「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 第六十三回 ボスキャラクター Part2

  • 記事タイトル
    「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 第六十三回 ボスキャラクター Part2
  • 公開日
    2026年02月27日
  • 記事番号
    14026
  • ライター
    鴫原盛之

当コラムでは、「ゲームニクス理論」をもとに、なぜゲームがおもしろくなるのか、どうしてプレイヤーはゲームに夢中になってしまうのかを、おもしろおかしくご紹介していきます。

第六十三回のテーマは「ボスキャラクター Part2」です。

第二十五回でも解説したように、プレイヤーは「ボスキャラクター」の存在によって、筆者とサイトウ・アキヒロ先生の共著『ビジネスを変える「ゲームニクス」』で提唱する、「原則4-A:目標設定」を明確に行うことができます。

さらに「ボスキャラクター」の攻略法、出現条件などを調べてみると、開発スタッフがさまざまな工夫を凝らした結果、「原則4-A:目標設定」だけでなく、数々の「原則3:はまる演出」を生み出していることがわかります。

以下、今回も筆者の思い付く限りではありますがいろいろとご紹介しましょう。どうぞ最後までご一読ください!
 

「ゲームニクス」とは?
現亜細亜大学教授のサイトウ・アキヒロ先生提唱による、プレイヤーが思わずゲームに夢中になる仕組みを理論・体型化したもの。
本稿では、「ゲームニクス理論」を参考に、ありとあらゆるゲームのオモシロネタをご紹介していきます。「理論」というおカタイ言葉とは正反対に、中身はとってもユルユルですので、仕事や勉強の休憩時間や車内での暇つぶしなど、ちょっとした息抜きにぜひご一読を!
 

 

「ボスキャラクター」を利用してゲームの奥深さを演出

まずは古い時代のアクション系のゲームから、「ボスキャラクター」を利用した「ハマる演出」と「目標設定」の例をご覧いただきましょう。

第五十三回の「ループ」でも紹介した『サスケVSコマンダー』(SNK/1980年)は、奇数の周と偶数の周とで、「ボスキャラクター」にあたる親分忍者の種類が変わるアイデアを導入した最初期のタイトルです。

第二十五回でも採り上げた『魔界村』(カプコン/1985年)シリーズは、2周目に「真のラスボス」が出現し、2周クリアに成功すると真のエンディングを見られることで有名ですね。

これらのタイトルでは、「ボスキャラクター」のバリエーションを増やすことで、1周クリアに成功したプレイヤーに対して新たな目標を設定、つまり2周目以降のクリアを目指すモチベーションを与えてくれます。

ほかにも、周回ごとに出現する「ボスキャラクター」が変わるアイデアを導入したタイトルには『影の伝説』(タイトー/1985年)などがあります。
 

1周クリアするとエンディングを迎えてゲームオーバー、または2周目以降も毎回同じ「ボスキャラクター」が登場するタイトルにも、おもしろいアイデアを導入した例はいろいろあります。

例えば『ダライアス』(タイトー/1987年)シリーズのように、ステージクリア後にルートが「分岐」するタイトルでは、プレイヤーは未知のステージに進むごとに「次のステージは、どんなボスが出るのかな?」とワクワク感を演出してくれます。

加えて『ダライアス外伝』(タイトー/1994年)では、ステージ6にあたるP、R、Tゾーンに出現するシャコなどの「ボスキャラクター」は、同じ種類でもゾーンごとに攻撃パターンが大きく異なるので、プレイヤーを容易に飽きさせず、繰り返し遊ばせる要因になっていると言えるでしょう。

本シリーズよりもさらに古い『ドラゴンバスター』(ナムコ/1985年)にも、プレイヤーを夢中にさせるおもしろいアイデアが導入されています。

本作の各ラウンドの最後に出現する「ボスキャラクター」は、すべて同じ風貌のドラゴンですが、ラウンドが進むごとにバイタリティ(体力)と攻撃のバリエーションが増してどんどん強くなります。

ですが、ドラゴンには頭や手足など、体のどこかに通常の2倍のダメージが与えられる弱点があり、弱点に攻撃がヒットすると赤く変色する特徴があります。つまり、ドラゴンに弱点を設定することで、プレイヤーに毎回弱点を探す、または弱点を突いた攻撃パターンを作る楽しさを生み出しているわけですね。
 

「ラスボス」との戦いかたによって、その後の展開が「分岐」する、おもしろいアイデアを取り入れていたのが『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』(コナミ/1997年)です。

本作は「ラスボス」にあたるリヒターを倒すとエンディングを迎えてゲーム終了となります。ですが、実はリヒター戦で特定の条件を満たしたうえで敵の黒幕を倒すと、第十五回の「追加ステージ」でも紹介した新たなマップ、通称「逆さ城」が遊べるようになります。

また『天地を喰らうII』(カプコン/1992年)は、「ラスボス」の曹操の出現時に発生する会話イベントで選んだ選択肢と、対曹操戦の勝敗などによってエンディングが「分岐」するアイデアを取り入れています。
 

「中間目標」と「ゲームテンポ」をも生み出す「ボスキャラクター」

「ビジネスを変える『ゲームニクス』」では、「原則4-A:目標設定」を「原則4-A-②:最終目標の設定」「原則4-A-③:直近目標の設定」「原則4-A-④:中間目標の設定」の3種類に分けています。

さらに本書では、「ゲーム全体の構成から感じる、全体的な心地よさ」と定義した「ゲームテンポ」を採り入れたゲーム開発を提唱しており、「原則3:はまる演出」の一種として「原則3-A-①:ゲームテンポを意識した全体構成」掲げています。

