タイトー『フェアリーランドストーリー』発掘報告書 前編

  • 記事タイトル
    タイトー『フェアリーランドストーリー』発掘報告書 前編
  • 公開日
    2022年09月23日
  • 記事番号
    8172
  • ライター
    ぱぱら快刀

あたし、魔法使いのぱぱら! 30歳すぎて魔法が使えるようになった大魔道士だよ!
だけど魔法が使えるのはナイショにしてね、イザというときまでね。それまで誰にも言わないでね!

さあ、今回は『タイトーマイルストーン』&『イーグレットツー ミニ』の両方に収録されている、タイトー『フェアリーランドストーリー』を発掘するぞっ。

<タイトル画面> © TAITO CORPORATION 1985 ALL RIGHTS RESERVED.

このタイトルはね、あたしがタイトーの中で1番好きなゲームなの! その練り込まれたルックスとゲームデザイン、至高の領域に近い。おまえも魔法使いにならないか。あら、このネタはもういいわね。失敬失敬☆

(ナレーション)「……この連載シリーズは名作古典ゲームを題材に、現代のゲームデザインにも活かせるであろう、優れたゲームデザイン技法を求め旅する物語である。この先どんな発見と発掘があるのか、どのような運命が待ち受けているのか、それはまだ、誰にもわからない……」

じゃあ、これよりみなさんをめくるめく魔法のゲームデザインの国へとお連れするわ!
だがしかーし! ここには魔法の学校だとかの甘い施設はない! 遅れたやつはオオトカゲの餌食になる運命が待っている! 貴様ら、歯を食いしばってしっかりついてこい!
あらまあ、汚い言葉使いになってしまったわね。怖くないよ。大丈夫だからね安心してねオホホ。

<ゲーム紹介>

紹介するわね。今回の発掘対象の『フェアリーランドストーリー』は、1985年稼働開始のアーケードゲームよ。
この時代の業務用ハードウェアは、豊かな発色数、多くのキャラクター表示能力、複雑な画面スクロールもお茶の子さいさいな背景スクリーン、リッチな音楽を奏でる音源チップ……、2Dゲームを作るのに充分な性能のハードウェアが発達してたの。
それ以前の固定画面のゲームばかりの時代に比べて、たった数年で長足の進歩を遂げてたってわけ。

でもこの発展時代になってもね、これまでと同じ固定画面のままの、でもカラフルなゲームがまだ沢山残っていたの。いい時代だった……、まだテーブル筐体も多く残っていた。俺たちはやっきになってテーブルの上にコインを積み上げ、スナック菓子の袋を置いて戦ったものさ……。
あらやだ、また口調が戻ってしまったわね、いけないいけない☆てへっ。

この『フェアリーランドストーリー』はそんな1画面固定の2Dアクションゲーム。
タイトル名のとおりの、ファンタジーな魔法の世界が舞台。
主人公のかわいい女の子の魔法使い「トレミー」ちゃんを操作して、迫り来るかわいらしいファンタジーな敵キャラを、これまたかわいい魔法で次々と惨殺してステージをクリアしていく内容よ。
とにかくかわいいしか形容が出てこないわね。ゲームの見た目、内容、何もかもがかわいいわ。

操作デバイスは2方向スティックと2ボタン。当時としてもシンプル極まりないわね。
単純な操作系だけどゲームプレイは異常なほど奥深い……、そういったゲームデザインをみなが競っていた時代でもあったわ。

それでこのゲームね、主人公が使う魔法がほんっとにステキなの! ボタンを押すと杖先から放たれる魔法の波動、これを敵キャラに当てると、何と、そいつはおいしそうなケーキに変わっちゃう!
じゅるるっ。

敵が変化したそのケーキをえいやえいやって押していって、下の床へと落とし、やつらの野望ごとケーキを砕く。ときには敵の頭上へケーキを落とし、巻き込み、圧殺する。皆殺しだ! ステージをクリアするにはそうするしか道はない。こわいわね!

<ゲーム画面> © TAITO CORPORATION 1985 ALL RIGHTS RESERVED.

