見城こうじのアケアカ千夜一夜

  • 記事タイトル
    見城こうじのアケアカ千夜一夜
  • 公開日
    2023年06月30日
  • 記事番号
    9639
  • ライター
    見城 こうじ

第6夜『ルート16』(1981年・サン電子)

スケールの異なる画面を行き来する迷路アクション

『ルート16』はレーダーモードとメイズモードを行き来して、フィールド上に散るターゲットを集めるアクションゲームです。1レバー1ボタン操作で、ボタンはエネルギー制限のあるアクセルに使います。

このゲームを語る際に比較するとおもしろいのが、前年に発売されたナムコの『ラリーX』です。コンセプトが似ているのですが、大きな違いとして『ラリーX』が全方向にスクロールすることで広大なマップを表現しているのに対し、『ルート16』は一切スクロールしません。

『ルート16』は全部で16の部屋があり、各部屋は1画面以内のサイズで、固定画面で表示されています。部屋の外は隣接する道以外見えないのですが、部屋から出るとレーダーモードに移り、全マップが一望できるようになります。ググッとカメラが引く感じです。
  

レーダーモードでは自車も敵車も数ドットの大きさになるのですが、その豆粒のようなサイズでプレイは続行します。これが何とも大胆でユニークなのです。じつに新鮮なプレイ感でした。

これが『ラリーX』との差別化のために生まれたアイデアなのか、技術的な理由からスクロールを断念したのか、はたまたもっと他の理由なのか、それはわかりませんが、結果的にじつに独特な遊びが実現されています。黎明期のアーケード史上で、これだけ広い空間を自由に移動できるゲームはかなり珍しいのではないでしょうか。

敵車を自在に誘導するおもしろさ

ぼくは『ラリーX』『ニューラリーX』も大好きなのですが、それ以上にこのゲームが好きでした。理由は敵車の誘導のおもしろさにあります。

このゲームの敵車は、岐路に来たときに座標XYのうち、その時点でプレイヤーとの距離が近いほうの座標をさらに詰めてくる動きをします。たとえば、敵車がプレイヤー車の真下から少し距離をおいて追ってきているとして、そこでプレイヤーが右折をすると、敵もすぐ曲がれる道があれば右折をします。それまで重なっていたX軸を再び0に近づける動きを優先するわけです。かなりわかりやすい動きをします。

この法則を理解すると、敵の誘導、いわゆる“まく”ことが簡単にできます。迷路を把握して、フェイントも含め、いつどこで曲がるかをうまく見計らえば、敵を大きく遠回りさせることができる。そこで時間を稼いで、難しい部屋のターゲットを取りに行くなどするわけです。これを延々考え続けるのです。このテクニックのおかげで、ずいぶん長時間プレイできた覚えがあります。

とはいえ、敵車の数はラウンド1で3台、ラウンド2、3では4台、5台と増えていきます。すべての敵を同じように誘導するのは難しく、台数が増えることでどうしてもバラけやすくなるので、割とテキメンに難易度が上がっていきます。

多彩で難しかった16の部屋

先に述べたとおり、このゲームには16の部屋があります。それぞれに特徴があり、たとえば、出入り口が多くて敵があちこちから侵入してくる部屋、逆に出入り口が一つしかないので脱出時に苦労する部屋、一本道が多い、袋小路が多い、狭い等々さまざまです。

ターゲットの配置は毎回ある程度ランダムに変わるのですが、すべての部屋に置かれているわけではないので、どの部屋に配置されているか/いないかで、難易度もけっこう変化していたように思います。中には敵車にチェイスされながらだとかなり苦労を強いられる部屋も少なくありませんでした。いろいろな仕組みを理解していないと難しく、また操作性にクセがあったこともあって、それほどヒットしたゲームではなかったと記憶しています。

だから、後知恵でいえば、最初のラウンドはマップをもっと簡単にするなど、何らかやりかたがあったのかもしれませんが、当時としてはこれで十分手間暇をかけた作りだったのだと思います。

ちなみに、右端の上から2番目の部屋には毎回必ずターゲットが配置されており、かつ固定のお邪魔キャラクターがいます。部屋の中を周回移動していて、敵車同様ぶつかるとアウトとなります。このお邪魔キャラクターは、モンスターのようなデザインから始まって、ラウンドが進むと、トンボ(?)のような姿になったり、なぜかワイングラスになったり、どんどん変化していきます。『パックマン』のフルーツターゲットのような楽しませかたを狙ったものだと思います。個人的には新しいキャラクターを見るのも楽しみで、がんばってプレイしていました。

あまり知られていなかった? 1UPの隠しフィーチャー

また、このゲームでは、前のプレイヤーがラウンド1でゲームオーバーになった場合、その後のデモ画面で“BONUS”というメッセージが点灯し、この状態でコインを入れてゲームを始めると、最初の部屋にいきなり1UPアイテムが出現するという隠し要素がありました。アーケード史上でもとても珍しいフィーチャーだと思います。

おそらくこれはプレイヤーがうまく進めず早々にゲームオーバーになった際に、次のゲームでちょっと得をする救済措置として組み込まれた仕様だと思うのですが、ぼくがお店に行くと、けっこうな頻度でこの“BONUS”が点灯していた覚えがあります。残念なことに、多くの人が気付かずに席を立ってしまっていたのかもしれません。

では、また次回。

©SUNSOFT
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