「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 第六十九回 エクステンドPart2

  • 記事タイトル
    「ゲームニクス」で考えるゲームの魅力 第六十九回 エクステンドPart2
  • 公開日
    2026年08月28日
  • 記事番号
    14756
  • ライター
    鴫原盛之

当コラムでは、「ゲームニクス理論」をもとに、なぜゲームがおもしろくなるのか、どうしてプレイヤーはゲームに夢中になってしまうのかを、おもしろおかしくご紹介していきます。

第六十九回のテーマは「エクステンドPart2」です。

第二十回でも解説しましたが、「エクステンド」とは大まかに言うと、特定の条件を満たすことで自機や主人公のストックまたはプレイ時間が増える、つまりプレイヤーがゲームをより長く遊べるようになる演出を指します。

昨今ではあまり見掛けなくなった感がありますが、過去の「エクステンド」導入例を調べてみると、筆者とサイトウ・アキヒロ先生の共著「ビジネスを変える『ゲームニクス』」で掲げた「ゲームニクス理論」の「原則3:はまる演出」を、さまざまな方法で実践していることがわかります。

今回は、第二十回では紹介し切れなかった導入例を中心に、定番から変わり種まで、さまざまな「エクステンド」をご紹介したいと思います。どうぞ最後までご一読ください!
 

「ゲームニクス」とは?
現亜細亜大学教授のサイトウ・アキヒロ先生提唱による、プレイヤーが思わずゲームに夢中になる仕組みを理論・体型化したもの。
本稿では、「ゲームニクス理論」を参考に、ありとあらゆるゲームのオモシロネタをご紹介していきます。「理論」というおカタイ言葉とは正反対に、中身はとってもユルユルですので、仕事や勉強の休憩時間や車内での暇つぶしなど、ちょっとした息抜きにぜひご一読を!

 

黎明期の作品に導入された「エクステンド」の例

ビデオゲームが誕生してまだ日が浅い、1970年代に登場した作品には、エレメカのレースゲームやガンシューティングゲームなどと同様に、制限時間内に規定の得点を超えるとプレイ時間が延長される「エクステンド」がよく導入されていました。『スピードレース』(タイトー/1974年)、『モナコGP』(セガ/1979年)などがその代表例です。

また『カーツン・ガン』(セガ/1977年)など、1プレイで発射できる弾数があらかじめ決められたガンシューティングゲームでは、すべての弾丸を撃ち終わった後に、一定の得点を超えていた場合はプレイ時間が延長されるルールが導入されたものもあります。

黎明期に登場した多くのアーケードゲームには、高得点を獲得するとプレイ時間が延長されるルールが導入されていました(※写真はタイトーが1975年に発売した『スピードレースデラックス』の筐体)
© TAITO CORPORATION 1975 ALL RIGHTS RESERVED.

もうひとつの古典的な「エクステンド」は、第二十回で今では「消えた文化」として解説した、アーケードゲームにおいて規定の条件を満たすと1クレジット追加される「再ゲーム」です。

その一例が、以下の写真の『レディーバグ』(ユニバーサル/1981年)で。赤色の「S」「P」「E」「C」「I」「A」「L」の7文字すべてを取り、「SPECIAL」の単語を完成させるとプレイヤーを祝福する「褒め演出」とともに1クレジットが追加されます。

ちなみに「再ゲーム」が導入されたタイトルですが、時代とともにどんどん減り、1980年代半ばの時点でほぼ絶滅した感があります。「再ゲーム」が採用されなくなったのは、プレイヤーが長時間遊び続けて、ゲームセンターが儲からなくなるリスクを排除することが最大の理由だったと思われます。

筆者が確認した限りでは、「再ゲーム」を導入した最後のアーケードゲームは、パズルゲームの『ロジックプロ2』(エイブル/1997年)でしたが、もしかしたら本作以降の作品にも導入例があるかもしれません。

もしご存知のかたがいらっしゃいましたら、ぜひご一報を!
 

「エクステンド」によって生み出された戦略性

ここからは、得点やクリアに要した時間などの成績とは直接関係のない「エクステンド」の例をご紹介します。

シューティングゲームの『ファンタジーゾーン』(セガ/1986年)は、プレイヤーがどんなに高得点を獲得しても、自機にあたる主人公のオパオパが増える「エクステンド」は一切ありません。本作でオパオパを増やすための方法はただひとつ、敵を倒すと出現するゴールド(お金)を集め、ショップでストックを購入することだけです。

ゴールドはストックだけでなく、オパオパの武器やエンジンを購入する際にも必須となります。つまり本作は、「エクステンド」も有料アイテムの一種することで、プレイヤーは状況に応じてストックを増やすのか、それとも武器やエンジンを購入するのかを考える戦略性も生み出しているのです。