特に、「ラスボス」にあたる悪の大魔王を倒すことが最終目標となる作品が多いRPGでは、「ラスボス」と戦うための準備、または出現条件を満たすことが「直近目標」「中間目標」に、「ボスキャラクター」を倒すことが「最終目標」になることで、プレイヤーを夢中にさせる「ゲームテンポ」が生み出されます。

このような「ボスキャラクター」によって「ゲームテンポ」を演出している例は、実はかなり古い時代のアクション系ゲームでも見ることができます。

以下の写真は、懐かしのシューティングゲーム『タイムパイロット』(コナミ/1982年)です。本作の各ステージのクリア条件は「ボスキャラクター」を倒すことですが、「ボスキャラクター」を出現させるためには、一定数の敵キャラを倒すことが必須条件となります。
(※実は先述の『サスケVSコマンダー』も、最初のステージのクリア条件は敵のザコ忍者を全滅させることです)

強制スクロール方式のアクション系ゲームは、極論すればただ逃げ回っているだけでも、最終地点までたどり着ければ「ボスキャラクター」と戦うことができます。ですが本作のように、逃げているだけではいつまで経っても次のステージに進めないルールにすれば、プレイヤーは必然的に敵の攻略パターンを考えながら遊ぶようになり、同時に快適な「ゲームテンポ」も作り出されます。
 

『タイムパイロット』の「ゲームテンポ」から、さらに進化した好例が『ファンタジーゾーン』(セガ/1986年)です。

本作でボスを出現させるためには、各ステージ(※最終ステージを除く)に10体ずつ登場する、敵の基地をすべて破壊することが必要です。さらに、基地を破壊したときに出現するするゴールド(お金)を集めてからショップに行くと、主人公のオパオパがパワーアップするパーツ類が購入できます。

基地と「ボスキャラクター」、そしてショップの存在によって、プレイヤーは本作を通じて「基地破壊」→「ゴールド回収」→「ショップでパワーアップ」→「対ボス戦」という、とても心地良い「ゲームテンポ」を体験できます。

本作と同様に、「ゲームテンポ」が短い時間の中で繰り返されるタイトルには、『ワンダーボーイモンスターランド』(セガ、開発:ウエストン/1987年)や『エイリアンシンドローム』(セガ/1987年)などがあります。
 

あまりにも強くなり過ぎた「ボスキャラクター」のヒミツ

『ビジネスを変える「ゲームニクス」』では「はまる演出」の一種として「原則3-B-①:ストレスと快感のバランスを取る」を提唱しています。「ボスキャラクター」が、その強さによってプレイヤーに適度なストレスと緊張感を与える存在であることは、もはやくわしい説明は不要でしょう。

ですが、特に古い時代のアーケードゲームには、序盤のステージでありながら過剰なまでにプレイヤーにストレスを与える、超強力な「ボスキャラクター」が出現するタイトルがいくつもあります。

例えば、前述の『天地を喰らうII』や『ダンジョンズ&ドラゴンズ シャドーオーバーミスタラ』(カプコン/1996年)のステージ2に出現する「ボスキャラクター」は、初見で勝つのは難しいかなりの強敵です。また第二十五回でも紹介した『TATSUJIN』(タイトー、開発:東亜プラン/1988年)では、ステージ1の3番目に出現する「中ボス」も非常に手強い敵です。

これらのタイトルで、序盤からとても強い「ボスキャラクター」が出現するのはいったいなぜでしょうか? その理由はズバリ、プレイヤーに短時間でゲームオーバーなる、または「コンティニュー」してもらうことで、ゲームセンター側が儲かるようにするためです。

ともすれば「ゲームテンポ」を破壊しかねない、手強い「ボスキャラクター」が序盤から登場するのは、実はビジネス的な事情があるからなのです。
 

RPGなど規定のストーリーに沿ってゲームが進むタイトルでは、どんなに主人公のレベルを上げても「ボスキャラクター」に必ず負けてしまう、バトルやイベントが発生することがあります。『ファイナルファンタジーIII』(スクウェア/1990年)の「ラスボス」である「暗闇の雲」や、『ドラゴンクエストV』(エニックス/1992年)でゲマと最初に対決する場面がこれに該当します。

主人公たちが敗れる演出は、プレイヤーによりドラマチックなストーリーを体験させ、「次こそは絶対に負けないぞ!」などとモチベーションを喚起する効果があると言えるでしょう。ですが、開発スタッフの想定以上に大きなストレスを感じた、あるいは必ず負ける演出であると気付かなかったプレイヤーは「もうダメだ……」と早合点して、途中でゲームをやめてしまうリスクがあるようにも思われます。

極端に強い「ボスキャラクター」を登場するタイトルでは、プレイヤーに対して適度なストレスと快感をいかに調整するのか? ここは本書でも明確な答えを示していない、今後の研究課題ですね。
 

以上、今回は「ボスキャラクターPart2」をお送りしましたが、いかがでしたでしょうか?

繰り返しになりますが、「ボスキャラクター」に関するくわしい解説は「ビジネスを変える『ゲームニクス』」 の「原則3:はまる演出」と「原則4:段階的な学習効果」の項で解説しています。

なお手前味噌で恐縮ですが、「原則3」の項目では筆者が「コンティニューはアーケードゲームの生命線」と題したコーナーも執筆しておりますので、興味のあるかたは本書をぜひご覧ください。

それでは、また次回!

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