さあにん@山本直人の我が青春のテレビゲーム

  • 記事タイトル
    さあにん@山本直人の我が青春のテレビゲーム
  • 公開日
    2021年09月10日
  • 記事番号
    5903
  • ライター
    さあにん@山本直人

第十五回:1980年のゲームは「ゲームセンターあらし」に学んだ ~後編~(『ミサイルコマンド』1980年7月/アタリ)

『コロコロコミック』は1977年創刊なのですが、当初は「ドラえもん」の専門誌のような雑誌でした。
加えていろいろな連載作品が掲載されていくわけなのですが、その中で異彩を放っていたのが「ゲームセンターあらし」であります。

まだ、家庭用テレビゲームが一般的でない時代、テレビゲームというジャンル、ましてアーケードのジャンルを小学生向け雑誌で扱うというのは、かなりの冒険ではなかったかと思います。
特にインベーダーブーム後、年少者とテレビゲームの関わりかたへの規律がかなり厳しくなっていた時代でありますし。

しかしながら逆に、なかなか遊ぶことができない『スペースインベーダー』への憧れもあり、「ゲームセンターあらし」は大ヒットになるとともに、子ども向けホビー雑誌としての「コロコロコミック」の立ち位置を盤石のものにしていったわけであります。

「ゲームセンターあらし」で巻き起こる戦争回避物語

さて今回は「あらし」によって、『ドラキュラハンター』とともに(遊んだことがないとしても)多くの子どもたちの記憶に深く思い出を刻み込まれたタイトル。
『ミサイルコマンド』(1980年7月/アタリ)のお話であります。

「ゲームセンターあらし」では、コンピュータの暴走で発射されたICBMを、新作ゲーム(ミサイルコマンド)の発表会からさらわれたあらしが迎撃して世界を救うというストーリー。
そのコントローラーがゲームそっくりというものでした。

「ゲームセンターあらし」で、あらしが新作ゲームをプレイしているシーン。トラックボールに3つボタンというのが独特なコンパネでした。
Ⓒすがやみつる/小学館

この『ミサイルコマンド』の紹介をするのは今さら野暮というものでありますが、一応。

プレイヤーは敵ミサイルから都市を守る防衛線のオペレーターとなり、3つの砲台基地を使い、ミサイルを迎撃。
都市が全滅するとゲームオーバーとなるので、これを死守することがプレイの目的となります。
敵ミサイルは直接こちらの迎撃ミサイルを命中させなくとも、迎撃ミサイル爆発時の爆風に巻き込むことで破壊可能。
この爆風が広がって、消滅するまでのタイムラグを把握し、いかに上手に迎撃、さらには爆風による誘爆によって迎撃弾を使わず、効率良くクリアするかが高得点へのテクニックとなります。
ただし、各基地にある弾数が決まっており、無尽蔵に撃てないというのが悩ましく、ステージごとの敵の攻撃パターンによって使いどころを間違わないようにする(第二波、第三波という形の流れがある)という記憶ゲー的な側面もありました。
  

人気はあったがプレイヤーを選んだであろう理由

ただ、当時『ミサイルコマンド』をまともに遊んだ小学生というのは少ないのではないでしょうか。
その理由はインターフェイスにあります。
『ミサイルコマンド』は、照準操作をトラックボール、迎撃弾発射をそれぞれの砲台に割り当てられた発射ボタンで行います。
一応、テーブル筐体版も(セガから)流通していたのではありますが、(タイトーから流通していた)アップライト筐体の大きなトラックボール、大きなボタンだと、子どもの手による操作はかなりしんどかったのではないかと思います。

『メガドライブFAN』1991年7月号掲載「SEGA ARCADE HISTORY」(ゲームフリーク・執筆:とみさわ昭仁氏)より。同時期のタイトルを見ると『ミサイルコマンド』がかなり尖っていたタイトルだというのがわかる。

高知ではアップライト筐体がメインに流通しておりましたので、同様に手の小さな私は苦手なタイトルのひとつでありました。手が痛くなるんですよね。
さらに言えば、トラックボールとパネルの間に手の皮を挟んでしまったり(純正筐体では、そんなことはなかったですが)、熱中して、トラックボールで手の皮が剥ける……なんてこともありました。