ケーキの甘い香り、隣のシューティングゲーム機から流れ来る硝煙の匂い……。むせる。俺たちはゲームセンターの片隅でただ死に物狂いに戦う、そんな日々を暮らしていた。テーブル上の紙コップのドリンクやスナック菓子とともにな……。
……あらあら、ずいぶんファンタジーな世界だこと。老兵たちはどっか行って! まごまごしてるとケーキにしちゃうわよ!
ま、ゲームのざっくりとした紹介はこんなところかしら!

<ゲームの特徴>

さーて、おつぎはこの『フェアリーランドストーリー』の特徴を紹介するわね!
くわしいことはこのあとの発掘報告でするから、ここでは簡単にいくわよ!

・1画面固定モノ

ちょっと専門的に言うわよ。この『フェアリーランドストーリー』は、ジャンル的な呼びかたをすると「固定画面サイドビューキャラクターアクションゲーム」ってなるわね。

サイドビューってのは、世界を横から見る視点。ただし奥行きはなしの2D表現ね。ゲームオブジェクトの座標系がX座標とY座標のみってわけ。

固定画面ってのは、ゲーム展開の要素が1つの画面内に収まってる。
画面がスクロールしたりしないの。止まった背景画面のままでプレイが進行するゲームの総称ね。
ひとつのステージをクリアしたら画面が全部切り替わって、じゃーん、次のステージが現われるって仕組み!

ただ固定画面ゲームにもいくつか種類があるのよね。
確かに画面はスクロールしないけど、敵とかのゲーム構成オブジェクトが画面外から次々新しく現われるものや、ステージ中に画面の端に到着すると隣の続きエリアへ画面が切り替わるもの、などね。

いや待てや。画面が止まってりゃいいってもんじゃねえだろ。
落ちゲーを固定画面ゲームと呼ぶか? 将棋とか麻雀ゲームもか?
このゲームはな、ただ画面が固定されてるだけのヤツとはワケが違うんだ!

いいか、ボウズ。本物の、完全な固定画面ゲームってのはな、最初っからステージ開始状況が完全にオープンに開示され、1画面の中にすべて収まっている。その初期状況からのみでゲームが進行し、1画面の中で1ステージが完結する。見えないものはない、途中から急に別のものは出てこない、そんなフェアなものをいう。

俺たちはそういうスタイルのゲームを、特別に「1画面固定モノ」と呼んでいた。今ではもう誰にも作られないジャンル、懐かしい思い出さ……。

タイトーはな、そんな1画面固定モノのゲームを沢山作ってきた。そんじょそこらの、ただ画面が動かないだけのゲームじゃねえ。
鬼のように練り込まれた数々の1画面固定モノ、そんなゲーム開発の積み重ねの歴史が到達した至高の最高峰のひとつ、その宝玉がこの『フェアリーランドストーリー』なんだッ!!

……いいから老兵は去って。

・世界観がとってもかわいくファンシー

気を取り直していくわね! このゲームは何といっても世界観がいいわね。
魔法とケーキとかわいいキャラたち。主人公の「トレミー」ちゃんも、もちろんかわいいわ。設定によれば、どっかの王国の王女さんらしいわね。知らんかったわ。
空飛ぶ相棒の「ロドミー」ちゃん。こいつはドラゴンで「トレミー」ちゃんを背に乗せてくアッシーくんね。やっぱりかわいくて、でもちょっとまぬけな顔してる。

<ステージ間デモ> © TAITO CORPORATION 1985 ALL RIGHTS RESERVED.

敵キャラクターたち。
王国を襲う、本来なら恐ろしげな見た目のはずの定番種族やクリーチャーたち。
こいつらも主人公に負けず劣らず、コミカルでかわいいやつらになってるの。生意気ね!

