サイバー近未来オオサカにはびこる日本ローカル妖魔とスタイリッシュバトル! 優等生なクオリティの高さで魅せる新作メトロイドヴァニア『ブレードキメラ』

  • 記事タイトル
    サイバー近未来オオサカにはびこる日本ローカル妖魔とスタイリッシュバトル! 優等生なクオリティの高さで魅せる新作メトロイドヴァニア『ブレードキメラ』
  • 公開日
    2025年01月24日
  • 記事番号
    12439
  • ライター
    山村智美

いい感じの遊び心地
いい感じのポップさ
いい感じのカジュアルなビジュアル
いい感じの2Dドットなゲームも豊富
いい感じの重すぎない&軽すぎないゲームらしさ

『発見! インディーゲーTreasures』は、
そんな“ちょうどいい感じ”なインディーズゲームを紹介していく月イチ連載です。

今回ピックアップした1本は、こちら。

『ブレードキメラ』!

 

タイトル:『ブレードキメラ』
開発:Team Ladybug, WSS playground
パブリッシャー: PLAYISM, WSS playground
リリース日: 2025年1月16日
価格:2,480円
配信プラットフォーム:PC(Steam) / Nintendo Switch

 

インディーゲーム界の夜空に数多輝けるメトロイドヴァニアの星たち。

上下左右に広がる2Dマップを探索し、武器やアイテムを見つけ、自分を強化して探索範囲を広げる。
こうしたゲームデザインの偉大な祖である『メトロイド』&『キャッスルヴァニア』から名付けられたメトロイドヴァニアですが、

意外に日本を舞台にした作品は珍しい。

日本の妖怪がはびこる魔都と化したオオサカを妖魔ハンター「シン」として探索していく、完全オリジナルな新作メトロイドヴァニア。

それが、今回紹介する『ブレードキメラ』です。

日本を舞台に……といいつつも、本作の世界はかなり独特。

舞台は近未来のオオサカ。ネオンや日本語の看板がいろいろとみられる都市は、いわゆるサイバーパンクな風景が広がっています。

一方で、そんなサイバーパンクな都市は妖怪だらけ。本作では“妖魔”と呼ばれている存在ですが、「ぬらりひょん」や「ぬりかべ」などの日本古来の妖怪もいれば、「くいだお◯太郎」的な大阪ならではなモチーフの妖魔や、火を吹いてくる「カラ◯ーチョ」的なお婆ちゃんの妖魔も。

サイバーな風景の中でこうした日本人にとって身近な存在が襲ってくる光景はちょっと悪夢的というか、シュールな味わいがあります。

「近未来サイバーパンク」、「オオサカ」、「日本ローカルな妖魔」。

濃い設定の三段構え。

主人公の「シン」は、サイバー忍者を思わせる風貌で刃や銃を駆使して戦う妖魔ハンター。だが、自らに関する記憶を失っている上に、普段は魔剣・妖蛍刀に姿を変えていて“過去に干渉する”力を持つ謎の妖魔「ルクス」とひょんなことから協力関係となっていく。こちらも個性がてんこ盛りになっています。

シンは武器1と2という2つの武器を装備可能。
武器1に銃、武器2に刀を装備して近距離と遠距離の両方をカバーしたり、性質が異なる武器を2つ装備してリズミカルに攻撃するなど、好みのスタイルが作れます。

武器の種類はリーチは短いが攻撃間隔が速い「ナイフ」や、キャッスルヴァニア感が高まる「ムチ」、遠距離でもフルオートの「マシンガン」や威力が高い「ショットガン」、変わり種には「手裏剣」などもあって種類が豊富に用意されています。

本作の銃系統の武器は、特に射撃のブローバック(反動)や音、リロードのモーション、落ちる薬莢の音まであって非常に凝っており、射撃感が気持ちいいのが特徴的。こだわりを感じさせるポイントになっています。

武器は、拠点のショップで購入できるほか、探索してマップに隠されているものを発見したり、さらには敵からのレアドロップも存在します。

攻撃方法には、さらに妖魔ルクスの魔剣・妖蛍刀もある。大剣として前方に攻撃を繰り出せるのはもちろん、空中で回転させて敵を斬りつけたり、足元に刺してバリアーを貼ったりも可能。

壁に突き刺して足場にしたり、天井のフックにひっかけてワイヤーアクションをしたりと、移動方法にも使えるところがポイントで、アクションの幅を広げてくれる存在にもなっています。

基本になるアクションはローリング回避とジャンプですが、新たな能力をスキルツリーから獲得できる。敵を倒したときの経験値でレベルアップし、それで得られるポイントで獲得する方式で、スキルには「空中ダッシュ」や「二段ジャンプ」などアクションを増やすもの、ルクスの攻撃スタイルを増やすものなどがあり、いずれも必須レベルに強力。

中でも、真っ先に獲得を目指すべきスキルが「ワープ」。
本作は何と、このワープのスキルを獲得後はごく一部の場所を除いていつでも踏破済みのマップに、しかもマッピングのマス目を指定して瞬間移動できてしまいます。