当時はゲーム筐体でケガをするなんてよくある話で、特にレバーの球が取れて、ネジ部分が剥き出しになっているのに無理に遊んで指を切る、なんてことが多かったです。
メーカー純正ではない雑な仕上げの筐体ですと、コンパネの化粧板にバリがあってケガをしたり、レバーとコンパネの間隔が狭すぎて、擦れて怪我をするなんてこともありました。

ひどい話だと、アースがちゃんとしてなくて、コイン投入口の金属パネルから感電ということも。
ゲームを遊ぶのにも危険が満載(笑)だったのであります。
なので『ミサイルコマンド』は、私にとって「手の皮が剥ける」ゲームという位置付けでした。

2019年に発売された「Arcade 1Up」シリーズのコンパネ写真。トラックボールで照準を操作しながら、3つの発射ボタンを使い分けるというのは、個人的に結構難易度が高かった。違う砲台から迎撃弾を発射して間に合わなくなったり、弾数が尽きたりというミスによく陥った。
画像は「Arcade 1up」公式Webサイトより引用。

https://arcade1up.com/collections/all-arcade1up-game-machines/products/centipede

元祖「弾幕シューティング」である『ミサイルコマンド』

ステージが進むと、いきなり画面全体に敵ミサイルの攻撃の第1波が来るというパターンになるのですが、ここをトラックボールを上手に操作し、横一列に迎撃ミサイルによる弾幕を張るということが必要になります。
これができる人は、スタープレイヤーとして羨望の眼差しで見られたものです。

個人的には「弾幕」というとシューティングでなく『ミサイルコマンド』を思い出します。時代的に「バリヤー!!」(ヤはアとヤの中間ぐらいで発音する)と叫びながら展開することも多かったですな。

同じく「ゲームセンターあらし」より。まさに当時のテクニックを表現してくれているシーン。これが的確に展開できるというのが必須であった。バックに「SEGA」のロゴがあるが、SEGAはアップライトでなくテーブル筐体販売だったのはご愛嬌。
Ⓒすがやみつる/小学館

『ミサイルコマンド』はいわゆるキャラクターを使用しない、直線や円による表現が中心となるゲームでした(飛行物などのキャラクターも出現はしますが)。
また、どちらかというと攻撃パターンがステージごとに設定されていて、プレイヤーの動きによって展開が変わるというタイプではありませんでしたので、PCやコンソール(ATARI2600)に移植されたものでも、オリジナル版さながらのおもしろさを体験できた(ただし、キーボードやジョイスティックで照準を移動させるので、操作性はかなり悪かった)記憶があります。

現在ではSteamの『ATARI Vault』で、オリジナル版を楽しむことができます。
こちらは照準をマウスで動かし、キーボードで3つの基地それぞれからの迎撃が可能。
ぶっちゃけトラックボールより操作性が良く、遊びやすいです。
あの頃、トラックボールがうまく操作できないと悩んでいたあなた。ぜひ、遊んでみるといいですよ。なにせ「手の皮が剥ける」こともありません。

トラックボールで楽しみたい方は前出の「Arcade 1Up」を探していただき、お買い求めいただけると良いかと思います。
こうして考えると『ミサイルコマンド』は今でも現役の、時代を超えた名作なのだなぁと思います。

砲台が全滅すると、手も足も出ない状態に。それを感知するとゲーム進行速度が上がり、そのステージに出現する予定のすべての弾道ミサイルが高速に処理される。これがまた虚しい瞬間であった。
ゲームオーバー画面。けっこうこちらを煽ってくるようなゲームオーバー画面、この当時多かったですよねぇ。

「ゲームセンターあらし」は、当時小学館から刊行されていたコロコロコミック版(てんとう虫コミックス版)が、電子書籍にてamazon KindleストアやヨドバシカメラDolyなどで販売中です。今回使用していますカットは、第4巻 P.12-13「地球を救え」、より、小学館の許諾の上、掲載させていただきました。

『ATARI Vault』はSteamにて発売中。追加コンテンツを購入することで、ATARIコンシューマ版も遊べるように。他にもベクタスキャン系のタイトル含め、アーケード版は18タイトルが収録されています。

こんな記事がよく読まれています

2018年04月10日

ゲームセンター聖地巡礼「1980~1990年代 新宿」前編

今回から、新企画「ゲームセンター聖地巡礼」の連載がスタートします。当研究所・所長の大堀康祐氏と、ゲームディレクターであり当研究所のライターとしても協力いただいている見城こうじ氏のお2人が、1980~1[…]