ステージ背景もとってもファンシーでスイート。
こんなファンタじっく☆キラキラ世界で、キュートなキャラたちが生死を賭けた魔法大戦だなんて、ステキじゃない?
当時の女の子ゲーマーたちもハートがズッキュンしてたに違いないわ。

・シンプルこのうえない操作システム

次の特徴は操作システムね。
2方向レバーで左右に移動。あとは魔法ボタンとジャンプボタンの2つだけ。
シンプルすぎて不安になっちゃう。
レバーが左右2方向なんて昇龍拳が出ないじゃない! こんなんで対空攻撃なんてできるのかしら?
出せるのなんてソニックブームぐらいよね。 うそうそ、そんなコマンド技なんてありませーん! 表向きはな……(空中でタイミングよくレバーを入れれば、ジャンプキャンセルして隣の床に乗れる、っていう特殊技があるのだ)。

左右2方向レバーなので、上下移動がちょっと独特
上の床に行きたければジャンプボタンで飛び移る。
下に行きたいときは床の切れ目から飛び降りるしかないの。魔法使いなのに忍者みたいなムーブね。
ふふふ…、よくぞ見破ったな。妖術を操る魔道の忍者…それが俺の正体よ! なんちて☆

ジャンプしても頭上の床板に頭がぶつかったりせず通り抜けちゃうから、高ささえ足りれば上の足場に登り放題。でも降りるのは床の端からのみ。
昇るのは簡単だけど降りるのはニガテ。魔法使いなのに猫ちゃんみたいね。
妖魔の忍者め、真の姿は怨念が生みし化け猫であったか……!? なんてね☆

上へはジャンプで少しずつしか昇れないけど、床の端からは一気に下まで飛び降りられる
どんな高さから飛び降りても大丈夫。死んだり気絶したりはしないから安心してね。
背丈の高さから飛び降りただけで死んじゃう冒険家たちとは鍛えかたがちがうわけ。この程度の強靭なフィジカルがないと、タイトーゲームの主役キャラは張れないわよ?!

ま、上下の移動の違いにはそんな長短があるってこと。
こんなにシンプルな操作なのに、この違い、制限がね、意外とゲームに影響をもたらしちゃうのよね。ルート取りや移動手順を考える必要があったりとかね。
まったくよくできた猫だか忍者だかよね!

・全101面のたっぷりボリューム

で、1面クリアするごとに次のステージに進む。あ、面っていうのはステージのこと。画面の面ってわけね。はるかの昔はステージとかラウンドとかの言葉をゲームで使ってなかったから、自然発生的に面って言いかたが生まれたのよね。「画面クリア」→「面クリ」って略されていった流れかしら。
それが今でも使われてる。言いやすいもんね面って。

『フェアリーランドストーリー』でのステージ(ラウンド)は100面(正確には101)もある
けっこうなボリュームだから飽きないわ。
何で100なのかってのは、特に決まりとかではないんだけど、このぐらいたくさんのステージを用意すると、ゲーム寿命も延びるしね。100っていうのはキリ番だし、この頃のゲームではなんとなく99とか100とかが多かった印象。
がんばれば100円で100面も遊べるなんて景気がいいわよね。ケーキだけにね!

無事100面クリアすると最後に101面目としてアクションゲー風味のボス戦が始まるの。相手はドラゴンの親玉みたいなデカいやつ。こいつが憎っくき悪の親玉ってわけね。
ビビらず冷静な忍者ムーブで攻撃をかわし、こっちの魔法を何発もあてていくと、そうすると最後にはでっかいケーキに変化して、こいつの野望ごと砕け散っていくわ。
これでオールクリア。王国に平和がもどってめでたしめでたし。てわけね。

思い出したけど、タイトーの『ラスタンサーガ』の最終対決も悪ドラゴンね。対決の画面構成もクリソツすぎておもしろいわね。どちらも同じ美術スタッフの人が関係してるからかしら? でも『フェアリーランドストーリー』のほうが少しだけ見た目かわいいかな。対決のシビアさは似たようなものだけど。王国を救うのって大変ね!
『ラスタンサーガ』も『イーグレットツー ミニ』に収録されてるから、ぜひ遊んでね! ウォー!!

<発掘品目録>

こちらが今回の発掘したツボの一覧よ。今回もいろいろあるわね。
ひとつひとつ解説していくから、遅れるなよ野郎ども!
飢えたバジリスクの夕食になりたくなければな!
  

