見城こうじのアケアカ千夜一夜

  • 記事タイトル
    見城こうじのアケアカ千夜一夜
  • 公開日
    2024年04月19日
  • 記事番号
    10990
  • ライター
    見城 こうじ

第21夜『ハレーズコメット』(1986年・タイトー)

ハレー彗星接近時に作られたシューティングゲーム

『ハレーズコメット』は1986年のハレー彗星接近のタイミングに合わせて作られた縦スクロールシューティングです。パワーアップ時の広角ショットが爽快で、個人的にも好きなゲームです。

大きな特徴として、敵を撃ち逃すことがペナルティとなり、ダメージ度が100%に達するとゲームオーバーになる点が挙げられます(到達しなくても、逃した分だけボーナスは減点される)。同じシューティング系では、これよりもずっと古い製品ですが、ナムコが販売した『SOS』をちょっと彷彿とさせます。

『ハレーズコメット』でもっとも独特だなと感じるのが、スクリーン右端に敵本星との距離を示すマップや、ダメージ表示のための専用の領域が設けられていることです。縦画面で、かつ右端をこれらが占有しているため、プレイフィールドが縦に細長くなっています。

その上、このゲームには東亜プランやケイブのゲームのような任意横スクロールもありませんので、なかなか珍しい縦横比のフィールドではないでしょうか。個人的にですが、ある程度遊び込んでもずっとこの細長さを意識させられるので、かなり強い個性のように思います。

アイテムを取りに行くときはちょっと注意が必要

久々にしばらく遊んでみて感じたのは、ごく普通の感想ではあるのですが、パワーアップがそろうまでが意外に難しく、またミス時の復活もけっこう大変だということです。

とくに、本作の場合は自機の移動スピードも強化されるタイプのゲームというのが大きい。たとえば『グラディウス』であれば、カプセルが残っていればスピードアップだけはできる救済措置がありますが、このゲームにはそうした措置がないのでなかなか苦労させられます。

また、遠くからでもアイテムの入った小惑星等を簡単に破壊できてしまう上、アイテムが画面外へ去るまでの時間も短いため、注意しないとすぐ取り逃します。このアイテムの逃げやすさはなかなか曲者で、取りに行こうとしてやられてしまうことも頻発します(ぼくが下手だから、というのもありますが)。

なので、アーケードアーカイブス版の「中断機能」(セーブしてそこからやり直せる)は、とてもありがたいですね。やり直せるといっても、その先でミスったらいけないのは同じなので、ほどよい緊張感がある。

20世紀、とくに1980年代ごろまでのゲームはミス時の救済要素があまりなく、今遊ぶと難しいものもあります。前述の中断機能や、Nintendo Switch Onlineの懐かしゲームの巻き戻し機能は、古いゲームの難易度や遊びかたをよい意味で変えてくれて新鮮に感じます。

出現頻度の高い敵も弾の撃ちかたが個性的

敵に関しては、撃ち逃すことがペナルティになるゲームなので、意図的にトリッキーな動きにしたり、画面に留まる時間を短くすることで、撃ちにくくしている部分もあるように思います。

そのせいなのかわかりませんが、敵のフェイントのかけかた・編隊のバラけかたを見ていると、1986年のゲームにもかかわらず、80年代初頭ぐらいに散見された、敵の数を多く出せなかった時代のシューティングっぽさが少しあります。

もう一点、おもしろいと思ったのが、敵が撃ってくる弾です。耐久力1のいわゆるザコ系の敵であっても、弾の撃ちかたがそれぞれかなり差別化されています。撃ち返し型の分裂弾を撃ってくる敵や、連なるように連射する敵、垂直方向にレーザーっぽい弾を撃ってくる敵などなど。

もちろん、シューティングにおいて、敵によって弾の撃ちかたを変えてくるのは当たり前のことですが、ザコ系の敵に関してはある程度アルゴリズムを共通化して作っていることが多いように思います。でも、このゲームの場合、頻繁に登場する敵の多くが、それぞれかなり特徴的な弾の撃ちかたをしてきます。

この制作者は「ザコであっても、弾も含めてその敵の個性である」という考えかたで、『ハレーズコメット』を作っているように感じます。弾を撃ってこない敵もいますが、それも含めてです。

もちろん、とくに意識せずに、難易度付けの手法としてこのやりかたを選んだにすぎないのかもしれませんが、そこに明確に制作理念が現れているように思うんです。

こうした特徴ゆえ、このゲームをプレイしていると、常に敵弾が散っている感じになり、自機側はボクサーよろしくフットワークよく小刻みにかわすことが求められます。

たぶん、これと対照的なのが東亜プラン系でもとくに初期の『飛翔鮫』のようなゲームではないでしょうか。多くの敵弾は割と正確に自機を狙ってくるので、自機側は画面の端まで大きく避けて、追い詰められる前にタイミングよく逆サイドへターンする、いわゆる“切り返し”型の避けかたになります。さらに古いゲームでいうと、『ギャラガ』の攻略もそれに近いと思います。

2061年の次回ハレー彗星接近時にはぜひ続編を

時事ネタを扱った企画ものでいうと、たとえばオリンピック開催に合わせたスポーツゲームであれば、4年に1回作ることができます。でも、ハレー彗星の接近に合わせたゲームは70数年ごとに1回しか作れません。次回の接近は2061年なので、そのとき『ハレーズコメット2』が作られたら楽しいですね。

前作のリアルタイム世代がほぼいない中、定期的に新作が作られ続けるゲーム――なかなかロマンティックかもしれません。

では、また次回。

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