の中に「コレクション」した武器や防具が飾れるスタンドを設置することが可能となります。スタンドは、持ち切れなくなった装備品の物置としても利用できますが、飾った武器などの見栄えがとても良くなるメリットもあります。
とりわけ、性能の高いレアな武器や防具をスタンドに飾ると、より高級感が出て見栄えが良くなり 、「コレクション」の喜びが増すアイデアの一種と言えるでしょう。



© Nintendo
「コレクション」とは少々ニュアンスが違うかもしれませんが、おもしろい「褒め演出」の例をもうひとつご紹介しましょう。
『NewスーパーマリオブラザーズWii』(任天堂/2009年)などの『スーパーマリオ』シリーズでは、主人公のマリオのストックを上限の99人、または999人まで増やすと、何とマリオのトレードマークである帽子が脱げる演出が用意されています。
つまり、プレイヤーがミスをしない、またはミスをほとんどすることなく、たくさんストックしたことをたたえてマリオが文字どおり脱帽する、実に粋なアイデアですね。
ほかにも『メタルギアソリッド3』(コナミ/2004年)などのように、レアなキャラクターやアイテムの「コレクション」に成功したときに、プレイヤーを祝福する演出を用意している作品もあります。(※本作では、滅多に見掛けないツチノコを捕獲した際に、仲間たちがお祝いする「ボイス」を聞くことができます)


© Nintendo
「コレクション」から見た、ゲームの快感とストレスのバランス
せっかく苦労して強敵を倒した、あるいはイベントなどをクリアしたのに、運悪く獲得した報酬が同じアイテムだった。あるいは、有料のガチャを引いたら同じものが当たりがっかりした経験を、おそらく多くのみなさんが持っているのではないかと思われます。
そこで「コレクション」にダブりが発生した際に、プレイヤーのストレスを緩和する仕組みを導入したタイトルが、いわゆるソーシャルゲームが人気を集めた時期から急に増えた感があります。
例えば『ドラゴンコレクション』(コナミ/2010年)では、ガチャやクエストの報酬として入手したモンスターカードがダブった場合は、ほかのモンスターカードに「合成」させることができます。「合成」したダブりカードは消滅してしまいますが、残ったモンスターカードの能力をアップさせる効果が得られるメリットがあります。
実は、ダブったデジタルカードを再利用するアイデアは、本作以前にも存在します。そのうちのひとつが、前述の『ファイナルファンタジーVIII』です。
本作では、本編とは別に遊べるイベント、カードゲームに使用するカードを一定数ストックすると、アビリティ「カード変化」を使用して素材やアイテム類に変えることができます。
前述のとおり、本作は武器の改造には素材が必須で、カードゲーム中は同じカードを何枚も使用するメリットは特にありませんので、余ったカードを素材化できるアイデアは実にありがたいですね。


© SQUARE ENIX
CHARACTER DESIGN: TETSUYA NOMURA
LOGO ILLUSTRATION:© YOSHITAKA AMANO
最後に、プレイヤーが「コレクション」中にストレスがたまり、なおかつミスのリスクが高まる一方、成功したときのリターンが大きくなる、ちょっと変わった例をご紹介。
シューティングゲームの『ASO』(SNK/1985年)は、敵を倒すと出現するパーツを集めることでファイヤーアーマー、キャノンアーマーなど、自機が装着すると大幅にパワーアップするアーマーを入手することができます。
本作では、アーマーを装着すると断然有利な状態で敵と戦えますが、あえて使わずにストックしたまま全8種類のアーマーをそろえると、何と20万点の隠しボーナス得点が入る裏技があります。


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以上、今回は「コレクションPart2」をお送りしましたが、いかがでしたでしょうか?
本テーマでは2度目の執筆となったわけですが、ビデオゲームにおいても「コレクション」は、普遍的に楽しい遊びの一要素ではないかと改めて思うようになりました。
繰り返しになりますが、「コレクション」に関するくわしい解説は、サイトウ先生と筆者の共著「ビジネスを変える『ゲームニクス』」 の「原則3-D-⑦:コレクション性の導入」に掲載されています。
なお「褒め演出」(※本書での表記は「褒め要素」)については、「原則3-B-④:快感要素の基本事項」で触れていますので、もし興味のあるかたはぜひご覧ください。
それでは、また次回!