-前編-
■かわいいビジュアルのツボ
 ツボNo.1 「ちびキャラは太くフチ取る」
 ツボNo.2 「おすましモーションでかわいさアップ」
 ツボNo.3 「背景BGも抜け目なく飾る、特に画面端の囲み」 
 ツボNo.4 「死に様で魅せる」
-中編-
■ゲームメカニクスのツボ
 ツボNo.5 「させたい状況になりやすく作る」
 ツボNo.6 「敵の個性にでっかい一芸をもたせる」
 ツボNo.7 「スコア評価で挑戦意欲を掻き立てる」     
 ツボNo.8 「単調なゲーム展開に彩りを」
-後編-
■レベルデザインのツボ
 ツボNo.9 「攻略パターンを作らせるレベルデザイン」
 ツボNo.10 「バリエーション=プレイヤーに何をさせたいか」
 ツボNo.11 「順に覚えさせる学習配慮」

<『フェアリーランドストーリー』のツボ>

ゲプッ……、さーて、焼いたバジリスクを平らげたところで、いよいよ『フェアリーランドストーリー』にかけられた魔法のツボたちを紹介していくわよ!

■かわいいビジュアルのツボ

このゲーム、「見た目かわいいけどけっこうスパルタンなガチゲー」っていうのが相応しいと思うの。でもまあ、まず最初に見た目がかわいい部分、ビジュアルのツボを見ていくわね。

ファンタジー世界に生息するおそろしいモンスターたち。
このゲームでは、醜悪なオーク、邪悪なウィザード、頑強なゴーレム、灼熱のサラマンダー、混沌のクレリック、死霊のレイス……、なんて感じの敵キャラが出てくるのね。
ククク、敵にして不足なし。かかってこいよ! 血の生クリームで料理してやる!!

なんだけど、世間の一般的な種族イメージそのままの姿だとやっぱり怖いから、主人公の「トレミー」ちゃんに合わせてみんなかわいらしくて、すこしとぼけたコミカルな見た目になってるわ。
怖くないよ。

どのキャラも2頭身のドット絵にかわゆくデフォルメされてるんだけど、それだけじゃないわ。
ほかにもかわいらしく見せるための技が使われてるの。
「フチ取りをつける」「一部分を固定したモーション」ね。

ツボNo.1 「ちびキャラは太くフチ取る」

「フチ取りをつける」

ってのは、キャラの輪郭を黒いドットではっきりと囲んでること。
2頭身デフォルメキャラは、キャラデザインの段階で十分かわいいんだけど、さらに描きかたの工夫でかわいさ盛れるんよ。
それが「フチ取り」。魔法の一手間ね!

このキャラサイズでフチ取りに1ドットを割り振るのはつまり、輪郭線をかなり太く描いてることになるのよ。イラスト描くときがそうだけど、ちびキャラは太い輪郭線でよりキュートな印象になるって一般法則。それを適用してるってわけね。

<フチ取り太さ例>

さらに、このフチ取りにはゲーム的な利点も
背景と同化しないでキャラがクッキリ見える効果もあるの。視認性が良くなるってこと。
ほんと一石二鳥三なすびね! なすびは余計か!

ツボNo.2 「おすましモーションでかわいさアップ」

おつぎは

「一部分を固定したモーション」

ね。

どのキャラも歩きモーションではちっちゃな手足がせわしなく動いてるけど、頭の部分は微動だにしてないわね。
これは鳩ぽっぽの原理。
身体が動いても頭は動かない、または逆に身体は固定で頭だけ動く、これがかわいい仕草に見えるって原理ね!
ただ、ひとつ間違うとホラー人形に見える諸刃の剣。そこはあんじょううまくよろしゅうにやるのよ!