それこそ、攻略中の新エリアを進んでいてダメージを喰らってしまったらセーブポイントにワープしてHPを回復し、すぐさま新エリアにワープで戻るということまでできてしまう。
移動の時間や、リトライの手間、それに伴う再プレイの難易度をすべて消し飛ばしているという、かなり大胆な仕様になっています。

本作はこのワープの仕様も含めて、非常に手軽に楽しみやすい作りになっているので、総じてメトロイドヴァニア系のゲームにあまり慣れていないという人にもオススメしやすいと思えます。

マップはサイバーな雰囲気に変貌した近未来のオオサカ。看板などからオオサカ感が漂ってくる繁華街もあれば、電車が通っている駅に、工業地帯やショッピングモール、さらには病院や降雪地帯までもあったりと、ロケーションも豊富に存在。

本作の大きな魅力はドットで細かに描かれているビジュアルで、主人公のシンの動きがヌルヌルと見えるほどにアニメーションパターンが多いのをはじめ、マップの背景も非常に細かくて、日本のローカルなものをピクセルアートで描いている楽しさも随所に散りばめられています。

また、サウンドもキャッチーなエレクトロの曲を中心に、ゲームプレイの気持ちよさを高めてくれる魅力のあるものになっています。

ビジュアル、サウンドともに、本作の素材は非常にクオリティが高いハイレベルなものになっているのがポイントです。

実際のゲームプレイとその感触については、本作は非常に優等生な作品でプレイのテンポが良く、操作性も良く(足場の端の処理だけは少し気にかかる)、キャラクター同士の会話などのストーリーテーリングもしっかりとしたものになっています。

大部分のプレイヤーにとって、本作のプレイはほとんどひっかかることもなくスルスルと進んでいくでしょう。

ただ、それがある意味では惜しいところでもあります。本作はあまりに優等生で大きなひっかかりもほぼなく、ちょっと苦戦する箇所があってもワープですぐにリトライできて快適ですが、それがゆえにプレイ体験はあっさりとしすぎています。

もちろん、マップ途中にはルクスが通れない紫外線装置があったり、ギリギリジャンプを求める足場の端の判定がちょっと厳しめでうまくジャンプしてくれない瞬間があったりと、“ちょっとした引っ掛かり”はあるのですが、普段が快適すぎるがゆえに、そうした“ちょっとした引っ掛かり”が妙に目立つストレスになってしまっています。

また、ゲームプレイが上手な人であればあるほど、ボス戦もほとんど困ることなく突破できるでしょうし、かなりハイスピードに進めていけるので、プレイ後の感想としてボリューム不足を感じる人もいるのではと思えます。

特に残念なのは“探索の要素が意外と活きていない”ということで、メインストーリーを辿るだけであれば、ストーリー途中に手に入る武器や装備で戦力は充分な難易度になっているし、スキルにおいても本作はレベルアップでスキルを獲得する方式で、ストーリーを追う道中で充分にスキルを獲得できるので、こちらも探索が必須にはなっていません。

探索して装備や能力を獲得することで進めるエリアが広がっていくというのがメトロイドヴァニアにおいて大事なゲームデザインと考えますが、本作はその必要性や、要素そのものが少ないのが気になるところ。

もう少しサブクエストの充実させ必須のものにして、探索に広がりと奥行きを出してくれていたら、より味わいの深いメトロイドヴァニア作品になっていたのではと思いますが、現状では“あまりに快適で優し過ぎるがゆえにあっさりとしたゲーム”となっています。

もちろん、これはアクションゲームが苦手な人や、とにかく煩わしいことや面倒なことがなく本作の世界観やストーリーを楽しみたいという人にとってはメリットでもあるので、本作はそういう意味で“メトロイドヴァニア作品にあまり慣れていない人の入門”に適しているとも言えます。

東方Projectの二次創作作品『Touhou Luna Nights』や、ロードス島戦記の二次創作作品『ロードス島戦記―ディードリット・イン・ワンダーラビリンス―』を手掛けたteam ladybugが、満を持して開発した完全オリジナル新作『ブレードキメラ』。

濃いめの設定を多く積み重ねた独特な世界観で、ビジュアルもサウンドも、キャラクターやアクションまでも、非常にクオリティが高いもので構築されています。

背景のオブジェクトや妖魔のモチーフは、特に日本人なら思わずニヤッとするものがあるので、そうしたところも魅力となっています。

惜しむらくは、全体にプレイ体験があっさりとしていることで、探索要素が意外に薄く、マップも広いようで、ワープの仕様が快適なことと、あまり探索そのものが必須ではないところもあってあまり広さを感じず、コンパクトな印象になっています。

ヘビーユーザーからはボリュームを含めて物足りなさを感じる声がありそうですが、気軽に世界観とキャラやストーリーを楽しむという点では遊びやすくもあり、キャッスルヴァニア系作品の入門に良いタイトルとも言えるかと思います。

そうしたところもありつつも、本作の快適さはやはり“優等生”で、プレイ中はノンストップに没頭してプレイし続けてしまう魅力と快適さがあります。メトロイドヴァニア作品に触れていきたい人の入門にもオススメな1本となっています。

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