日本初の女性パズルプロゲーマー・Temaさんに聞く、プロゲーマーの理想と現実

  • 記事タイトル
    日本初の女性パズルプロゲーマー・Temaさんに聞く、プロゲーマーの理想と現実
  • 公開日
    2018年10月12日
  • 記事番号
    594
  • ライター
    外山雄一

女性初のプロパズルゲーマーとしての誇り、そして厳しさ

▲2018年8月にラスベガスで開催された「AnimEVO2018」 の『ぷよぷよテトリス』では3位、スワップルールのトーナメントではベスト8に入賞した(画像:Temaさんの公式Twitterより引用)

――プロゲーマーとなってからはいかがでしたか?

Tema JeSU公認ライセンスを受ける前から(プロゲーマーとして)『ぷよぷよ』のプロ活動をしていたんですけど、自分1人しかプロを名乗っていなかった時期があったんですよ。でも、1人でできることって限られちゃうんです。

『ぷよぷよ』のeスポーツ化を成功させるんだったら、絶対にほかのプロ仲間が必要でしたし、どうしたらいいかと自分なりに考えていたところで(JeSU 公認プロ)ライセンス(制度)が確立して、(IPホルダーによる)推薦プロという仲間が生まれて、皆と一緒に『ぷよぷよ』を発展させていけるって思えたことが一番うれしかった

――厳しさという面では、ゲームの看板を背負っているという部分があると思いますが。

Tema あまり厳しさは考えてないんですが、ここ1~2年が大きな勝負だと思っています。eスポーツ業界という意味でも、『ぷよぷよ』のeスポーツ化という意味でも。

たぶん今年から来年までセガは本気で取り組んで、うまくいけばこれからも積極的にやるでしょうし、それでうまくいかなければほかに切り替えるというのは、企業だったら当たり前のことでしょうし…。

(プロゲーマーの)私たちは、念願の「ぷよぷよプロ」となったので、その期待に応える行動をしないといけないなと思っています。

実際、ビジネスとして利益が出るものでないと、ほかの企業も参入しないと思います。今がチャンスだとも思うんですよね。例えば、格闘ゲームのトッププレイヤーをスポンサードするとしたら、今はすごいお金が必要じゃないですか。

でも、私たち「ぷよぷよプロ」への支援なら、それより少ない金額で可能です。なおかつ、今後『ぷよぷよ』が世界で広がれば(ぷよぷよプロによる)宣伝効果も大きいですから、先行投資の意味って十分期待できると思います 。

「ぷよぷよチャンピオンシップ 2018年度8月大会」は大正製薬さん、アイ・オー・データさん、パナソニックさん、テックウインドさんの4社が協賛してくださって、ありがたいです。

the Shibuya ESPer@Kiyobi · 2018年8月7日返信先: @Kiyobiさん

Puyo Puyo @Anime_EVO Top 8:
1st: @livedesu
2nd: @aclivtak
3rd: @tema2424
4th: ShiroBrawl
5th: @Regenned & @KirbyCombo35
7th: @negisuke649 & Ouka

the Shibuya ESPer@Kiyobi

I’m so happy that we came back together to celebrate another year of dropping blobs and misdropping Tetriminoes. Seeing everyone leveled up compared to last year totally didn’t make me tear up, I swear.

Twitterで画像を見る

432:42 – 2018年8月7日Twitter広告の情報とプライバシー21人がこの話題について話しています▲「AnimEVO2018」での記念写真(the Shibuya ESPer氏のTwitterより)

(『ぷよぷよ』世界進出の)勝算はあると思っています。まず、日本での絶対的な知名度ですね。『ぷよぷよ』って子供からお年寄りにまで愛されていて、その『ぷよぷよ』が、まだ世界には本格的に進出してないんですよ。

日本でこれだけ流行ったゲームですから、海外で大流行する可能性は十二分にあると思っています。英語版『ぷよぷよテトリス(Puyo Puyo Tetris)』(PS4他/2017年/セガ)が出てヒットしたり、少しずつ進んではいるんですけど、これが大ブレイクするんじゃないかな? って思っています。

また、キャラの魅力も大きいです。FPSや暴力的なゲームは批判されやすいですけど、『ぷよぷよ』はそんな要素がなく、自信を持って親が子供にすすめられる知育ゲームです。安全なブランドイメージも勝算の要素といえます。

▲大連鎖を駆使して全消しを達成したTemaさんのプレイ動画。上級プレイヤーの華麗なる技はまさに“魅せる”プレイである(YouTube「Temaちゃんねる」より)©SEGA   Tetris ® & © 1985~2018 and Tetris trade dress are owned by Tetris Holding.

――女性プロとして意識している部分はありますか?

