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第7回 Gloomhaven/グルームヘイヴン
ついに期間限定無料配布!?
「何やってたんですか、健部さん。もう9月ですよ」
「いやあ、海外並みに長めの夏休み、ありがとう。おかげですっかりリフレッシュできたよ」
と、相変わらずな呑気なぼくであったが、編集者の目光は鋭い。
「健部さんがぐーたらしてる間に、例の『グルームヘイヴン』のアプリ、本日2022年9月23日から、しばらく無料配布とのことですよ!」
https://store.epicgames.com/ja/p/gloomhaven-92f741

「え? 何だって? あの世界一の評価を維持し続けているキャンペーン型のボードゲーム最高傑作の電子版が、無料で入手できるの?」
「健部さん、説明くさいセリフ、ありがとうございます。Epic Gamesストアによれば、無料配布は9月末まで。そんなわけでこの激動の瞬間に、3回シリーズの完結編。よろしくお願いしますね」
「え? これってシリーズだったの?」
こんなにも同じゲームを厚遇してくれる編集部には感謝しかない。最後の一大補足でフィナーレを飾ろうと思う。皆さん、よろしく!
14歳以上、2~4人、各シナリオ30~120分。
ただこの基本セット、購入時の重量は10kgほどで、定価も3万円。
だが開けて準備を始めると、その重厚さに納得する。
最新アップデート:ソロ・シナリオ
そんなわけで、まずは急ぎ従来のSteam版にアクセスしてみると、またも大型アップデートが実装されていた!

すなわち、基本セットに登場する、全17キャラクターのソロ・シナリオ集である。
これまでの全シナリオは、2~4名のキャラを選んで傭兵部隊を結成し、攻略しなくてはならなかった。しかしこのソロ・シナリオでは、操作するキャラは常に1名。そのキャラの実存部分に問いかけてくるハードな内容で、能力の限りを尽くしてストイックに挑戦しなくてはならない。助けは一切来ない!(Epic版にも、もちろん実装予定)
無事クリアできたら、そのキャラに特に役立つ(あるいは他のキャラでは役に立たない)固有の特殊アイテムがゲットできる。
例えば、前回少し紹介したマインドシーフのソロは、こんな感じである。

このソロ・シナリオは紙版の画像で、アークライトの公式サイトの「●キャラクター(追加/変更)」からダウンロードできる。
ただし参加条件があり、
1.街の繁栄レベルが3以上
2.既に2人以上のキャラクターが引退している傭兵部隊(パーティ)
3.自分自身が5レベル以上のキャラクター
をクリアしている必要がある……え、繁栄レベル?
そう。こういった要素は、入門セットたる『獅子のあぎと』にはなかった。そこで今回は主に、『獅子のあぎと』を終えた皆さんのために、基本セットである本編では何が違っているのか、追加要素は何なのかについて解説していきたい。
参照用に、本編のルールのリンクを張っておく。
その前提として、前回も好評だった各キャラ解説から始めよう。
ちなみに『獅子のあぎと』にも、各キャラをフィーチャーしたシナリオは1本ずつあり、クリアするとやはり特殊アイテムを獲得できたが、本編と違って他の仲間が助けてくれる。
本編のソロは、真に孤独な戦いなのだ。心して挑んでほしい。
アイノックスのブルート
前回紹介した、《獅子のあぎと》団の投斧使い、ハチェットと同種族で男性。
アイノックスの中には遊牧生活を捨て、その巨躯と腕力を活かして人間の都市に適応し、快適な生活を手に入れる者もいる。雇い人からはブルートすなわち〈豪腕獣〉と蔑まされつつも、道路の舗装や船の荷降ろしなど多くの肉体労働をこなしている。稀に素性のよくない者に用心棒として雇われることもある。ブルートにとっては、自身の能力を披露して報酬を得る機会を得られるのであれば、理想などどうでもいいのである。

