「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 第六十六回 デモ画面 Part2
当コラムでは、「ゲームニクス理論」をもとに、なぜゲームがおもしろくなるのか、どうしてプレイヤーはゲームに夢中になってしまうのかを、おもしろおかしくご紹介していきます。
第六十六回のテーマは「デモ画面 Part2」です。
第十回では「ゲームニクス理論」の「原則2-B-③:デモでルールを説明する」を実践したアーケードゲームが中心でしたが、今回は家庭用ゲームも含めた「デモ画面」の導入例をご紹介します。
ゲームはインタラクティブな遊びであるからこそ、いざ調べてみると基本的には見ているだけの「デモ画面」にも、プレイヤーを楽しませるためのさまざまな工夫が施されていることがわかります。
以下、今回も筆者の思い付く限りではありますが、定番あるいは独創的な「デモ画面」の数々をご覧いただきましょう。どうぞ最後までご一読ください!
「ゲームニクス」とは?
現亜細亜大学教授のサイトウ・アキヒロ先生提唱による、プレイヤーが思わずゲームに夢中になる仕組みを理論・体型化したもの。
本稿では、「ゲームニクス理論」を参考に、ありとあらゆるゲームのオモシロネタをご紹介していきます。「理論」というおカタイ言葉とは正反対に、中身はとってもユルユルですので、仕事や勉強の休憩時間や車内での暇つぶしなど、ちょっと
した息抜きにぜひご一読を!
オープニングデモでプレイヤーのハートを鷲づかみ
まずはゲームを始める前に「オープニング」で流れる「デモ画面」、いわゆるオープニングデモの例からご覧いただきましょう。
アーケードゲームの多くはCPUがプレイ中の場面をプレイヤーに見せる、「チュートリアル」の役割も兼ねた「デモ画面」が用意されています。
一方、家庭用やPC用ゲーム、特にRPGやシミュレーションゲームでは、古くからアニメーションを織り交ぜたオープニングデモを流し、プレイヤーをワクワクさせる演出を用意したタイトルが目立っていた感があります。
例えば『イースII』(日本ファルコム/1988年)や『夢幻戦士ヴァリスII』(日本テレネット/1989年)は、ゲームを起動すると本編のゲーム画面とはまったく異なる、まるでテレビや映画を見ているかのようなアニメーションが流れます。
歴史シミュレーションゲーム『斬 -陽炎の時代-』(ウルフチーム/1989年)は、アニメーションこそありませんが、渋い男性の声でストーリーを朗読する「ボイス」が流れ、テレビの時代劇をほうふつとさせるオープニングデモがあります。
第四十二回の「ボイス」でもご紹介した『天下の御意見番 水戸黄門』(サン電子/1987年)、も、タイトル画面でしばらく何もしないでいると、助さんと格さんが「静まれ静まれ、この紋所が目に入らぬか……」とおなじみのセリフをしゃべり、プレイヤーを楽しませる演出があります。
今ではアニメーションや、プロの声優を起用した「ボイス」が流れる「オープニング」は、ごく当たり前に存在します。ですが、当時はソフト、ハードの性能が現在とは比較にならないほど低かったこともあり、アニメや「ボイス」が数秒間流れるだけでも大きなインパクトがありました。
なので、これらの「デモ画面」は、プレイヤーを作中の世界観に引き込む「ゲームニクス理論」の「原則4-A-①:スタート時のつかみ」として、十分過ぎるほどの効果があったように思われます。



©Nihon Falcom Corporation. All rights reserved.
オープニングデモを利用して、登場人物やキャラクターを紹介するタイトルも昔からたくさんあります。
有名タイトルから一例を挙げますと、『信長の野望・武将風雲録』(光栄/1986年)では、タイトル画面が表示されてから一定の時間が経過すると、各国の武将のプロフィールを表示する「デモ画面」に移行します。
本作と同様のオープニングデモは、同じく歴史シミュレーションゲームの『独眼竜政宗』(ナムコ/1988年)のほか、アーケードゲームでも『天地を喰らう』(カプコン/1989年)などの作品に導入されています。
また『ゼルダの伝説』(任天堂/1986年)などのように、タイトル画面が表示されると「オープニング」曲が流れ、作中に登場する全アイテムを紹介する「デモ画面」が用意された例もあります。
いずれも「チュートリアル」ではありませんが(※『独眼竜政宗』は、各国のデータと簡単な解説が表示されます)、プレイヤーの目と耳を大いに楽しませてくれます。


©1990-1991 コーエーテクモゲームス All rights reserved.
ステージ開始、ステージ間デモに見られる工夫
ここからは、主にアクション系のゲームで、各ステージの開始時とステージ間に流れる「デモ画面」のおもしろい例をご紹介しましょう。
ファミコン世代にはおなじみの『忍者じゃじゃ丸くん』(ジャレコ/1985年)には、各ステージで敵の首領である「なまず太夫」の合図とともに、敵キャラが画面上部から降りて来る演出があります。本作には全7種類の敵キャラが登場しますが、新たな敵が出現するステージでは、毛筆体のようなフォントで「○○登場」と画面に表示される演出も加わります。
ファミコン版の『ディグダグII』(ナムコ/1985年)には、各ステージに登場する敵の種類、および数をあらかじめプレイヤーに教える「デモ画面」がありますが、この演出は元のアーケード版にはありませんでした。移植にあたり、新たに「デモ画面」を改良した例として、本作は特筆に値するでしょう。
ほかにも『1943』(カプコン/1987年)、『ナイトストライカー』(タイトー/1989年)などの作品では、各ステージ開始時に「ボスキャラクター」の存在を明示することで、プレイヤーが自然と「原則4-A-④:中間目標の設定」または「原則4-A-②:最終目標の設定」を実践できるようになっています。