Tema もちろん勝つことが優先ですが、数少ない女性プレイヤーが男性プレイヤーを負かすというところに私の良さがあると思うので、それを意識しつつ、魅せるプレイも心掛けていきたいと思っています。

例えば、前述のKamestryさんの話をしますと、多くのプレイヤーがGTRとか階段積みとかの技を使うんですけど、彼は非常に柔軟な積みをするんですね。

ときには、実況者が「この技は何なんでしょうね?」と困惑するような、名称のない積み方をやったり。おじゃまぷよが来たときに発火点を高い位置に置いておき、相手の攻撃を受けて、負けそうなときに大連鎖を返す「カウンター」を使って逆転して勝ったりとか。非常に演出が心憎い。

そんな”魅せる”プレイヤーは、上級者から「分かっているな」って一目置かれて人気も出ますし、(そんなプレイヤーの対戦は)大会でも盛り上がりますね。

eスポーツの現状

――Temaさんが考えるeスポーツとは、どんな物でしょう?

Tema 「eスポーツとは?」と聞かれると難しいですが…。競技制のあるゲームで、強豪たちのプレイで人を感動させることができる素晴らしいコンテンツの一つだと思っています。

あんまりeスポーツ、eスポーツと騒ぎ立てるのもどうかと思うんですが、確かに「ゲーム大会」っていうより「eスポーツ大会」って言う方が格好いいのでしょうがないですね。

――日米の複数の大会に参加していますが、国内外のeスポーツの差についてお聞かせください。

Tema 会場をとっても集客数にとっても、(日本とアメリカでは)圧倒的な差があります。EVOの決勝戦はボクシングの大会もやるような、ラスベガスの最高級ホテルのアリーナで行われるんですよ。

ネット配信で視聴できるのに、決勝の空気を感じたくて入場料60~118ドルを払ってまでも多くの人が押し寄せる。大会に参加するだけでも60ドル以上かかるんですよ。

それに旅費を足したら数千ドル以上もかかるのに、このEVOに参加するためだけに世界中から人々がやってくる。

▲「EVO 2018」の公式トレーラー。アメリカのeスポーツはもはや一つの産業となっている

日本で入場料5000円のゲーム大会にお客さんが来るかというと、それは難しいと思います。でも、ラスベガスだとそれが叶うんですよ。日本もいずれはそうなってほしいですけど、そうなるイメージが湧いていない時点で(日米のeスポーツには)ものすごい差があるんだと思います。

――今の日本では、eスポーツを観るのはタダという感覚ですよね。

Tema 大会に行けばプロのプレイヤーに会えますし、無料配信で家からも観戦できます。でも、そこからお金が動かないとビジネスに進まないんですよね。現状、(ゲームソフトの)販売促進にはなっていますが、ほとんどゲームメーカーが(宣伝費を)消費する一方です。

(ゲームメーカー以外の)スポンサーを迎えてeスポーツの活性化を目指すなら、もっと(ゲーム周辺の)コンテンツにもお金を落とすという世の中の流れが必要です。

例えば、プレイヤーをスポンサードしている企業のグッズを買うとか。日本でも、もっとそういう動きになってほしいですね。

――日本のパズルゲームは世界では受け入れられていますか?

Tema 現状で、パズルゲームは『テトリス』(1984年~/ELORG他)がもっとも知名度が高くて、日本製だと『キャサリン (*01)』(2011年/アトラス)あたりが有名です。

『キャサリン』は対戦パズルゲームではないんですけど、シングル(プレーヤーのストーリーモード)をクリアしたらアンロックされる(マルチプレイ対応の)対戦アクションパズルモードがあって、それが海外のコミュニティですごく盛り上がっています。

EVOなど大きな大会のサイドトーナメントに、けっこうな確率で『キャサリン』が上がってくるんですよ。そう思うと、『ぷよぷよ』の真のライバルは『キャサリン』なんじゃないかな?

それを超えないと(『ぷよぷよ』の)eスポーツ化は成功したとはいい難いですし、『キャサリン』を超えた上で『ぷよぷよ』を対戦格闘やMOBA(マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ)と並ばせたいです

――『ぷよぷよ』についてはどうでしょう?

