見城こうじのアケアカ千夜一夜
目次
第17夜『バーニンラバー』(1982年・データイースト)
ぶっつけろ! 邪魔をしろ! それ行け猛レース!
レースゲーム、ドライブゲームといえば、いかに他の車にぶつからないようにして最速でゴールを目指すか、というものが一般的です。
でも、ときどき、他の車に自分の車両をぶつけることをよしとする(そのことを楽しむ)タイプのレースゲームもあり、『デストラクションダービー』や『バーンアウト』シリーズなどが有名な例かと思います。
1982年にデータイーストから発売された『バーニンラバー』はその始祖的作品の一つです。
‘80年代アーケード史を彩った「デコカセットシステム」
『バーニンラバー』はデコカセットシステム(通称“デコカセ”)と呼ばれるシステムボードで開発されたゲームの一つです。デコカセはとにかく商品ラインナップが豊富で、シューティング、ドットイート、スポーツ、卓上ゲーム系など、短い間にさまざまなジャンルのゲームが作られています。
総じて質の高い製品が多く、またアイデアで勝負するユニークなゲームがたくさんありました。『戦国忍者隊』『マンハッタン』『ディスコナンバーワン』『ハンバーガー(バーガータイム)』『ロックンチェイス』『トレジャーアイランド』『ラッパッパ』『ゼロイゼ』等々……。どのゲームもアイデアにひとひねりあって、プレイヤーを楽しませてくれました。
ロングジャンプで海や障害物を飛び越えろ!
このゲームのリアルタイム世代の多くがそうだと思うのですが、ぼくが『バーニンラバー』を初めて見たとき、最初に思い浮かべたのは、アニメ『マッハGO!GO!GO!』です。体当たり上等のレースで自車がハイジャンプするなど、まさに同アニメを彷彿とさせる激燃え(萌え)シチュエーションのゲームでした。
このゲームでは、とくにジャンプが強いアクセントになっています。一定速度以上を出していないとジャンプできないルールで、これを使って敵を上からつぶしたり、壁に激突しそうになったとき飛んでかわすような用途があるのですが、何より重要な用途として、ジャンプ必須の川(海?)の場面が出てきます。
極端なことをいえば、『バーニンラバー』はこの関門にそなえて常にドキドキしているようなゲームかもしれません。この緊張感がよいのです。
レースゲームっぽいけれど敵はコースを攻略していない?
おもしろいのが、このゲームの敵車の処理をよくよく見ると、ジャンプゾーンでちゃんとジャンプして障害を乗り越えているのはプレイヤー車だけなんですね。他の車は全然ジャンプできてなくて、道の切れ目で引っかかって足止めを食らっている。まともにコースを攻略しているのは自分だけかとちょっとツッコミたくなってしまいます。
当時のレースゲームのライバル車は高度な思考を持っておらず、動く障害物のようなものでしたので、仕方のないことだったのかなとは思います。また、このゲームの場合でいえば、敵車のジャンプ時の拡大グラフィックを用意する余裕がなかったということもあったのかもしれません。
それと、ゴールに着くとそのステージで撃破した敵の数がボーナス得点になるのですが、逆に1台も破壊せずにゴールすると、シークレットボーナスとして5万点が加算されます。敵を倒さないことで入るボーナスとしては、おそらくこれがほぼ最初のものだったのではないでしょうか。「これ以前にもあった」とご存じのかたがいらっしゃれば、ご一報いただければと思います。
では、また次回。
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