アプリで始めるボードゲーム

  • 記事タイトル
    アプリで始めるボードゲーム
  • 公開日
    2022年12月16日
  • 記事番号
    8944
  • ライター
    健部伸明

第9回 Cartographers/カートグラファー

目から鱗の革新的な紙ペン・ゲーム

紙ペン・ゲームといえば『○×三目並べ』が有名だ。
あまりにも簡単なシステムで、両者が最善手を指し続ければ必ず引き分けになる。また、まさしく紙とペンさえあればどこでもできる手軽さがあり、パッケージングして商品として買ってもらうことが難しかった。
そのせいか「紙ペン・ゲーム」といえば、どうも「チープで安っぽくてもの足りない」というイメージが先行しがちだ。

その常識を、今回紹介する『カートグラファー』が、いい意味で完全に覆した。
お題にしたがって、自分の土地をあらわすシートのマス目を、指定の地形で埋めていくだけ。なのにお題はカードでランダムに出されるため、毎回の展開が異なり、強い戦略性を兼ね備えている。すなわち、何度でもプレイしたくなるのだ。

▲諸君は地図製作者だが、人間とは限らない。

  
紙版の出版社はアークライトから発売

プレイ人数:1~100人
プレイ時間:30~45分
対象年齢:10歳以上

iOS版は、こちら

Android版は、こちら
  

▲カラフルで手軽に遊べるアプリ版。

野外に冒険に出かける地図製作者たち……

各プレイヤーは、女王の命を受けて未開の土地を測量しに出かけるカートグラファー、すなわち地図製作者だ。ところが舞台はファンタジー世界。あなたがたの使命は、ときおり怪物どもによって邪魔されてしまう。また新規の地形は、あなたの思惑どおりに出てくるわけでもない。あまたの艱難辛苦を乗り越え、女王の理想に最も合致する土地を見つけ出した者こそが、王国最高の製図家と認定され、歴史書にその名を刻むことになるのである……。

という設定の『カートグラファー』、そのシステムは世界的に高く評価され、ドイツ年間ゲーム大賞2020でもエキスパート部門でノミネートされ、最高の三本の指に入るゲームと認定されている。

与えられる白地図は全員とも同じで、開拓できない「山岳」と、特別な意味のある「廃墟」が幾つか描かれている。

▲簡単なほうの地図。

より難易度の高いマップでは、中央に大きく不規則な穴が描かれていて、簡単には攻略できないようになっている。

▲いかにも真ん中の穴が意地悪な上級地図。

ゲーム中にめくる山を形成するのは、13枚の「探索カード」と、怪物をあらわす4枚の「待ち伏せカード」のうちランダムに1枚の、合計14枚。

ゲーム進行は春夏秋冬の四季に分かれ、1年後の得点を競い合う。
開始時、16枚の得点カード(女王からの命令)のうち4枚をランダムに抜き出し、それぞれAからDの位置に配置する。くわしくは文章で書かれているが、読まなくてもある程度わかるよう、中央に大きく図示されている。

▲どの地形を、どういう風に配置すれば点になるのかが書かれている。

また季節によって、参照される得点カードが異なる。
  

     春(限界値8):A&B
     夏(限界値8):B&C
     秋(限界値7):C&D
     冬(限界値6):D&A

春から始まるので、最初はAおよびBの得点カードの条件を満たすよう進めていけばよい。ただし最初からCやDのカードも公開されており、AやBで得点を伸ばせないときは、将来の布石としてCやDを参照する際に点が高くなるよう、プレイすべきである。

▲準備が終わった場のようす。

各ラウンドの処理

1.探索フェイズ

まずは山から1枚めくる。めくられた探索カードの左上には「経過値」が書かれている。

▲一般的には2種類の地形のうち1つを選んで、指定の形状のマスを埋める。

2.測量フェイズ

めくられた探索カードでは、記入すべき土地の種類と、形状(テトリスのパーツ)が示されている。
種類も形も、複数の選択肢が提示されることがあり、その場合は、いずれか1つを選ぶ。

▲記入する地形は、森林・村落・農場・水域・怪物の5種類(左から)。

指定された形状は、回転させても反転させてもよい。

▲反転させ、さらに90°回転させて地図を埋めたの図。

ただし既にある地形や、山岳もしくは大穴の上に地形を記入することはできない。
(アプリの場合、クリックで簡単にマスを埋められる。着色も勝手にしてくれて便利。不可能な場所はクリックできないため、紙ゲームと違ってここで間違えることはない)