DIG DUG™Ⅱ & ©Bandai Namco Entertainment Inc.
アーケードゲームの場合は、プレイ時間が長引くほどゲームセンターが儲からなくなってしまいます。なので、第五回のテーマ「コーヒーブレイク」を導入した作品も含め、アーケードゲームのステージ間に流れる「デモ画面」(以下、「ステージ間デモ」)の尺は、家庭用に比べて総じて短いように思われます。
『大魔界村』(カプコン/1988年)や『ゼクセクス』(コナミ/1991年)などのアーケードゲームには、全体マップを表示したり、敵の親玉に捕らわれたお姫様が助けを求めたりするステージ間デモがありますが、途中でボタンを押せばいつでもキャンセルできるので、プレイ時間をさらに短縮することが可能です。
また、このような「デモ画面」のキャンセル機能は、ステージクリアに成功したプレイヤーのテンションが下がらないうちにすぐに続きが遊べる、あるいは繰り返しプレイして見飽きた画面を見せてストレスをためないようにする配慮もあったように思われます。
プレイヤーに対し、「コーヒーブレイク」とゲーム内でのご褒美を同時に与える、優れたステージ間デモを演出しているタイトルのひとつが『アフターバーナーII』(セガ/1987年)です。
本作には、特定のステージクリア後に味方の給油機が出現、または自機が基地に着陸して、弾数制限のある誘導ミサイルを補給するステージ間デモがあります。敵機とのドッグファイトに終始するゲームの世界観にピタリとマッチし、なおかつプレイヤーに対してブレイクと同時にミサイル補給の報酬を与える、非常に優れたアイデアですね。
家庭用では、ゲームボーイ版『ドンキーコング』(任天堂/1994年)や『NewスーパーマリオブラザーズWii』(任天堂/2009年)などのように、各ワールドをクリアすると敵の「ボスキャラクター」が次のワールドへと逃げ出し、主人公が追い掛けるコミカルなアニメーションを流すタイトルが古くからよく見られる感があります。



©SEGA Produced under a license from Northrop Grumman Systems Corporation.
F-14D Tomcat is a trademark of Northrop Grumman Corporation.
PROGRAM ARRANGED BY DEMPA/T.MATSUSHIMA
前述した『夢幻戦士ヴァリス』(日本テレネット/1986年)シリーズなど、家庭用またはPC用ゲームでは、ステージ間デモ中に長尺のアニメーションが流れるタイトルもたくさんあります。
例えばファミコン版『忍者龍剣伝』(テクモ/1988年)シリーズは、まるでアクション映画を見ているかのような、非常に凝ったステージ間デモが用意され、さらに一部の「デモ画面」には「ボスキャラクター」の弱点を知るためのヒントも用意されています。
これらのビジュアル面でもプレイヤーを楽しませる「デモ画面」は、「原則4-A-①:スタート時のつかみ」だけでなく、「原則3:はまる演出」も実践していると言えるでしょう。



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「デモ画面」が変化するおもしろさ
プレイヤーの成績や、ゲームの進行度などによって「デモ画面」が変わる演出を取り入れたタイトルもいろいろあります。
対戦格闘ゲームのパイオニア『ストリートファイターII』(カプコン/1993年)シリーズは、接戦になった場合と圧勝した場合とでは、対戦終了後に表示されるキャラクターのセリフがそれぞれ異なることは多くの皆さんがご存知のことでしょう。
同じく、対戦格闘ゲームの『龍虎の拳2』(SNK/1994年)には、ダメージをまったく受けずに相手をKOすると、キャラクターが通常とは異なる、特殊な勝利パフォーマンスを披露するアイデアが導入されています。
このような演出は、「ゲームニクス理論」の「原則3-B-④:快感要素の基本事項」の一種「褒め要素」も実践していると言えるでしょう。



©CAPCOM
ちょっと変わったステージ間デモを導入しているのが、アーケード用シューティングゲームの『ソニックウィングス』(ビデオシステム/1992年)です。
本作には、機体に乗り込むパイロットのセリフが表示されるステージ間デモがありますが、2人同時プレイの場合はセリフが変わり、パイロット同士での掛け合いを楽しむことができます。同様のアイデアは、『BATSUGUN(バツグン)』(販売:タイトー、開発:東亜プラン/1993年)などにも導入されています。
ほかにも『メタルギアソリッドΔ(デルタ)』(コナミ/2025年)では、エンディングに到達した「セーブ」データを作成すると、ステージ間などで流れる全ムービーシーンを自由に選択して見られる、「デモシアター」が新たに選択可能となります。
こちらも「デモ画面」をプレイヤーに対する報酬にも利用した、実におもしろいアイデアですね。



©HAMSTER Co.
以上、今回は「デモ画面 Part2」をお送りしましたが、いかがでしたでしょうか?
繰り返しプレイしているうちに見慣れてしまった「デモ画面」、特にステージ間デモはついつい飛ばしてしまいがちですが、プレイヤーのテンションを高めたり、休息を与えたりするなど、バリエーション豊かで奥が深いテーマであることを改めて実感しました。
なお「デモ画面」に関するくわしい解説は、「ビジネスを変える『ゲームニクス』」 の「原則2-B-③:デモでルールを説明する」のほか「原則3-B-④:快感要素の基本事項」「原則4-A-①:スタート時のつかみ」などの項で解説していますので、興味のあるかたは本書をぜひご覧ください。
それでは、また次回!
