見城こうじのアケアカ千夜一夜

  • 記事タイトル
    見城こうじのアケアカ千夜一夜
  • 公開日
    2024年06月28日
  • 記事番号
    11165
  • ライター
    見城 こうじ

第24夜『バーガータイム』(1982年・データイースト)

固定画面アクション隆盛期に生まれた名作“ハンバーガー”

1982年は『バーガータイム』をはじめ、『ディグダグ』『ペンゴ』『Mr.Do!』『ドンキーコングJr.』などの傑作がリリースされた固定画面アクション大豊作の年です。さらに挙げれば『モンスターバッシュ』『アリババと40人の盗賊』『ポパイ』『スプリンガー』『ザ・ピット』『ガッタンゴットン』など、まさに百花繚乱です。

『バーガータイム』は元々『ハンバーガー』というタイトルでした。商標の関係でその後改題されたそうですが、アーケードで稼働していた間、ずっと『ハンバーガー』だったので、ぼくはいまだに現在のタイトルに違和感があります(笑)。

“危険行為推奨アクション”で敵と具材を一気に落とせ!

『バーガータイム』は、主人公のコックさんを操作して、巨大なハンバーガーを完成させる迷路型のアクションゲームです。じつに惚れ惚れするアイデアで、ぼくの中で今なおまばゆい光を放つおもしろいゲームです。

迷路上に配置された具材を踏み抜いて下段へ落としていき、ハンバーガーを完成させるとクリアというシュールな世界観。その際、敵を乗せて一緒に落とすと、その数に応じて多段落下が発生し、ボーナス得点も加算されます(敵の重みの分、幾重にも床をぶち抜くイメージでしょうか)。

ギリギリまで敵を引きつける必要があるため、のちのシューティング系で使われた“危険行為推奨”的なフィーチャーともいえますが、得点が上がるだけでなく、クリアまでの道のりも短くなり、基本的にいいこと尽くめです。

『バーガータイム』は多彩な見方ができるところがおもしろくて、基本的にはドットイートゲームの変形だと思うんですね。でも、そこに連鎖や多段落下の要素を取り入れたり、下段にいる敵を同時にやっつけることができるなど、非常に優れたアレンジが施されています。

データイーストはこれに近いアイデアで『ラッパッパ』という製品も出しています。プレイヤーが通過することでドットに相当する音符を吹き飛ばし、敵にぶつけて倒すことができるという点で、その考えかたは(トップビューとサイドビューの違いこそあれ)『バーガータイム』とそっくりです。

さらに、『バーガータイム』はドットイートゲームであると同時に、物を運ぶゲーム「運びゲー」といってもいいかもしれません。正確にはプレイヤー自身が運んでいるわけではないのですが、ターゲットを別の場所に移動させることでステージクリアになるという点で、そうした見方もできると思うんです。

運びゲーと言えば、たとえば『ルパン三世』『ブラックビートルズ』『倉庫番』、それから『ポートマン』も近いですね。

運ぶことをゲーム目的にすると、同じような作業の繰り返しになってしまう場合もあって、ちょっとまどろっこしい遊びになることもあります(『倉庫番』のようなパズルものだと、また意味が違ってきますが)。『バーガータイム』の場合、連鎖&多段落下のフィーチャーを入れることで、その点を解決しているのが素晴らしいところです。運搬効率にプレイヤーのテクニックが反映されるのです。

コショウを活用してクセの強いマップを攻略するのだ

各ステージのレイアウトも特徴的で、必ずしもスクリーンの縦横をまんべんなく使ったマップになっていません。長い一本道の箇所があったり、行き止まりがあったり、かなり“いびつ”な形になっていることも多く、そこがこのゲームの攻略上の楽しくも難しいところです。

このようなマップでも成り立つのは、やはりコショウの存在が大きくて、これを使うことで敵を足止め&無敵で通り抜けができるので、多少意地悪なマップでも何とか逃げが利く。さらに具材の上で足止めすることで、まとめ落としにも使える重要アイテムです。

ただ、ミス時にコショウの残り数が一切復活しないところは、ルールとして無茶苦茶厳しい! プレイヤーが最下段からリスタートするため、フィールドの端寄りで逃げ道が少ないことと、ゲームの状況によっては周囲に敵を巻き込むための具材がないことも多く、コショウがないとかなり辛いのです。

敵の動き・操作性・裏技について

敵との攻防については、複数種の敵が同時に追ってくるのでリアルタイムで判断するのが大変で、ぼくなんかはけっこうパニックになってしまいます。とくに迷路が細かく割られている箇所も多く、そういう場所ではかわせるか否かのタイミングの見極めもシビアです。

敵の動きをよく見ていると、プレイヤーと横軸が合っているときに、たとえばウィンナーはハシゴのところで上へ進む。目玉焼きは逆に下へ行く。分岐させることで、まとめ倒しをさせにくくするとともに、プレイヤーを挟み撃ちするようアルゴリズムが作られているわけです。ぼくが思い出せるゲームでいうと、『ドアドア』の敵の動きもこれとよく似ています。

このゲームで一点だけ残念なのが、操作が少し難しいことです。プレイヤーが岐路で曲がる際の吸い込み処理がない(おそらく)ので、かなり厳格な操作が求められます。

吸い込み処理とは、座標が正確に合致していなくても、ある程度近ければOKとみなして、プレイヤーの都合のよいように便宜を図るプログラム処理のことです(ぼくはそう覚えたのですが、違った表現もあるかと思います)。逆に言うと、この操作性でも海外を含めてヒットしたことに感嘆します。それだけおもしろいゲームなのだと思います。

余談ですが、このゲームでステージクリア確定後にプレイヤーが敵に捕まってミスになると、ミス演出がクリア演出で上書きされ、ミスはなかったことになります。ユニバーサルの『Mr.Do!』などでも同じことが起こります。ぼくはこの技(?)を“死人返し”なんて呼んでいました。こんな現象が当時はすごく楽しかったんです。

さまざまな続編(?)が存在した

このゲームには同じくアーケードで『スーパーバーガータイム』という続編があるのですが、ぼくはそちらより『ピーターペッパーズアイスクリームファクトリー』(続編ではなくスピンオフ?)のほうが何度も遊びましたし、「こうアレンジしてきたか」と印象に残っています。

主人公がパティシエになって、アイスクリームを完成させるゲームなのですが、アイスを持ち上げたり蹴り落としたりできる、ちょっとややこしいルールになっていました。難易度が低かったので、長い時間プレイできたことをよく覚えています。

でも、一番うれしかったのは、『グレイプロップ』に隠しキャラクターとしてコックさんが登場したときかもしれません。あれはサプライズ感あったなあ。

では、また次回。

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