あとは立ち待機モーションも固定ってのが逆にかわいいの。
何も操作しないとき、普通だったら肩や身体を揺らしたり、リュウやケンみたいにステップ踏んだりしてるよね。
「トレミー」ちゃんは赤帽子だし、普通ならベガみたいに構えて待つものよね。 

でもこのゲームでは止まってるときはピタッと固まったままの静止芸。
突っ立ったままボーっとしてる。
何か考えてるの? 何も考えてないの? どっちなのこの子……。ってかわゆいわよね。

そしてその顔のまま、スススーって歩き出す。頭は動かない!
うわっ、何これ鬼ギザかわゆすぎてキュン死確定はい死んだー。てなる。
何という魔性の女……。まあ魔法の少女なんだけどね!

まとめるよ! おしゃま、おすまし、おしとやか、これならオークでもkawaii! kawaiiは正義!
正義を執行せよ! 正義の執行とは、kawaiiを執行するということだ!!
以上が今日の講義だ。おしゃま、おすまし、おしとやか。この3おーを忘れるな!
「一おし二すまし三とやか」、だ。これが猫忍者ムーブの基本となる。
使いこなせ。貴様たちがこの地獄をkawaiiで生き延びたいならな……。

邪魔よ老兵。

ツボNo.3 「背景BGも抜け目なく飾る、特に画面端の囲み」

・背景チップ

さーて、かわいいキャラにはかわいい背景絵が必要だよね。
といっても、ただかわいいだけではいけないの。ゲームなんだから、プレイのしやすさ、つまり視認性も求められる。それと、100面もあるんだから、飽きないためのバリエーションもいるわね!

このゲームでは、床や後ろの壁は「背景チップ」という小さなタイルを敷き詰めて表現してるの。
グラフィック容量を抑えられるし、敷き詰めるだけだからステージ構造データ準備も容易、って寸法ね。
特に足場となる床ブロックはゲームデザインそのものに大きく影響する要素。
ステージごとに配置の全取っ替えになるわけだから、床をブロック形の背景チップで構成するのはとっても合理的よ。

しかもこの床ブロック、ただ並べるだけじゃなく、ちゃんと背面に落ちる影も描き込んであるわね。
立体感を持たせて床がクッキリと見える工夫。
床って、キャラが乗れる乗れないの判断が必要だから、影つけで立体感を出して視認性を向上させてるってわけ。
この影も背景チップで構成して、汎用性を持たせてる。
だから床と一緒に並べるだけでオッケーってわけで、便利だわね。

<影で立体感> © TAITO CORPORATION 1985 ALL RIGHTS RESERVED.

・背景種類

各ステージのゲーム画面背景のテーマ種類は全部で4つよ。

・「青レンガ」のお城(青色の四角)
・「木材」の砦(茶色)
・「ゴツゴツした岩」の城壁(黄色)
・「おっきなケーキ」の内部(ピンクと白のしましま)

材質や色がみんな違うことで、見た目の差別化も図られてる。ケーキの面は特にファンシーね!
全部で100面あるから、単純にいって1種類あたり25面分を担当できる計算ね。
これなら、見た目おんなじような画面が続いて飽きたりすることは防げそう。
なるべく少ない種類で必要十分なバリエーションを確保できてるのがいいわね。

この4種類ってのが、何となくいい感じ。
みんなは数学の「四色問題」って知ってる? どんな地図でも4色あれば塗り分けができるって数学的な証明があるの。
だから、4種類ってのは、何だかそれっぽい気がする!
あたしアタマはポンコツだから、このゲームで4色ってのが数学的にどういう意味を持つかまったくわからないけど、何だか不思議な符合じゃない?

・画面フレーム

てことで、これで背景を徹底的にデコっていくわよ!
あら? 待って。床チップと背景チップを並べてみたんだけど、全然かわいくないわ。
ゲームに寄りすぎてて、何だか事務的な印象。盛れてないったらありゃしない。

<床だけの画面> © TAITO CORPORATION 1985 ALL RIGHTS RESERVED.

でも、もう答えはわかってるよね。そんなときはフレームで盛る! 魔法をかけちゃおう!
フレームの分だけ画面は狭くなるけど、その効果は抜群。見合ってあまりあるね。
このゲームでは建物のフレームでデコってるので、かわいいってだけでなく、ここがどういう場所なのかって世界観のアピールにもなってる。ファンタジー世界の王国っぽさがUP! ってわけね。

<フレームでデコった画面> © TAITO CORPORATION 1985 ALL RIGHTS RESERVED.