人間のスカウンダレル
《獅子のあぎと》団の〈虚空〉術師、ヴォイドワーデンと同種族で女性。
本能的に複雑で抑圧的な官僚主義を築きあげてきた多くの人間と決別し、秩序社会の崩壊を願う者もいる。そんなスカウンダレル、すなわち〈ならず者〉は、総じて悪辣にして利己的である。全世界が自分のものであると見なし、手に入れるために必要なことは何でもおこなう。他の種族の文化では決して見られないこの悪質な日和見主義者は、その特性を戦闘において遺憾なく発揮する。

クワトリルのティンカラー
《獅子のあぎと》団の解体屋、デモリショニストと同種族で男性。
大都市に住むクワトリルにとって、ティンカラーすなわち〈鋳掛師〉は極めて一般的な職業だ。あらゆる種類の装置や錬金薬を巧みに作りあげ、快適な生活を望む消費者に販売して生計を立てる。中には防壁を越えた先へと旅する冒険心に溢れたティンカラーもいる。みずからの装置を自在に駆使し、勇気を振り絞って荒野に足を踏み入れ、研究のために役立つはずの古代の秘宝を探しているのだ。

オーキッドのスペルウィーヴァー
《獅子のあぎと》団の(自称)マネージャー、ザインと同種族で女性。
オーキッドの中には、千思万考の末「適切な行動には、思索や協議だけでは足りなく、力も必要である」という結論に到達した者がいる。オーキッド社会全体に対する、物理的な脅威を感じ取っているのだ。そんな者の一部は、スペルウィーヴァー、すなわち〈呪文の織り手〉という古代よりの結社に招き入れられる。オーキッドの賢者であり、自然界より引き出した強力なパワーを織り成し、攻撃として放つのである。その一部は外敵の脅威を排除するためにオーキッド社会に残る。残りは世界を渡り歩き、脅威を見つけ次第、叩き潰す。

サヴァスのクラグハート
▽サヴァス
サヴァスは何よりも力を重視する。厳格で排他的な種族だが、透明で滑らかなガラス質の胸以外は、凸凹した岩石のような肌をしている。そのガラス皮膚の下には、個々が習得した元素エネルギーのコアがある。氷、火、風、地……そのうち少なくとも一つの元素の秘密を習得し、自分のものとして体得するまでは、一人前とはみなされない。かくてサヴァスは、幼少時よりまず一つの元素の学習に血道をあげる。そんな献身的な努力に、二十年間を費やす。しかし、そんな元素の技を駆使して他の種族と交流するサヴァスは稀である。簡素な生活をよしとするほとんどの伝統的なサヴァスからは、異端と見られている。
▽クラグハート
元素の力を習得できないサヴァスも、少なからず存在する。サヴァス社会より追放されるため、普通は他の種族の間で生きて行くか、孤独に過ごすしかない。ところが追放される前に、みずから胸のガラス質を破壊し、その窪みを永遠に使用不能とすることによってクラグハートすなわち〈岩の心臓〉の名を得る者もいる。そんなクラグハートにも利点はある。たとえ元素を制御することができなくとも、母なる大地に対する親和性は高く、岩のごとき体躯より湧き出る剛力によって偉業を成し遂げるのだ。