山岳は実は鉱山であり、タテヨコ4マスを埋めるたび、金貨(定収をあらわす)が1枚手に入る。

▲囲むと金貨がもらえる目印として、山の麓に金貨のアイコンがある。

他にも、探索カードでいくつかの形状が選べる際、より埋めるマス数が少ないほうを選ぶと金貨を得られることがある。
獲得した金貨は、減ることはない。各季節が終わると、所持する金貨の数だけ追加得点となる。

探索カードには「廃墟」を指定するものもある。その場合、廃棄以外が出るまでめくり、後で出たカードの条件にしたがいつつ、必ず白地図上の「廃墟」を埋めなくてはならない。

▲崩壊しかけた2本の柱が、廃墟のアイコン。

上記のルールにしたがってマスを埋められない場合は、1マスだけ選んで埋めることができる。

待ち伏せカードの場合、「右か左か」が指定されるので、各自その方向のプレイヤーに自分の地図を渡し、渡された人は指定された怪物地形を書き込む。つまり他人に勝手にマスを埋められてしまうのだ! 当然ながら、みな意地悪に邪魔するように書き込むだろう(アプリの場合、AIが勝手に書き込む)。

▲待ち伏せカードで指定された形状は、けっこうムズイ。

この待ち伏せルールによってプレイヤー間の交流が発生する。他の多くの「多人数ソロゲーム」と一線を画すポイントであり、評価される部分なのだ。

3.確認フェイズ

最初のラウンドでは何も起きないが、何ラウンドかプレイすると、めくられた探索カードが溜まってくる。
その季節でめくられた探索カードの、経過値の合計が、その季節の「限界値」以上になったなら、その季節は終了。

▲経過値の合計が、春の限界値8に達したところ。

そうでなければ「1.探索フェイズ」から新たなラウンドを始める。

季節の終わり

中間得点を計算する。
まず、1枚目の得点カード(春ならA)の条件を確認し、各プレイヤーともその上限に合致するだけ得点する。
次に2枚目の得点カード(春ならB)でも同じことをする。
さらに保持金貨の枚数だけ追加得点。

冬が終わった段階で、最も点数が高いプレイヤーが勝利。
簡単でしょ? でもプレイには、なかなか一筋縄ではいかない深い味わいがある。

なお、元の出版元サンダーワークスから、英語のルールブックが公開されている。
https://www.thunderworksgames.com/uploads/1/1/6/3/11638029/cart_rules_0602.pdf

印刷用の替えシートは、こちらからダウンロード。
https://www.thunderworksgames.com/uploads/1/1/6/3/11638029/sheeta_b_forweb.zip

障害物などの数を指定し、新たにランダムな配置の地図シートを自動作成してくれるツールもある。
https://www.cartographers.app/?map=702115465

勇者たちの門出

このシリーズには「勇者たちの門出」と題された第2弾がある(アプリでも追加課金で実装できる)。

▲新たな待ち伏せ、新たな勇者、新たな冒険が始まる♪

新要素の勇者は、待ち伏せてくる怪物を退治できる!
むろん、新たな地図、新たなカードも満載。よりバリエーション豊かなゲーム展開は約束されている。

ロールプレイヤー

じつは『カートグラファー』には、背景世界を同じくする別ゲームがある。
その第1弾が『ロールプレイヤー』で、先ほど説明した勇者たちを、ダイスやカードで作成/成長させていく。

▲こちらはレアなカエル人間の冒険者。〈呪いの指輪〉とか、どうかしてるw

その拡張『モンスターズ&ミニオンズ』では、その名のとおり怪物どもが逆襲してくる。

第2弾は『ロックアップ』で、プレイヤーは勇者たちに捕獲された怪物のリーダーである。

▲面構えも頼もしいノール軍団。今度はプレイヤーが操るのだ。

牢獄内での地位をたかめて牢名主となり、あわよくば恩赦で外に出よう……という何とも心をくすぐられる設定である。

さらなる紙ペン

『カートグラファー』が、それまでの紙ペン・ゲームのレベルを一気に押し上げたというようなことを言ったが、それでも物足りないかたには、この方向を究極まで推し進めた、超重量級紙ペン・ゲーム『ハドリアヌスの長城』をお勧めする。

▲高価格にも関わらず、すぐさま売り切れた重量級の究極紙ペン・ゲーム。

色鮮やかな大型シートに、カード、コマなど内容物がぎっしり入っており、ゆえに箱も重たく、約8,000円の定価は納得である。

そんなわけで、ぜひとも皆さんも、広大なるボードゲームの世界へと、足を延ばしてほしい。

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