ゲームセンター、アーケードゲームの展示イベント「小樽・札幌ゲーセン物語展2」会場レポート

  • 記事タイトル
    ゲームセンター、アーケードゲームの展示イベント「小樽・札幌ゲーセン物語展2」会場レポート
  • 公開日
    2021年08月03日
  • 記事番号
    5846
  • ライター
    鴫原盛之

7月17日(土)から、北海道小樽市にある市立小樽文学館にて「小樽・札幌ゲーセン物語展2」が開催されています。

本展は、2021年1月16~3月29日にかけて開催された「小樽・札幌ゲーセン物語展」に続く、1980~90年代のゲームセンター、アーケードゲームをテーマにした企画展の第2弾。
会場内には、懐かしのアーケードゲームのポスターや販促品をはじめ、ゲーム雑誌やゲームミュージックアルバム、地元のゲームセンターで実際に使用されていた備品やコミュニケーションノートなどが、前回にも増して多数展示されていました。

会場の小樽文学館
「札幌・小樽ゲーセン物語展2」展示コーナー

本展は、ただグッズ類を並べただけでなく、かつて地元の札幌・小樽にあったゲームセンターの歴史を振り返るとともに、そこで遊んだゲームに内包された、あるいはプレイヤー同士で紡いだ物語を追体験できるところにおもしろさがあります。

以下の写真は、小樽市にあった歴代のゲームセンターの場所をプロットした地図です。
前回の展示では地図と店名のみ紹介していましたが、今回は本展の主催者が作成したWiki「札幌・小樽のゲーセン情報リスト」に寄せられた、有志の証言による店舗の紹介文も添えて展示しています。

会場に来ていた、学生時代は小樽に住んでいて、市内にあったゲーセンによく通っていたという男性にお話を聞いたところ、「私にとって昔のゲーセンは、いろいろな人たちとの交流が生まれる、一種のサロンみたいな所でした。当時通ったゲーセンや、雑誌を買っていた本屋さんなどのお店は、今はほとんどなくなってしまいましたが、ここに来ると昔の思い出がよみがえってきますね」と話していました。

地元、小樽市にあったゲームセンターの位置を記した地図と写真(※当時ではなく、現在の建物)、Wikiに寄せられた当時のプレイヤーたちの証言をまとめたコーナー

かつて札幌市にあったゲームセンター、「レタス702」で実際に使用されていたコミュニケーションノートの展示も注目ポイントです。
こちらも当時のプレイヤーの体験談が凝縮された、いわゆるナラティブを象徴するアイテムだと言えるでしょう。

同じく、札幌市にあった「札幌そごうゲームスポット」を拠点に、1984年から活動を開始したサークル「札幌南無児村(なむこむら)青年団」が発行したファンジン(同人誌)が展示されているのも大きな見どころです。
当時の地元のゲームファンの熱量、あるいはプレイヤー事情を今に伝える、たいへん貴重な資料です。
  

こちらは来場者が自由に書き込めるコミュニケーションノート。

展示されたゲーム関連グッズの数は、前回から大幅に増えています。
本展を企画した藤井昌樹氏によると、前回は(藤井氏も含めて)グッズ類の提供者が6人だったのに対し、今回は12人もの有志から提供を受けたことで、全展示品のうち実に8割以上が今回初めて公開されるものになったそうです。

また藤井氏によると、前回の会場で「私もこんなグッズを持っています」「ずっと自宅に眠ったままのグッズを、この機会に日の目を見せてあげたいと思いまして……」などと、自ら協力を申し出る来場者が次々と現れ、本展の協力者が増えたとのこと。
その結果、会場内にすべて展示できないほど、有志の皆さんから数多くのグッズの提供があったというのですから驚きです。

同館の学芸員の玉川薫氏も、協力者と展示品の数が増えたことにはたいへん驚いたそうで、「前回の展示の反響がとても大きく、多くの皆さんからゲームの関連グッズや資料、同人誌にいたるまで、我々も知らなかったものも次々と寄せられたことで、異例の早さで第2弾を開催することができました。これだけ短い時間で開催が実現できたのは、皆さんのエネルギーに押されて自然発生的にできたからだと思います」とのことでした。

なお、展示内容の一部は期間中に入れ替える予定があるそうです。
  

  

  

ゲーム雑誌・関連書籍、ゲームミュージックアルバム類の展示数も大幅に増加。
「マイコンBASICマガジン」「ゲーメスト」「Beep」などの雑誌をはじめ、ナムコの直営店で配布されていた小冊子「NG」や「NOURS」も多数展示されていました。
またアルバム類はCDだけでなく、初期のLPレコードやカセットテープ、プレイ動画などが収録されたVHSビデオのジャケット類も見ることができます。
  

  

  

会場の中央には、懐かしのゲームがフリープレイで遊べる筐体も2台設置されています。
前回の展示でも基板を不定期に入れ替えていましたが、今回は1週間ごとに入れ替えるとのことです(※展示予定タイトルは、こちらからご確認ください)。
  

  

  

本展は10月3日(日)まで(※休館日をのぞく)開催されます。
また、8月17日(火)18時からは藤井氏と、元ナムコで『パックランド』や『バラデューク』などの開発に携わった岸本好弘氏が出演するトークイベント「いま、ビデオゲームのアーカイブ活動がおもしろい」のライブ配信(※詳細はこちらをご覧ください)が行われます。
  

本展を企画した、小樽文学館の玉川薫氏(左)と藤井昌樹氏

【関連リンク】

市立小樽文学館
http://otarubungakusha.com/exhibition/2021073971

札幌・小樽のゲーセン情報リスト
https://seesaawiki.jp/satsuotagacen/


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