他に基本セットで最初に導入されるキャラクターには、ヴァームリングのマインドシーフがいるが、それについては前回の記事を参照願いたい。
キャラたちが人生目標を達成して引退するごとに、たいてい残り11種の新たなキャラのうち1名が解放され、自分たちの傭兵団に入隊できるようになる。
なお、本編に『獅子のあぎと』の4キャラを持ちこむのは問題なく可能。
さらに拡張『忘れられし輪』では、同様に基本セットに最初から混ぜて使っていいキャラが、もう1名増員されている(ただし、まだ電子版には実装されていない)。
ヘイズサーのディヴァイナー
▽ヘイズサー
ヘイズサーはおそらく、かつて高度に知的な社会を築いた人間だったのだが、次元間移動を探求しすぎたのであろう。何らかの恐るべき間違いがあって次元の狭間に囚われ、永遠の存在となった。そのせいで、同時に無数のリアリティの目撃を永久に強いられている。そして可能な限り他の種族との交流を避け、俗世から離れることを望んでいる。とはいえヘイズサーの知識欲は飽くことを知らず、その欲求を満たすためには現実改変の力の使用を躊躇しない。
▽ディヴァイナー
何千年もの間、終わりなき虚空の間に囚われていたヘイズサーの中でも、異次元界に対する好奇心を強く育くんできた小さなグループがあった。「可能な限り多くのリアリティを訪問したい」というのが、根本的な動機となっている。長年にわたる細心の研究の成果によって、事象のパターンを把握しつつある彼らディヴァイナー、すなわち〈卜占師〉の前では、リアリティは既に混沌たる矛盾ではなく、因果関係の鎖で編まれた構築物に見える。自身の心の限界をほんの一歩超えるだけで未来を予知することができ、時空連続体の流れを歪めることすらできるのだ。

街で新たに出来ること
『獅子のあぎと』ではイベントだけで示唆されていたことが、本編では色々とシステムに組みこまれている。
本編のほうが時系列的に後なので、新しいテクノロジーが発見/開発されたと考えてもよい。
人々は諸君の一挙一動をつぶさに見ている。悪行を積み重ねれば、諸君の部隊としての[名声]が下がり、商品の購入単価が割高となる。もちろん逆に善行を積めば[名声]は上がり、店は気前よく割引価格で売ってくれる。いずれにせよ、悪なり善なりの[名声]に応じたイベントが発生する。
またグルームヘイヴンの街の防衛・修復・発展につながる行動をとれば、街の[繁栄度]が上昇する。繁栄度が一定値に達すると[繁栄レベル]が上がる(最初は1で、最大9)。レベルが上がるごとに、街の商品在庫は豊富になり、より貴重かつ効果の高いものが増えていく。
この連載で前にも何度か書いたが、キャラ作成時に決めた人生目標(『獅子のあぎと』にはない)を達成したキャラは、街で引退式を執りおこなった後、新しいキャラが入隊してくる。引退者は街の名士として殿堂入りし、記録に残り、[繁栄度]も1上昇し、ストーリーも進行する。新たなキャラが引退もしくは入隊する際には、対応する新イベントが山に投入され、シャッフルし直される。各プレイヤーは、それまで引退させたキャラの数だけ、入隊するキャラに[特典]をつけることができる。さらに入隊するキャラは、その時点での街の[繁栄レベル]と同じレベルで始められるため、キャラ同士のレベル/実力差に苦しめられることもない。
他にも[パーティの事績]といって、進行上で何か重要なことをしてしまうと、「パーティ全体がそうしたもの」としてフラグ管理され、後の分岐に影響を及ぼす。パーティ単位で管理されるので、全員が卒業して、そのフラグが発生した際に居合わせたキャラが誰もいなくても、同じパーティとみなされ影響は免れない。
シナリオの合間に、病院と宗教施設を兼ねた《大楢の神殿》に、各キャラとも10ゴールドずつ寄付できるようになる。そうするなら、次のシナリオで「ダメージ2倍」の祝福カードを、自分の攻撃修正の山に2枚入れることができる。更には寄付の度合いに応じて[繁栄度]も上昇する。
アイテムの受け渡しルールは撤廃されるため、自分のものを仲間に譲ったり交換したりできなくなる(店に半額で売って、別の人が全額で店から買わなくてはならない)。
また名前や絵が同じアイテムでも、『獅子のあぎと』とはデータが異なるので、アイテムを混ぜて使うことはできない(『獅子のあぎと』のアイテムは使わず、本編+『忘れられし輪』のものだけ使うこと)。
シナリオの進行具合によって、世界情勢が変化していく。例えばグルームヘイヴンの街は、開始時には軍事政権下にあるのだが、これが重商政権に替わったりする。水中呼吸法が発見されれば海底のダンジョンに潜れるようになり、向上の力のテクノロジーが開発されれば、一定の金額を支払って、何と各キャラの能力カードを直接強化できるようになる。この向上は、同じ道を学ぶ同士で継承されるため、例えば引退したスカウンダレルが向上させた能力カードは、後に入隊する新人スカウンダレルでもそのまま使用できるのだ!