加えて本作では、オパオパのストックや武器の値段は購入するたびにどんどん上がるので、プレイヤーはミスを重ねる、あるいは先のステージに進むほどパワーアップを優先するのか、それともストックを増やすのか、決断がどんどん難しくなります。
 

『大乱闘スマッシュブラザーズ for Nintendo 3DS / Wii U』(任天堂/2014年)には、「対戦プレイ」時に戦略として「エクステンド」を取り合う要素が導入されています。

本作で、ごくまれに「ランダム」で出現するアイテム「スペシャルフラッグ」は、取るとファイターのストック(※タイム制の場合は撃墜数)が増える効果があります。よって「スペシャルフラッグ」を取ったプレイヤーは非常に有利になるため、出現時はアイテム獲得を目指し、さまざまな駆け引きが自然と発生することになります。
 

得点や成績とは無関係の「エクステンド」の中でも、とりわけおもしろいアイデアを採り入れていたのが、ファミコン用アクションゲームの『デビルワールド』(任天堂/1984年)です。

本作のボーナスステージには6個のボーナスボックスが出現し、その中に1個だけ1UPアイテムとなるタマゴが「ランダム」で入っています。本作を1人でプレイするときは、制限時間がゼロになるまでじっくりとタマゴを探すことができますが、2人「協力プレイ」時はどちらが先にタマゴを発見するのか「早い者勝ち」となります。

つまり本作はボーナスステージに限り、2人「協力プレイ」時に競争の要素が発生するわけですね。
 

まだまだあります! 超個性的な「エクステンド」システム 

ここからは、あまり類例のない独創的な「エクステンド」の例をご紹介しましょう。

シューティンゲームの『オメガファイター』(UPL/1989年)は、得点による「エクステンド」だけでなく、敵を10倍の倍率で倒すごとにたまるゲージ(※画面上部に表示されています)を満タンにすることでも1UPアイテムが出現します。

第八回「ハイリスク・ハイリターン」でも紹介しましたが、本作で10倍を狙うためには、敵をギリギリまで引き付けて倒す必要があるので、かなりの危険が伴います。なので本作の「エクステンド」は、「ゲームニクス理論」の「原則3-B-⑤:ハイリスク・ハイリターンの調整」の要素も採り入れていることになります。
 

『コズモギャング ザ ビデオ』(ナムコ/1992年)は、毎回特定のステージで1UPアイテムの「スペシャルフラッグ」が高確率で出現します。

筆者のうろ覚えでたいへん恐縮ですが、本作では毎回ステージ12、16、20で「スペシャルフラッグ」が高確率で出現します。もしこれらのステージで「スペシャルフラッグ」が出なかった場合は、それ以降の別ステージで出現する仕組みになっており、最終的には1周クリアするまでの間に全部で3個取れるチャンスがあります。

さらに運が良ければ、極めて低い確率ですが「スペシャルフラッグ」がもう1個、どこかのステージに「ランダム」で出現することがあったと記憶しております。あくまで筆者の知る限りですが、これほどまでにユニークな「エクステンド」は、後にも先にも本作だけです。

ちなみに、本作も2人「協力プレイ」が可能ですが、自機のストックは2人で共有するシステムのため、前述の『デビルワールド』とは違って競争は発生しません。
 

以上、今回は「エクステンドPart2」をテーマにお送りしましたが、いかがでしたでしょうか?

特にアクション系のゲームでは、プレイヤーに対する最上級の報酬とも言える「エクステンド」は、これを狙うこと自体がゲームの目標設定となり、モチベーションの向上にもつなる、実に優れた演出であると筆者は改めて思った次第です。

最初から意図したわけではないのですが、いろいろな「エクステンド」を調べた結果、前回に続いて今回も「スペシャルフラッグ」が登場する導入例を2つ紹介することとなりました。

今から45年も前に、『ニューラリーX』(ナムコ/1981年)で初めて登場した「スペシャルフラッグ」(※本作では「エクステンド」ではなく「ボーナス得点」アイテムでした)が、いまだに現役であることには驚くばかりですね。

なお「エクステンド」に関するくわしい解説は、「ビジネスを変える『ゲームニクス』」 の「原則3-A-⑨:シーンリズムの調整で快感を演出」や「原則3-B-④:快感要素の基本事項」などのページをご覧ください。

それでは、また次回!

こんな記事がよく読まれています

2018年04月10日

ゲームセンター聖地巡礼「1980~1990年代 新宿」前編

今回から、新企画「ゲームセンター聖地巡礼」の連載がスタートします。当研究所・所長の大堀康祐氏と、ゲームディレクターであり当研究所のライターとしても協力いただいている見城こうじ氏のお2人が、1980~1[…]