2014年に『ぷよぷよテトリス』(セガ)が発売されました。一部『ぷよぷよ』のプレイヤーからは、『テトリス』との対戦やゲームバランスに不満も出ているんですけど、私は好きです。海外で売り出すときには『テトリス』がセットのほうが絶対強いんですよ。

やり込んでいる人に言わせるといろいろあるでしょうけど、ライトユーザーが好む組み合わせですし。少しずつではありますが、『ぷよぷよ』も全世界に受け入れられつつあるのではないでしょうか。

Temaさんが見つめる未来

▲取材時『ぷよぷよ通』の「ひとりでぷよぷよ」を瞬く間にクリアし、喜ぶTemaさん

――今後の活動や目標についてもお聞かせください。

Tema 近場の目標としては、私のプレイを見て『ぷよぷよ』を始めました! という人が1人でも多く出てほしいなって思っています

『ぷよぷよ』のゲームプレイ中の自撮りや配信をやったり、ほかのゲームで頑張った動画を公開したりして、自分の知名度と一緒に『ぷよぷよ』の魅力を少しずつでも広めていきたいです。

やっぱり、女性プレイヤーとして求められる役割って「強さと広報」、この2つだと思うんです。いろんな仕事ができるのも、女性プレイヤーとしての華やかさがあるからって部分もあります。

(広報という意味では)さまざまなプレイヤーに取材をして、そのプレイヤーの魅力を発信していきたいと考えています。トッププレイヤー1人1人に焦点を当てていくと、皆個性があるんですよね。

彼らはチャンピオンシップで名前を伏せて戦っても、「ぷよ」の積み方でだれだかすぐにバレます(笑)。積み方には個性があり、その個性が分かるようになると、各プレイヤーにファンが増えるはずです。

また『ぷよぷよ』関連でTVのお仕事を頂くときは大連鎖をやることが多いんですけど、実際の上級者同士の試合って、相手を見ながら1~2連鎖とかの小さい攻撃で牽制したり、中盤のにらみ合いがあったりするんです

それは初心者から見ると分かりにくいものなんですが、実は一番の見どころでもあったりするわけです。

今はまだ一般的に「大連鎖対決すごーい」でいいんですけど、トッププレイヤーが見せる間の取り合いや駆け引きが分かるようになれば、上級者のプレイが何十倍も楽しくなりますし、感動することさえあるんですよ。

そんな『ぷよぷよ』の奥深い魅力も世の中に広めていきたいですね。

――ほかに、「こうなりたい」といった理想はありますか?

大きな目標というか、自分の理想としては『ぷよぷよ』の世界展開が成功し、私もプロゲーマーとして成功すること。いずれ大きなスポンサーがついて、世界中の大会を飛び回れたらいいですね(笑)。

Temaさん

1965年、東京都生まれ。株式会社ナムコでディレクターとしてさまざまなアーケードゲームの開発に携わった後、ノイズ社を立ち上げ、任天堂と共同でカスタムロボシリーズ5作を手掛ける。その他の代表作『コズモギャング・ザ・ビデオ』、『コズモギャング・ザ・パズル』、『ゼビウスアレンジメント』、か『TWIN GATES』、『PENDULUM FEVER』など。元『マイコンBASICマガジン』のゲームライターという顔も持つ。現在はフリーランスのゲームディレクターとして活動。ゲーム文化保存研究所の電子書籍制作にも協力中。Twitter

芸能事務所スターダストプロモーショングループのSDMに所属する、日本初の女性パズルプロゲーマー。『ぷよぷよ』シリーズを得意としている。『スプラトゥーン』(2015年/任天堂)ではウデマエ「S+」、『スプラトゥーン2』(2017年)でも全ルールで「S+」の称号を獲得。『ダンスダンスレボリューション』は難関曲の『888』をCHALLENGEモードでクリアした腕前を持つ。
公式サイト Twitter

○大会実績
eスポーツ学生連盟「第1回eスポーツ学生選手権」ぷよぷよフィーバー大会(2010)優勝
「セガ公式『ぷよぷよ』最強プレイヤー決定戦」(2016)3位
「AnimEVO2017」ぷよぷよテトリス ダブルス 優勝、シングルス(スワップ)7位
「AnimEVO2018」ぷよぷよテトリス シングルス3位、同(スワップ)5位

【撮影協力】
デイトナⅢ
住所:埼玉県川口市芝新町4-30 星野ビルB1F
営業時間:平日16:00~24:00、土日祝12:00~24:00
休み:なし
駐車場:なし

外山雄一

脚注   [ + ]

01. キャサリン : 2011年にアトラスより発売されたアクション・アドベンチャーゲーム。アクションパートはパズルゲーム仕立てとなっている。

こんな記事がよく読まれています

2019年09月27日

『ナイトストライカー』を作った男たち 前編

海道賢仁×津森康男 ダブルインタビュー 今からちょうど30年前の1989年、タイトーからリリースされた名作シューティングゲームが『ナイトストライカー』である。セガの体感ゲームの数々が人気を博していた当[…]

2019年10月18日

なかったはずの海外アーケードゲームを楽しむ男 前編

1980年代初頭から「ゲームブティック高田馬場」(すでに閉店した、高田馬場にあったナムコ直営のゲームセンター)を中心に、海外のアーケードゲームのおもしろさを多くのプレイヤーに広めた男がいた。自分の好き[…]