そして広大なる野外へ/ダンジョンへ
『獅子のあぎと』では、事件は街でしか起きなかったが、本編では防壁から野外へと頻繁に飛び出し、街よりも危険度の高い[野外イベント]が発生する。
さらに拡張『忘れられし輪』になると、時空間転移によって[亀裂イベント]も発生する。

そんな新規のイベントやダンジョン内でも、新たな事態が待ち受けている。
まずは地形障害が増える。

そして下記のような[状態]が追加される。


次に、敵も味方も、周囲6へクスのうち、空いているマスに「召喚」を実行できるようになった。
モンスターによって召喚された存在は[召喚モンスター]、キャラが召喚した場合は[召喚獣]として呼び分ける。召喚獣は、召喚されたラウンドには行動しない。次のラウンドから、召喚者の手番の[直前]に行動する。召喚者が脱落したら、召喚獣も消えてしまう。

『獅子のあぎと』では、モンスターが[略取]を使ったら、旧貨幣はおろか宝箱まで盗まれてしまったが、本編では宝物は取られない(ここだけは優しく変更されている……というか、そうしないとクリア不可能なマップが多数あるのだ)。
なおアイテムと同じく、モンスターもデータが異なっているので混ぜることはできない。
追加シナリオの数々
表に見えるだけでも『獅子のあぎと』25本、本編95本、拡張『忘れられし輪』22本、ソロ17本なので、シナリオは計159本となる。1本3時間の単純計算でも500時間必要だ(もっとも、分岐があるのでそのすべてをプレイすることはできないのだが)。
ぼくは、そのほとんどを家族と一緒に3人パーティでプレイし終えた。
3人とも楽しみすぎて、家人は同人誌まで作ってしまったぐらいである(2冊も!)
https://aoi-takashiro.booth.pm/

ところがどっこい、それでも足りない人のために、さらに多くの公式シナリオが用意されている。
▽デモ・シナリオ:1本
https://arclightgames.jp/specialcontents/gloomhaven/GH_GM_Scenario.pdf

▽〈ズォーンの探索者〉追加シナリオ:3本
https://arclightgames.jp/specialcontents/gloomhaven/SoX_City%20Cards.pdf
https://arclightgames.jp/specialcontents/gloomhaven/Seekers%20of%20Xorn%20JPN.pdf

▽この世の終わり:1本
https://arclightgames.jp/specialcontents/gloomhaven/GH_Additional_Scenario%20np1%20JPN.pdf

▽炎の養護院(6人専用):1本
https://arclightgames.jp/specialcontents/gloomhaven/Children%20Miracle%20Workers%20JPN.pdf

▽参加型キャンペーン第1弾〈未知なる世界へ〉:10本
▽参加型キャンペーン第2弾〈首都の陰謀〉:10本
▽参加型キャンペーン第3弾〈無限の彼方へ〉:10本
http://www.arclight.co.jp/ag/home/home02/tuika/ghbase/ghtsuika.html

1は東方大陸への遠征で、拡張『忘れられし輪』の伏線。
2は西方の人類首都での事件で、次回作『フロストヘイヴン』への伏線。
3は別の次元会へ向かい、精神的な意味で『忘れられし輪』の伏線。
3つとも独立しているので、本編とは別のキャラを1レベルで作成して挑戦してみるのがお勧め。
▽参加型キャンペーン第4弾〈鍛冶屋と熊〉:10本
https://boardgamegeek.com/filepage/198970/blacksmith-and-bearjapanese