つまりだ。フレーム飾りがあることで、そこが王国各所にある特定施設だとわかる。
そこを悪逆非道のクリーチャーどもが占拠し、この国を恐怖で支配していることまでが一目瞭然である。
見た目のかわいさに騙されるな!! やつらを排除せよ! 100面だ、とことんまで追い詰める。
ケーキへと変えて砕き、文字どおり壊滅させる。
やつらに代償を支払わせるのだ。1匹残さず殲滅せよ! 地獄へ送り込んでやれ!
ゆけ、進むのだ深紅の暴風よ!! 

黙って老兵。

ツボNo.4 「死に様で魅せる」

死んで花実を咲かせよう

このゲームでは、主人公がミスしたとき(一般的には「死んだ」とき)にも一工夫があるのよね。
ミスとは、つまり敵と接触した場合。ミスになると主人公はシャボン玉に包まれて、くるくる回りながらお空に飛んでくの……。かわいいわね! 

<ミスするとシャボン玉で飛んでいく> © TAITO CORPORATION 1985 ALL RIGHTS RESERVED.

ミスの表現ってのは、特にこういったコミカルなゲームだといつも問題になるのよね。
たとえばオークと接触したとき、どうすればプレイヤーがミスとわかるのか。
死ぬか? 死ぬとしてどうして、どういうふうに? 
ただ触れただけなのに!
それむしろオークが社会死しないかしら? それともこっちが「くっ殺」とかになるのかな?

……という問題ね。
ま、そういう場合の乙女の死に様ってのは、清く正しく美しく、ファンシーな感じにしたいわね。
この場合はそれがシャボン玉。つまり死んではいないって扱いになってるわけ。
タッチはいアウト~ってなったら罰ゲームぽく退場よ。
高校球児なんかアウトになったら走ってベンチなんだから、比べたらずいぶんと優遇されてるね。

ここで大事なこと。ミスしてもかわいい絵が見れる!! がっくりきても、癒やされちゃって、ちょっとお得な気分。プレイヤーの失敗気分をすこし和らげるのがリトライ促進の秘訣だわよ。

ミス状況を目立たせる

あと小さな工夫。
ミス時には接触した敵キャラだけが画面に残り、他のキャラは表示が消えるの。
どこでどいつに殺られたか、あ、どこでどなたにぶつかってミスしたか、わかりやすいようにだよ!

あと、死にかたのバリエーションもたくさんあるのがいいわね。
このゲームだと、敵の放つ業火に焼かれたら真っ黒焦げ。ドリフの爆発後みたいにだめだコリャって顔になる感じになる。
炎に焼かれて焼死っていう死因がよくわかる。こういうの見ちゃうと、いろんなやられかたを試してみたくなるね!

<炎に焼かれて真っ黒焦げ> © TAITO CORPORATION 1985 ALL RIGHTS RESERVED.

ミス表現、死に表現にこそ、そのゲームの魅力が出るの。
ただ簡単に倒れて消えるだけとかセンスないわ。マジないわー。
どうせなら「何じゃこりゃあああ」とか叫んでメロウなBGM付きで死んでいくみたいな。
男ならば、その死に様で名を残すのだ。みたいな。そんな工夫はとっても大事だよ! 

<次回予告>

さってとー。今回はここまで! いい調査報告だったかな?
かわいい見た目のゲーム的効果、それを支える技法などがてんこ盛りだったね。
次回はゲームメカニクス、つまりゲームデザインに関するツボの発掘だよ。
それまで赤い服と赤い帽子で、ベガ立ちして待っててね!

【関連サイト】

『イーグレットツー ミニ』公式HP:https://www.taito.co.jp/egret2mini
『タイトーマイルストーン』公式HP :https://www.taito.co.jp/taitomilestones
『タイトーゲーム』 公式Twitter :https://twitter.com/TAITO_Apps
タイトーWEBサイト :https://www.taito.co.jp/

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