大分いつまでも遊んでいられるわけなのだが……。
▽同人ゲーム『クリムゾン・スケールズ/深紅の鱗』:66本以上
https://www.thecrimsonscales.com/

そして『フロストヘイヴン』
そして満を持して発表されたのが『グルームヘイヴン』公式大型続編。
北方の崩壊しかけた人類の港を舞台とした『フロストヘイヴン』だ。
https://www.kickstarter.com/projects/frosthaven/frosthaven
その背景世界については、既に情報が発表されている。
http://www.arclight.co.jp/ag/home/home02/tuika/ghbase/fhtsuika.html

『グルームヘイヴン』本編と同等どころか、それを上回るスケールで、現在鋭意製造中(のはず)。英語版が今年中に手元に届けば御の字ではなかろうか。
単純にコンポーネントが増えたのではなく、現地の環境の再現のための労力がすごい。
街は全壊しかけているので、その再建という大命題がある。戦闘やシナリオで単にお金を集めるのではなく、材料を集めて組み立てて有用なものをキャラたちが作っていく。
白夜もあるような北方なので、イベントの山札が夏用と、より厳しい冬用に分割された。
アイノックスの北方適応種アルゴックス、まさかの甲殻類知性体、自我に目覚めた古代機械。
ルールも調整されていて。数え上げれば追加変更点はきりがない!
現物がまだ手元に届いているわけではないので、詳細は不明のところも多いが、初期6キャラだけは発表されているので紹介しておこう。
アイノックスのドリフター
ハチェットやブルートと同種族で男性。
多くのアイノックス部族に共通する通過儀礼として「年少の戦士を一年間の自己探求の旅に送り出し、真に情熱が持てるものを見つけさせる」というものがある。中には都市生活を謳歌して戻らぬ者もいるが、大自然こそ帰るべき場所だと気づく者もいる。ドリフター、すなわち〈流れ者〉は、責任や義務から解き放たれた地で生きることを選んだ。そして北域こそが、自身の技量を試す絶好な場所だと考えている。

人間のバナー・スピア
ヴォイドワーデンやスカウンダレルと同種族で女性。
商人ギルドが北域に送りこんだ部隊はことごとく壊滅したが、唯一バナー・スピアすなわち〈旗槍使い〉だけは生き残った。絶えず名誉と栄光を求める、疲れ知らずの戦士。ところがフロストヘイヴンでは、栄光などに価値はない。外界から隔離され、北域の冷酷な現実を目の当たりにしたバナー・スピアは、本当に大事なものとは何なのか、考え直す必要があった。取り残されたこの地では、より強固かつ新たな結束を作らない限り、生き伸びることすら叶わないのだから。

クワトリルのブリンクブレード
デモリショニストやティンカラーと同種族で男性。
寒冷というのは、小さき者にとってひどく厳しい環境なのは疑いもない。ブリンクブレードすなわち〈明滅刃〉が北域を訪れるのは、他に居場所がないか、そこにまだ探索すべき採石場が残されているからである。ブリンクブレードとは結局、暗殺者なのだ。実験的に装備した刻時駆動を駆使して時間の流れを変え、視認できないほど素早く動き、十倍も大きな怪物より強力な攻撃を放つ。だがこの力は瞬発的にしか発揮できない。大きすぎる力には、相応の代償がつきまとうのだ。

ヴァルラスのデスウォーカー
レッド・ガードと同種族で女性。
ヴァルラスの言い伝えに「氷の中で生き抜くには、氷のごとき魂を持たねばならぬ」というものがある。血塗られた過去に対する贖罪として、死者の魂に救いの手を差し伸べる放浪者たるデスウォーカー、すなわち〈死を歩む者〉にこそ、この教えがふさわしい。悲劇到来の際、デスウォーカーはいつも近くにいる。そしてフロストヘイヴンでは、悲劇に事欠くことはないのだ。

ヘイズサーのボーンシェイパー
ディヴァイナーと同種族で女性。
ヘイズサーは他の次元界から力を引き出す。各次元界は、有用なものやおぞましきもので溢れている。ボーンシェイパー、すなわち〈骨造形師〉は、別の次元界で見出した命の泉より力を引き出し、この世界の生物―もしくはかつて生きていた者に付与する。それによってボーンシェイパー自身の生命力も同時に転送され、生と死の絶え間なき往復によって狂気に堕ちるものが多い。荒々しき力を飼いならし、造形にまで至れる者は極めて稀なのだ。

ハロワーのジェミネイト
▽ハロワー
ハロワー、すなわち〈掻きむしるもの〉とは、共通語の俗称である。母国語での自称は、きしりや息遣いにしか聞こえず、翻訳不可能であった。他の種族から一個体として認識されるハロワーは、実際には何千もの蟲の群体だ。互いの知能を統合し、集合知性となり、高度に組織化された思考が可能となった。必ずしも凶悪ではないのだが、その悪夢のごとき出自や、神経に障る発声、そして独特の虚無的な思想のため、上流社会での評判は芳しくない。その寿命は、蟲としては極めて短命で儚いものだが、絶え間なく繁殖するため、群体としては永遠であるとも言える。
▽ジェミネイト
ただ、すべてのハロワーが一個体として統合されているわけではない。群体となったとき、ごく稀に収束しないものもいる。この現象はジェミネイトすなわち〈二重者〉と呼ばれ、ふたつの意志が均衡して落ち着き、互いにその群体を支配しようと競い合っているのである。それぞれが異なる能力と野望を有しつつも、互いに態を変えながら調和している。

さて、この3回の連載にわたって、公開キャラだけでもざっと17種類を俯瞰してきたわけだが、ファンタジー派の人々から「何でエルフやドワーフがいないんだ?」という怨嗟の声が聞こえるようだ。
ぼく自身の解答は「『グルームヘイヴン』がファンタジーなのは見せかけであって、実はSFである」の一言に尽きる。集合知性体、かつての偉大なる文明が残した超テクノロジー遺物、次元間転移などのキーワードを辿ると、そういう結論が出る。
であるがゆえに、これだけオリジナルで豊饒な世界観に仕上がっているのだし、そこが最大の魅力なのだ。
グルームヘイヴンの創健者たち
最後におまけとして、まったく別ゲームではあるけれど、作者も世界観も同じ『グルームヘイヴンの創健者たち』を紹介しておこう。
https://www.kickstarter.com/projects/frosthaven/founders-of-gloomhaven

タイトルどおりの内容で、プレイヤーたちは9種族いずれかの代表となり、グルームヘイヴンに建物を建てて発展させ、最も貢献度の高い種族が勝者となる。ただし建設を単独でなすことはできず、必ずいずれかの他種族と協力しなくてはならない。そのあたりの駆け引きが醍醐味なのだが、若干複雑もしくはわかりにくいと感じた人が多いらしく、そんなに有名な作品ではない。
けれどまさしく「グルームヘイヴンってこうやってできたんだ!」ということが実感できるし、冒険者以外の各種族のようすもわかって、『グルームヘイヴン』本編が好きなあなたなら、雰囲気など含めとても好みなのではないかしら?
少なくとも、ぼくはそう。
ちなみにイベント・カードが数枚同梱されており、勝者の種族に基づいて選んで『グルームヘイヴン』の街の山に混ぜろという指示がある。いずれ公開されたときに、興味深い事件に発展することだろう。
そんなわけで、皆さん晴れやかなヘイヴン・ライフを!
またお会いしましょう♪
※スナップ写真撮影:高城葵さま